外国人看護師を日本で採用するには?制度・資格・受け入れの流れをわかりやすく解説!

日本の医療現場では、看護師の人材不足が続いており、その対応策として、外国人看護師の受け入れを検討する医療機関も増えてきました。
とはいえ、実際に採用を進めるには、「どんな制度があるのか」「受け入れの手続きはどうするのか」など、押さえておきたいポイントがいくつもあります。
この記事では、外国人看護師の採用を検討している医療機関・人事担当者の方に向けて、受け入れの流れや必要な制度、準備すべき体制をわかりやすく解説します。
採用から定着までの流れを把握し、ぜひ採用実務に役立ててください!
Contents
外国人看護師の受け入れが注目される背景と現状

日本では看護師の人材不足が深刻化しており、厚生労働省の2019年の発表(第11回看護職員需給分科会)によると、2025年には最大で約27万人の看護職員が不足すると見込まれています。
こうした背景から、外国人看護師の受け入れにも関心が高まっています。
実際、アジアを中心に「日本で看護技術を学びたい」と考える人材が増えてきました。
ただ、日本語能力試験(N1)と看護師国家試験の両方に合格する必要があり、合格率は10〜20%台にとどまっています。
一方で、日本と文化や文字体系の近い中国人看護師は比較的高い合格率を示しており(ある企業実績では80%)、すでに多くの医療現場で活躍中です。
看護師不足が続く中、外国人材の多様な背景や意欲をどう活かすか。
今後の採用戦略を考えるうえで、大きなポイントになるでしょう。
外国人看護師を採用するメリットと注意点

外国人看護師の採用は、人材確保の面だけでなく、医療現場に多様な視点をもたらす機会にもなります。
ただし、受け入れにあたっては準備すべきことや課題もあるため、メリット・デメリットも把握しておきましょう。
採用によって期待できるメリット
外国人看護師を採用することで、医療機関側にもさまざまなメリットが!
人材不足の緩和だけでなく、現場の柔軟性や多様性の向上にもつながります。
① 人材不足の解消につながる
→ 慢性的に人手が足りない現場にとって、外国人材は貴重な労働力の選択肢となります。
② 外国人患者への対応力が高まる
→ 多言語・多文化に対応できる看護師が増えることで、外国人患者の受け入れ体制が強化されます。
③ 組織内に多様な視点が生まれる
→ 異なる文化や価値観を持つスタッフが加わることで、チーム全体のコミュニケーションや働き方に新しい視点がもたらされます。
④ 国際的な連携やブランド力の向上にもつながる
→ 外国人を積極的に受け入れている姿勢は、病院全体の多様性・受容性を示すものとして評価されることもあります。
受け入れ時に考慮したいデメリット
一方で、外国人看護師を採用する際には、いくつかの課題や留意点も。
受け入れ体制を整えておかないと、現場に一定の負担がかかる可能性も考えられます。
① 日本語や専門用語の習得に時間がかかる
→ 実務に必要な日本語表現や医療用語を使いこなせるようになるまでには、一定の研修期間とサポートが必要です。
② 試験制度・法的手続きへの理解が必要
→ 国家試験の合格、在留資格の確認、労働条件の整備など、制度面での対応が求められます。
③ 現場との文化的ギャップやコミュニケーション課題
→ 働き方や報連相のスタイルなどで誤解が生じることもあり、職場内での理解・支援が重要です。
④ 定着支援にコストや手間がかかる場合も
→ 採用後すぐに戦力化するには時間がかかることもあり、長期的な視点で育成・支援していく姿勢が求められます。
外国人が日本で看護師になる3つの方法
外国人が日本で看護師として働くには、複数の方法があります。
それぞれに必要な準備や制度が異なるため、採用側として理解を深めておきましょう。
1. 日本の看護学校で学び、国家資格を取得する
もっとも基本的な方法は、日本国内の看護師養成校に入学し、卒業後に看護師国家試験を受けて資格を取得するルートです。
日本人と同じ条件で学ぶことになるため、日本語能力はもちろん、学歴や受験資格などの要件も確認が必要です。
2. 母国の資格を活かして看護師国家試験を受ける
すでに母国で看護師資格を取得している場合は、「看護師等国家試験受験資格認定制度」によって、日本の国家試験の受験資格を得ることができます。
学歴や実務経験を証明する書類提出や日本語対応力が求められますが、比較的柔軟な受け入れ制度といえます。
3. EPA制度を活用して病院で受け入れる
EPA制度は、インドネシア・フィリピン・ベトナムから看護師候補者を受け入れる仕組みで、訪日前に日本語研修を行い、その後病院で実務をしながら国家資格取得を目指します。
受け入れフローが整っており、支援体制も確立されているため、導入しやすい制度のひとつです。
参考:外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて|厚生労働省
外国人看護師を採用する際に知っておきたい制度のしくみと特徴

