外国人留学生を特定活動ビザで採用するには?就労条件・手続き・注意点を詳しく解説
留学生を採用する企業にとって、「特定活動ビザ」は理解しておきたい重要な制度です。
同じ「特定活動」でも種類によって就労できる範囲が大きく異なるため、誤って受け入れてしまうと、違法就労につながるリスクもあります。
この記事では、留学生が卒業後に利用する特定活動ビザの仕組みから、就労ルール、申請条件、企業が確認すべきポイント、就労ビザへの切り替えプロセスまで、採用現場で必要となる情報を紹介。留学生採用を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。
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Contents
留学生が学校卒業後に必要な「特定活動ビザ」とは?

まずは、特定活動ビザの基本的な仕組みと、就労ビザとの違いを押さえておきましょう。誤解が生じやすい部分でもあるため、採用を検討する企業にとって重要なポイントです。
在留資格「特定活動ビザ」の仕組み
特定活動ビザは法務大臣が個別に活動内容を指定する在留資格です。
活動内容は広範囲にわたり、ワーキングホリデー、インターンシップ、研究者などさまざま。留学生の「卒業後の継続就職活動」もこの枠組みに含まれており、企業が採用場面で最も関わる特定活動の一つです。
ただし「特定活動」という名称だけでは就労可否は判断できません。
在留カード裏面の記載内容と、指定書に記載された活動内容がすべての判断基準となります。
就労ビザとの違いは?
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等)は職務内容・学歴や実務経験との関連性が厳格に求められます。
一方、特定活動ビザは“活動そのもの”が基準であり、留学生向けの特定活動ビザは「就職活動継続」が目的のためフルタイム就労は不可となります。
正社員として採用する場合は、特定活動 → 就労ビザへの変更が前提です。
特定活動ビザの種類をチェック!

