日本の賃貸物件の敷金礼金(しききんれいきん)の意味とは?金額の相場や必要な理由も解説

日本で部屋を借りるとき、必ずといっていいほど登場するのが「敷金」と「礼金」です。
海外ではあまり見られない仕組みのため、日本に住む外国人やこれから来日する人にとっては分かりにくいポイントかもしれません。
この記事では、敷金と礼金の意味や必要な理由、金額の相場や支払いのタイミングを詳しく解説します。初期費用を見積もるうえで役立つ知識をまとめていますので、賃貸契約の前にぜひ参考にしてください。
Contents
敷金・礼金とは?日本特有のルール

敷金と礼金は、日本の賃貸契約でほぼ必ず目にする費用です。海外では一般的でないため、外国人にとっては戸惑いやすいルールでもあります。ここではまず、それぞれの意味を確認しましょう。
敷金とは
敷金は、賃貸物件を借りる際に大家へ預ける保証金のようなものです。入居中に家賃を滞納した場合や、退去時のハウスクリーニング費用・修繕費用などに充てられます。部屋を丁寧に使っていれば追加請求は少なく、精算後に残った金額は返還されるのが一般的です。相場は家賃の1〜2か月分です。
礼金とは
礼金は、物件を貸してくれる大家への「お礼」として支払う費用です。一度支払うと返ってくることはありません。日本独特の慣習であり、特に都市部では根強く残っていますが、近年は礼金を設定しない物件も増えてきています。家賃1か月分程度が相場です。
敷金・礼金はなぜ必要?

敷金と礼金には、それぞれ支払う理由があります。なぜこの費用が必要なのかを知っておくと、契約内容に納得しやすくなるでしょう。
敷金が必要とされる理由
敷金は、家賃滞納や退去時の修繕費をカバーする「担保」の役割です。貸す側にとってはリスクを減らす仕組みであり、入居者にとっては責任を果たせば返金される安心材料でもあります。
礼金が必要とされる理由
礼金は、入居者を受け入れる大家の「感謝」や「入居を歓迎する気持ち」の意味合いです。歴史的には慣習に近い性質が強く、不動産会社への仲介料の一部に充てられる場合もあるといわれています。
敷金・礼金の相場は?

敷金や礼金の金額は契約時に大きな負担となるため、まずは相場を知っておきましょう。
敷金・礼金ともに家賃の1〜2か月分が相場です。家賃10万円の物件なら、それぞれ10万〜20万円を想定する必要があります。築年数や立地、設備のグレードによって金額は変わる点にも注意が必要です。
また、地域によっても慣習が異なります。関東では敷金・礼金が一般的ですが、関西では「保証金」や「敷引き」という制度がよく使われます。保証金は退去時に一定額が差し引かれて返金される仕組みで、実質的には礼金と似た性質を持っています。
敷金・礼金はいつ支払う?
敷金・礼金は、賃貸契約時にかかる初期費用の一部で、不動産会社を通じて「入居前に」まとめて支払うのが一般的です。近年は銀行振込だけでなく、クレジットカード払いやオンライン決済に対応するケースもあります。
入居前に必要な初期費用には、敷金・礼金以外にも次のような費用が含まれます。
費用項目 | 相場 | 内容 |
前家賃・日割り家賃 | 1か月分または日割り計算 | 入居月や翌月分の家賃を前払いします。月途中から入居する場合は日割り計算です。 |
仲介手数料 | 家賃0.5〜1か月分+税 | 不動産会社に支払う手数料です。上限は家賃1か月分と法律で定められています。 |
火災保険料 | 1〜2万円(2年契約) | 火災や水漏れなどのトラブルに備える保険で、加入が必須です。 |
鍵交換費用 | 1〜3万円 | セキュリティ対策のため、前の入居者が使っていた鍵を交換します。 |
保証会社利用料 | 家賃50〜100% | 連帯保証人の代わりに家賃保証を行うサービスで、ほとんどの物件で保証会社の加入が必須です。 |
こうした初期費用は合計すると家賃の4〜6か月分になることもあります。
敷金で賄われる退去費用と原状回復ルール

