外国人社員が日本で運転免許証を取得するには?条件・切り替え・企業ができる支援を解説
日本で働く外国人の中には、営業や現場業務、物流などで車の運転が必要なケースが少なくありません。
一方で、日本で運転するには在留資格や住民票などの条件を満たし、正しい手続きで免許を取得または切り替える必要があります。
本記事では、外国人社員の運転免許取得や切替の流れ、2025年10月からの制度改正、さらに企業として支援すべきポイントを詳しく解説します。
Contents
外国人社員に運転免許証が必要な理由

外国人社員にとって運転免許証は、通勤や業務移動をはじめ、企業活動を支える重要な要素のひとつです。
ここでは、企業が運転免許取得を支援すべき背景と、リスク管理の視点からの必要性を紹介します。
外国人社員に運転免許証が必要な業務例
外国人社員が運転免許を必要とする場面は、営業や訪問業務、物流・建設現場など幅広くあります。
特に地方拠点や公共交通の便が限られる地域では、車の運転が不可欠です。
- 営業・訪問業務(取引先への移動など)
- 物流・配達業務
- 現場監督や施設点検などの出張業務
- 社用車を使用する出勤・退勤
無免許運転によるリスクと企業責任
社員が無免許のまま運転した場合、重大な法令違反となり、企業にも使用者責任が及びます。
外国人社員の場合、免許の有効性や在留資格との整合性を確認しないと、不法就労や交通事故時の補償問題に発展するリスクがあります。
そのため、採用段階から運転免許証の取得状況を確認し、必要に応じて支援体制を整えることが重要です。
外国人が日本で運転免許証を取得する3つの方法

外国人が日本で運転するには、目的や在留期間に応じて3つの方法があります。
企業としてサポートする際は、それぞれの条件・制限・有効期間を理解しておきましょう。
① 国際運転免許証で運転する
ジュネーブ条約加盟国で発行された国際運転免許証を持っている外国人は、日本入国から1年間は運転が可能です。
ただし、国際免許だけではなく母国の有効な運転免許証の携行が義務付けられています。
期間を超えて滞在・就労する場合は、外免切替(外国免許から日本免許への切替)を行う必要があります。
② 外国の運転免許証を日本の免許証に切り替える(外免切替)
外免切替とは、日本国外で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替える制度です。
切替申請には以下の条件があります。
- 日本で運転免許を取得できる年齢(18歳以上)を満たしている
- 外国の免許が有効である
- 免許取得後、その国に通算3か月以上滞在した実績がある
- 日本国内に住民票を有する(2025年10月以降、提出必須)
- 必ず本人が申請する
また、イギリス・オーストラリア・韓国など29か国は試験免除対象で、書類審査のみで切替が可能です。
一方、免除対象外の国の場合は、学科・技能試験の両方に合格する必要があります。
申請に必要な書類は以下の通りです。
- 申請書
- 病気の症状等についての「質問票」
- 申請用写真1枚(3.0×2.4cm、6か月以内に撮影・無帽・正面・無背景)
- 本籍記載の住民票の写し(住民基本台帳の対象外の方は旅券等)
- 健康保険証、マイナンバーカード、在留カードなどの本人確認書類
- 外国の運転免許証(有効なもの)
- 外国免許証の日本語翻訳文(JAF・各国大使館等が発行)
- 免許取得国で3か月以上滞在していたことを証明する書類(パスポートなど)
- 手数料(普通免許の場合:申請料2,550円・交付手数料2,050円・併記手数料200円)
企業としては、試験予約や翻訳手続きなどをサポートすることで、外国人社員の負担を軽減できます。
③ 日本で新たに運転免許証を取得する
国際免許・外国免許が使えない場合、日本の運転免許証を新規取得する必要があります。
教習所に通い、学科・技能教習を経て試験に合格すると取得できます。
- 費用目安:25〜32万円
- 期間目安:2〜3か月(合宿免許は最短2週間)
注意点として、学科試験は基本的に日本語で実施されますが、一部都道府県では英語試験も対応しています。
企業が通訳支援や費用補助を行うと、社員がより安心して取得を進められます。
また、学科試験は20言語(英語・中国語・ベトナム語・韓国語など)に対応しており、都道府県によって受験可能日が異なります。
外国人社員には、英語対応の教習所や通訳支援を紹介することで、学習のハードルを下げられます。
外国人の運転免許切り替え(外免切替)の手続きと流れ

