特定技能1号は派遣で雇用できる?正社員雇用との違い・要件・注意点を徹底解説
「人手不足を解消するため特定技能1号の外国人を派遣で受け入れたい」「直接雇用と派遣ではどちらが自社に合っているのか」と検討する企業担当者は少なくありません。しかし特定技能1号の雇用形態には厳格なルールがあり、誤った理解のまま進めると不法就労助長罪などの重大なリスクを抱えることになります。
本記事では、特定技能1号における派遣雇用の可否、派遣が認められる例外分野、派遣元・派遣先それぞれの要件、正社員雇用との違いやコスト構造まで、人事・現場・法務部門への社内説明にも耐える一次情報ベースで整理します。出入国在留管理庁・農林水産省などの公的情報を踏まえた最新の運用を確認しながら、自社の現場稼働や配属計画にどう影響するかを判断できる内容にまとめました。
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特定技能1号は原則として派遣雇用ができない理由

特定技能1号の外国人材は、原則として派遣形態での雇用が認められていません。法務省・出入国在留管理庁の運用要領では「フルタイムとした上で、原則として直接雇用とする」と明記されており、週5日以上、週30時間以上、年間217日以上のフルタイム勤務が前提条件となっています。これは、外国人材の生活基盤の安定を確保し、不安定な就労環境による失踪・行方不明を防止する目的があります。
派遣形態は雇用主と就業先が異なるため、生活支援や労務管理の責任分担が曖昧になりやすく、特定技能制度が掲げる「在留外国人の安定的な就労と生活の保障」という理念と相性が悪い点が、原則禁止の最大の理由です。実際、製造業や建設業、介護分野などで「派遣で柔軟に人材を確保したい」という相談は多いものの、これらは全て直接雇用での対応が必要です。
社内で派遣会社経由の受け入れを検討する場合は、まずこの原則を上長や現場部門に共有しなければ、配属計画や稼働開始時期の見直しが必要になります。
雇用形態の原則と「直接雇用」の定義
直接雇用とは、特定技能外国人と受け入れ企業(所属機関)が直接的に労働契約を締結する形態を指します。労働条件や賃金支払い、社会保険加入、安全衛生管理、生活支援の実施まで、全て受け入れ企業が一次的な責任を負うことになります。週所定労働時間は30時間以上、年間労働日数は217日以上が標準的な目安とされており、短時間勤務やアルバイト的な就労は認められません。
また、賃金は同一業務に従事する日本人と同等以上であることが要件で、入管申請時に「報酬に関する説明書」での説明と立証が求められます。直接雇用の枠組みのなかでは、繁忙期と閑散期で業務量が大きく変わる事業者にとって、雇用調整がしにくいという実務的な課題が生じる場面もありますが、これは特定技能制度全体の前提条件として受け入れる必要があります。
派遣が原則禁止される背景
派遣形態が原則禁止されている背景には、外国人材保護の観点が強くあります。派遣社員は派遣元と雇用契約を結びつつ、派遣先の指揮命令下で業務に従事するため、就業先が短期間で変わったり、就業条件が不安定になったりするリスクがあります。日本語が十分でない外国人材にとって、こうした不安定な働き方は生活面でのトラブルや失踪リスクを高めかねません。
加えて、派遣形態は実態として中間マージンが発生しやすく、本人の手取り賃金が下がる懸念もあります。特定技能制度では「日本人と同等以上の報酬」が厳格に求められるため、派遣を通じた賃金構造は制度趣旨と整合させにくい側面があります。これらの理由から、出入国在留管理庁は派遣形態を例外的な分野に限定する運用を採用しています。
派遣ができないことを誤解した場合の現場リスク
「派遣会社から特定技能の人材を紹介してもらえる」と誤解したまま受け入れを進めてしまうと、不法就労助長罪に問われる可能性があります。これは出入国管理及び難民認定法第73条の2に基づくもので、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科という重い罰則が定められています。
