特定活動46号ビザとは?申請条件・職種・現場作業の全て

特定活動46号ビザ(本邦大学卒業者等)は、日本の大学や大学院等を卒業した外国人留学生が、これまでの学歴や専門知識・技術を活かし、より幅広い分野で就労することを可能にする在留資格です。

特に、従来の「技術・人文知識・国際業務」ビザでは難しかった、現場作業を含む業務にも従事できる点が大きな特徴であり、即戦力となる外国人材の活躍の場を広げることを目的としています。

この在留資格は、多岐にわたる「特定活動」ビザの一つとして位置づけられ、特定の条件を満たす優秀な外国人材の日本での定着を支援します。

対象となるのは、日本語能力試験N1レベルの日本語能力を持つなど、一定の要件を満たす卒業生です。

本記事では、特定活動46号ビザの定義から、具体的な申請条件、就労可能な職種や現場作業の範囲、さらにはメリット・デメリット、他のビザとの比較、在留期間の更新や永住権取得への影響まで、このビザに関するあらゆる情報を網羅的に解説します。

日本でのキャリアを考えている外国人材の方、または外国人材の雇用を検討している企業の方にとって、最適な情報を提供することを目指します。

特定活動46号ビザの基本を理解する

特定活動46号ビザは、日本の大学・大学院等を卒業した外国人材が学歴や専門知識を活かし、幅広い分野で活躍できるよう創設された在留資格「本邦大学卒業者等」です。

高度外国人材の確保、経験・知識の産業還元、企業活動の多様化、国際競争力向上への寄与を目的とします。

特定活動46号ビザとは?その定義と目的

特定活動46号ビザは、「本邦の大学等を卒業した者が行う、本邦において修得した高度な知識を要する業務又は熟練した技能を要する業務を行う活動」を指します。

この制度は、日本の大学や大学院等を卒業した優秀な外国人留学生が、学歴や在留資格で培った専門知識・技術を活かし、より柔軟な形で日本企業で就労できるよう支援するために創設されました。

対象となる外国人材の要件と基本的な活動内容

特定活動46号ビザの対象となる外国人材は、以下の要件を全て満たす必要があります。

  • 学歴要件:日本の大学または大学院を卒業し、学位を取得していること。なお、令和6年2月の運用要領等改定により、短期大学や高等専門学校を卒業して学士の学位を授与された方や、文部科学大臣が認定した専修学校の専門課程を修了し「高度専門士」の称号を取得した方も対象に含まれます。
  • 高い日本語能力:日本語能力試験N1に合格、またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を取得していること(または外国の大学で日本語を専攻して卒業する等、要領で認められる日本語能力要件を満たすこと)。
    これは、日本人と同等レベルの円滑なコミュニケーション能力が求められる現場業務に従事するためです。
  • 業務の関連性:就労する業務内容が、大学等で専攻した分野、または過去に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で培った知識や技術と関連していること。
  • 待遇:日本人と同等以上の報酬を受けること。

活動内容としては、飲食店の店舗でメニュー開発やマーケティング等の専門知識と現場での接客・調理補助を兼ねるなど、専門性と現場作業を融合させた複合的な業務が想定されます。

なお、単なる単純労働「のみ」に従事すること(例:指示されただけのライン作業や清掃業務のみ等)は認められません。

特定活動ビザ全体における46号の位置づけ

「特定活動」は、法務大臣が個別に指定し、他の在留資格に該当しない多様な活動を包括する在留資格です。

この中で特定活動46号ビザは、日本の高等教育機関を卒業した優秀な外国人材の国内での就労と定着を促進する、明確な目的を持つ重要な枠組みです。

例えば、就職活動のための「特定活動44号」と異なり、46号は就職後の本格的な就労を目的とします。

これにより、日本で教育を受けた優秀な外国人材が、より実践的な形で日本の経済社会に貢献できる道を開く戦略的な在留資格として位置づけられています。

特定活動46号ビザの申請条件と必要書類

日本の大学・大学院等を卒業した外国人材が日本で就労するための「特定活動46号ビザ」を取得するには、適切な申請プロセスと書類準備が不可欠です。

申請の基本的な流れと審査基準

申請の種類と流れ

  • 在留資格認定証明書交付申請:海外からの外国人材雇用時。企業が代理申請し、認定証明書交付後に本国でビザ取得し来日します。
  • 在留資格変更許可申請:国内滞在中の外国人材が、現在の在留資格(「留学」等)から特定活動46号へ切り替える際に必要です。
  • 在留期間更新許可申請:現行ビザ期間満了前に、引き続き就労を希望する場合に申請します。