特定活動ビザは非常に幅広い制度のため、種類の分類を理解しておくことが大切です。特に企業が関わる場面では、「どの種類なら就労できるか」を知ることが採用判断の基礎になります。
定活動ビザは大きく3つに分類される
特定活動ビザは以下の3つに分類されます。
① 法定特定活動
法律に直接規定されている活動。
外交官の家事使用人など、一般企業の採用とは関わりの薄いケースが中心です。
② 告示特定活動
法務省告示で定められた活動。
ワーキングホリデー、インターンシップ、特定活動46号など、企業が採用で関わる可能性があるケースが多い分類です。
③ 告示外特定活動
個別事情に応じて特例として許可される活動。
留学生の「卒業後の継続就職活動」がこれに該当し、企業が最も接する機会が多い特定活動です。
就労できる特定活動と、就労できない特定活動
特定活動は種類によって就労範囲が大きく異なるため、採用判断で重要なポイントです。
● 就労可能なケース(例)
- 特定活動46号(高度専門性のある人材)
- ワーキングホリデー
- 報酬を伴うインターンシップ(条件付き)
● 就労不可のケース(例)
- 留学生の就職活動継続(フルタイム不可・アルバイトは資格外活動許可があれば週28hまで)
- 治療滞在など就労を目的としない活動
重要なのは、「特定活動」という名称だけでは就労可否はわからないという点です。
必ず在留カードの裏面と指定書を確認する必要があります。
採用で特に関係が深い3つの特定活動
特定活動といっても種類は多岐にわたりますが、企業が採用場面で実際に関わることが多いのは次の3種類です。就労範囲や在留要件が異なるため、違いを理解しておくと採用判断がしやすくなります。
★ 1|留学生の特定活動(就職活動継続:告示外特定活動)
- 卒業後も日本で就職活動を継続するための在留資格
- フルタイム就労不可
- アルバイトは資格外活動許可で週28時間以内
- 正社員採用する場合は就労ビザへの切り替えが必要
★ 2|特定活動46号(就労型特定活動)
- 高度人材に準じて認められる就労可能な特定活動
- 幅広い職種でフルタイム就労が可能
- 企業の安定性・受入体制が審査対象
★ 3|ワーキングホリデー(告示特定活動)
- 一定期間の就労が可能
- アルバイト・フルタイムどちらも可(ただし長期雇用には非現実的)
- 短期採用や繁忙期の補助として活用されるケースが多い
それぞれの特徴を理解しておくことで、採用可否の判断や在留資格切り替えの計画が立てやすくなります。
【一覧】告示特定活動の44種類を紹介
告示特定活動は、活動内容に応じて番号で分類されており、現在は44種類が告示されています。内容は多岐にわたり、採用に直結するものから特定の目的に限られるものまでさまざまです。
(変更が行われることも多いため、以下はあくまで参考としてご覧ください。)
| 分類 | 番号 | 活動内容 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 外交関連 | 1号 | 外交官・領事官の家事使用人 | — |
| 2号 | ●2号の1:高度専門職・経営者等の家事使用人 ●2号の2:高度専門職が雇用する家事使用人 | 報酬20万円以上 | |
| 外国との協定関連 | 3号 | 台湾日本関係協会の在日事務所職員とその家族 | — |
| 4号 | 駐日パレスチナ総代表部の職員とその家族 | — | |
| 5号 | ●5号の1:ワーキングホリデー ●5号の2:台湾人のワーキングホリデー | 資金補填目的の就労可 | |
| スポーツ関連 | 6号 | 国際競技会出場のアマチュアスポーツ選手 | 月報酬25万以上 |
| 7号 | 6号アスリートの扶養家族 | — | |
| 弁護士 | 8号 | 国際仲裁事件の代理を行う外国人弁護士 | — |
| 国際交流関連 | 9号 | インターンシップ(報酬あり) | 就労扱い |
| 10号 | イギリス人ボランティア | 福祉関連 | |
| 12号 | 短期インターンシップ(外国大学生) | — | |
| 15号 | 国際文化交流を行う外国人大学生 | 地方公共団体の事業 | |
| インドネシア関連(EPA) | 16号 | 看護研修生 | — |
| 17号 | 介護研修生 | — | |
| 18号 | 16号の家族 | — | |
| 19号 | 17号の家族 | — | |
| フィリピン関連(EPA) | 20号 | 看護研修生 | — |
| 21号 | 介護研修生(就労あり) | — | |
| 22号 | 介護研修生(就労なし) | — | |
| 23号 | 20号の家族 | — | |
| 24号 | 21号の家族 | — | |
| 医療関連 | 25号 | 入院・治療を受ける活動 | — |
| 26号 | 25号対象者の日常生活の世話 | — | |
| ベトナム関連(EPA) | 27号 | 看護研修生 | — |
| 28号 | 介護研修生(就労あり) | — | |
| 29号 | 介護研修生(就労なし) | — | |
| 30号 | 27号の家族 | — | |
| 31号 | 28号の家族 | — | |
| 高度専門職関連 | 33号 | 高度専門職の配偶者の就労 | 就労可 |
| 34号 | 高度専門職本人または配偶者の親 | — | |
| 造船関連 | 35号 | 技能実習修了者の造船業務 | 帰国困難者措置あり |
| 研究・情報処理関連 | 36号 | 研究者・教育者(および関連経営者) | — |
| 37号 | 情報処理技術者 | IT人材 | |
| 38号 | 36・37号の扶養家族 | — | |
| 39号 | 36・37号本人および配偶者の親 | — | |
| 観光・富裕層滞在 | 40号 | 観光・保養のための長期滞在者 | 資産3000万円以上 |
| 41号 | 40号の家族 | — | |
| 経産省関連(産業政策) | 42号 | 製造業受入事業の特定外国従業員 | 経産省認定 |
| 日系人関連 | 43号 | 他の資格に当てはまらない日系4世 | — |
| 起業支援 | 44号 | 外国人起業家(起業活動計画の認定) | 起業支援 |
| 45号 | 44号の扶養家族 | — | |
| 留学生の就職支援 | 46号 | 大学/大学院卒+N1。幅広い業務が就労対象 | 企業採用に極めて重要 |
| 47号 | 46号の扶養家族 | — | |
| スポーツ職種 | 50号 | スキーインストラクター | 季節雇用 |
留学生が利用する「就職活動用の特定活動ビザ」の対象者は?