外国免許から日本免許に切り替える手続きは、企業にとっても確認が必要な重要項目です。
ここでは、外免切替の流れと注意点を整理します。
外免切替の申請条件と対象者
申請には在留資格を持ち、日本に住民票を有することが前提です。
短期滞在者(観光ビザなど)は申請できません。
また、発行国での滞在3か月以上の証明(パスポートの出入国記録など)も必要です。
外免切替の申請手順
- 必要書類を準備
- 各都道府県の運転免許センターに申請
- 適性検査を受ける
- 必要に応じて学科試験・技能試験を受験
- 合格後、日本の運転免許証が交付
試験免除国以外では、簡単な筆記試験(交通ルール)と実技試験を受ける必要があります。
企業としては、日程調整や試験対策の支援が現実的なサポートです。
試験免除国・地域
外国人の出身国によっては、学科試験・技能試験の両方が免除されます。
以下の国・地域は免除対象として認められています。
| アイスランド、アイルランド、アメリカ合衆国(オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る)、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク、台湾 ※アメリカ合衆国インディアナ州は技能試験のみ免除。 |
申請時の注意点
有効期限が切れている外国免許や、翻訳文の不備がある場合は受理されません。
また、代理申請は認められていないため、本人が直接申請する必要があります。
翻訳文はJAFまたは各国大使館で発行可能です。
外国人社員の運転免許取得に関する在留資格・法的要件

外国人社員が日本で運転するには、在留資格・住民票などの法的条件を満たす必要があります。
採用担当者は、雇用開始前に必ず確認しておきましょう。
- 在留カード・住民票があること
- 在留資格が就労可能なものであること(特定技能・技術人文国際業務など)
- 無免許運転・不法就労を避けるための定期確認
特に、特定技能(自動車運送業)などの職種では、運転免許が業務要件となるため、取得支援をセットで進めることが重要です。
2025年10月から制度改正!注意点は?

2025年10月から外免切替の制度が厳格化され、次のような変更が加えられました。
- 住民票提出の義務化(短期滞在者は対象外)
- 知識確認問題が10問→50問に増加、合格基準90%以上に
- 技能試験の採点基準強化(合図不履行・横断歩道通過などを厳格化)
企業としては、採用前に「免許切替が可能か」「期間内に取得できるか」を確認し、業務開始時期を調整することが求められます。
企業ができる外国人社員への運転免許取得サポート

外国人社員の免許取得を支援することは、早期戦力化と安全管理の両面で大きな効果があります。
- 教習・切替費用の一部補助
- 翻訳文の作成サポート
- 教習所・通訳の紹介
- 運転研修・安全教育の実施
たとえば、登録支援機関や人材紹介会社では、免許取得サポートを含めたトータル支援を提供しており、企業の負担軽減にもつながります。
免許取得後に注意すべきポイント

外国人社員が運転を始める前に、次の点を社内で共有しておくと安全です。
- 日本は左側通行・右ハンドルである
- 飲酒運転やスピード違反は厳罰対象
- 車検・自賠責保険は全車両加入が義務
- 歩行者優先ルールや標識表示の違いに注意
これらの違いを理解していないと、思わぬ事故や法令違反につながる恐れがあります。
入社時研修や安全講習の中で、外国人社員にも分かりやすく伝えることが大切です
外国人社員の運転に関する社内ルールとリスク管理

運転を伴う業務では、社内ルールの明確化とリスク管理が欠かせません。
特に外国人社員の場合、免許更新や有効期限の確認が抜けやすいため注意が必要です。
- 社用車使用ルールの整備(就業規則・利用規程)
- 免許証の定期確認・更新サイクル管理
- 運転可否の基準設定(試用期間中の運転制限など)
これらを明文化することで、事故・法令違反時のトラブルを未然に防げます。
よくある質問(FAQ)

外国人社員の運転免許に関しては、企業の担当者が現場でよく直面する疑問も多くあります。
ここでは、特に問い合わせの多いポイントを3つ取り上げ、対応の参考になる情報をまとめました。
運転免許証における外国人社員の名前表記は?
運転免許証に記載される名前は、在留カードや特別永住者証明書に明記されている氏名です。
公的な書類で確認できる旧姓や通称名であれば、かっこ書きで併記ができます。
ただし、併記には手数料がかかる場合もあるため、各都道府県の警察に確認しておきましょう。
外国人社員が無免許運転をした場合の罰則は?
日本で有効な運転免許証または国際免許証を持たずに運転した場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される刑事罰の対象となります。
また、免許を携帯していない場合も「免許不携帯」として罰則を受ける可能性があります。
企業としては採用・入社時の段階で、無免許運転を絶対に行わないよう周知・教育することが大切です。
外国人社員が退職・帰国した場合、運転免許証はどうすればいい?
外国人社員が帰国や転職などで日本を離れる場合、運転免許証の返納手続きは任意ですが、再来日時に切り替えが必要になることがあります。
企業としては、退職時に免許証の有効期限や住所変更手続きを確認し、必要に応じて本人に案内を行うことが望ましいです。
特に社用車を使用していた社員の場合は、車両の返却・保険手続きとあわせて確認しておくと安心です。
まとめ

外国人社員が日本で運転するには、在留資格や住民票などの条件を満たし、正しい手続きで免許を取得・切替する必要があります。
制度を理解し、サポート体制を整えることで、社員も企業も安心して業務に取り組むことができます。