外国人在留資格に必要な日本語能力とは|特定技能・育成就労・技人国まで

外国人在留資格と日本語能力の関係は、結論から言うと「制度上、日本語要件が明確に定められている在留資格」と「制度要件ではないが、実務上は日本語力が採否・配属・事故リスクを左右する在留資格」に分かれます。

特定技能1号は、原則としてJLPT N4相当(またはJFT-Basic)で日本語能力を試験で確認する枠組みです。 育成就労は、開始前・開始後1年・特定技能移行時で求められる水準が段階的に整理されています。 一方で技人国(技術・人文知識・国際業務)は、要件としての日本語試験は必須ではありませんが、業務・配属設計によっては日本語力を基準化しないとミスマッチが起きやすい領域です。

本記事では、社内説明(上長・現場・法務/コンプラ)に耐える一次情報を軸に、「採用基準」「証明(試験・書類)」「配属設計」「教育・支援体制」まで落とし込みます。


外国人在留資格と日本語能力の基本整理:要件と実務基準は分けて考える

まず押さえるべきは、「在留資格の許可要件としての日本語能力」と「企業が安全に稼働させるための日本語能力」は一致しない、という点です。たとえば特定技能1号は、制度上“試験で日本語能力を確認する”仕組みが明確にあります。

一方、技人国は入管手続き上の提出書類や審査観点は示されますが、制度としての日本語試験が必須と明記されているわけではありません。 しかし、現場配属や顧客対応が発生する職種では、N3相当の会話力・読解力がないと、手順逸脱や説明不足が発生しやすく、事故/違反リスクが増えます。

このズレを放置すると、社内では「入管は通ったのに現場が回らない」「教育コストが想定より膨らむ」「クレームや労務トラブルにつながる」など、採用の失敗として顕在化します。逆に言えば、採用基準を制度要件と切り分けて設計し、入社後の教育や支援を前提に組めば、採用の再現性は上がります。

最低限、社内合意に必要な整理は次の3点です。

  • 制度要件:在留資格ごとに日本語能力が必須か、どの試験・水準か
  • 実務基準:職種・工程・安全性に応じ、現場が回る最低ラインはどこか
  • 運用設計:不足分を教育で補うのか、配置で回避するのか、支援(通訳・相談窓口)で吸収するのか

以降、在留資格別に「制度要件→証明→運用」の順で具体化します。


特定技能の日本語要件:N4相当を“試験で証明”するのが基本

特定技能は、人手不足分野で就労するための在留資格として設計されており、技能水準と日本語能力水準を試験等で確認する枠組みが示されています。ガイドブックでは、日本語能力水準はJFT-BasicやJLPTのN4等で確認する旨が整理されています。 また国際交流基金(JFT-Basicの実施主体)側のFAQでも、特定技能1号の取得には技能試験に加えて日本語試験合格が必要で、JFT-Basicがその日本語試験として活用されることが明確に書かれています。

ここで企業側がハマりやすいのは、「N4相当を満たしていれば現場は大丈夫」と短絡することです。N4相当はあくまで“最低限の就労・生活の基礎”の目安であり、現場の安全や品質を担保するには、業務の種類によって追加の設計が必要になります。たとえば介護分野では、特定技能1号の日本語要件に加えて介護領域の追加試験が絡むケースがあることがあります。

実務で使えるように、特定技能の日本語要件は次のように社内資料化すると説明が通りやすいです(表だけで終わらせず、表の意図も添えます)。

観点社内での言い方(例)企業側の実務アクション
制度要件「特定技能1号はN4相当が基本」JLPT or JFT-Basicの提出/確認を標準化
実務基準「工程・安全で上乗せが必要」職種別にN4/N3目安と面接基準を作る
運用設計「教育・支援で不足分を吸収」OJT手順書の整備、通訳、相談窓口を用意

特定技能の受入れは、支援計画や生活立ち上げがセットで動きます。採用後の負荷(役所手続き、社宅、生活ルール、相談対応)まで含めて設計する場合、法人向けの受入れ支援サービスを参照しながら体制を組むと抜け漏れを減らせます。

