外国人に必要な健康保険の種類とは?企業が知っておきたい加入条件や手続きまで解説!

外国人を雇用する企業にとって、社会保険の対応は避けて通れない重要な業務のひとつです。
特に健康保険については、在留カードの確認や労働条件に応じた加入判断、保険料の計算・手続きなど、外国人特有の対応が求められる場面も少なくありません。
この記事では、企業の人事・総務担当者向けに、日本の健康保険制度の種類や、外国人社員への対応方法をわかりやすく解説します。
社会保障協定や短期滞在者への特例、よくあるトラブルの防止策まで幅広く取り上げていますので、ぜひ実務に役立ててください!
Contents
外国人と健康保険制度の基本を押さえよう

外国人を雇用する際、日本の健康保険制度を正しく理解しておくことは非常に重要です。
基本的な制度の枠組みや、外国人労働者にも適用される義務について、まずは押さえておきましょう。
健康保険は社会保険の一部
健康保険とは、日本の社会保険制度の中で、病気やケガなどの医療費を補助するための制度です。
大きく分けて、会社員などが加入する「被用者保険(健康保険)」と、自営業者や無職の方が加入する「国民健康保険」の2種類があります。
いずれも公的医療保険として制度上は同じ枠組みにありますが、加入者の属性や手続き方法、保険料の負担割合などに大きな違いがあるため、企業としての対応方針も分かれます。
外国人にも健康保険加入の義務がある?
日本に住む外国人は、原則として日本人と同様に健康保険への加入が義務付けられています。
在留カードを持ち、滞在期間が3か月を超える場合は、就労の有無にかかわらずいずれかの保険制度に加入する必要があります。
企業が外国人を雇用する場合は、在留資格や労働条件に応じた適切な判断が求められます。
また、健康保険だけでなく、年金や雇用保険など社会保険全体の制度を理解しておくことも大切です。
▶︎外国人の社会保険はどうする?雇用時に必要な手続き・制度をわかりやすく解説
健康保険の種類と外国人従業員の加入判断ポイント

外国人従業員にどの健康保険を適用すべきかは、職種や雇用形態によって異なります。
ここでは、基本的な違いと判断基準を見ていきましょう。
国民健康保険と被用者保険(健康保険)の違い
国民健康保険は、自営業者やアルバイトなど、会社を通じた保険制度に加入できない方を対象とした制度です。
一方、健康保険(被用者保険)は、一定の労働条件を満たす会社員やパート・アルバイトの方が対象です。
健康保険では、保険料が会社と従業員で折半され、さらに傷病手当金や出産手当金などの給付制度も充実しています。
どちらに加入させるべき?職種・労働時間・雇用条件から判断
週の所定労働時間が20時間以上かつ、雇用期間が2か月以上見込まれる場合は、健康保険の適用対象になるケースが多くあります。
逆に、これらの基準を満たさない短期雇用やアルバイトの場合は、国民健康保険への加入が一般的です。
扶養家族がいる場合の取り扱いと健康保険組合の確認事項
外国人従業員に扶養家族がいる場合、配偶者や子どもも健康保険の被扶養者として登録できる可能性があります。
ただし、扶養の要件や必要書類は保険組合ごとに異なるため、事前の確認が必要です。
健康保険の手続きと必要書類は?企業と自治体の役割の違い

外国人の健康保険加入にあたっては、「企業が行う手続き」と「本人が市区町村で行う手続き」に分かれます。
加入する保険の種類によって対応先や必要書類も異なるため、担当者として基本的な流れをしっかり把握しておきましょう。
【企業】健康保険(被用者)の加入手続き
企業が外国人従業員を雇用し、所定の条件を満たす場合は、健康保険(被用者保険)への加入手続きを行う必要があります。
具体的には、入社後5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を年金事務所へ提出します。
その際には、在留カードや雇用契約書などの確認書類を社内で準備し、必要事項を漏れなく記載することが重要です。
社内の担当者が正しく手続きを行うことで、従業員が円滑に保険証を受け取り、医療を受けられる環境が整います。
【自治体】国民健康保険に加入する場合の流れ
外国人従業員が被用者保険の対象外となる場合(例:労働時間が週20時間未満、短期雇用など)は、国民健康保険への加入が必要です。
この場合は、本人が居住地の市区町村役所で手続きを行います。
手続きには、在留カード・パスポート・住民票などの提出が求められます。
原則として、入国日または退職日から14日以内に申請しなければならないため、企業としても案内やフォローが欠かせません。
提出書類で注意すべきポイント
外国人の場合、氏名の表記に注意が必要です。
アルファベットで長くなる名前や、書類ごとに微妙な表記揺れがあると、申請が受理されない・手続きに時間がかかるといったトラブルにつながります。
在留カード・パスポート・雇用契約書などを照合し、統一した表記で提出することが大切です。
社内での書類チェック体制を整えておくと、申請ミスを未然に防ぐことができます。
健康保険証の交付とよくある手続きミス
健康保険証は、加入手続きが完了してからおおよそ1〜2週間で交付されます。
企業を通じて交付される場合は、社内の連絡体制を整えておくことで、従業員への迅速な受け渡しが可能です。
申請内容に不備があると、交付が遅れたり、再申請が必要になったりすることもあるため、あらかじめ提出書類の確認や記入ミスの防止に努めましょう。
企業が知っておきたい、外国人の健康保険料と医療費の対応とは?