敷金は退去時の清算に使われますが、「原状回復」という考え方を理解しておくことが大切です。原状回復とは、部屋を入居時と同じ状態に近づけることを指し、日本の賃貸契約ではこの費用が敷金から差し引かれる仕組みです。
原状回復で負担するもの
原状回復で入居者が負担する代表的な項目は次の通りです。
- ハウスクリーニング
- 壁紙の張り替え(タバコのヤニ汚れなど)
- 床や畳の修繕
- ガラスやドアの破損修理
- キッチンや水回りの汚れがひどい場合の清掃費
※経年劣化や通常使用による傷・汚れは大家負担になりますが、故意や過失による汚損は入居者の負担となります。
敷金の清算と返還の流れ
敷金は、原状回復費用や滞納家賃があればそこから差し引かれ、残った分が返還されます。部屋を丁寧に使っていれば、多くが戻ってくることも。国土交通省のガイドラインでは負担範囲が明確にされているため、契約前にチェックしておくと退去時のトラブル予防につながります。
敷金礼金なしの家はある? 敷金礼金が無料の理由とは?
敷金や礼金が高額だと、初期費用の負担が大きくなってしまいます。では、敷金礼金がかからない物件はあるのでしょうか。
結論から言うと、敷金と礼金の両方が不要な物件は少ないですが、どちらか一方が不要な物件は存在します。特に、礼金が不要な物件は増えてきています。
敷金礼金が不要な物件の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 築年数が古い
- 駅から遠い
- 日当たりが悪い、または風通しが悪い
- 周辺の環境があまり良くない
つまり、人気が低めの物件で敷金礼金が無料になっていることが多いと言えます。
とはいえ、ハイグレードな設備が整った新築物件でも、礼金無料のところは増えてきました。礼金分を家賃に上乗せすることで、入居者の初期費用の負担を減らし、入居を促しているのです。
ただし、敷金と礼金が両方無料の物件については、何らかの理由があると考えたほうが良いでしょう。
人気の敷金・礼金なし物件はやめた方がいい?
「敷金・礼金なし物件」は初期費用が安くなる一方で、退去時にまとまった費用を請求されるため、条件によっては「あり物件」の方が結果的にお得になることも。自分の滞在期間や予算に合わせて選びましょう。
敷金あり・なしの特徴と選び方
敷金あり物件は、退去時の原状回復費用が敷金から精算されるため、大きな出費を一度に払わずに済みます。長期的に住む予定がある人や、退去時のトラブルを避けたい人におすすめです。
敷金なし物件は、初期費用を抑えられますが、退去時にクリーニング費用や修繕費用を一括で請求される可能性があります。短期滞在や引っ越しが多い人向けですが、契約前に費用の見積もりを必ず確認しましょう。
礼金あり・なしの特徴と選び方
礼金あり物件は、人気エリアや条件の良い物件に多く、入居希望者が多いと競争率も上がります。交渉で減額されるケースもあるため、不動産会社に相談してみるのがおすすめです。
礼金なし物件は、初期費用が安くなるため人気があります。最近は新築や条件の良い物件でも礼金ゼロのところが増えているため、コストを抑えたい人に向いています。
「なし」と「あり」どちらを選ぶべき?
短期滞在や初期費用を抑えたいなら「なし物件」、長期で安心して暮らしたいなら「あり物件」を選ぶのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
敷金・礼金について、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。気になるポイントは事前に確認しておきましょう。
Q: 敷金・礼金はいつ払う?
A: 入居前の契約時に、ほかの初期費用とまとめて支払います。銀行振込が一般的ですが、近年はクレジットカード払いやオンライン決済に対応する不動産会社も増えています。
Q: 礼金は絶対に返ってこないの?
A: はい。礼金は大家へのお礼の性質を持つ費用で、返還されることはありません。
Q: 礼金は交渉できる?
A: 絶対ではありませんが、閑散期や長期入居を希望する場合などは減額やゼロにできる可能性があります。まずは不動産会社に相談してみましょう。
Q: 敷金はどんな条件で全額返ってくる?
A: 経年劣化以外に損傷がなく、家賃滞納もない場合は全額返還されるケースがあります。国土交通省のガイドラインを確認しておくと安心です。
Q: 敷金・礼金なし物件を選ぶと損する?
A: 必ずしも損ではありませんが、退去時に高額な清掃費や修繕費を請求される場合があります。契約書に記載された費用や特約を事前に確認しましょう。
まとめ
日本の賃貸契約では敷金・礼金は避けて通れない費用です。特に外国人にとっては馴染みが薄いルールですが、意味や相場、返還の仕組みを理解しておけば、契約時も安心でしょう。
高額な敷金と礼金は負担が大きいものですが、良好な住環境を得るために必要な費用だと割り切ることも大切です。ただし、敷金礼金が無料の物件については、そのメリットとデメリットをよく検討してから契約するようにしましょう。
「敷金礼金なし」の物件は魅力的に見えますが、退去時の費用や長期的なコストも確認が必要です。自分のライフスタイルに合わせて「あり物件」「なし物件」を比較し、自分に合った条件を見極めて、安心できるお部屋探しを進めましょう!