JLPTとJFT-Basicの違い:採用では「証明」と「運用力」を分けて見る

JLPTはレベル(N1〜N5)が直感的で、履歴書に書かれやすい一方、JFT-Basicは生活・就労の基礎日本語を測る設計で、特定技能の日本語試験として制度上も位置付けられています。 ゴエンアップピックスでも、特定技能では「JFT-Basic合格(A2相当)またはJLPT N4以上」が必須条件として整理され、企業側がどちらを基準とするか事前に決める重要性が述べられています。

採用設計としては、次の二段構えが現実的です。

  • 応募要件(足切り):JLPT N4以上 or JFT-Basic合格(制度要件に合わせる)
  • 配属要件(安全・品質):面接の受け答え、指示理解テスト、読み書き(手順書読解)で補完
  • 定着要件(離職予防):相談窓口・生活支援・多言語化で心理的安全性を確保

「証明」は試験で担保し、「運用力」は現場に近い評価で担保する、という切り分けが社内説明に耐えます。


育成就労の日本語要件:開始前A1→1年後〜A2→移行時A2の“段階設計”

育成就労は、技能実習制度を発展的に見直す形で制度化された枠組みとして整理され、Q&Aでは日本語能力要件が段階的に書かれています。具体的には、特定技能1号水準への移行も見据え、日本語教育参照枠A2相当の試験合格などが要件として示されます。 さらに、関係団体のFAQ資料でも、開始までにA1相当、就労開始後1年で分野ごとにA1〜A2の範囲、特定技能1号への移行時にA2相当、といった整理が提示されています。

企業目線で重要なのは、この段階設計が「採用時の日本語力が低めでも、制度として引き上げる前提がある」一方で、「教育コストと運用負荷が必ず発生する」点です。つまり、育成就労は“採用しやすい”というより、“育成前提で採用する”制度です。現場としては、稼働開始時期(いつから独り立ちできるか)、教育担当の工数、手順逸脱リスクを、初期計画に組み込む必要があります。

実務で使える整理として、社内では次のように「時点×要件×リスク」を一枚にまとめると、上長・法務/コンプラの納得が得やすいです。

  • 就労開始前:A1相当(例:N5等)を想定する資料あり
    • リスク:現場指示が通りにくい、ミスの初動が遅い
    • 対策:指示系統を単純化、やさしい日本語、ピクト・写真手順書
  • 就労開始後1年:分野ごとにA1〜A2の範囲で設定
    • リスク:教育未達だと本人意向の転籍条件など制度運用に影響
    • 対策:学習計画をKPI化(週の学習時間、到達度テスト)
  • 特定技能1号移行時:A2相当(例:N4等)
    • リスク:移行できないと計画していた人員構成が崩れる
    • 対策:受験計画の前倒し、再受験・補講の予算枠を確保

育成就労は「育成」と「保護」が制度思想に含まれるため、企業の運用が雑だと、転籍やトラブルとして跳ね返りやすい領域です。生活面の立ち上げ(住まい、役所手続き、日常相談)を含めて、受入れの実務負担を減らすには、受入れ団体支援のような枠組みを参照し、外部支援の活用も早期に検討するのが現実的です。

育成就労は「教育の成果」がコンプラと直結する:記録の残し方まで設計する

育成就労では、日本語教育の実施が“努力目標”ではなく、制度運用上の要件と接続しやすい点がポイントです。 そのため、社内では教育実施を「やった/やってない」ではなく、「いつ・誰が・何を・どの教材で・どのレベルまで」実施したかを記録として残す運用にしておくと、監査やトラブル時の説明力が上がります。

具体的には、(1)教育計画(週次)、(2)出席・受講ログ、(3)小テスト、(4)ヒヤリハット報告(言語要因の切り分け)、(5)面談記録(本人理解度)をセットにします。これにより、現場で起きたミスが「本人の能力不足」なのか「手順書や指示系統の設計不備」なのかを分解でき、再発防止の打ち手が明確になります。