さらに、罰則の対象になった企業は今後5年間、特定技能外国人の受け入れができなくなる欠格事由にも該当します。コンプライアンス部門への説明資料を作成する際は、「派遣で受け入れる」という言葉が制度上の派遣を指すのか、それとも人材紹介を意味するのかを明確に区別することが必要です。なお、紹介会社経由で人材を見つけた上で自社が直接雇用契約を締結する形態は、派遣ではなく直接雇用にあたるため適法です。
例外的に派遣が認められる「農業」と「漁業」分野

特定技能1号の派遣形態が例外的に認められているのは、特定産業分野のうち「農業」と「漁業」の2分野のみです。これは、両分野の業務に明確な季節変動や天候依存性があり、繁閑差が極めて大きいという特殊事情があるためです。たとえば収穫期や漁期に合わせて短期間に労働力を集中投入する必要があり、フルタイムの直接雇用では雇用主と労働者双方にとって柔軟性を欠く結果になりかねません。
農業や漁業の派遣形態では、派遣元事業者が複数の農家・漁業者へ人材を派遣することで、外国人材は通年で安定的に就労機会を得られ、受け入れ側も繁忙期だけ機動的に人手を確保できるという、双方にメリットがある構造が成立します。ただし、派遣元・派遣先ともに通常以上に厳格な要件を満たす必要があり、一般的な人材派遣会社が参入できる仕組みではない点には注意が必要です。これら以外の介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業の14分野では派遣は一切認められていません。
農業分野で派遣が認められる理由と業務範囲
農業分野では、播種・育苗から定植、施肥、防除、収穫、選別、出荷準備までの一連の工程で繁閑差が顕著に表れます。たとえば露地野菜では収穫期に人員を集中投入する必要がある一方、冬場の閑散期は最低限の人員で運営できるケースが多く、年間を通じた直接雇用では非効率になりがちです。畜産農業も繁殖期や出荷時期で業務量が変動するため、同様の事情があります。
このような季節性の強さを踏まえ、派遣元事業者が複数の農業者と派遣契約を結び、繁忙期に応じて派遣先を切り替える運用が認められています。耕種農業・畜産農業のいずれも対象で、付随的な選別・包装・運搬作業も業務範囲に含まれます。なお、派遣先・派遣元の双方が農業特定技能協議会への加入や協力義務を果たす必要があり、加入を怠ると受け入れが停止される処分の対象となります。
漁業分野で派遣が認められる理由と業務範囲
漁業分野でも、漁期や魚種の違いによる繁閑差が派遣容認の根拠となっています。沿岸漁業では魚種ごとの漁期が異なり、ある時期は集中的に労働力が必要でも、別の時期は出漁が減るため通年雇用が成立しにくいケースがあります。同じ地域でも対象魚種や産品によって作業ピークが異なるため、派遣による横断的な労働力配分が現実的な解決策となります。
業務範囲は漁業(採捕・漁具操作など)と養殖業(育成管理・収穫など)に分かれ、漁協や漁業協同組合連合会が派遣元事業者となるケースが一般的です。特定技能の登録支援機関としての機能を併せ持つこともあり、本人への生活支援と就業機会の提供を一体的に行う形が定着しています。漁業特定技能協議会への加入・協力義務も農業と同様に求められます。
農業・漁業以外で「派遣に近い柔軟性」を確保する方法
農業・漁業以外の14分野では派遣が認められませんが、繁閑差や季節変動に対応する代替策はいくつかあります。まず、特定技能とは異なる在留資格を持つ外国人(永住者・定住者・日本人の配偶者など、就労制限のない身分系資格保持者)であれば、通常の人材派遣を活用できます。また、留学生の資格外活動許可(週28時間以内)を活用したアルバイト雇用も選択肢となります。
