【外国人向け】日本の教育制度の仕組みとは?特徴や海外との違いもわかりやすく解説

日本で子どもを育てる外国人の方や、これから日本に住む方にとって、日本の教育制度は気になるところ。
母国と違う部分が多く、進学の準備や学校選びで戸惑うこともあります。
この記事では、日本の教育制度の基本的な仕組みや特徴、海外との違い、さらにメリット・デメリットまで、わかりやすく紹介します。
事前に制度を理解しておくことで、子どもに合った学校や進学先を選びやすくなりますよ。
Contents
日本の教育制度とは?基本の仕組みと特徴を紹介

日本の教育制度は、小学校から大学までの流れが明確に決まっており、年齢ごとに学ぶ内容や学校の役割が整理されています。
まずは、この全体像をざっくりつかんでおきましょう。
日本の教育制度の全体像|6・3・3・4制とは
日本の教育制度は、「6・3・3・4制」と呼ばれ、小学校6年間、中学校3年間、高等学校3年間、大学4年間の4段階に分かれています。
各段階ごとに明確なカリキュラムが定められており、日本全国で共通の教育内容が実施されているため、地域によるばらつきが少なく、どこに住んでいても同じ学びを受けられるのが特徴です。
義務教育の仕組みと対象年齢
日本では、小学校と中学校の合計9年間が「義務教育」として定められています。
対象年齢は6歳から15歳まで。公立の学校なら授業料はかからず、教科書も無料で配られます。
新学期は毎年4月に始まり、翌年の3月までが1年の区切りです。
日本の初等・中等教育の仕組み【小学校〜高校】

日本では、初等・中等教育の段階ごとに学校の種類がはっきりと分かれており、それぞれに決まった学年・年齢で進んでいきます。
日本の学校の種類と特徴
日本では、幼稚園・保育園から始まり、小学校、中学校、高等学校へと進学していきます。
義務教育は中学校までですが、ほとんどの子どもがそのまま高校まで進みます。
①幼稚園と保育園
就学前の子どもが通う施設です。
幼稚園は3歳〜6歳が対象で、遊びや集団生活を通して社会性や生活習慣を育てます。
保育園は0歳から預けることができ、共働きなどで保育が必要な家庭を対象としています。
②小学校
6歳から12歳までの6年間で、読み書きや計算をはじめ、国語・算数・理科・社会など、学びの基礎を身につけていきます。
ひとりの先生が複数の教科や生活面も担当する「学級担任制」が基本です。
③中学校
12歳から15歳の3年間で、義務教育の後半にあたります。
教科ごとに専門の先生が授業を行う「教科担任制」に変わり、英語や技術など新しい教科も加わります。
部活動も盛んで、勉強とあわせて学校生活の大きな一部に。
④高等学校
高校は義務教育ではありませんが、多くの生徒が進学します。
15歳〜18歳が対象で、普通科・専門学科・通信制など種類もさまざま。
進路や興味に合わせた学び方を選べるのが特徴です。
学年システムと年齢
日本の学校は、毎年4月に新学年が始まり、翌年の3月に終了するサイクル。
4月2日から翌年4月1日までに生まれた子どもたちが、同じ学年として扱われます。
小学校から高校までの各学年と、在籍する年齢の目安は以下のとおりです。
学年 | 年齢 |
---|---|
小学校1年生 | 6〜7歳 |
小学校2年生 | 7〜8歳 |
小学校3年生 | 8〜9歳 |
小学校4年生 | 9〜10歳 |
小学校5年生 | 10〜11歳 |
小学校6年生 | 11〜12歳 |
中学校1年生 | 12〜13歳 |
中学校2年生 | 13〜14歳 |
中学校3年生 | 14〜15歳 |
高校1年生 | 15〜16歳 |
高校2年生 | 16〜17歳 |
高校3年生 | 17〜18歳 |
小学校・中学校・高校は基本的に3学期制が採用されており、1学期は4月〜7月、2学期は9月〜12月、3学期は1月〜3月となります。
一方、大学は多くの場合2学期制で、4月〜9月が前期、10月〜翌3月が後期です。
なお、海外からの転入や一時的な帰国などの事情によっては、学年と年齢が一致しないこともあります。
学年のずれや進級のタイミングで不安な場合は、学校の先生や教育委員会に相談するのがおすすめです。
授業時間と時間割の仕組み
日本の小学校・中学校・高校では、平日(月〜金)に授業が行われるのが基本です。
土日は原則お休みですが、学校行事などで登校日になることもあります。
授業時間は学校の種類によって少しずつ異なります。
- 小学校:1コマ45分
- 中学校・高校:1コマ50分
- 大学:1コマ90分
授業は1日にだいたい6コマあり、午前中に4コマ、昼休みをはさんで午後に2コマという流れが一般的です。
ただし、小学校の低学年では、5コマで終わる日も。
また、一部の高校では大学受験に向けた対策として、60分や90分授業を導入している学校もあります。
クラブ活動の特徴【運動部・文化部】
日本の中学校や高校では、授業が終わった後や週末に行われるクラブ活動(部活動)がとても盛んです。
生徒は自分の興味に合わせて、運動系・文化系のいずれかのクラブに参加することができます。
クラブ活動は必須ではありませんが、多くの生徒が参加していて、学校生活の大きな一部に。
仲間と協力しながら取り組む中で、技術だけでなく、責任感や協調性なども自然と身についていきます。
運動部には、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、テニス、剣道、柔道など、学校によってさまざまな種目があり、大会に向けて練習を重ねる部も多く、活動は本格的です。
文化部では、吹奏楽、演劇、美術、茶道、書道、科学、写真、コンピュータなど、多様な分野に取り組むことができます。
創作や発表を通じて、自分の興味や得意分野を深められるのが魅力です。
日本の高等教育制度【大学・大学院・短期大学・専門学校】

