育成就労制度とは?施行時期や制度内容、目的を解説

外国人材の受け入れが企業の成長において重要な要素となっている中、

2024年6月14日に技能実習制度に代わる新たな制度「育成就労制度」の関連法が国会で可決・成立しました。

技能実習制度と育成就労制度は何が違うのか気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、育成就労制度について知りたい方に向けて、制度の概要から開始時期、メリット・デメリット、監理支援機関の役割まで、わかりやすく解説します。

育成就労制度とは?概要と目的をわかりやすく解説

育成就労制度とは、技能実習制度に代わる外国人雇用の制度です。

目的から対象者、在留期間まで多くの項目で違いがあります。

育成就労制度とは

育成就労制度とは、現在行われている技能実習制度に代わる新たな外国人雇用の制度です。

この制度は、2023年11月の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」による最終報告書で、「技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、人手不足分野における人材の確保と人材の育成を目的とする新たな制度を創設」することが提言された結果、創設されました。

育成就労制度の目的

法律の目的は、「開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』への協力」から、「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成」、「育成就労産業分野における人材の確保」に改められました。

育成就労制度の主要な目的は以下の2点です:

  1. 人材確保:日本の人手不足分野における即戦力となる外国人材の確保
  2. 人材育成:特定技能1号に移行可能な人材を育成すること

参考:出入国在留管理庁ホームページ 育成就労制度

【表で比較】特定技能との違い

項目育成就労制度特定技能制度
目的人材育成・人材確保即戦力としての人材確保
対象者原則未経験者一定の技能を有する者
在留期間原則3年1号:通算5年、2号:制限なし
家族帯同不可1号:原則不可、2号:可能
支援体制監理支援機関による監理登録支援機関による支援

育成就労制度の主な目的は、日本の産業分野における人材を育成し、確保することです。

このため、原則として未経験者を対象としています。

一方、特定技能制度は、日本の人手不足を補うために、即戦力となる人材の確保を目的としており、特定の技能水準を満たす外国人材が対象となっています。

また、育成就労制度の在留期間は原則3年で、家族の帯同は認められていません。

一方、特定技能制度は、特定技能1号が通算5年、熟練した技能を持つ特定技能2号は在留期間に制限がありません。

家族帯同については、1号は原則不可ですが、2号では可能です。

支援体制にも違いがあり、育成就労制度では、監理支援機関が外国人労働者の監理と支援を行います。

一方、特定技能制度では、登録支援機関が生活や業務上のサポートを提供します。

育成就労制度の開始時期と対象となる職種・分野

育成就労制度は、現時点で明確には施行日が発表されていません。

育成就労制度はいつから始まる?

引用:出入国在留管理庁 育成就労制度の概要

育成就労制度の施行に向けたスケジュール(予定)によると、2024年(令和6年)には、基本方針や主務省令などが作成されることがわかります。

翌年の2025年(令和7年)には、分野別の運用方針が作成され、育成就労産業分野の認定が行われる予定です。

そして2026年(令和8年)には、監理支援機関の許可などの事前申請が行われます。

これらの準備と並行して、送出国との間でMOC(協力覚書)の交渉、作成、署名が進められます。

これらの準備を経て、2027年(令和9年)に育成就労制度が施行される予定です。

参考:JITCO公式ホームページ 育成就労制度とは

【表で解説】対象となる職種や分野

育成就労制度の対象分野は、特定技能制度の16分野と原則一致します。

以下が対象分野の一覧です。

分野主な業務内容
介護身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)
ビルクリーニング建築物内部の清掃
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、電子機器組立て等
建設型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工等
造船・舶用工業溶接、塗装、鉄工、仕上げ等
自動車整備自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備
航空空港グランドハンドリング、航空機整備
宿泊フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等
農業耕種農業全般、畜産農業全般
漁業漁業(船舶漁業、養殖業)
飲食料品製造業飲食料品製造業全般
外食業外食業全般
鉄道鉄道運転業務、鉄道車両整備業務等
林業植付け、下刈り、間伐等の育林業務、伐木等の素材生産業務等
木材産業製材業務、木製品製造業務等
自動車運送業貨物自動車運送業務、自動車運送附帯業務

育成就労制度のメリット・デメリットとは

企業にとってはメリットでも、外国人にとってはデメリットになることもあります。

企業側のメリット

企業側のメリットは主に2つです。

長期的な雇用が可能になる

育成就労制度は、特定技能1号への移行をスムーズにするための制度であり、育成就労制度で3年、特定技能1号で5年就労すると仮定すると、通算8年の雇用が可能になります。

さらに、特定技能2号に移行することができれば、在留期間に制限はなく、家族の帯同も認められます。

これにより、企業は優秀な外国人材を長期間雇用し続けることができ、人材育成への投資が無駄になることなく、安定した労働力を確保できます。

意思疎通を図りやすくなる

技能実習制度と異なり、外国人が就労を始める前までに日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること、またはそれに相当する日本語講習を認定日本語教育機関などで受講することが要件とされています。