さらに、複数の関連会社で特定技能外国人を採用し、グループ内で配置を調整する方法もありますが、この場合も各社が直接雇用契約を結ぶ前提となります。短期的な労働力確保には派遣以外の手段が必要であることを踏まえ、長期的な人員計画と特定技能の活用方針を切り分けて検討することが、現場混乱を避けるポイントになります。
派遣元事業者・派遣先事業者に求められる要件
農業・漁業分野で特定技能外国人を派遣形態で受け入れる場合、派遣元と派遣先の双方が厳しい要件をクリアする必要があります。一般的な派遣会社が安易に参入できる仕組みではなく、業界とのつながりや法令遵守体制が必須となる点が大きな特徴です。これは外国人材を保護する観点と、特定技能制度の信頼性を維持する観点の両面から設計されています。
特に派遣元事業者には、業界関係性に関する固有要件が課されており、農業協同組合(JA)や漁業協同組合、もしくはそれらが過半数出資する団体などが想定されています。派遣先事業者には、労働法令・社会保険・租税の遵守、過去1年以内の解雇や行方不明者発生がないこと、欠格事由に該当しないことなど、所属機関と同等の要件が課されます。これらは受け入れ前だけでなく、受け入れ期間中も継続して満たし続ける必要があり、違反した場合は受け入れ停止処分や5年間の受け入れ禁止といった重い処分が下されます。
派遣元事業者に必要な要件
派遣元事業者になるためには、農業・漁業共通で次の4項目のいずれかに該当することが求められます。1つ目は当該分野(農業または漁業)の業務またはこれに関連する業務を行っている事業者、2つ目は1つ目または地方公共団体が資本金の過半数を出資している事業者、3つ目は地方公共団体の職員や1つ目の役職員が役員を務めるなど業務執行に実質的に関与している事業者、4つ目は農業分野の場合、国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定機関(国家戦略特区での農業支援外国人受入事業実施事業者)です。
加えて、労働者派遣事業の許可を取得していること、派遣元責任者の選任、特定技能協議会への加入、義務的支援10項目の実施または登録支援機関への委託など、複層的な要件を満たす必要があります。一般的な人材派遣会社からの派遣はできず、JAや漁協など業界に根ざした組織が中心となるのはこのためです。なお、JAグループでも金融サービスの貯金量によっては派遣事業の許可が下りない場合があり、組織内での事業範囲調整が必要なケースもあります。
派遣先事業者に必要な要件
派遣先事業者は、農業・漁業共通で次の5つの要件を全て満たす必要があります。第1に労働・社会保険・租税に関する法令の遵守、第2に過去1年以内に特定技能外国人が従事する予定の業務と同種の業務に従事していた労働者を会社都合で離職させていないこと、第3に過去1年以内に派遣先の責めに帰すべき事由により行方不明の外国人を発生させていないこと、第4に刑罰法令違反による罰則を受けていないなどの欠格事由に該当しないこと、第5に農業・漁業特定技能協議会が行う情報提供・意見聴取・現地調査などの活動に必要な協力を行うことです。
農業分野では追加要件として、過去5年以内に同一業務で技能実習生を含めた労働者を6カ月以上雇用した実績があるか、もしくは派遣先責任者講習を受講して派遣先責任者を専任することが求められます。これは派遣された外国人材の就業環境を適切に管理するための仕組みで、受け入れ初期から責任体制を明確にする狙いがあります。受け入れ期間中もこれらの要件を継続的に満たす必要があり、要件を欠いた場合は受け入れ停止処分の対象となります。
派遣可能エリアと協議会加入の実務
派遣の対象地域は、派遣元責任者が日帰りで派遣労働者からの苦情処理を行える範囲に限定されます。派遣元と派遣先の所在地が遠方にある場合は、派遣形態での受け入れが認められないため、事前に派遣元の対応可能エリアを確認することが必要です。これは外国人材が労働環境について相談したい場合に、迅速に対応できる体制を維持する目的で設けられています。
