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特別永住者って何?基本知識・永住者との違い・帰化まで徹底ガイド

在留資格の中でも「特別永住者」は、他の外国人とは異なる背景や制度のもとで扱われる在留資格です。

企業が外国人材を受け入れる際には、制度の違いや手続きの特徴を正しく理解しておくことが大切です。

この記事では、特別永住者の定義や対象範囲、永住者との違い、証明書の扱い、そして帰化に関する選択肢まで、企業の人事・採用担当者が押さえておきたいポイントを解説します!

特別永住者とは?ーまずは基本を押さえよう

特別永住者制度は、通常の在留資格とは異なる「特例」の扱いを受ける制度です。

まずは制度の基本情報と対象者について確認しましょう。

特別永住者の意味・定義

特別永住者とは、日本と平和条約を締結した国(主に韓国・朝鮮・台湾)の出身者およびその子孫のうち、1945年以前から日本に居住していた方や、戦後の混乱の中で日本に留まった方々を対象とした在留資格です。

1991年に施行された「入管特例法」により、特別永住者としての法的地位が整備され、在留資格の一種として明確に位置づけられました。

通常の外国人に適用される入管法とは異なる規定が適用されている点が特徴です。

一般的な在留資格と比較すると、以下のような違いがあります:

  • 在留期間の更新が不要(証明書の更新のみ必要)
  • 就労に関する制限なし
  • 在留カードではなく「特別永住者証明書」を所持
  • 一部法令上の届出義務が免除される

特別永住者は何世まで?対象範囲を確認

制度上、特別永住資格は本人の申請により付与されます。

自動的に「何世までは認められる」と決まっているわけではありませんが、実務上は「3世」「4世」の付与例も存在します。

ただし、継承には以下のような条件が求められます:

  • 両親のいずれかが特別永住者であること
  • 本人が日本に出生し、引き続き日本に居住していること
  • 入管特例法第2条の対象者であると認定されること

今後の制度改正によっては、より厳格な要件が求められる可能性もあるため、企業側も状況の把握が必要です。

認定要件

特別永住者と認められるには、以下のような要件を満たす必要があります。

1991年11月1日(入管特例法施行日)以前に特定の条件を有していた方が対象となります。

「平和条約国籍離脱者」およびその子孫

サンフランシスコ平和条約の発効により、戦前から日本国籍を有していた朝鮮・台湾出身者は、条約に基づいて日本国籍を喪失しました。

これにより、「平和条約国籍離脱者」となった人々と、その子孫が特別永住者制度の対象となります。

申請時には、継続的な日本在住の実績や、特例対象としての系譜確認が必要です。

知っておきたい特別永住者制度の背景と歴史

この制度は、戦後の複雑な歴史的経緯の中で誕生し、継続されています。

背景を知ることで、現在の制度運用の理由も見えてきます。

特別永住者の歴史的背景【戦後から現在まで】

1945年の第二次世界大戦終戦後、多くの在日外国人が自国に帰還できず、そのまま日本に定住。

当時は在留資格の整備が不十分で、「仮の滞在」扱いであることも多く、長らく法的な不安定性を抱えていました。

その後、以下のような制度的経緯を経て現在に至ります:

  • 1952年:平和条約発効により日本国籍を喪失
  • 1965年:日韓基本条約の締結
  • 1982年:出入国管理令の改正
  • 1991年:入管特例法の施行

このように、歴史的背景と人道的観点から「特別に認められた永住資格」として制度化されたのが、特別永住者です。

制度が続く理由と「廃止」議論の行方をチェック

特別永住制度は、歴史的経緯への配慮や人権保護の観点から継続されています。

一方で、近年は「他の外国人との公平性」や「時代に即しているか」といった観点から、制度の見直しを求める声もあります。

現状では、廃止や大幅な改正はなされていませんが、国会での議論や一部政治家・識者からは廃止論も出ており、制度の今後には引き続き注視が必要です。

特別永住者証明書とは?手続き・在留カードとの違い

特別永住者には、在留カードの代わりに「特別永住者証明書」が交付されます。

制度上の重要な違いもあるため、企業としても確認しておきましょう。

特別永住者証明書の役割と申請・更新方法

特別永住者証明書は、特別永住者であることを証明する唯一の公的文書です。

交付は市区町村が行い、本人確認の際にも重要な役割を果たします。

主な特徴:
  • 有効期限は16歳以上で7年間
  • 更新通知は市区町村から送付される
  • 紛失時は市区町村で再発行手続きが可能

特別永住者証明書には、顔写真や在留資格、交付日、有効期限などが記載されており、本人確認書類として利用される場面もあります。

企業が採用時に確認する際には、書類の内容と本人情報が一致しているかに加え、偽造防止措置の有無なども確認しておくと安心です。

在留カードとの違いを比較

特別永住者証明書と在留カードは、見た目が似ていても制度的には大きく異なります。

採用時には、在留資格の種別によって必要な対応が異なるため、以下のような点を押さえておきましょう。

項目特別永住者証明書在留カード
対象者特別永住者一般の外国人
管轄市区町村入国管理局
携帯義務違反の罰則なしあり
在留資格の更新不要(証明書のみ更新)あり(資格・カードとも更新)
就労制限なし資格により異なる
雇用時の届出義務免除必須

