外国人労働者にも最低賃金は適用される?雇用前に知っておくべき制度と注意点

外国人労働者を採用する企業にとって、最低賃金の理解と適正な賃金設定は、法令遵守だけでなく、トラブル防止や定着率の向上にもつながる重要なポイントです。
この記事では、外国人雇用における最低賃金の適用ルールや注意点、報酬設定の具体的なチェック方法まで、企業担当者の目線でわかりやすく解説します。
ぜひ採用実務の参考にしてください!
Contents
外国人にも適用される?最低賃金制度の基本

外国人を採用する企業にとっても、最低賃金制度はしっかりと理解しておきたいポイントのひとつです。
ここでは、制度の仕組みや適用対象、違反時のリスクについて、実務の目線で整理していきます。
最低賃金法とは?企業側が知っておくべき基本ルール
最低賃金とは、働く人すべてに対して「これ以下の賃金では働かせてはいけません」と国が定めた基準です。
外国人かどうかに関係なく、日本で雇用されるすべての労働者に適用されます。
契約そのものが無効となることがあります。
それは、最低賃金を下回る金額で契約を結んでいた場合で、支払いの不足分は企業側が支払う必要があります。
さらに、最低賃金法違反として50万円以下の罰金が科されることもあるため、注意が必要です。
外国人労働者・技能実習生・アルバイトにも適用される理由
正社員だけでなく、アルバイトやパート、短期の契約でも、最低賃金は必ず守らなければなりません。
もちろん、外国人の方も例外ではありません。
国籍や在留資格に関係なく、日本国内で働くすべての人が対象です。
技能実習生や特定技能での就労も同様で、最低賃金を下回る待遇があれば、受け入れ企業としての信頼に関わる問題になります。
制度の趣旨を正しく理解し、適正な条件で雇用することが必要です。
違反するとどうなる?罰則と企業リスク
最低賃金を下回る給与で外国人を雇用していた場合、企業には次のようなリスクがあります。
- 契約の一部無効となり、差額の賃金を支払う必要がある
- 労働基準監督署から是正勧告を受ける
- 最低賃金法違反として、50万円以下の罰金が科される可能性がある
- 技能実習や特定技能制度での受け入れに影響が出る(停止や評価低下)
「知らなかった」では済まされない制度だからこそ、採用前の段階でしっかり確認し、必要な知識を社内で共有しておくことが重要です。
外国人の採用時に押さえておきたい最低賃金の金額

最低賃金は都道府県ごとに定められており、勤務地によって金額が異なります。
外国人を採用する際は、その地域で定められた最低賃金を正しく把握しておくことが重要です。
どの都道府県の金額が適用される?
最低賃金は、労働者の居住地ではなく、実際に働く「勤務地」によって決まります。
たとえば、埼玉県に住んでいて東京都内の企業で働く場合は、東京都の最低賃金が適用されます。
このルールは、同じ職場で働く人のあいだに不公平が出ないようにするためのもの。
複数の拠点で働く可能性がある場合も、各勤務地に応じて最低賃金を確認しておくと安心です。
【最新】地域別の最低賃金は?
最低賃金は毎年改定され、通常は10月から新しい金額が適用されます。
以下は、主要都市が所在する都道府県の最低賃金(時間額)です。
都道府県 | 最低賃金(時給) |
---|---|
東京都 | 1,163円 |
神奈川県 | 1,162円 |
大阪府 | 1,114円 |
愛知県 | 1,077円 |
京都府 | 1,058円 |
兵庫県 | 1,052円 |
福岡県 | 992円 |
沖縄県 | 952円 |
岩手県 | 952円 |
最低賃金は都道府県ごとに異なるため、外国人労働者を採用する際は、勤務地がある地域の金額を確認する必要があります。
▶【最新版】東京の最低賃金は?これまでの推移や県ごとの比較を解説
外国人採用で注意すべき賃金設定のポイント

外国人労働者を雇用する際は、在留資格や就労条件に応じた適正な賃金設定が求められます。
ここでは、報酬基準や賃金形態ごとの確認方法を紹介します。
在留資格ごとの賃金要件とは?
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)で外国人を採用する場合、「日本人と同等以上の報酬を支払うこと」が原則とされています。
これは、在留資格を取得・更新する際の審査にも関わる重要な条件です。
特定技能や技能実習制度でも、職種に応じた報酬水準が定められているため、制度ごとのガイドラインに沿って賃金を設定する必要があります。
日本人との賃金差は認められる?合理的な範囲とは
「同一労働同一賃金」の考え方は、外国人にも適用されます。
日本人と同じ仕事内容であれば、原則として賃金差があってはなりません。
ただし、経験年数や職務内容に差がある場合は、その範囲での違いは認められています。
賃金差がある場合は、その理由を明確にしておくことが、のちのトラブル防止にもつながります。
給与形態別にみる最低賃金の確認ポイント
給与の形態によって、最低賃金を満たしているかの計算方法も異なります。
企業としては、契約前にしっかり確認しておくことが重要です。
- 時給制:そのまま地域別の最低賃金と比較
- 日給制:日給 ÷ 労働時間(例:8時間)で時給換算
- 月給制:月給 ÷ 月の労働時間(例:8時間×22日など)で時給換算
- 出来高制・請負制:総支給額 ÷ 実働時間で時給換算
最低賃金を下回っている場合は、契約前に見直す必要があります。
給与設定ミスによるトラブル事例と防止策
設定ミスで起きやすいのが、控除後の手取り額しか見ていなかったケースです。
例えば、寮費や食費を給与から天引きしていた結果、実質の手取りが最低賃金を下回ってしまった、というケースもあります。
こうしたリスクを避けるためには、給与明細を明確にし、天引き項目の説明を丁寧に行うことが大切です。
入社時の書面でも、控除内容を明示しておくと安心です。
雇用後のトラブルを防ぐ!給与管理と定着率アップの工夫

採用後のフォローも含めて、外国人労働者が安心して働ける環境づくりが求められます。
ここでは、給与管理のポイントや定着につながる配慮をご紹介します。
給与明細の説明と天引きルールの共有
外国人労働者の中には、日本の給与明細や天引き制度に慣れていない方も多くいます。
たとえば「なぜ寮費や水道光熱費が引かれているのか」「手取り額が思ったより少ない」といった不安につながることもあります。
事前にしっかりと説明することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
納得したうえで働いてもらうことはきわめて重要です。
福利厚生・社宅制度などによる可処分所得への配慮
実際の手取り額(可処分所得)を確保するためには、給与以外の支援も重要です。
たとえば、家賃補助・社宅・食費補助などを整えることで、生活コストを下げることができます。
こうした制度を導入することで、外国人の方にとって働きやすく、長く続けやすい環境につながります。
まとめ
外国人労働者にも、日本の最低賃金制度は当然ながら適用されます。在留資格ごとの要件や地域別の金額を正しく把握し、適切な賃金設定と説明を行うことが、トラブルを避ける第一歩です。
制度を正しく理解し、安心して働ける環境を整えることが、企業の責任です。適正な雇用体制づくりを!