協議会加入については、派遣形態の場合、所属機関である派遣元事業者が農業・漁業特定技能協議会へ加盟する義務を負います。派遣先事業者は加盟義務こそありませんが、協議会からの情報提供要請や現地調査への協力義務が課されます。
立ち入り調査や帳簿書類の提出が発生する可能性もあるため、派遣先側でも必要書類の整備と日常的な記録管理を行うことが重要です。労働者派遣法と特定技能制度で要件が重複する場合は、より厳しい方の規定を採用する必要があるため、両法令の整合性チェックは派遣元事業者の重要な役割となります。
特定技能1号の派遣雇用と正社員雇用の違いを比較
派遣雇用と正社員雇用(直接雇用)の違いを正しく理解することは、配属計画やコスト試算、稼働開始時期の見積もりに直結します。派遣はあくまで農業・漁業の例外であり、それ以外の14分野では正社員雇用(直接雇用)が唯一の選択肢である点を踏まえつつ、両者の特徴を整理しておきましょう。
派遣雇用は雇用主と就業先が異なり、繁閑期に応じて柔軟に人員を調整できるメリットがある一方、派遣手数料の発生や就業先での指揮命令範囲の限界などのデメリットもあります。
正社員雇用(直接雇用)は長期的な戦力化と業務の柔軟な割り当てが可能で、教育投資の回収もしやすい一方、閑散期の雇用維持コストや採用活動・支援体制の構築といった負担が大きくなります。社内検討ではこの両面を整理して、自社の業務サイクルとリスク許容度に合わせて選択することが求められます。
雇用形態の違いを表で整理
派遣雇用と正社員雇用(直接雇用)の主要な違いを以下の表にまとめます。意思決定の出発点として活用してください。
| 比較項目 | 派遣雇用(農業・漁業のみ) | 正社員雇用(全16分野) |
|---|---|---|
| 雇用契約締結先 | 派遣元事業者 | 受け入れ企業(所属機関) |
| 指揮命令 | 派遣先事業者 | 受け入れ企業 |
| 勤務形態 | フルタイム | フルタイム(週30時間以上) |
| 繁閑対応 | 複数派遣先で柔軟調整可 | 閑散期も雇用維持必要 |
| 生活支援責任 | 派遣元事業者 | 受け入れ企業 |
| 協議会加入義務 | 派遣元事業者 | 受け入れ企業 |
| コスト構造 | 派遣料金(人件費+手数料) | 給与+社会保険+支援費用 |
| 長期戦力化 | 派遣先変更により流動的 | 長期定着しやすい |
派遣雇用は事務負担を派遣元に委ねられる利点がある反面、業務指示の範囲が派遣契約に限定されるため、関連業務への柔軟な配置転換が難しいケースがあります。正社員雇用は業務範囲を広く取れる一方、義務的支援10項目の実施や入管手続きの対応など、企業内に外国人雇用に関する知見を蓄積する必要があります。
コストと稼働開始時期の比較
コスト面では、派遣雇用は派遣料金として給与相当額に加えて派遣元の管理費・手数料が上乗せされるため、月額単価では正社員雇用より高くなる傾向があります。一方、社会保険手続きや給与計算、生活支援などの間接コストは派遣元が担うため、人事部門の事務負担は軽減されます。正社員雇用は給与に加えて社会保険料の事業主負担、住居支援、日本語学習支援、相談対応などの実費が発生し、義務的支援を外部の登録支援機関に委託する場合は1人あたり月額2〜3万円程度の支援委託費がかかるのが相場です。
稼働開始時期は、派遣雇用の場合、派遣元が既に在留資格を取得済の人材を抱えていれば数週間程度で稼働可能なケースもあります。海外からの新規受け入れになると、在留資格認定証明書交付申請から査証発給、入国、生活立ち上げまで含めて4〜6カ月程度を要するのが一般的で、これは正社員雇用でも派遣でも大きく変わりません。社内の予算策定や配属計画では、この準備期間を必ず織り込む必要があります。
リスクと法令遵守上の違い
派遣雇用では、派遣先と派遣元の責任分担が労働者派遣法に基づいて明確化されている反面、両者の連携不足が起きると外国人材への支援漏れが発生しやすくなります。たとえば派遣先での労働災害発生時の対応、苦情処理、就業条件の変更通知などで、責任の所在が曖昧になるケースが想定されます。派遣先管理台帳の作成義務や派遣元への通知義務など、派遣特有の事務手続きが追加で発生する点にも留意が必要です。