主な審査基準

  • 学歴・日本語能力:前述の通り、日本の大学等での学位(または高度専門士称号)と、N1相当等の日本語能力が必須です。
  • 業務内容:大学等で修得した知識・技術を活かす業務であること。
    日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務が含まれている必要があります。
  • 雇用の安定性・相当性:フルタイムの常勤職員として、日本人と同等以上の報酬で雇用されること。
  • 企業の安定性:雇用企業の事業が安定的に継続できる財務状況にあること。

申請に必要な書類リストと作成のポイント

申請人に関する主な書類

  • 在留資格変更許可申請書または認定証明書交付申請書
  • 証明写真(3ヶ月以内撮影、無帽・無背景、縦4cm×横3cm)
  • パスポート(原本提示)、在留カード(国内申請時、原本提示)
  • 卒業証書の写しまたは卒業証明書(学位等の確認のため)
  • 日本語能力証明書(N1合格証またはBJT480点以上の成績証明書の写し、または日本語専攻の卒業証明書など)
  • 履歴書

雇用する企業に関する主な書類

  • 労働条件通知書および雇用契約書(業務内容、日本人と同等以上の報酬等を明記)
  • 会社案内または勤務先ホームページの写し、登記事項証明書
  • 直近年度の決算書類(損益計算書、貸借対照表)
  • 直近年分の職員の給与所得の源泉徴収票等法定調書合計表
  • 職務内容に関する詳細説明書(申請者の専門知識や日本語能力を業務にどう活用するかを具体的に説明)
  • 雇用理由書(必要に応じて提出)

書類作成のポイント

全ての書類は正確かつ虚偽なく作成する必要があります。

特に雇用契約書や職務内容説明書では、申請者の専門知識と高い日本語能力を業務でどう活かすかを具体的に記述し、単なる単純労働のみではないことを明確に示すことが許可への鍵となります。

審査期間と不許可になった場合の対応

審査期間は申請の種類により異なり、標準処理期間(目安)は、在留資格認定証明書交付申請が1~3か月、在留資格変更許可申請が1~2か月、在留期間更新許可申請が2週間~1か月です(個別事情や混雑で変動)。

万一不許可となった場合でも、不許可理由(日本語能力の証明不足、業務関連性の説明不足など)を確認し、改善策を講じて再申請することは可能です。

専門家である行政書士等に相談し、適切なアドバイスを受けることを推奨します。

特定活動46号ビザで就労可能な職種と業務範囲

特定活動46号ビザは、従来の「技術・人文知識・国際業務」ビザでは難しかった現場作業を含む業務に従事できる点が大きな特徴です。

現場作業を含む具体的な職種例と業務内容

単なる作業員としてではなく、専門性に基づいた判断や指示、改善活動を主導する役割が期待されます。具体的な職種例は以下の通りです。

  • 製造業: 生産ラインの品質管理、工程改善、新技術導入指導など、専門知識を活かし現場の効率化・品質向上を推進。
  • 建設業: 現場での施工管理、安全管理、設計図面に基づく具体的な指示出しなど、専門技術と日本語を用いてプロジェクトを推進。
  • 飲食店: 売上データ分析に基づくメニュー開発、従業員教育、外国人顧客向けマーケティング戦略立案など、経営的視点から店舗運営全体を改善(※店舗管理業務を兼ねた接客等も可能)。
  • 宿泊業: 多言語での顧客対応に加え、サービス改善提案、外国人観光客誘致企画、ウェブサイトの多言語化運営など。
  • 農業: スマート農業技術の導入支援や栽培データの分析、品質管理体制の構築など。
  • IT開発: ブリッジSEとして、日本と海外のエンジニアチーム間の技術調整、要件定義、進捗管理など。