高校卒業後の進路には、大学、短期大学、専門学校、高等専門学校など、いくつかの選択肢があります。
学ぶ期間や取得できる資格・学位がそれぞれ異なるため、目的に合った学校を選ぶことが大切です。
大学・大学院・短期大学・専門学校・高等専門学校の違い
高校卒業後に進学できる教育機関には、それぞれ異なる特徴があります。
ここでは、教育の内容や目的の違いに注目して紹介します。
大学
専門分野を深く学びながら、幅広い教養も身につけられる場所です。
講義やゼミ、研究活動などを通じて、思考力や課題解決力を養っていきます。
大学院
大学卒業後に進学できる教育機関で、より専門的な研究や高度な知識の習得を目的としています。
理論的な探究だけでなく、修士論文や研究発表など、実践的な課題に取り組むことも多く、専門職を目指す人や研究者を志す人に選ばれています。
短期大学
実務に直結した学びが中心で、保育、看護、栄養など専門職の道を目指す人に向いています。
就職を意識した内容が多く、学びの期間も比較的短めです。
専門学校
特定の職業スキルを身につけることに特化した教育機関です。
医療、ファッション、調理、ゲーム制作など分野は多彩で、実習や演習を重視したカリキュラムが組まれています。
高等専門学校(高専)
中学校卒業後に入学する5年制の学校で、工学や技術系の教育に力を入れています。
早い段階から専門的な知識や技術を学ぶことができ、卒業後の進学や就職にもつながります。
防衛大学校・防衛医科大学校
自衛隊の幹部自衛官を育成するための教育機関です。
一般的な大学とは異なり、専門教育に加えて規律や訓練なども行われます。
卒業後は自衛隊での勤務が前提です。
日本の高等教育機関の就業年数と取得できる学位
- 大学
【修業年数】原則4年(医学・歯学・薬学・獣医学などは6年)
【取得できる学位】学士号(例:学士(経済学)、学士(工学)など)
大学では専門分野を深く学びながら、幅広い教養も身につけられます。
卒業時には「学士号」が授与されます。
- 大学院
【修業年数】修士課程:2年 / 博士課程:3年
【取得できる学位】修士号、博士号
大学院では、さらに高度な専門知識や研究を深めていきます。
大学によっては、修士と博士を一貫して学ぶ5年制のプログラムもあります。
- 短期大学
【修業年数】2年または3年
【取得できる称号】短期大学士(準学士)
実践的な学びに特化した短期大学では、保育や看護、栄養、ビジネスなどの分野が人気です。
- 専門学校
【修業年数】多くは2〜3年
【取得できる称号】専門士、高度専門士(一定条件を満たした場合)
専門学校は、職業スキルを身につけることに特化した教育機関で、就職や資格取得を意識した実践的なカリキュラムが組まれています。
- 高等専門学校(高専)
【修業年数】本科:5年 / 専攻科進学の場合:+2年
【取得できる称号】準学士(本科)/ 学士(専攻科修了+条件あり)
高専は中学校卒業後に入学し、早い段階から工学や技術など専門分野を学ぶことができます。
- 防衛大学校・防衛医科大学校
【修業年数】防衛大学校:4年 / 防衛医科大学校:6年
【取得できる学位】学士(卒業時)
防衛大学校では卒業後に幹部自衛官として任官。
防衛医科大学校は卒業後に医師国家試験を受け、臨床研修を経て自衛隊病院や部隊で勤務します。
日本の教育に関わる教師の種類と役割