正社員雇用では、企業が一元的に責任を負うため意思決定が速い反面、入管法・労働法・社会保険関係法令を全て自社で把握・遵守する必要があります。義務的支援10項目(事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続き同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期面談・行政機関への通報)の実施は、登録支援機関への委託が可能ですが、最終的な責任は受け入れ企業に残る点を社内法務部門と共有することが重要です。
派遣で特定技能1号を受け入れる際の注意点とリスク

派遣形態での受け入れが可能な農業・漁業分野でも、運用上の注意点とリスクを正確に把握しておかなければ、思わぬトラブルや行政処分につながる可能性があります。特に、特定技能制度と労働者派遣法の両方を遵守する必要がある点、不法就労助長罪のリスク、コスト増要因の見落としは、社内決裁や上長説明の段階で必ず押さえておきたいポイントです。
派遣を活用する場合は、派遣元事業者の選定段階から協議会加入状況や許可状況を確認し、契約書には特定技能制度に基づく支援責任の範囲、賃金水準、就業場所、業務内容、苦情処理体制などを明記する必要があります。受け入れ後も、派遣先管理台帳の整備、定期的な就業状況の報告、賃金支払いの妥当性確認、生活支援の実施状況のモニタリングが欠かせません。これらを怠ると、入管庁からの指導や受け入れ停止処分を受ける可能性があります。
不法就労助長罪と欠格事由のリスク
不法就労助長罪は、外国人を不法に就労させた場合や、不法就労を斡旋した場合に問われる罪で、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科という重い罰則が科されます。特定技能1号を本来派遣できない14分野で派遣として受け入れた場合、または許可のない派遣元から受け入れた場合は、この罪に該当する可能性が高くなります。
罰則を受けた場合、その後5年間は特定技能外国人の受け入れが認められなくなる欠格事由にも該当し、企業活動への影響は極めて大きくなります。また、過去1年以内に同種業務の労働者を会社都合で離職させた場合や、自社の責めに帰すべき事由で行方不明者を発生させた場合も、新規の受け入れが1年間認められません。コンプライアンス部門と人事部門で、過去の解雇事案や離職事案を整理し、要件を満たしているかを事前に確認しておくことが必要です。
労働者派遣法と特定技能制度の整合性
労働者派遣法では派遣期間が原則3年と定められていますが、特定技能1号では通算5年までの就労が認められています。この場合、より厳しい労働者派遣法の3年規定が適用されるため、3年を超えて同一の派遣先で就労を続けることはできません。3年経過後は派遣先の変更、もしくは派遣先での直接雇用への切り替えが必要となります。
また、派遣元責任者は派遣労働者からの苦情に日帰りで対応できる範囲内に派遣する必要があるため、派遣可能エリアが地理的に制限されます。労働者派遣事業の許可、派遣元・派遣先管理台帳の作成、派遣先責任者の選任など、派遣特有の手続きを全てクリアしなければなりません。特定技能制度独自の協議会加入義務、義務的支援10項目の実施、四半期ごとの届出など、両制度の事務負担が重なるため、運用体制の設計には十分な時間を確保することが推奨されます。
賃金・労働条件の妥当性確保
特定技能制度では「日本人と同等以上の報酬」が要件となっており、派遣雇用の場合も同様です。派遣元と派遣先の間で派遣料金が決まる際に、本人への支給額が同業同地域の日本人労働者の水準を下回らないよう、派遣料金の構造を派遣元と確認する必要があります。賃金台帳・労働条件通知書・派遣契約書の整合性が取れていないと、入管申請や更新時に不許可となるリスクがあります。
