入管法改正 2023年を徹底解説!現状と2025年に向けた動向
2023年入管法改正の背景、変更点、2025年動向を解説。本記事で全体像を把握しましょう。
Contents
入管法改正の全体像と歴史的背景

日本の出入国管理制度は、1951年の入管法(出入国管理及び難民認定法)公布以来、社会情勢や国際環境の変化に対応するため、たび重なる改正を重ねてきました。
特に近年は、少子高齢化に伴う労働力不足の深刻化を背景に、外国人材の受け入れ拡大が求められ、入管法改正に関する議論が活発化しています。
主な経緯として、2019年には深刻な労働力不足に対応するため、新たな在留資格「特定技能」が創設され、外国人材の受け入れが拡大されました。
一方、2021年には難民申請中の強制送還見直しなどを盛り込んだ改正案が提出されたものの、入管施設でのスリランカ人女性死亡事件などを受け、人権上の懸念から廃案となった経緯があります。
こうした流れを経て2023年6月に成立した今回の改正は、在留管理の適正化、送還制度の見直し、難民認定制度の改善を主要な目的としています。
特に、退去命令後も送還に応じていない人々の長期収容解消や、保護すべき難民の確実な保護(補完的保護対象者認定制度の創設など)が目指されています。
国際情勢と日本の外国人受け入れ体制の変化
国際的な人の移動が活発化する中、日本もその影響を受けています。
特に、紛争や迫害により故郷を追われる難民は世界的に増加し、2024年5月時点で1億2,000万人に達しています。
この国際情勢の変化は、日本の入管制度にも大きな影響を与えています。
日本における難民申請者数は近年増加傾向にあり、2023年には13,823人が申請しました。
しかし、日本の難民認定率は国際的に見て低く、狭義の難民認定率は約2.2%(303人)程度にとどまり、人道上の配慮による在留許可など(1,005人)を含めても、在留を認められたのは全体の約9.4%(1,308人)です。
一部には就労目的と疑われる申請もあると指摘され、制度の厳格化が図られてきた経緯があります。
一方で、真に保護を必要とする人まで排除されないようにすることが重要な課題とされています。
また、日本の深刻な人手不足を背景に、外国人材の受け入れ制度も変革期を迎えています。
1993年に「国際貢献」を目的として導入された技能実習制度は、低賃金、長時間労働、人権侵害、失踪といった多くの課題が指摘されてきました。
これらの問題を受け、政府は技能実習制度を廃止し、2024年3月15日に「人材確保と人材育成」を目的とする新たな「育成就労制度」の創設を閣議決定しました。
育成就労制度は2027年までに施行される予定で、2030年頃までに技能実習制度からの移行が完了する見込みです。
さらに、2019年には人手不足が深刻な特定分野で即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格「特定技能」が導入されました。
特定技能制度は、技能実習制度と異なり、同じ業界内での転職が可能であり、特定技能2号では家族の帯同も認められるなど、より柔軟な運用が特徴です。
2023年には特定技能2号の対象分野が拡大されるなど、制度の拡充が進められています。
これらの外国人受け入れ体制の変更は、日本の労働力不足解消に寄与する一方で、外国人材の生活環境支援や多文化共生社会の実現に向けた課題も浮上しています。
社会全体での理解と包括的な政策的対応が求められています。
2023年入管法改正の主な変更点とポイント

改正入管法は、退去命令後も様々な事情から送還に応じていない人々(法律上「送還忌避者」と呼ばれることがあります)の長期収容解消、難民保護制度改善、在留管理適正化を目的としています。
主な変更点は以下の通りです。
- 送還停止効の例外規定創設: 3回目以降の難民認定申請者で相当な理由を示せない場合や、実刑者等は、難民認定手続き中でも強制送還が可能。
- 監理措置制度の導入: 退去強制手続き中の外国人を、監理人の監督下で社会生活を続けさせる制度。長期収容問題の解消を目指す。
- 補完的保護対象者認定制度の創設: 難民条約上の難民には該当しないが、紛争等から逃れてきた国際的保護を要する人々を認定・保護する制度。
- 罰則付き退去等命令制度: 退去命令後の送還妨害に新たな刑事罰を科す。
- 自発的帰国促進措置の拡大: 自発的に帰国する外国人の上陸拒否期間短縮など、帰国を促す措置を拡大。
これらは人権保護と適正な在留管理のバランスを図る重要な一歩です。
強制送還制度の見直しと「監理措置制度」の導入