ここからは、留学生が就職活動を継続するために利用する特定活動ビザの対象範囲と申請条件を見ていきましょう。
大学・専門学校・日本語学校別:対象となる留学生の違い
留学生であれば誰でも特定活動ビザを取得できるわけではありません。どの学校区分に属するかによって、申請のハードルや条件が大きく変わります。
大学卒業生:
・比較的申請しやすい
・卒業前から就職活動を続けていることが前提
専門学校卒業生:
・専攻内容と応募職種の関連性が厳しく見られる
・専門士の取得が条件
・推薦状が必須
日本語学校卒業生:
・日本語学校単体の卒業では申請不可
・海外の大学/大学院卒が前提
・学校の適正校要件の確認が必要
企業としては、応募者がどの区分に該当するかで申請条件が変わるため、面談の段階で卒業区分を必ず確認しておくことが大切です。
特定活動ビザ申請に必要な条件
申請の対象者に該当しても、さらに満たすべき条件があります。
就職活動用の特定活動ビザでは、
- 卒業前から就職活動を継続していること
- 専攻分野と希望職種の関連性
- 出席率・成績が一定基準を満たしていること
- 推薦状の取得
- 生活費の確保(残高証明や送金証明など)
といった条件が求められます。
企業は採用面談時に、これらを本人が満たしているか確認しておくと、後のビザ切り替えがスムーズです。
企業が把握しておきたいポイント
企業側が申請書類を直接準備する必要はありませんが、採用可否に影響する重要な要素があります。
推薦状は学校が成績や出席率を基準に発行します。発行までに時間がかかることもあるため、企業が内定を出すタイミングに影響する場合も。
また、生活費の証明は「継続して日本で生活できるか」を示す重要資料であり、審査のポイントにもなるため、企業としても把握しておくと安心です。
特定活動ビザでの就労ルール

留学生向けの特定活動ビザは、フルタイム就労ができない点に注意が必要です。ここでは働ける範囲を詳しく紹介します。
資格外活動許可がある場合の就労と週28時間の上限
特定活動ビザで働ける範囲は、資格外活動許可の有無によって大きく異なります。
資格外活動許可があれば、アルバイトとして週28時間以内の就労が可能です。ただし、あくまで主目的は就職活動の継続であり、アルバイトが中心になってしまうと更新審査で不利になる場合があります。
正社員としてフルタイムで働かせたい場合のポイント
特定活動ビザでフルタイム就労させることはできません。企業が留学生に内定を出した場合、次のステップを見据える必要があります。
正社員として勤務させたい場合は、
特定活動 → 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等)への切り替え
が必須です。
在留資格変更には、企業側が用意する書類(雇用契約書・会社概要資料など)も必要になるため、内定後は早めに準備しておくと安心です。
特定活動ビザから就労ビザへ。在留資格変更の流れは?

ここでは、特定活動ビザの留学生を採用し、就労ビザへ切り替えるまでの流れをチェックしましょう。
留学生が特定活動ビザで活動する期間のタイムライン
企業は在留期限を考慮して採用スケジュールを組む必要があります。
就職活動用の特定活動ビザは6か月+更新6か月(最大1年間)まで。
更新時には活動実績を示す資料が必要になるため、採用企業としても進捗を確認しながらサポートすると安心でしょう。
特定活動ビザから就労ビザへの変更ステップ
内定後〜入社までの流れを理解しておくと、在留資格の手続きが滞らず進められます
就労ビザへの変更には、
- 企業との雇用契約
- 勤務内容が専攻分野と関連していること
- 企業の安定性を示す資料
が求められます。
審査には1〜2か月かかる場合もあるため、内定後すぐに準備を開始する企業が多いです。
特定活動ビザの申請・変更に必要な書類と、企業がサポートできること
基本的に特定活動ビザの申請や変更は外国人本人が行いますが、企業の方でも準備が必要な書類があります。
【本人が準備する書類】
申請書類は卒業区分によって異なります。
大学・専門学校・日本語学校別に、卒業証明書や成績証明書、推薦状などが必要になります。これは現行記事の内容をベースに、企業向けにわかりやすく再構成した形です。
【就労ビザ変更時に企業が準備する書類】
主に必要となるのは、
- 雇用契約書
- 会社概要の資料
- 決算書の写し(必要な場合)
- 採用理由書
などです。
企業が早めに準備しておくことで、入社までの流れがスムーズになります。
特定活動ビザの外国人を採用する企業側のメリット・リスクは?