専門性・技術性の要件と業務関連性の重要性

特定活動46号ビザで最も重要なのは、従事する業務と、大学等で学んだ分野や「技術・人文知識・国際業務」で培った専門知識・技術との「関連性」です。

注意点:単純労働のみは不可
レジ打ち、品出し、清掃、皿洗い、単純なライン作業など、高度な専門性や日本語による円滑な意思疎通を必要としない「単純労働のみ」に従事することは認められません。

例えば、IT専攻者が全く関連のない工場で単純組立作業のみを行う場合は不許可となる可能性が高いです。

雇用形態、給与水準、労働条件について

雇用形態は原則としてフルタイムの常勤職員(雇用形態は常勤であることが必要)であることが求められます。アルバイトやパート(短時間勤務)は認められません。

給与水準については、日本人従業員が従事する場合と同等以上の報酬が必須要件です。

また、労働条件は日本の労働基準法に準拠し、社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険への加入も義務付けられています。

特定活動46号ビザのメリット・デメリットと他ビザとの比較

特定活動46号ビザ取得のメリットと課題

メリット

  • 高い就労自由度: 従来のビザでは難しかった製造・建設・飲食・宿泊等の現場業務を含む幅広い職種で、専門知識を活かして就労可能です。
  • キャリアアップ: 現場経験を通じて実践的なスキルやマネジメント能力を習得し、将来的な管理職への昇進に繋がりやすくなります。
  • 待遇の安定: 常勤での雇用であり、日本人と同等以上の給与が保証されます。

課題(デメリット)

  • 厳格な日本語能力要件: N1相当の高い日本語能力が必須となります。
  • 在留期間の更新: 在留期間は5年、3年、1年、6か月または3か月のいずれかであり、永住権のように無期限ではないため、定期的な更新が必要です。
  • 永住権への影響: 永住権申請において、特定活動の期間がどのように評価されるかは個別の判断となる場合があり、注意が必要です。

特定活動44号ビザとの違いと選択のポイント

特定活動46号は「就職後の就労」を目的とし、N1相当の日本語能力と就職先決定が必要です。

フルタイム就労が可能で、中長期的なキャリア形成に向いています。

一方、特定活動44号は「就職活動の継続」を目的としたビザです。

原則として就労は認められず(資格外活動許可でのアルバイトのみ可)、期間も短いため、就職先が決まっていない場合の繋ぎのビザといえます。

技術・人文知識・国際業務ビザとの比較

技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザは、ITエンジニアや通訳、企画職などの「デスクワーク」が中心で、現場作業は原則認められません。

対して特定活動46号は、専門性を活かす前提であれば「現場作業」に従事できる点が最大の違いです。

将来的に現場から本社部門へ異動する場合など、46号から技人国ビザへの変更(またはその逆)も、要件を満たせば可能です。

在留期間の更新、永住権、転職に関する注意点

特定活動46号ビザの在留期間更新手続き

在留期間の更新は、期間満了のおおむね3ヶ月前から申請可能です。

審査では、知識・技術を活かす業務への継続的な従事、安定した雇用と収入、日本語を用いた業務実態(職務内容)、雇用条件、そして納税・社会保険料の納付状況などが厳しく確認されます。

申請には在留期間更新許可申請書に加え、雇用契約書や課税・納税証明書などの提出が必要です。

不許可リスクを避けるため、書類は正確に準備しましょう。

特定活動46号ビザから永住権取得への道筋

永住権申請には原則として10年以上の在留歴(うち就労資格等で5年以上)が求められます。

特定活動46号での活動期間も、この要件にカウントされる可能性があります。

永住権審査では「独立の生計を営む資産・技能(安定収入)」や「国益適合性(納税義務の履行等)」が重視されます。

特定活動46号で常勤職員として安定して働き、納税義務を適切に果たしていることはプラス評価に繋がりますが、個別の状況によるため専門家への相談を推奨します。

転職に関する注意点

特定活動46号ビザは「指定された機関(契約機関)」での就労に対して許可されるものです。

そのため、転職して勤務先(契約機関)が変わる場合は、原則として「在留資格変更許可申請」を行い、新しい勤務先での活動について改めて許可を受ける必要があります。

新しい業務内容が46号の要件(専門性、日本語能力の活用など)に合致していない場合、許可が下りない可能性があるため、転職活動の段階から十分な確認が必要です。

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