外国人の社会保険はどうする?雇用時に必要な手続き・制度をわかりやすく解説

日本で外国人を雇用する際、「外国人にも社会保険の加入義務はあるのか?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
この記事では、社会保険の基礎知識から加入条件、免除制度、注意点までをわかりやすく解説します。
法令遵守と適切な雇用管理のために、ぜひ参考にしてください!
Contents
外国人労働者にも社会保険の加入義務がある!

外国人であっても、雇用条件を満たしていれば日本人と同様に社会保険への加入が義務づけられます。
「外国人だから特別扱い」という誤解も多いため、制度のルールを正しく押さえておきましょう。
加入が必要となる主な制度は以下の5つです。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険(40歳以上)
- 雇用保険
- 労災保険
これらの保険制度は、日本人・外国人を問わず、条件を満たす従業員すべてに適用されます。
企業が適用事業所である場合は、対象となる外国人従業員についても忘れずに加入手続きを行いましょう。
また、一部の国とは「社会保障協定」が結ばれており、特定の条件を満たせば社会保険の加入が免除されるケースもあります(詳細は後述)。
外国人の社会保険加入条件は?基本ルールをチェック!

外国人を採用した際に社会保険の加入が必要かどうかは、雇用形態や働き方によって変わってきます。
ここでは、加入条件や介護保険の対象となるケースを含め、押さえておきたいポイントを詳しく見ていきましょう。
社会保険の加入基準と在留資格の関係
社会保険の加入義務があるかどうかは、「どのような在留資格か」ではなく、「どのような働き方をしているか」で判断されます。
一般的には以下の3つの条件をすべて満たす場合、社会保険の加入対象です。
- 常時雇用されている
- 所定労働時間が正社員の3/4以上
- 所定労働日数が正社員の3/4以上
この条件に該当すれば、正社員はもちろん、アルバイトやパートタイムの外国人も社会保険の加入対象となります。
パート・アルバイトの外国人も対象?短時間労働者の扱い
先述した基準を満たさないパート・アルバイトであっても、以下の5つの条件をすべて満たす場合、社会保険の加入が義務づけられます。
- 週の労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8.8万円以上
- 雇用期間が1年以上見込まれる
- 学生でない
- 常時501人以上の企業に勤務している
とくに外国人留学生や技能実習生、特定活動などの雇用形態では、これらの条件を満たすかどうかが曖昧になりがち。
採用時に明確に確認しておくことが大切です。
介護保険の加入条件と注意点
40歳以上の外国人従業員が健康保険に加入しており、3ヶ月を超えて日本に在留している場合は、介護保険にも自動的に加入する仕組みになっています。
加入手続きは健康保険の資格取得届と連動しているため、企業側で特別な追加手続きは不要ですが、保険料が給与から控除されることや、従業員への説明は必要です。
なお、短期滞在ビザや観光目的での滞在者など、就労を伴わない在留資格の場合は対象外となります。
【企業側の対応】社会保険加入の流れと必要書類

外国人従業員の社会保険手続きは、企業が責任を持って進める必要があります。
具体的な流れと必要書類を確認しましょう。
外国人を採用したら行うべき社会保険の手続きとは?
外国人を採用した場合も、社会保険の手続きは企業側が対応します。
入社後5日以内に、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を年金事務所に提出しましょう。
この届出によって、健康保険・厚生年金・介護保険の3つにまとめて加入することになります。
ちなみに、提出は紙・電子申請どちらでも可能ですが、電子申請を行う場合は氏名のローマ字表記や在留カード番号などに制限(全角文字・桁数制限など)があるため、システム上の注意点も押さえておきましょう。
社会保険加入に必要な書類は?
外国人従業員の社会保険手続きには、以下の情報が必要になります。
- 在留カード(在留資格・在留期間・番号)
- パスポート(番号・発行年月日)
- ローマ字氏名届(氏名は大文字で、在留カードの表記と一致させる必要あり)
特に「ローマ字氏名届」は必須書類なので要注意。
表記に誤りがあると処理が遅れることもあるため、本人に確認しながら、正しい情報をそろえてから申請するようにしましょう。
外国人従業員の社会保険未加入はリスク大!よくある問題と対応策