就労開始時点でN5レベル以上が必須になるため、最初からコミュニケーションを円滑に進めることが可能です。

これにより、現場での意思疎通がスムーズになり、業務効率の向上が期待できます。

企業側のデメリット

企業側の主なデメリットは以下の2つです。

優秀な人材が流出する恐れがある

育成就労制度では、転籍が認められています。

さらに、一定の条件を満たした上で本人の意思で他社への転職を希望する場合の転籍も認められるため、転籍条件の緩和で人材流出リスクが増大します。

負担する費用が増える

これまで外国人が負担していた費用の多くが企業負担となる予定です。

このため、1人あたりの採用コストが大幅に増加することも育成就労制度の問題となるでしょう。

具体的には、1人あたり年間50〜100万円の費用が増加する可能性があります。

また、外国人の日本語教育の支援が企業の新たな負担になります。

育成就労制度における監理支援機関の役割とは

育成就労制度において、監理支援機関はどのような役割を担うのでしょうか。

監理支援機関とは

監理支援機関は監理団体とおなじように、主務大臣の許可を受けた上で、外国人材と企業のマッチングや受入れ機関に対する監理・指導、育成就労外国人の支援や保護などを行うことを目的としています。

育成就労制度では監理団体は「監理支援機関」と名称が変更され、その許可の要件も厳格化されています。

監理支援機関の役割

監理支援機関は、受入れ機関だけでなく外国人材に対しても大きな役割を担っています。

外国人材が適切に整備された環境で働けるよう、受入れ機関への指導や外国人材の保護をすることが求められています。

受入れ機関への監理・指導

監理支援機関は、受入れ機関が、育成就労計画に基づき適正な実施をしているかの監理や受入れ機関への定期的な訪問指導、法令を遵守しているかの確認を行う必要があります。

外国人材の支援・保護

監理支援機関は外国人材の支援や保護も役割の一つです。

例えば、入国前に事前ガイダンスを行ったり、外国人の住居の確保をしたりすることが必要です。

転籍支援 

育成就労制度では、新たに外国人本人の意向による転籍が可能となりますが、転籍を希望する申出があった際、監理支援機関は、関係機関との連絡調整などの役割を担うことになります。

参考:出入国在留管理庁ホームページ 育成就労制度・特定技能制度Q&A 制度目的と施行時期

育成就労制度の課題と問題点

育成就労制度には対象職種の減少や企業の費用負担の増加など、課題や問題点もあります。

現状を理解し、今から対策をすることが必要です。

育成就労制度の課題

育成就労制度には、以下のような課題が指摘されています。

職業選択の自由の制限

育成就労制度では転籍しやすくはなりましたが、あくまでも同一業務区分での転籍のみが可能です。

このため、労働者の権利である職業選択の自由は技能実習制度と同様に制限されたままとなっています。

受入れ可能職種の減少 

技能実習制度では、受入れ可能職種が90職種でした。

しかし16分野に減少するため、これまで技能実習生を受け入れていた一部の企業では、新制度での受け入れが困難になる可能性があります。

他の在留資格への移行など、対応が必要です。

費用負担の増加 

企業側の費用負担が大幅に増加することで、特に中小企業にとっては外国人材の受入れが困難になる可能性があります。

費用の見直しと削減、業務の効率化などが必要です。

育成就労制度の問題点

育成就労制度の主な問題点は以下の3点です。

転籍のハードルの高さ

転籍の要件が緩和されたものの、やむを得ない事情の立証などについては、外国人にとってかなり難しいです。

これは、日本語能力や法的知識が限られている外国人材にとって大きな負担となります。

制度の複雑性 

育成就労制度と特定技能制度の関係性は複雑で、企業側が制度を理解し適切に運用するためには専門的な知識が必要となります。

公的機関の情報やセミナーを通して、知識を身につけましょう。

人材流出リスク

転籍が容易になることで、企業が時間とコストをかけて育成した人材が他社に流出するリスクが高まります。

職場環境の見直しや相談窓口の設定など、外国人労働者が働きやすい環境づくりが必要です。

まとめ

育成就労制度は、技能実習制度の課題を解消し、日本の人手不足解消と外国人材の適切な育成を両立させる重要な制度です。

2027年6月までには確実に施行される見込みであり、企業は今から準備を進める必要があります。

しかし、制度の理解と適切な運用は非常に複雑であり、転籍の自由化による人材流出のリスクや費用負担の増加など、企業にとって新たな課題も生まれています。

特に、監理支援機関の選定、外国人材の日本語教育の支援、適切な労働環境の整備など、多岐にわたる対応が求められます。

これらの課題を考慮すると、育成就労制度を理解しながらの外国人雇用は簡単ではありません。

制度の複雑さや法的要件の多さ、さらには外国人材とのコミュニケーションや文化的な違いへの対応など、専門的な知識と経験が必要です。

外国人材のエージェントに相談しながら、適切に外国人材を雇用することをおすすめします。

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