労働条件通知書は日本語と本人の母国語の二言語で作成することが推奨されており、賃金、労働時間、休日、残業割増率、寮費・光熱費の控除額(控除総額の上限は月額の25%が目安)を明確に記載する必要があります。派遣契約書には就業場所、業務内容、苦情処理体制、安全衛生管理の責任分担などを明記し、派遣先の指揮命令範囲を明確にしておくことで、後日のトラブルを回避できます。
よくある質問
特定技能1号の派遣雇用について、企業担当者から特に多く寄せられる質問をまとめました。社内説明や法務確認の際の参考としてご活用ください。
特定技能1号は本当に農業・漁業以外で派遣できないのですか
はい、出入国在留管理庁の運用要領で明確に定められており、農業・漁業以外の14分野(介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業)では派遣形態での受け入れは一切認められません。誤って派遣として受け入れた場合、不法就労助長罪に問われる可能性があり、罰則を受けると5年間特定技能の受け入れができなくなります。社内で派遣会社からの提案を検討する場合は、必ず雇用形態が「直接雇用への人材紹介」なのか「派遣」なのかを契約書面で確認してください。
派遣会社からの紹介で正社員として受け入れることは可能ですか
可能です。人材紹介会社が特定技能1号の候補者を紹介し、自社が直接雇用契約を結ぶ形態は派遣ではなく「人材紹介」にあたり、全16分野で適法に活用できます。この場合、紹介会社に紹介手数料を支払い、入社後の雇用関係は自社と本人の間で完結します。日本語スキルや実務経験を踏まえた候補者選定、入管手続きの代行、生活支援の委託など、紹介会社のサポート範囲は様々ですので、自社の業務体制に合うパートナー選定が重要となります。
特定技能2号でも派遣形態は認められないのですか
特定技能2号も派遣に関する規定は1号と同様で、農業・漁業分野以外では派遣形態での受け入れは認められていません。2号は熟練技能を有する外国人向けの在留資格で、在留期間の更新に上限がなく、要件を満たせば家族帯同も可能ですが、雇用形態については特定技能制度全体の枠組みに従います。長期戦力化を見据えた1号から2号への移行を検討する場合も、直接雇用での雇用関係を維持することが前提になります。
派遣元事業者になるには労働者派遣事業の許可だけで十分ですか
労働者派遣事業の許可だけでは不十分です。特定技能の派遣元事業者になるには、農業・漁業分野での業界関係性(業務を行っている事業者、JAや漁協など団体が過半数出資する事業者など)の要件、特定技能協議会への加入、義務的支援10項目の実施体制、派遣元責任者の選任など、複数の要件を全て満たす必要があります。一般的な人材派遣会社が単独で参入することは想定されておらず、業界に根ざした組織が中心的な担い手となっています。
派遣で受け入れる場合、義務的支援は誰が行うのですか
派遣形態の場合、所属機関である派遣元事業者が義務的支援10項目の実施責任を負います。派遣元が自社で支援を行うか、登録支援機関に委託する形が一般的です。派遣先事業者は支援の直接的な責任は負いませんが、就業環境の整備、派遣先管理台帳の作成、苦情への適切な対応など、派遣先としての責務は果たす必要があります。支援内容や役割分担は派遣契約書と支援計画書で明確化することがトラブル防止の基本です。
受け入れ開始までにどれくらい時間がかかりますか
海外から新規に呼び寄せる場合、派遣・直接雇用とも4〜6カ月程度を見込むのが一般的です。在留資格認定証明書交付申請に1〜2カ月、査証発給に1〜2週間、渡航準備と入国、住居確保や生活オリエンテーションを経て稼働開始までさらに数週間を要します。日本国内で既に他の在留資格や特定技能で在留している人材を採用する場合は、在留資格変更許可申請に1〜2カ月程度で済むケースもあります。配属計画や事業計画への組み込みでは、この準備期間を前提として工程を逆算することが重要です。