2023年の入管法改正は、長年の課題であった退去命令後も送還に応じていない人々(送還忌避者)の長期収容問題の解消と、難民申請手続き中の強制送還に関する規定の見直しを重要な柱としています。
特に、退去強制令書が発付されながら送還を拒否し続ける外国人の長期収容は、人道上の問題として長らく指摘されてきました。
この問題に対処するため、改正法では「監理措置制度」が導入されました。これは、退去強制手続き中の外国人を、入管庁が認定した監理人(親族や支援者など)の監督下で社会生活を継続させる制度です。
これにより、収容の必要性が低いと判断された外国人については、施設外で生活しながら送還準備を進めることが可能となり、長期収容の解消が期待されます。
監理人は、対象者の出頭義務遵守や逃亡防止に協力する責任を負い、その義務に違反した場合には罰則が科される可能性があります。
また、送還の一時停止に関する規定も変更されました。
これまでの制度では、難民申請中であれば原則強制送還が停止される「送還停止効」がありましたが、これを濫用して送還を免れるケースが問題視されていました。
改正法では、「送還停止効の例外規定」が創設され、3回目以降の難民認定申請者で相当な理由を示せない場合、あるいはテロリストや刑罰を受けた者など、国の安全を脅かす恐れのある一定の要件に該当する場合には、難民認定手続き中でも強制送還が可能となります。
これは、難民保護の国際的な原則を維持しつつ、制度の適正な運用を図ることを目的としています。
さらに、退去命令後の送還を妨害する行為に対して新たな刑事罰を科す「罰則付き退去等命令制度」も導入されました。
これは、送還を実力で妨害する行為を強力に抑止し、より円滑な送還手続きの実施を目指すものです。
これらの改正は、国際的な人権保護の原則と国の出入国管理権限の適切なバランスを図りながら、現行制度が抱えていた喫緊の課題解決を目指しています。
難民認定申請手続きの変更と「特定活動」資格の拡充
2023年の入管法改正は、難民保護と出入国管理のバランスを図るため、難民認定申請手続きに大きな変更を加えました。
まず、難民認定制度の濫用を防ぎ、適正な運用を図ることを目的とし、「送還停止効の例外規定」が新設されました。
これにより、3回目以降の難民認定申請者で、難民または補完的保護対象者として認定すべき「相当の理由がある資料」を提出できない場合は、難民認定手続き中でも強制送還が可能となります。
ただし、過去には3回目以降の申請で難民認定された事例も存在するため、適切な運用が強く求められています。
同時に、人道上の配慮が必要な外国人への保護を拡充するため、「補完的保護対象者認定制度」が創設されました。
これは、難民条約上の難民には該当しないものの、紛争や内乱などから避難し、本国に帰国すれば生命や身体に危害が及ぶおそれがある国際的な保護を必要とする者を対象とする制度です。
補完的保護対象者と認定された場合、「定住者」の在留資格が付与され、難民認定者とほぼ同等の支援(日本語教育、生活支援ガイダンス等)を受けることができます。
この制度は、ウクライナ避難民などのように、紛争から逃れてきた人々をより確実に保護するための枠組みとして期待されています。
これらの改正は、難民認定率の低さや国際基準との乖離が指摘されてきた日本の難民認定制度の課題を背景に、真に保護を必要とする人々が確実に保護される一方で、制度の濫用は抑制されるべきという考えに基づいています。
今後、補完的保護対象者認定制度の運用状況や、難民認定申請手続きの厳格化が外国人、特に脆弱な立場にある人々に与える影響、そして国際社会からの評価を含め、注視していく必要があります。
改正入管法がもたらす影響と課題

2023年の入管法改正は、長期収容解消や難民認定適正化を目指す一方、外国人・難民申請者の人権保護に大きな影響と課題をもたらしています。
特に、3回目以降の難民申請者への送還停止効例外規定導入は、日本の低い難民認定率から、保護を要する人の強制送還リスクを高めると懸念されます。
監理措置制度は長期収容解消を目的としますが、監理人確保や被監理者の就労・社会保障制限、入管庁裁量権の大きさが新たな人権問題につながる可能性も指摘されます。
補完的保護対象者認定制度は国際的保護を要する人を救済するものの、定義が国際基準より狭いという課題を残します。
これら改正は、適正な在留管理と人権保護のバランスという、日本社会全体の課題を浮き彫りにしています。
外国人労働者・在留外国人への影響
2023年の入管法改正は、日本に在留する就労目的の外国人、特に特定技能制度や技能実習制度を利用する外国人材に直接・間接的な影響を与えています。
【主な変更点】