留学生採用の魅力と、企業が理解しておきたい注意点を紹介します。
留学生採用のメリット
特定活動ビザを活用して採用することで、多様な人材を確保しやすくなります。
留学生は日本での生活経験や語学力、日本文化への理解を持っているため、即戦力として活躍しやすい傾向があります。特定活動ビザを使うことで、卒業直後の優秀な学生を採用するチャンスが広がります。
違法就労リスクと企業が注意すべきポイント
特定活動ビザは種類によって就労内容が大きく異なるため、企業側の確認不足がリスクにつながります。
特に注意すべきは、
- 指定書で認められていない業務をさせてしまう
- 週28時間の制限を超える勤務
- 無許可の副業
などです。
違反すると企業側も処罰対象になるため、受け入れ体制の整備が重要です。
特定活動ビザ申請における注意点
大学卒業生と比べ、専門学校や日本語学校卒業生は申請の条件が厳しくなることがあります。
ここではそれぞれのケースについて解説します。
専門学校卒業生の場合
専門士の称号を持っていても、就職活動は「専攻分野と関連する職種」に限られます。
学んだ分野とかけ離れた業種ばかりを希望すると、審査で不利になる可能性があります。
日本語学校卒業生の場合
日本語学校を卒業しただけでは対象にならず、「海外の大学や大学院を卒業していること」が前提条件です。
さらに、学校が適正校に認定されているか、推薦状を発行してもらえるかが重要になります。
【Q&A】特定活動ビザを申請する際のよくある質問

特定活動ビザでの採用を検討する際、企業からよく寄せられる質問をまとめました。実務で迷いやすいポイントを中心に解説します。
Q. 推薦状がない留学生は採用できる?
A. 推薦状がなければ採用できません。
留学生の特定活動ビザ(就職活動継続)の申請には、学校が発行する推薦状が必須です。
推薦状がない場合は原則として申請できないため、学校側に発行の可否を確認する必要があります。もし発行が難しい場合は、他の在留資格の可能性を検討することになります。
Q. 特定活動ビザは何回まで更新できる?
A. 更新できる回数には明確な上限が定められています。
就職活動を目的とした特定活動ビザは、初回6か月に加えて1回のみ更新が可能です。つまり最長で1年間の在留が上限となり、それ以上の延長はできません。
採用時期やビザ切り替えのタイミングを考える際には、この在留期間を前提にスケジュールを組む必要があります。
Q. 内定者インターンは可能?
A. 条件を満たせば、インターン活動は認められる場合があります。
特定活動ビザの留学生がインターンに参加する場合、資格外活動許可の取得が必須。
許可があれば週28時間以内でのインターンは可能ですが、正社員採用へ切り替える時期や業務内容によっては調整する必要があります。
企業側でも、活動目的・時間管理・役割の設定を明確にしておくと安心です。
まとめ
特定活動ビザは、留学生が日本で就職活動を継続するための大切な制度です。企業としても、在留資格の仕組みや就労制限、申請条件を理解することで、より適切な採用判断ができるようになります。
特に、採用後は就労ビザへの切り替えが必要となるため、在留期限の確認や必要書類の準備を早めに進めることが重要です。適切な知識を持つことで、優秀な留学生をスムーズに受け入れ、長期的な活躍につなげることができます。