外国人労働者の平均年収は?企業が押さえておきたい賃金相場と給与設定のポイント

日本で外国人を採用する企業が増えるなか、「実際の給与水準はどの程度が適正なのか」「日本人と比べてどのような差があるのか」といった疑問を抱える担当者も少なくありません。
この記事では厚生労働省の統計データなどを参考に、外国人労働者の平均年収や日本人との賃金格差、給与設定時の注意点まで、企業担当者が押さえておきたいポイントを解説します。
Contents
外国人労働者の平均年収とは?日本人との格差も解説

外国人労働者の給与水準を把握することは、採用戦略を立てるうえで欠かせません。
ここでは最新の平均年収データや、日本人との比較、賃金格差の背景について見ていきましょう。
【最新データ】外国人労働者の平均年収
厚生労働省の統計によると、外国人労働者の平均月収は24.3万円(所定内給与)で、年収換算すると、約292万円です(賞与などを除いた概算値)。
在留資格ごとの差も大きく、職種や経験によって大きく変動します。
※以下、厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」に基づく月額賃金をもとに、賞与を含まない概算の年収(=月額×12ヶ月)を示しています。
在留資格区分 | 平均月収(万円) | 概算年収(万円) |
---|---|---|
外国人労働者全体 | 24.3万円 | 約292万円 |
専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 29.2万円 | 約350万円 |
特定技能 | 21.1万円 | 約253万円 |
身分に基づくもの | 30.0万円 | 約360万円 |
技能実習 | 18.3万円 | 約220万円 |
その他(特定活動等) | 22.7万円 | 約272万円 |
技術・人文知識・国際業務などの専門職では比較的高めの傾向があり、技能実習や特定技能では平均を下回る水準となっています。
採用する業種や在留資格によって、給与水準に明確な差があることを理解しておくことが必要です。
在留資格別で見る平均年収の違い
外国人労働者の給与水準は、その在留資格に大きく左右されます。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」などの資格では専門性を生かした職務が多く、年収に換算するとおよそ350万円前後。
一方、技能実習生の場合は労働条件に制約があるため、概算年収は220万円程度にとどまります。
外国人労働者の賃金が安い理由と課題
一部では「外国人は安く雇える」という誤解もありますが、賃金が低めに出やすい背景には以下のような要因があります。
- 日本語能力や業務経験が限定的であること
- 単純労働系の業務が多いこと
- 長期雇用を前提とした待遇になりにくいこと
ただし、これらの傾向があるからといって過少な賃金で雇用すると、労働基準法違反にあたる可能性があるため、企業としては適正な賃金の設定が欠かせません。
日本人と比べた年収格差は?
令和6年賃金構造基本統計調査(速報版)によると、日本人労働者の平均年収は約460万円。
これは外国人全体の平均(約292万円)と比較して約168万円の差があり、特に技能実習・特定技能分野での格差が顕著です。
この差は、在留資格によって就ける職種が限られていることや、制度上の制約が影響しています。
特に同じ仕事内容である場合には、在留資格や業務内容に応じた合理的な基準に沿って、待遇を決定することが重要です。
外国人労働者の給与設定のポイント

外国人を雇用する際は、単に「相場より安いかどうか」ではなく、法的な視点や待遇面も含めた総合的な判断が求められます。
給与決定時に押さえておくべき法的ルール
外国人であっても、日本の労働法が適用されます。
特に注意したいのが以下のポイントです。
- 最低賃金法の遵守(地域ごとに異なる)
- 雇用契約書での賃金条件明示(外国語での説明も推奨)
- 社会保険・雇用保険の適正な加入
外国人の社会保険について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
▶︎ 外国人の社会保険はどうする?雇用時に必要な手続き・制度をわかりやすく解説
賃金格差を生まない適正な給与設定とは
適正な賃金設定のためには、同一労働同一賃金の原則や、在留資格に基づく業務内容との整合性を意識することが重要です。
参考として、厚生労働省のガイドラインも活用するとよいでしょう。
参考:
外国人を採用しやすい業種と在留資格の関係を知ろう

どの業種で外国人が多く働いているのか、収入面と合わせて知ることで、自社の採用活動にも役立てられます。
外国人が多く働く業種とその年収の目安
外国人労働者の採用が比較的活発な業種は、言語スキルや専門技術が活かせる分野、または人手不足の影響が大きい分野に集中しています。
以下の業種は、外国人労働者が比較的多く就業している分野です。
- 情報通信業(ITエンジニア・プログラマーなど)
専門スキルが求められ、日本語力よりも技術力が評価される職種です。
グローバルな開発環境に慣れた人材も多く、外国人採用が進んでいます。
→ 年収目安:約370〜400万円
- 教育・学習支援業(語学講師・ALTなど)
英語や母国語を活かせる仕事で、英会話教室や公立学校でのALT(外国語指導助手)として働くケースが多く見られます。
→ 年収目安:約370万円前後
- 製造業(工場オペレーター・技術作業など)
特定技能や技能実習制度を活用して多くの外国人が働く分野です。
日本語能力は初級でも対応可能な現場が多く、人手不足の解消にも直結しています。
→ 年収目安:約300万円前後
- 宿泊・飲食サービス業(ホテル・飲食店スタッフなど)
訪日外国人観光客への対応が求められる現場では、多言語対応できる人材が重宝されます。
就労ビザ取得がしやすい分野でもあります。
→ 年収目安:約250万円前後
- 介護・福祉分野(介護スタッフ・特定技能)
慢性的な人手不足が続く中、EPAや特定技能を活用した外国人採用が増加しています。
日本語力の向上も求められる分野ですが、やりがいのある職種として人気があります。
→ 年収目安:約270〜300万円
職種に応じた適正な在留資格とは?
外国人が活躍しやすい業種を把握したうえで、実際に採用を進める際には、業務内容に応じた在留資格の選定が欠かせません。
在留資格ごとに認められている業種や職務内容が異なるため、実際の業務と合っていない資格で雇用すると、入管法違反に問われます。
- 技術・人文知識・国際業務(技人国)
大卒以上の学歴や実務経験をもとに就労できる資格。
ITエンジニア、通訳・翻訳、貿易事務、マーケティング、海外営業などの業務に対応。
→ 対応職種:情報通信業、貿易・サービス業、教育業など
- 特定技能(1号・2号)
一定の技能試験と日本語能力試験に合格することで、指定された14業種で就労可能。
介護、外食、宿泊、建設、農業、製造などで特にニーズが高い。
→ 対応業種:介護、宿泊、飲食、製造、建設、農業など
- 技能実習
開発途上国への技術移転を目的とした制度で、あらかじめ認可された職種に限り受け入れが可能。
職種や労働時間に厳格な制限がある。
→ 対応業種:製造業、建設業、農業など(監理団体を通じた申請が必要)
- 身分に基づく在留資格(永住者、日本人の配偶者等など)
業種や職種に制限がなく、パート・アルバイトも含めて就労可能。
日本での生活基盤がある外国人に多い。
→ 対応業種:ほぼ全業種(条件次第で自由な雇用が可能)
在留資格ごとの就労制限に注意しながら、適正な業務内容で雇用しましょう。
まとめ
外国人労働者の年収は、在留資格や職種によって大きく差があります。
日本人との違いや法的なルールをふまえて、無理のない適正な給与を設計することが大切です。
福利厚生や働きやすい環境づくりにも目を向けることで、外国人材の定着や活躍にもつながっていきます。
自社に合った雇用スタイルを見つけて、採用の一歩に役立ててみてください。