外国人従業員が社会保険に加入していない状態は、企業にとって大きなリスクです。
ここでは、よくある問題とその対処法を紹介します。
加入義務を無視するとどうなる?企業側の罰則とリスク
社会保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、外国人従業員を未加入のままにしていると、企業側が法令違反として責任を問われる可能性があります。
具体的には、以下のようなリスクが発生します。
- 最長2年間の保険料遡及徴収(社員・企業双方の負担)
- 会社側への最大50万円の罰金または6か月以下の懲役(健康保険法等による)
- 社会保険事務所からの調査・是正勧告
また、外国人本人が後から「加入したかった」と訴え出た場合、労使トラブルや信頼性の低下にもつながりかねません。
採用時から加入条件を正しく確認し、書面でも説明・同意を取っておくと安心です。
外国人従業員が社会保険を嫌がるケースへの対応法
社会保険の加入に抵抗を示す外国人従業員も少なくありません。
よくある理由としては以下のようなものがあります。
- 保険料によって手取りが減ってしまう
- 年金は帰国後に受け取れないのでは?と不安
- 国の制度と重複すると思っている(例:技能実習生)
こうしたケースでは、まず制度の必要性を丁寧に説明しつつ、次のような情報もあわせて伝えると理解が得られやすくなります。
- 年金については「脱退一時金」があり、帰国後に一定の保険料が戻る制度がある
- 社会保険に加入することで、病気やケガの治療費、休業時の手当(傷病手当金)などもカバーされる
加入は法律上の義務であることも伝えつつ、本人のメリットにフォーカスした説明が効果的です。
誤解を解く姿勢が企業の信頼にもつながります。
社会保障協定・脱退一時金とは?外国人に関係する特例制度
一部の外国人労働者は、社会保険を免除されるケースや、帰国後に保険料の一部が返金される制度の対象になる場合があります。
社会保障協定の対象国と免除の仕組み
社会保障協定とは、年金の二重払いを防ぐために日本と他国が結んでいる取り決めのこと。
たとえば、海外の親会社から日本へ短期的に派遣されている外国人従業員などは、条件を満たせば日本の社会保険に加入しなくてもよい場合があります。
具体的には、次のようなケースが免除対象です。
- 協定国(例:アメリカ、ドイツ、韓国、インドネシアなど)からの一時的な駐在員・派遣社員
- 自国の社会保険制度に継続加入していることが証明できる場合
ただし、協定の内容や免除期間は国ごとに異なるため、該当する国からの採用や出向がある場合は、事前に制度内容を確認するようにしましょう。
脱退一時金制度とは?受給条件と注意点
脱退一時金制度とは、外国人が日本で厚生年金に一定期間加入したあとに帰国する際、支払った保険料の一部を受け取れる制度です。
支給対象になるのは、以下のような条件を満たすケースです。
- 厚生年金に1年以上加入していた
- 日本を離れ、在留カードを返納済み
- 最終的に年金を受け取る予定がないことが前提
申請には「脱退一時金請求書」の提出が必要で、在留カードの返納を証明する書類なども添付します。
一時金の金額は納付期間によって変わりますが、数万円~十数万円程度になることも。
制度の説明をしておくことで、本人の安心につながるだけでなく、企業としての信頼にもつながります。
まとめ
外国人を採用する際は、在留資格の確認だけでなく、社会保険の対応も非常に重要なポイントです。
企業側が誤解しやすい点も多いため、以下のポイントをしっかり押さえておきましょう。
- 社会保険への加入は「国籍」ではなく「雇用条件」で判断される
- パート・アルバイトの外国人も、条件を満たせば加入義務あり
- 社会保障協定により、対象国からの駐在員は加入免除となる場合もある
- 厚生年金に1年以上加入していた外国人は「脱退一時金」を受け取れる
- 社会保険の未加入は、企業側に罰則や遡及徴収のリスクがある
特に手続きミスや未加入の状態は、企業にとって大きなリスクにつながります。
基本ルールから例外措置まで正しく理解し、安心して外国人を迎え入れられる体制を整えておきましょう。