技人国(技術・人文知識・国際業務)は日本語要件が必須ではないが、採用基準は必ず要る

技人国は、出入国在留管理庁の案内ページに申請上の枠組みや提出書類の扱いが示されており、日本語能力試験の合格が制度要件として必須と明記されているタイプではありません。 ただし企業の実務では、技人国は「ホワイトカラー寄り=日本語が不要」と誤解されがちです。実際には、配属先が日本語環境であるほど、N2相当の読解・会議理解がないと生産性が落ち、評価不満や早期離職に繋がります。

技人国の日本語基準を決めるコツは、「職種」よりも「業務コミュニケーションの形」で分解することです。たとえば、(1)日本語で社内調整が多い、(2)顧客対応がある、(3)仕様書・法令・契約書を読む、(4)作業は英語で完結する、のどれに当たるかで必要レベルが変わります。ここを整理せずに採用すると、「内定後に配属できない」「現場が育てきれない」「通訳コストが想定外」になりやすいです。

社内説明用には、次のような“採用基準の型”が便利です(箇条書きだけでなく、理由も添えておきます)。

  • N2相当を推奨:日本語での会議・議事録・調整が必須の職種(PM、営業、バックオフィス)
  • N3相当を目安:日本語での日常業務があるが、文書は定型が多い職種(CS、店舗SV補助など)
  • N4相当でも可:英語運用が中心で、日本語は最低限の生活・安全連絡ができればよい職種(研究補助、社内グローバル部門など)

重要なのは、基準を作って終わりではなく、採用後の支援で“伸びしろ”を前提化することです。定着や生活トラブルの吸収まで考えるなら、24時間365日・多言語の生活相談のような外部支援を組み合わせる発想が、現場負担と離職率を同時に下げます。

特定活動46号など「高い日本語が前提」の例外枠も押さえておく

在留資格によっては、現場就労を広く認める代わりに高い日本語能力が前提となる枠があります。ゴエンアップピックスの特定活動46号の整理では、N1合格またはBJT 480点以上等の要件が示されています。 技人国と混同されやすいので、「現場業務ができる=誰でも良い」ではなく、「制度設計上、誰を対象にしているか」が違う点を社内で共有しておくと、誤った募集要件を出さずに済みます。


“証明”の実務:日本語能力は試験スコアだけでなく、提出物と面接設計で固める

日本語能力を巡るトラブルで多いのは、「本人は話せると言った」「現場は通じないと言っている」といった主観の衝突です。これを避けるには、(1)客観的な証明、(2)業務に近い評価、(3)記録の残る運用、の3点セットが必要になります。特定技能では制度上、JFT-BasicやJLPT等の試験が日本語能力の確認として位置付けられています。 そのため、まずは“証明書で足切り”を整え、次に“面接で配属可否”を判定する形が合理的です。

実務で使える面接・評価の型は次の通りです。

  • 指示理解テスト:2〜3工程の作業指示を口頭で伝え、復唱させる
  • 読み取りテスト:注意書き(禁止事項・安全事項)を読ませ、要点を説明させる
  • 報連相テスト:トラブル発生時の報告テンプレ(誰に・何を・いつ)を言わせる

これらは、試験の“知識”ではなく、現場で必要な“運用力”を測るための設計です。評価基準を点数化しておくと、採用担当が変わってもブレが出にくく、上長説明もしやすくなります。

また、在留資格手続きでは提出書類が外国語の場合に訳文添付が求められるなど、書類運用の基本も押さえておく必要があります。 ここを雑にすると、審査の遅延・差し戻しが起き、稼働開始時期がズレて現場計画に影響します。採用のKPIを「入社日」だけでなく「入管申請完了日」「許可見込み日」まで分解して管理するのが、現場への影響を最小化する実務です。


配属設計で事故/違反リスクを下げる:日本語レベル別に任せる業務を線引きする

日本語能力が足りない状態で“危険工程”に入れると、事故だけでなく、労基・安全衛生・顧客対応のトラブルとして波及します。ここで重要なのは、「日本語が低いから採らない」ではなく、「日本語レベルに応じて任せる業務と責任を段階設計する」ことです。特定技能や育成就労は人手不足の現場で導入されやすいからこそ、配属の設計が採用の成否を決めます。

