経営管理ビザを取得するには?外国人経営者が知るべき条件・必要書類・許可率まで徹底解説

スーツを着て日本で働く外国人たち

日本で会社を立ち上げたり、経営者として事業を運営したい外国人にとって欠かせないのが「経営管理ビザ」です。

このビザは、日本で事業を経営・管理するための在留資格ですが、取得には厳しい要件があり、しっかりと準備しなければ許可は下りません。

この記事では、経営管理ビザの基本的な仕組みから、取得要件・必要書類・審査のポイント、許可率を高めるための対策までを解説します。

日本での起業や会社経営を検討している外国人の方は、ぜひ参考にしてください。

経営管理ビザとは?

経営管理ビザは、外国人が日本で会社を設立したり、経営者・管理職として事業を運営する際に必要となる在留資格です。

2015年4月の法改正までは「投資・経営ビザ」と呼ばれていましたが、現在は「経営・管理ビザ」に名称が変更されました。

このビザを取得すれば、会社の代表取締役や取締役、監査役、支店長、工場長といった立場で経営や管理業務を行うことが可能です。

ただし、肩書きだけではなく、実際に意思決定権を持っているかどうかが審査の重要ポイントになります。

経営管理ビザ取得の要件は?

経営管理ビザを取得するには、複数の基準を満たす必要があります。

入管庁は「事業の実態」を厳しくチェックするため、形式だけでは不十分です。

事業所要件:日本国内に実態あるオフィスを確保すること

申請には日本国内の事務所が必要です。

バーチャルオフィスや自宅の一部を兼用するケースは原則認められず、独立した区画・部屋として利用できるスペースを用意する必要があります。

規模要件:資本金500万円または常勤職員2名以上

経営管理ビザの代表的な基準が「500万円以上の投資」または「日本に居住する常勤職員を2名以上雇用すること」です。

これらは事業の安定性を判断する重要な指標であり、許可率にも直結します。

💡 補足(2025年8月時点)
経営管理ビザの資本金要件を500万円から3,000万円へ引き上げ、あわせて常勤職員1名以上の雇用を必須とする方向で検討が進んでいます。改定が実施されれば、起業に必要な準備はこれまで以上に大きくなる見込みです。

参考:朝日新聞

事業計画要件:安定性・継続性・適法性の証明

収支計画や販売ルートを明示した事業計画書が必須です。

事業の将来性を客観的に示せるかどうかが審査の焦点となります。

管理者(幹部)としての条件:3年以上の経験・報酬水準

経営に携わるだけでなく、管理職として申請する場合は「3年以上の経営または管理経験」が必要です。

また、日本人と同等以上の報酬が支払われているかどうかもチェックされます。

経営管理ビザの在留期間について

経営管理ビザには複数の在留期間が設定されており、状況に応じて選択されます。

また、更新の際には事業の実績や安定性も確認されるため、継続的な準備が欠かせません。

在留期間の種類

在留期間は「3か月」「4か月」「1年」「3年」「5年」から付与されます

特に4か月の在留期間は、銀行口座開設や住民登録を行いながら会社設立準備を進めたい外国人起業家向けに設けられた制度です。

更新時に審査されるポイント

更新時には、事業が安定的に継続しているか、納税を適切に行っているかなどが審査対象となります。

短期滞在からの切り替えを目指す場合や、初回の1年を経て長期(3年・5年)を希望する場合は、特に事業の健全性を示す資料が求められます。

経営管理ビザ取得までの流れ

経営管理ビザの申請は、会社の設立や事務所の確保と並行して進める必要があります

全体のプロセスを理解しておくと、準備の抜け漏れを防げます。

【起業して取得する場合】
  • 会社の基本事項を決定(商号・所在地・事業内容など)
  • 会社実印を作成
  • 定款の作成と公証人による認証
  • 出資金の払い込み
  • 法務局で会社設立登記
  • 税務署などへの各種届出
  • 経営管理ビザの必要書類を準備・申請
【既存会社に参加して取得する場合】
  • 会社役員としての任命・契約締結
  • 役員報酬の決定(審査で月額20万円以上が目安とされることもあります)
  • 必要書類の作成(会社概要、登記事項証明書、事業計画など)
  • 経営管理ビザの申請