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一方、改正で導入された「監理措置制度」は、退去強制手続き中の外国人を、監理人の監督下で社会生活を続けさせる制度であり、元外国人労働者にも影響を及ぼす可能性があります。
これは収容長期化解消と社会生活継続が目的ですが、運用面での在留資格管理、人権保護に課題も指摘されます。
本改正は、外国人労働者の在留資格や就労機会に変化をもたらすとともに、出入国管理の厳格化という文脈の中で、受け入れ体制の課題や人権配慮の重要性を示唆します。
企業は法改正を正確に理解し、適切な雇用契約、労働条件整備、きめ細やかな生活支援が不可欠です。
人権問題と国際社会からの評価
2023年の入管法改正は、強制送還の見直しや難民認定制度の変更が国際的な人権基準との関連で、国内外から大きな批判を集めました。
特に、3回目以降の難民認定申請者に対する送還停止効の例外規定導入には、国際社会から懸念が表明されています。
国連人権理事会の特別報告者らは、改正法案が国際人権法およびノン・ルフールマン原則を損なう可能性があると批判し、日本政府に国内法制の見直しを求める共同書簡を送付しました。
国内では、日本弁護士連合会をはじめとする法律家や人権保護団体が強く反対し、長期収容問題の未解消、送還停止効の制限、監理措置制度における人権侵害の可能性、司法審査見送りなど、改正法の多くの問題点を指摘しました。
特に、日本の難民認定率が極めて低い現状(2022年で約2%)で送還停止効の例外を設けることは、真に保護を必要とする人々の強制送還リスクを高めると強く懸念されています。
監理措置制度は、収容の代替措置として評価できる一方、監理人による監視や行動制限、入管庁の裁量権の大きさが新たな人権問題につながる可能性が指摘されています。
これらの批判は、日本の入管制度が適正な在留管理と国際的な人権基準に基づく難民保護との間で適切なバランスをどう取るべきかという、根深い課題を浮き彫りにしています。
今後の制度運用では、国際社会からの評価や人権保護団体からの提言を真摯に受け止め、実効性のある人権保障の仕組み構築が求められます。
2025年に向けた入管法の動向と展望

2024年6月、「育成就労制度」が成立・公布されました。
これは技能実習制度を廃止し、遅くとも2027年度中には新たな在留資格として導入されます。
2年目からの条件付き転職を認めるなど、外国人労働者の人権保護とキャリア形成に配慮した変更が含まれています。
特定技能制度は対象分野や特定技能2号が大幅に拡充され、外国人材の受け入れ体制が強化されます。
永住許可制度も公的義務の履行状況を適正に評価するための見直しが図られています。
2023年12月運用開始の「補完的保護対象者認定制度」は、難民条約上の難民には該当しないものの国際的な保護を必要とする人々を対象とし、その運用状況が注視されています。
また、2024年6月10日施行の「監理措置制度」は長期収容問題の解消を目指しますが、その実効性と人権への影響が今後の重要な課題となります。
これらの新制度の円滑な運用と、さらなる制度改善に向けた議論は2025年以降も継続される見込みです。
今後の制度運用と課題解決への取り組み
2023年改正入管法で導入された「監理措置制度」(2024年6月10日施行)は、長期収容解消を目指しますが、監理人の確保や行動制限、入管庁裁量権の大きさから、人権保護と実効性の両立が課題です。
政府・入管庁は適正運用を掲げ、継続的な検証を通じて課題解決に取り組む方針です。
「補完的保護対象者認定制度」(2023年12月1日開始)は、国際的保護を要する人々を救済するものです。
しかし、国際基準に沿った定義解釈と真の保護実現、特に日本の低い難民認定率のもとで、3回目以降の難民申請者への送還停止効例外規定が、保護を要する人の強制送還リスクを高めないか懸念されます。
令和の出入国管理は、保護と迅速な退去、長期収容解消を基本方針とし、厳格な管理と人権配慮、円滑な受け入れの両立を目指します。
2024年6月成立の「育成就労制度」も、外国人材の人権保護とキャリア形成に配慮し、遅くとも2027年度中に導入される予定です。
新制度の運用は継続的に検証され、必要に応じた見直しが行われるでしょう。
外国人との共生社会実現に向けた展望
2023年の入管法改正は、出入国管理の厳格化に留まらず、外国人との共生社会実現に向けた重要な一歩と位置づけられています。
政府は「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」および「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を策定し、「安全・安心な社会」「多様性に富んだ活力ある社会」「個人の尊厳と人権を尊重した社会」という三つのビジョンを掲げています。