特別永住者には在留期間の制限がなく、届出義務も一部免除されています。

企業はこの違いを理解し、誤った手続きを避けることが重要です。

参考:「在留カード」及び 「特別永住者証明書」の見方|厚生労働省

通常永住権者との差異と特例措置

特別永住者には、通常の永住者とは異なる特例措置や扱いがあります。

ここでは実務上の違いを見ていきましょう。

登録証明書携帯義務違反における罰則の特例

一般の外国人は在留カードの常時携帯が義務付けられており、違反時には罰則の対象になります。

一方、特別永住者については、携帯義務違反に対する罰則は設けられていません。

雇用対策法に基づく届出義務適用除外

外国人を雇用する場合、雇用状況の届け出がハローワークに義務付けられていますが、特別永住者はこの届出義務の対象外です。

企業側が誤って提出してしまうケースもあるため、資格確認時に「特別永住者」であることを明確に把握しておく必要があります。

特別永住者の権利と義務は?永住者との違いを徹底比較

特別永住者は、日本人とほぼ同等の社会保障制度や公教育を受ける権利があります。

また、就労の制限がないため、企業での就業にも大きな制限はありません。

介護保険の対象年齢(40歳以上)や、国民年金・健康保険の加入義務も日本人とほぼ同様です。

特別永住者の権利・義務【就労・社会保障など】

特別永住者は就労制限がなく、基本的に日本人と同等の社会保障・教育・医療制度の利用が可能です。

また、在留期間に制限がなく、更新義務もありません。

永住者との違いは?メリット・デメリットも

一般の永住者と比較した場合の違いは、以下の通りです:

項目特別永住者永住者
対象特定の歴史的背景を持つ在日外国人幅広い外国人が申請可能
申請の要否原則として自動付与(子孫継承時は申請要)自己申請が必要
更新手続き証明書の更新のみ在留カードの更新+条件付き
権利制限ほぼ日本人と同等若干の制限あり
雇用時の届出免除されている義務あり

資格の喪失について

特別永住者といえども、無期限で資格が保証されているわけではありません。

以下のようなケースで資格が失効する可能性があります:

  • 出国後、再入国許可の期限内に戻らない
  • 証明書の更新手続きを怠った
  • 転居後の住所変更届を提出していない

特に長期渡航時や退職に伴う転居などでは、企業側が本人に更新・届出の案内をすることも有効です。

特別永住者と帰化ー国籍取得の選択肢を考える

制度上、特別永住者は日本国籍を持っていませんが、帰化申請により日本国籍を取得することも可能です。

企業としても、その選択に理解を持つことが大切です。

特別永住者が帰化しない理由とは?

多くの特別永住者は、文化や民族アイデンティティを大切にしたいという思いから、あえて帰化を選ばないことがあります。たとえば:

  • 日本国籍への切替で、民族名を失うことへの抵抗
  • ルーツや出身国とのつながりを維持したい
  • 帰化審査が煩雑であることへの懸念
  • SNSや社会的偏見への不安

制度として帰化は可能であっても、それを選ばない背景には、本人の価値観だけでなく、長い歴史の中で形成された社会的な背景が関係しています。

帰化のメリット・デメリットは?

帰化することで、日本における法的地位が変わり、生活面や就労面での自由度が広がります。

一方で、出身国との関係や文化的な背景に関する懸念から、慎重になる人も少なくありません。

主なメリット:
  • 日本の参政権を取得できる(選挙への参加など)
  • 在留資格の更新手続きが不要になる
  • 日本のパスポートを取得でき、海外渡航がしやすくなる
  • 公務員など一部の職業に就けるようになる
主なデメリット:
  • 出身国の国籍を喪失するケースが多い(二重国籍が認められない場合)
  • 家族間で国籍が異なることで生まれる不一致や手続き上の複雑さ
  • 自身のアイデンティティやルーツとの間で葛藤が生じる可能性

このように、帰化には実務的な利便性がある一方で、個人の価値観や家族関係に大きく関わる側面もあるため、単なる制度選択として割り切れないことが多いのが実情です。

まとめ

特別永住者は、歴史的な経緯に基づいて特別な扱いを受けている在留資格です。

雇用時には在留カードの有無だけで判断せず、「特別永住者証明書」の提示や対象制度の確認が欠かせません。

また、制度の見直しや廃止の議論も続いているため、今後の動向にも注意を払う必要があります。

企業の人事・採用担当者としては、特別永住者制度への正しい理解と、制度変化に対応できる柔軟な体制づくりが求められます。

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