新規設立か既存会社かによって準備の流れは異なりますが、どちらも「事業の実態を裏付ける書類」が鍵となります。

経営管理ビザ申請に必要な書類

申請時に求められる書類は多岐にわたり、個人と会社の両面から準備が必要です。

状況(新規か変更か)によって追加書類が異なる点にも注意しましょう。

【個人に関する書類】
  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • パスポート、在留カード(変更申請の場合)
  • 写真(規格あり)
  • 学歴証明(大学以上があれば有利)
  • 実務経験証明(在職証明書など)
  • 日本語能力に関する証明(N1合格票など、必須ではないが加点要素)
  • 資本金の出所を示す資料
  • 返信用封筒
【会社に関する書類】
  • 登記事項証明書(新設時は設立登記が必要)
  • 定款、事業計画書(収支計画、販売方法、取引先などを含む)
  • 株主総会議事録(役員報酬の決定を明記)
  • 会社概要書(会社名・沿革・役員・事業内容など。HPの会社概要を印刷したものでも可)
  • 事務所の賃貸借契約書、平面図、写真など(自社所有の場合は登記事項証明書)
  • 従業員の雇用契約書または内定通知書(雇用予定がある場合)
  • 税務署に提出する「給与支払事務所の開設届」や「法人設立届出書」などの控え

書類は発行から3か月以内のものが原則で、有効期限切れや不備があると不許可の原因になります。

特に資本金の出所や事務所関連の資料は審査で厳しくチェックされるため、しっかり準備しましょう。

参考:在留資格「経営・管理」|出入国在留管理庁

経営管理ビザ取得にかかる費用は?

経営管理ビザの取得費用は、どの方法で申請するかによって大きく異なります。

自分で申請する場合の費用

必要となるのは、戸籍謄本や証明写真、印紙代、返信用封筒、交通費など最低限の実費のみで、数千円~数万円程度に収まるケースが多いです。

ただし、日本語での書類作成や入管への対応をすべて自分で行う必要があるため、言語面のハードルや書類不備による不許可リスクが高まります。

特に事業計画書は、数字や将来の見通しを現実的に示す必要があり、経営経験が浅い方には難しく感じられることも。

行政書士に依頼する場合

行政書士に依頼する場合は、審査のポイントを押さえた書類を整えてもらえるため、許可率が高まりやすく、出入国在留管理庁への申請も代行してもらえます。

報酬額は事務所によって異なりますが、相場は10~50万円程度。

事業計画のブラッシュアップや資本金の出所に関する証明方法のアドバイスを受けられるのもメリットです。

さらに、「会社設立+経営管理ビザ申請」をセットで依頼できる事務所もあり、その場合は手続き全体を一括して任せられる一方で、費用は高くなる傾向があります。

追加でかかる可能性のある費用

ビザ申請そのものの費用に加えて、会社設立や事務所契約に関連するコストが発生する点にも注意が必要です。

特に起業を伴う場合は、以下のような支出を見込んでおきましょう。

  • 事務所賃貸契約に伴う保証金・敷金
  • 定款認証手数料や会社設立登記の登録免許税(株式会社なら約20万円前後)
  • 翻訳や公証に関する費用(海外の証明書を使う場合)

経営管理ビザの取得費用は「ビザ申請だけの実費」ではなく、会社設立や事務所契約を含めた全体の初期費用として考えておくと安心です。

審査で重視されるポイントは?不許可になるケースも

経営管理ビザの審査では、形式的な要件だけでなく「実際に事業を継続できるかどうか」が厳しく見られます

主なポイントは以下のとおりです。

  • 経営者や管理者として実際に意思決定を行っているか
  • 事業が安定して収益を上げられる見込みがあるか
  • 事務所の賃貸契約書や資本金、従業員雇用状況などの裏付け資料が整っているか