日本の学校には、子どもたちの学びや生活を支えるさまざまな役割の先生たちがいます。
ここでは、小学校から高校までに関わる教員や、専門スタッフの役割について紹介します。
小学校・中学校・高校の教員の種類
校長
学校のトップとして、教育方針の決定や教職員の指導・管理を行う立場です。
学校全体を見渡しながら、地域や保護者との連携、学校運営の最終的な責任を担っています。
教頭
校長をサポートし、日々の学校運営を実務面で支える役割です。
時間割の作成、行事の企画・調整、教職員の勤務管理など、校内の管理全般に関わります。
教諭(担任・教科担当)
小学校では、1人の先生が複数の教科を担当する「学級担任制」が基本です。
学習の指導だけでなく、生活面のフォローや保護者対応なども含まれます。
中学校や高校では、教科ごとに専門の先生が教える「教科担任制」が取られています。
授業だけでなく、担任としてクラスの進路指導や生活指導を担うこともあります。
スクールカウンセラーや栄養教諭など専門スタッフ
スクールカウンセラー
生徒の心のケアを専門に行うスタッフです。
いじめや友人関係、勉強の悩みなど、さまざまな相談に対応します。
保護者や先生と連携しながら、必要に応じて支援につなげる役割も担っています。
栄養教諭
学校給食の献立作成や栄養バランスの管理を行う専門職です。
子どもたちに食の大切さを伝える「食育」の授業を担当することもあります。
健康な成長を支える存在です。
養護教諭
「保健室の先生」として知られ、けがや体調不良への対応、健康診断の実施などを行います。
心身の健康管理を通じて、生徒が安心して学校生活を送れるよう支えています。
司書教諭
学校図書館の管理や読書指導を行う教員です。
生徒に本を紹介したり、調べ学習のサポートをしたりと、学びの幅を広げる役割を担っています。
特別支援教育担当教員
障害や特別な支援が必要な子どもに対して、個別に応じた教育やサポートを行う先生です。
専門的な知識や経験をもとに、生徒一人ひとりの成長をサポートします。
外国人児童・留学生への教育サポートは?

外国人の子どもたちが安心して学校に通えるよう、日本ではさまざまなサポート体制が整えられています。
日本語指導のサポート
日本語がわからない子どもには、個別の支援が行われています。
たとえば、日本語指導の先生を加配したり、生徒一人ひとりの状況に応じて特別なカリキュラムを組んだりする取り組みです。
指導にあたる先生向けの研修も用意されています。
地域との連携体制
自治体によっては、日本語指導の拠点校やコーディネーターを設け、地域全体で支援する体制を整えています。
また、母語対応の支援員や通訳ボランティアを活用して、言葉の壁を感じにくい環境づくりも進められています。
多言語での情報提供
保護者に向けては、就学手続きや学校生活に関するガイドを多言語で配布。
日本の学校について理解しやすくするための情報提供も行われています。
参考:外国人児童生徒等に対する教育支援に関する基礎資料|文部科学省
日本の教育のメリット・デメリット

日本の教育制度には、子どもの学びを支える多くの良さがある一方で、課題として指摘される点もあります。
メリット|基礎学力の高さ・協調性の育成
日本の教育は、読み書きや計算などの基礎学力をしっかり身につけられる仕組みになっています。
授業の進め方や教科書の内容も全国でほぼ共通のため、どの地域でも安定した学びが受けられます。
また、学校行事やグループ活動を通して、協調性やルールを守る姿勢が自然と育つのも特徴です。
集団での生活を大切にする文化が、教育の中にも根づいています。
デメリット|個性の抑制・受験競争
全国共通のカリキュラムに沿った画一的な授業が中心のため、自分の考えを表現する力や創造性が育ちにくいという声もあります。
最近では、アクティブラーニングなど主体的な学びを取り入れる学校も増えてきました。
また、高校や大学への進学時には受験競争があり、子どもに大きなプレッシャーがかかることもあります。
とくに私立や名門校を目指す場合は、小・中学生のうちから受験に備えるケースもあり、心身の負担につながることがあります。
日本の教育と海外の教育の違いは?

教育制度は国によって考え方が大きく異なります。
ここでは、日本と海外の代表的な違いをいくつか紹介します。
教育の方針とカリキュラムの違い
日本の教育は、全国で共通のカリキュラムに基づいて授業が行われるため、地域差が少なく、安定した学びが受けられるのが特徴です。
一方、アメリカやヨーロッパの一部の国では、州や学校ごとに教育内容を決める場合も多く、より自由度の高い教育が行われています。
自主性の重視
日本の学校では、協調性や集団行動が大切にされる傾向がありますが、欧米の教育では、個人の意見や発言を重視し、ディスカッションやプレゼンテーションの機会も多め。
授業中に積極的に発言することが評価される点も、日本とは異なるポイントです。
評価の仕方や学習のスタイル
日本ではテストや通知表による成績評価が中心ですが、海外ではプロジェクト形式の課題や発表などを通じて、学びのプロセスを評価するケースも。
また、学び方も、知識の習得だけでなく、実践的な課題解決型の学習が多く取り入れられています。
まとめ
日本の教育制度は、全国で共通の仕組みが整っており、どの地域でも安定した教育が受けられるのが特徴です。
協調性や基礎学力を育む一方で、個性の表現や受験競争の厳しさといった課題もあります。
これから日本でお子さんを学校に通わせる方や、日本での進学を考えている方にとっては、制度の流れや特徴をあらかじめ理解しておくことで、不安を減らし、自分や家族に合った教育環境を見つけやすくなるでしょう。