このビジョン実現に向けた重点事項の一つが、円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育推進です。
都道府県や市区町村は連携し、地域日本語教育の強化、ICT教材の開発・提供、生活オリエンテーション受講支援などを推進しています。
外国人が日本社会で自立し、円滑に生活できる基盤構築を目指しています。
就労支援では、2024年6月に成立した「育成就労制度」(2027年度までに施行予定)が技能実習制度に代わり、外国人材の人権保護とキャリア形成に配慮した転職機会を拡大する見込みです。
特定技能制度の対象分野や2号の拡充も進み、外国人材の長期活躍機会が増えます。
しかし、権利保護、賃金格差、言語・文化の壁といった課題は依然存在し、企業・行政による支援体制強化が求められています。
地域社会での受け入れ体制強化も重要課題です。
家族滞在や日本で出生する外国人の増加に伴い、就学、就職、出産、年金、福祉、介護等、ライフステージに応じたきめ細やかな支援が不可欠です。
多言語情報発信、相談体制強化、一元的相談窓口設置が進む一方、文化差異への偏見・差別、社会的不平等といった根深い問題への継続的取り組みも必要とされています。
政府はこれらの課題解決へ向け、施策の点検と見直しを毎年実施し、共生社会実現に向けた環境整備を一層推進する方針です。
よくある質問(FAQ)

本記事では、2023年の入管法改正の全体像から主な変更点、そして2025年に向けた動向までを詳細に解説してきました。
このセクションでは、読者の皆様が抱きがちな疑問を解消するためのQ&Aと、記事全体で解説した主要なポイントを簡潔にまとめます。
これにより、改正入管法への理解を一層深め、今後の制度運用や関連する社会動向を注視する一助となれば幸いです。
入管法改正に関するQ&A
2023年6月成立・公布の改正入管法は、長期収容解消、退去手続き促進、難民保護制度改善が目的です。
主な改正点は以下の通りです。
- 難民認定申請が3回目以降の場合、相当な理由がない限り本国への強制送還が可能に(2024年6月10日施行)。申請中は一律送還停止だった運用が見直され、保護に足る資料がない場合の強制送還リスクが懸念されます。
- 紛争避難者等を保護する「補完的保護対象者認定制度」を創設(2023年12月1日運用開始)。
- 入管施設収容に代わる「監理措置制度」(監理人のもとでの生活)を新設(2024年6月10日施行)。
- 刑事罰新設(退去命令拒否・送還妨害)、収容の要否3ヵ月ごと見直し、在留特別許可申請手続創設などが含まれます。
2025年に向け、2024年6月成立の「育成就労制度」(2027年度中導入予定)は外国人労働者の人権保護と転職機会拡大を目指すものとされています。
補完的保護対象者認定制度・監理措置制度の運用状況は、長期収容解消・人権保護の課題とされ、永住許可ガイドライン改訂や在留資格基準厳格化も2025年に予定されています。
本記事のまとめ

2023年に入管法が改正されました。その背景には、長期収容問題の解消、退去強制手続きの適正化・迅速化、そして国際的な保護を必要とする外国人への対応強化という目的があります。
この改正は、日本の出入国管理政策における新たな転換点をもたらすものです。
主要な変更点として、以下の制度が導入されました。
- 送還停止効の見直し: 3回目以降の難民認定申請者に対する送還停止効の適用が限定化されます。
- 補完的保護対象者認定制度の新設: 難民条約上の難民に該当しないものの、本国で生命・身体に危険が及ぶ恐れのある外国人に対し、保護の機会を提供します。
- 監理措置制度の導入: 収容に代わる制度として、親族や支援者等の監理人の下で生活しながら出頭義務などを履行することが求められます。
2025年に向け、政府は厳格な管理と人権への配慮、外国人との共生社会の実現を両立させることを目指しています。
特に、「育成就労制度」導入による外国人材の人権保護とキャリア形成支援、そして補完的保護対象者認定制度や監理措置制度の運用状況が注目されます。
しかし、その実効性や国際社会からの評価、人権問題への継続的な取り組みは、依然として重要な課題となるでしょう。
本改正は、単なる法制度の変更に留まらず、日本の国際社会における立ち位置や、多様な人々との共生という根源的な問いを私たちに投げかけています。
読者の皆様には、今回の改正が外国人、難民申請者、そして日本社会全体に与える多岐にわたる影響を深くご理解し、今後の法制度の運用や関連する議論に引き続き関心を持っていただくことを期待します。