先述した通り、外国人が日本で看護師として働くには主に3つの方法があり、中でも「看護師等国家試験受験資格認定制度」や「EPA制度」は、採用側が理解しておきたい重要な仕組みです。
看護師等国家試験受験資格認定制度のポイント
海外で看護師資格を取得した人が、日本の看護師国家試験を受験するには、厚生労働省が実施する受験資格認定制度の審査が必要です。
この制度は、外国での看護教育が日本の基準と同等かどうかを確認するもので、以下のような項目が審査対象です:
- 教育年数が日本と同程度であるか
- 自国の看護カリキュラムの内容(科目数・実習時間など)
- 卒業証明書や成績証明書などの書類の整合性
提出書類には、自国の看護師資格証明書や卒業証明書などが必要で、翻訳や審査には数カ月かかる場合も。
受験に向けたスケジュールを立てる際は、この審査期間も考慮しておくと安心です。
参考:外国で看護師等免許を取得している方の受験資格認定について|厚生労働省
EPA看護師候補者の特徴と受け入れフロー
EPA制度では、対象国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)から選抜された候補者が、来日前に日本語研修を受け、来日後はOJTを通じて国家試験合格を目指します。
募集から配属まではJICWELS(国際厚生事業団)が調整を担い、国ごとに来日前後の研修期間も異なります。
以下は、国ごとの主な受け入れフローです。
【インドネシア・フィリピンの場合】
- 来日前:約6か月間の日本語研修を実施(目標:JLPT N4以上)
- 来日後:約6か月間の日本語研修+病院での実地研修
- その後:国家試験合格を目指して就労・学習
【ベトナムの場合】
- 来日前:現地での研修を修了し、マッチングに合格した者のみ対象
- 来日後:約2か月間の日本語研修+病院での実地研修
- その後:国家試験合格に向けた就労・支援を受ける
制度の枠組みが明確で、日本語研修や定着支援も手厚いため、採用する側にとっても計画的に進めやすいのが特徴です。
参考:EPA外国人看護師・介護福祉士受入れのあらまし|公益社団法人国際厚生事業団
外国人看護師の受け入れに必要な申請・手続きは?
制度を活用して外国人看護師を受け入れる場合、在留資格の確認や契約内容の整備などが必要です。
事前に確認し、スムーズな受け入れを目指しましょう。
在留資格と就労範囲の確認
外国人看護師を雇用する場合、まず確認したいのが在留資格。
EPA制度を利用する場合は「特定活動」、それ以外のルートでは「医療」の在留資格が与えられます。
資格によって働ける内容や期間が異なるため、採用前にしっかりチェックしておくことが大切です。
【特定活動(EPA)の場合】
あくまで「候補者」として来日する制度であり、国家試験合格後に正式な看護師としての就労が可能に。
滞在期間には制限(最大3年間+1年延長あり)があるため、採用スケジュールの調整が必要です。
【在留資格「医療」の場合】
国家資格取得後に付与され、看護師としてフルタイムで就労することができます。
更新も可能で、長期雇用を前提とした採用にぴったり。
参考:
雇用契約と労働条件の整備
外国人の方でも、日本人と同じように適切な労働条件で働けるようにする必要があり、給与や勤務時間、福利厚生なども、日本人と同等であることが前提です。
EPA制度を活用する場合は、定着支援や日本語研修なども含めたサポート体制を整えることで、安心して長く働いてもらいやすくなります。
外部支援サービスの活用で負担を軽減!
外国人看護師の採用や定着支援は、専門の支援会社を活用することで、手間や不安を大きく減らすことができます。
たとえばGTNでは、人材紹介から在留資格の申請サポート、住居の手配、日本での生活支援までワンストップで提供。
採用から定着までをトータルで支援しているため、制度面に不安がある場合や、自院だけではサポートが難しい場合でも、安心して受け入れを進められます。
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外国人看護師を受け入れる病院側の体制づくり
採用後に現場で活躍してもらうためには、病院側の受け入れ体制も整えておく必要があります。
ここでは教育・研修・生活支援のポイントをご紹介します。
日本語教育・研修体制の整備
実務に必要なレベルの日本語力(一般的にN3〜N2程度)を確保するため、日本語研修を就労前後に取り入れることが効果的です。
専門用語や患者対応に必要な表現に慣れるサポートが欠かせません。
導入研修・試験対策支援の実例
日本の看護制度や医療現場の特性に慣れてもらうため、OJTを活用した導入研修が有効です。
JICWELSの支援ツールやマニュアルを参考に、試験対策も含めた教育体制を整えましょう。
生活支援・定着支援の工夫
職場での働きやすさに加え、生活面でのサポートも定着率に直結します。
住居の手配や地域生活情報の提供、メンター制度の導入などが効果的です。
看護助手・介護職として外国人を採用する場合の注意点

看護師以外にも、看護助手や介護職として外国人を受け入れるケースがあります。
看護助手に該当する在留資格は?
「永住者」や「日本人の配偶者等」などの在留資格であれば、資格がなくても看護助手としての採用が可能です。
一方、「技能実習」や「留学」では原則として就労が認められていないため、注意が必要です。
特定技能「介護」で採用する場合の条件と支援
特定技能1号の在留資格を取得するには、日本語能力試験(N4)や介護技能評価試験への合格が必要です。
条件を満たせば、最長5年間の就労が認められます。
将来的なキャリア形成(介護福祉士の取得など)
介護職として一定の実務経験を積むことで、介護福祉士の国家試験の受験資格を得ることも可能です。
長期的な人材育成の視点から、キャリアパスの提案も検討しておくとよいでしょう。
まとめ
外国人看護師の採用を成功させるには、制度の理解だけでなく、教育・研修体制、在留資格の確認、生活支援までを含めたトータルな体制づくりが欠かせません。
制度ごとの特徴を押さえたうえで、自院に合った受け入れ方法を選び、長期的に活躍できる環境を整えていきましょう。