健康保険にかかる費用は、会社と従業員の双方に関わる重要な項目です。
保険料の仕組みや自己負担の割合、支援制度の基本を押さえておくことで、社内対応や従業員への案内もスムーズに進められます。
健康保険:報酬月額をもとに会社と従業員が負担
健康保険の保険料は、従業員の給与(標準報酬月額)をもとに決まります。
保険料は会社と従業員で半分ずつ負担し、毎月の給与から天引きされる形です。
企業としては、正しい報酬情報を把握し、手続きに反映させることが大切です。
国民健康保険:保険料は自治体が決定、支払いは個人対応が基本
国民健康保険の保険料は、前年度の所得や世帯構成に応じて市区町村が決定します。
この場合、従業員本人が直接納める必要があり、支払い方法も口座振替や納付書など自治体によって異なります。
企業側で案内しておくと、初めての方でも安心です。
減額・免除制度が使えるケースもある
収入が少ない、失業中といった事情がある場合、保険料の減額や免除を受けられることがあります。
とくに、国保に切り替わるタイミングや生活が一時的に不安定なときに申請できることが多いため、困ったときは自治体に相談するよう声かけするのも企業のサポートとして有効です。
医療費は原則3割負担、高額になったときは補助制度も
健康保険に加入していれば、医療費の自己負担は原則3割です。
ただし、治療費が高額になった場合には「高額療養費制度」を利用すれば、一定額を超えた分があとから戻ってくる仕組みもあります。
こうした制度についても、外国人従業員にわかりやすく伝えられるようにしておくと安心です。
協定国・短期滞在者・学生などの特例対応も確認しよう
外国人すべてが一律に健康保険へ加入するわけではなく、在留資格や国籍、滞在期間によって特例が適用されるケースもあります。
見落としやすい部分でもあるので、事前に確認しておくと安心です。
社会保障協定がある国の外国人には免除の可能性も
日本と社会保障協定を結んでいる国の出身者については、一定の条件を満たせば健康保険や年金の加入が免除されることがあります。
対象国かどうか、どのような条件で適用されるのかは、在留資格や雇用期間などによって異なるため、採用時に確認しておくと安心です。
短期滞在・留学生・パートタイマーなどの対応
滞在期間が短い方や、労働時間が少ないパートタイマー・アルバイト、留学生などの場合、健康保険の加入義務が発生しないケースもあります。
こうした場合には、必要に応じて民間医療保険の利用を案内することも検討しましょう。
民間保険や学研災など、状況に応じた代替手段も
大学や教育機関と連携している場合は、学研災(学生教育研究災害傷害保険)や大学生協の共済制度を利用できるケースもあります。
制度の対象や範囲はそれぞれ異なるため、従業員や学生の状況に合わせて柔軟に対応できる体制を整えておきましょう。
健康保険に関するトラブルを防ぐために企業ができること

健康保険に関する手続きミスや確認漏れは、企業側にもリスクが生じる可能性があります。
よくあるトラブルと、その防止に向けて企業ができる対策を押さえておきましょう。
加入漏れ・届け出遅れによるトラブルと注意点
資格取得届の提出が遅れると、従業員が医療費を全額自己負担しなければならないケースが出てくるほか、企業側にペナルティが課される可能性もあります。
採用時には、必要な書類や提出期限を社内でしっかり管理できる体制が大切です。
保険料の未納や住所変更忘れへのフォローも重要
住所変更や扶養の追加など、従業員の生活環境の変化によっても保険手続きが必要になることがあります。
手続きが遅れると保険証が失効したり、必要な給付が受けられなくなるケースもあるため、定期的な声かけや確認を行うことが予防につながります。
入退社時の手続きを見落とさないために
入社時や退職時は、保険関連の手続きが集中するタイミングです。
確認漏れを防ぐために、社内用のチェックリストを作成し、関係者で共有しておくと安心です。
定期的に見直して運用することで、トラブルの未然防止につながります。
まとめ
外国人従業員の健康保険対応は、単なる事務手続きではなく、安心して働ける職場づくりに直結します。
適切な保険制度への加入判断、スムーズな手続き、制度の説明や支援体制まで、一貫した対応が求められます。
対応に不安がある場合は、社会保険労務士や各種行政窓口への相談も視野に入れながら、万全の体制を整えていきましょう。