特定技能をはじめとした外国人社員採用に必要な住居確保支援とは
日本で働く外国人人材が新しい生活を始める際に、スタート地点としての「家」を整えることは非常に重要です。特に、特定技能外国人の場合は、受け入れ企業側に住居確保の支援が義務付けられています。
一方、特定技能以外の在留資格で働く外国人の場合も、日本での生活が快適にスタートできるよう、企業側のサポートが欠かせません。住居選びや契約手続き、さらには家具や生活用品の準備など、彼らが新しい家で安心して過ごせるためのサポートが求められます。
この記事では、外国人人材の採用時に必要となる住居確保のサポートについて、詳しく解説していきます。住宅手配の義務の有無から、賃貸物件の仕組み、必要な各種手続き、社員の生活を支える情報提供まで、企業として知っておくべき情報をまとめました。
社員の生活を支えることは、彼らの仕事へのパフォーマンスにも直結する重要な取り組みです。ぜひ参考にしていただき、外国人社員の採用と定着に役立てていただければと思います。
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外国人人材を採用する際の必要な手続き
外国人の社員を採用し、日本で働いてもらうためには、企業側が行わなければならない手続きがいくつかあります。在留資格の確認や各種書類の準備など、入社前から対応が必要な事項も多くあります。ここでは、外国人の採用に伴って必要となる住居確保の支援について、詳しく見ていきましょう。
採用する外国人社員が住む家を確保する
外国人社員を受け入れる際、企業が最初に考えなければならないのが、彼らの住む場所の確保です。
①特定技能外国人に対して義務付けられている住宅確保支援
特定技能の在留資格で働く外国人材を受け入れる場合、企業側には住居確保の支援が義務付けられています。具体的には、企業が住居を借り上げて社員に提供するか、住居手当を支給するなどして、社員の住まいを保証しなければなりません。
一戸建てやアパートの一室を借り上げて社宅とする場合は、社員の通勤や生活の利便性を考慮した立地選びが重要です。また、社員の出身地域の文化や習慣にも配慮し、彼らが安心して暮らせる住環境を整えましょう。
②社宅の物件や借り上げ社宅制度
自社で社宅を保有していない場合でも、専門の業者を通じて物件を借り上げたり、法人向けのサービスを利用したりと、社宅を用意する方法はいくつかあります。
例えば、特定技能外国人の住居確保支援に特化したサービスを提供している企業では、入居者の母国語で対応可能なスタッフが、住まい探しから入居後の生活サポートまで行ってくれます。言葉の壁に不安を感じる外国人社員にとっては、心強い味方になるでしょう。
また、社宅の確保には、浴室乾燥機など日本特有の設備への説明が必要になるケースも。住宅に詳しい専門家に相談して、トラブルを未然に防ぐのも良いかもしれません。
1. 日本の賃貸物件の仕組みを伝える｜家賃支払い方法と保険など
日本の賃貸物件では家賃の支払い方法や保険の仕組みが、外国人社員の母国とは異なることがよくあります。特に初めて日本で生活する人の場合、日本特有の商習慣に戸惑うかもしれません。
そのため企業側は、賃貸借契約の流れや家賃の支払い方法、火災保険などの保険制度について、外国人社員にもわかりやすく説明する必要があります。専門用語が多く、言葉の壁もあるため、通訳や翻訳サービスを活用するのもおすすめです。
不動産会社との契約に際しては、外国語対応可能なスタッフがいる不動産会社を選ぶと安心です。LINEなどのコミュニケーションアプリを使った連絡体制が整っている会社もあるので、社員とも相談して快適に手続きを進められるよう配慮しましょう。
2. ビザの取得及び更新や住所変更の手続き
外国人社員が日本で働き、生活していくためには、適切なビザの取得が不可欠です。企業側は採用時の在留資格の確認を始め、ビザの取得や更新の際には、必要書類の準備や申請のサポートを行います。
また、住居が確保できたら、社員本人で市区町村役所に住民登録の手続きを行い、住所を変更する必要があります。この手続きを行わないと、健康保険などの各種サービスが受けられないこともあるため注意が必要です。
住民登録の手続きは、日本語の書類の記入が求められることが多く、母国語が日本語でない社員にとっては難易度が高いもの。人事部門や総務部門が同行するなど、社員の負担を軽減するサポートが望まれます。同時に、社内でも住所変更の手続きを行い、緊急連絡先を更新しておくようにしましょう。
また、在留カードの発行・更新・紛失・変更などの手続きも、外国人社員の生活と密接に関わります。こうした手続きの詳細については、以下の記事でご確認ください。
[在留カードの発行・更新・紛失・変更に関わる申請手続きをご紹介]