このように形式的な役職だけでは不十分であり、事務所の賃貸契約書や資本金の額、従業員の雇用状況などが裏付け資料として必要です。

一方で、不許可になりやすいケースとしては次のようなものがあります。

  • 事務所の実在性が確認できない(バーチャルオフィスや自宅併用のみ)
  • 資本金の出所や額が不明確
  • 事業計画が曖昧で収支見込みが現実的でない
  • 書類の不備や不足

特に「事務所が実在しない」「資本金の証明が不十分」といったケースでは不許可の可能性が高まるので、事前に必要な資料を揃え、計画の妥当性を示すことが重要です。

経営管理ビザの許可率は?

経営管理ビザは就労ビザの中でも取得が難しい部類に入ります。

許可率を高めるには、要件を満たすだけでなく、書類の完成度や事業計画の説得力が大切です。

許可率の実情

経営管理ビザの許可率は、他の就労ビザに比べて低めといわれています。

法務省や入管庁が公式な数値を公表しているわけではありませんが、「一般的な就労ビザよりも許可が得にくい」という傾向が強いとされ、近年は審査も厳格化。オフィスの実在性、資本金の出所の明確さ、事業計画の妥当性などがこれまで以上にチェックされるようになっています。

許可率を上げるためにできること

現実的で数字に基づいた事業計画書を作成することが重要です。

また、行政書士など専門家に相談することで、書類不備を防ぎ、審査に通りやすい形を整えることができます。

「経営管理ビザ」と「スタートアップビザ」の違い

経営管理ビザの取得はハードルが高いため、起業準備中の外国人には「スタートアップビザ」という選択肢もあります。

スタートアップビザの特徴

スタートアップビザは、国家戦略特区に指定された地域で導入されている制度です。

通常は経営管理ビザを取得するために事前に整えておくべき「事務所確保」や「500万円以上の資本金」などの要件確認を、最長6か月間猶予してもらえる仕組み。

その間に、事業計画を具体化したり、オフィスや資金を整えたりできます。

例えば、東京都渋谷区では海外起業家を積極的に受け入れています。
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活用できる地域と対象業種

2025年以降は全国の認定自治体を通じて申請できるようになりました。

地域によっては、IT・観光・農業など成長産業分野での起業支援に力を入れており、事業計画の相談や資金調達のサポートを受けられる場合もあります

経営管理ビザとの使い分けは?

スタートアップビザと経営管理ビザは目的や利用タイミングが異なるため、自分の状況に合わせて選びましょう

  • スタートアップビザ
    起業準備段階の猶予を得られる制度。
    最長6か月間有効で、その間に事務所や資本金を整え、最終的には経営管理ビザへ切り替える必要があります。
  • 経営管理ビザ
    すでに事業基盤を整えている方向け。
    要件を満たしていれば長期の在留が可能です。

スタートアップビザは、まだ事務所や資本金を用意できていない起業準備段階の方向け。

最長6か月の猶予を活用して要件を整え、最終的に経営管理ビザへ切り替える流れになります。

一方、すでに事務所・資本金・事業計画が整っている場合は、はじめから経営管理ビザを申請した方がスムーズです。

まとめ

経営管理ビザは、日本で事業を経営・管理する外国人にとって不可欠な在留資格です。

取得には「オフィス確保」「資本金または人数要件」「事業計画」など複数の条件を満たす必要があります。

申請の際は、専門家のサポートを活用することで許可率を高めることも可能です。

また、地域によってはスタートアップビザを利用できるため、状況に合わせた制度選択も有効です。

日本での起業を成功させるためには、制度を正しく理解し、十分な準備を整えて申請に臨むことが大切です。

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