実務で使いやすいのは、以下のような“レベル別業務設計”です(あくまで目安として、職場の安全要件に合わせて調整します)。

  • N4/A2相当:定型業務、単純工程、指示が短い作業(写真付き手順書で運用)
  • N3相当:例外処理がある工程、顧客対応の補助、複数工程の段取り
  • N2相当以上:安全指示の理解が高度な工程、クレーム一次対応、教育係補助

この設計を運用するには、現場側の準備も必要です。たとえば、手順書のやさしい日本語化、禁止事項のピクト化、指差し確認の徹底、教育担当のアサインなどです。これらは教育コストですが、事故・離職・再採用のコストに比べれば投資対効果が高い領域です。

生活面の詰まり(住居・通信・役所)が原因で欠勤や早期退職が起きるケースも現場では珍しくありません。生活立ち上げや相談対応まで含め、企業側の“見えない工数”を削るなら、法人向け受入れ支援の範囲を確認し、外注と内製の線引きを決めておくとよいでしょう。


コストとスケジュール:日本語要件は「採用単価」より「稼働までのリードタイム」に効く

外国人雇用の意思決定で見落とされやすいのが、日本語要件が“採用単価”だけでなく、“稼働開始時期”に直結する点です。特定技能では試験合格が前提となるため、試験日程・結果待ち・再受験が発生すると、配属計画が後ろ倒しになります。 育成就労は段階要件があるため、開始後1年の到達要件を見据えた教育計画が必要で、教育が遅れると制度運用(転籍条件等)にも影響し得ます。

実務での管理ポイントは、次のようにマイルストーン化することです。

  1. 募集開始(要件定義:在留資格・日本語レベル・配属先)
  2. 選考(試験証明の確認+業務評価)
  3. 入管手続き(提出物の整備、訳文、差し戻し対応)
  4. 来日・生活立ち上げ(住居、通信、行政手続き)
  5. 稼働開始(OJT・安全教育)
  6. 定着(面談、相談窓口、教育継続)

このうち、4の生活立ち上げは、現場の稼働に直接影響します。たとえば、相談窓口がないと小さな不安が欠勤に変わり、管理職が火消しに追われます。24時間365日・多言語対応の生活支援のような外部リソースを組み合わせることで、管理工数を平準化できます。


よくある質問

Q1. 特定技能1号の日本語能力は、結局どれを見れば良い?

制度要件としては、ガイドブックでJFT-BasicやJLPT N4等により日本語能力水準を確認すると整理されています。 実務では「応募要件はN4相当で足切り」「配属可否は面接の指示理解・読解で判断」と二段階にすると、採用後のミスマッチを減らせます。ゴエンアップピックスでも、JFT-Basic(A2相当)とJLPT N4の位置付けが整理されています。

Q2. 育成就労は開始時点でどのくらい日本語が必要?

一次情報として、出入国在留管理庁のQ&Aでは日本語教育参照枠A2相当の試験合格等が示され、段階的な要件が整理されています。 また関連FAQ資料では、開始までにA1相当、1年後に分野ごと設定(A1〜A2範囲)、特定技能移行時にA2相当といった整理が提示されています。 現場としては、開始直後はA1相当を前提に「指示の単純化」と「教育KPI化」を組むのが安全です。

Q3. 技人国は日本語試験が不要なら、採用基準も不要?

不要ではありません。制度要件として試験必須とは言い切れなくても、技人国は業務の性質上、社内調整・文書読解・顧客対応が発生しやすく、日本語力を基準化しないと現場負担が増えます。入管手続き上の提出書類・訳文添付など、書類運用も含めて、採用設計を作り込む必要があります。

Q4. 日本語力が不安な人材でも採用を成立させる現実的な方法は?

配属設計(任せる業務の段階化)と、生活支援・相談窓口で“詰まり”を減らすのが現実解です。たとえば24時間365日・25言語対応の生活支援は、夜間・休日のトラブルも吸収でき、管理職の火消し工数を削れます。 必要に応じて、法人向け受入れ支援の範囲を確認し、内製/外注の線引きを早めに決めると進めやすいです。

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