[【外国人採用】就労ビザ更新に必要な書類や入国管理局での手続方法]
3. 勤務場所や自宅周辺で生活する際に役立つ情報を伝える
日本での生活をスムーズにスタートさせるには、勤務先の周辺情報や、自宅近くの店舗、公共機関に関する情報を伝えることが大切です。
社員食堂やコンビニなどのお昼ご飯事情、日用品を揃えられるスーパーやドラッグストアの場所、最寄りの病院、郵便局、交番など、日常生活に直結する情報を共有しましょう。また、電車やバスの乗り方、運賃の支払い方法など、公共交通機関の利用方法を説明するのも忘れずに。
社員の趣味嗜好に合わせて、金融機関やスポーツクラブなどの情報を提供してくのもおすすめです。日本の四季を楽しめる観光名所や季節の行事なども、生活をより豊かにするヒントになるでしょう。生活情報を冊子にまとめたり、社内イントラネットで共有したりするなど、いつでも確認できる環境を整えておくと安心です。
4.日本人社員側の異文化間コミュニケーション能力を向上させる
日本で働く外国人社員をサポートするには、言葉だけでなく、文化背景の違いを理解し、適切なコミュニケーションがとれることが重要です。企業には、日本人社員の異文化間コミュニケーション能力を高める取り組みも求められます。
例えば、社内研修で多様性や異文化理解をテーマに取り上げたり、日本人社員向けの語学研修を実施したりするのも有効でしょう。
また、社内の日本人社員がメンターとなって外国人社員の相談に乗ったり、国籍を超えた交流会を企画したりするなど、コミュニケーションの機会を増やす工夫も必要です。お互いの文化を尊重し、理解を深め合える環境があれば、外国人社員も働きやすい職場になるはずです。
日本人社員の語学力や異文化対応力を高めることは、外国人社員の採用だけでなく、グローバルに事業を展開していくうえでも欠かせない取り組みと言えるでしょう。
外国人人材の住居確保で考えたい住宅選びのポイント
外国人社員の住居を選ぶ際には、家賃や広さだけでなく、生活のしやすさという視点を持つことが大切です。企業には、社員の立場に立って物件を吟味し、最適な住まいを提案する姿勢が求められます。
ここでは、外国人社員のための住居選びで押さえておきたいポイントを解説します。
立地・交通アクセスの考慮
住居の選定で重視したいのが、職場や生活拠点へのアクセスの良さです。電車やバスでの通勤時間や乗り換えの回数など、社員の負担にならないよう交通の利便性を考慮しましょう。
また、社員の日常生活で必要な場所、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア、病院、郵便局などへのアクセスも確認が必要です。買い物や通院、郵便物の発送など、生活に直結するインフラが整っているかどうかを見極めます。
勤務地と社員の行動範囲を加味し、利便性の高い街を選ぶのがおすすめです。
生活環境とコミュニティの重要性
社員が生活する地域の治安や住民の属性など、生活環境を見極めることも大切なポイントです。特に、駅から物件までの道のりが夜間でも安心して歩けるかどうかは重要です。
地域のコミュニティとの関わりも、外国人社員の生活の質に影響を与えます。町内会などのコミュニティ活動が活発で、外国人を受け入れる土壌があるかどうかを確認しておくと良いでしょう。
社員が地域社会とつながりを持てる環境を整えることは、日本での暮らしの充実度を高める一助となります。
家賃と契約条件の確認
社員の生活を支える住居選びでは、家賃や初期費用など、経済的な負担も見逃せません。社員の給与水準に見合った家賃設定か、必要以上の費用が発生しないかなど、入念なチェックが求められます。
また、社宅として物件を借り上げる場合は、企業側に不利な条件がないかどうか、契約内容を確認することが大切です。原状回復の範囲や退去時の費用負担など、トラブルを避けるためにも、専門家に相談して慎重に進めましょう。
賃貸借契約の際は、外国語対応可能な不動産会社を選ぶなど、社員の理解をサポートする工夫も必要です。
社員のための家探しの重要性
外国人社員にとって、住居は「日本での生活の基盤」ともいえる大切な場所です。企業には、住まい探しのプロセスに寄り添い、社員の希望を叶える努力が求められます。
物件の下見や契約の際は、できるだけ社員本人が立ち会えるようスケジュール調整を。実際の生活をイメージしながら、社員自身が納得できる住まいを選べるようサポートしてあげましょう。
住居は生活の質に直結する大切な要素です。企業と社員が協力して、最適な住まいを見つけられるよう、丁寧なコミュニケーションを心がけることが何より大切だと言えるでしょう。
外国人人材が地域や会社に溶け込むためにできるサポートの例
外国人社員が日本の生活に適応し、企業や地域社会の一員として溶け込むには、言葉や文化面でのサポートが欠かせません。ここからは、企業にできるフォローの例をご紹介します。
言語と文化の習得機会を提供する
日本語の習得は、外国人社員が日本社会に適応するための第一歩と言えます。社内での語学研修の実施や、オンライン学習ツールの提供など、社員の学びを後押しする支援が求められます。
また、日本の文化や習慣を学ぶ機会も大切です。年中行事や冠婚葬祭など、日本特有の慣習を知る異文化交流会を企画するなど、楽しみながら学べる工夫を凝らしてみてはいかがでしょうか。
地域の日本語教室やボランティア団体とも連携し、社員が教室に通いやすい環境を整えるのもおすすめです。仕事だけでなく、プライベートな交流の中で日本語を使える機会を増やすことが、社員の言語習得を促進します。
外国人社員への日本語教育や多文化理解、ライフサポートについて、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
▶︎ 外国人従業員をサポートするには？多文化理解や教育のポイントを解説
地元コミュニティへの参加をサポートする
社員が暮らす地域のお祭りやイベントへの参加を促すことも、生活への適応を後押しする取り組みのひとつです。
例えば、会社として地域の清掃活動や防災訓練などに参加し、社員も一緒に活動する機会を設けてみてはどうでしょうか。地域住民との交流を通じて、社員は自然と日本の文化や生活習慣を学ぶことができるはずです。
町内会との付き合い方や、ごみ出しルールの説明会を社内で開催したり、回覧板をまわしてもらうよう依頼したりと、日本の地域社会の仕組みを知るきっかけを作ることも効果的です。
地元の国際交流協会などが企画する多文化共生イベントへの参加も、外国人社員の交流の幅を広げるチャンスとなります。企業からの参加を呼びかけ、社員の地域とのつながりを応援しましょう。
日本人社員と外国人社員の双方に異文化理解の心構えを伝える
異文化コミュニケーションを円滑に進めるには、日本人社員と外国人社員の双方に、互いの文化を尊重し合う心構えが必要不可欠です。
例えば、宗教上の理由で食べられないものがあることや、それぞれの国の祝日や冠婚葬祭など、文化的背景が反映される事柄への理解を深める研修を社内で実施。お互いにとって「当たり前」が異なることを認識する機会にしてはいかがでしょうか。
何かわからないことがあったら、相手の気持ちを考えつつ、積極的に質問したり、説明したりする姿勢を、社員全員で共有することが大切です。「違い」を恐れるのではなく、尊重し、柔軟に受け止める心のゆとりを、研修などを通じて養っていきたいものです。
わかりやすい日本語表現の方法を日本人社員に研修する
日本人社員が、外国人社員にとってわかりやすい日本語を使えるようになることも、コミュニケーションを円滑にするポイントのひとつです。
専門用語を避け、簡潔でシンプルな表現を使うことを意識づける研修を実施してみてはいかがでしょうか。漢字にはふりがなをつけ、イラストや図を使って視覚的に伝えるスキルなども身につけられると良いですね。
外国人社員とのコミュニケーションでは、相槌や言い換えを多用するのも効果的です。話の内容を正しく理解できているか、何度も確認する姿勢を養うことが求められます。
日本人社員のコミュニケーション力を高めることは、多様な人材が力を発揮できる職場づくりにつながります。「やさしい日本語」を使いこなすスキルは、海外展開を目指すグローバル企業にとって不可欠だと言えるでしょう。
外国人社員の受け入れに際しては、入社後の研修プログラムも重要なポイントです。オンボーディングの進め方や、異文化理解を深めるチームビルディングについては、以下の記事も参考にしてください。
[外国人従業員のオンボーディング：研修プログラムのポイントを解説]
[外国人従業員を活かす！異文化理解のための研修とチーム作りのポイント]
まとめ
外国人社員が日本での生活にスムーズに適応し、企業で活躍するためには、住居の確保を含む生活面でのサポートが重要です。
社員の希望に合った物件選びと賃貸借ルールの説明、行政手続きの同行や書類作成の支援など、社員の負担を減らし、安心して暮らせる住環境を整えることが求められます。加えて、日本の生活習慣や文化を学ぶ機会の提供、地域社会とのつながりを作る交流イベントの紹介など、企業が一丸となって社員の生活を支え、多様な文化背景を尊重する姿勢を示すことが大切です。
こうした取り組みが、グローバルな人材の活躍を後押しし、企業の持続的な成長につながるのです。外国人材の受け入れを通じて、日本企業が世界から選ばれる存在へと進化する。いま、その実現に向けた一歩を踏み出すとき。社員の生活に寄り添う温かい支援の輪が、新時代のビジネスを切り拓いていくでしょう。
