在留資格「技能」とは?取得要件から申請手続きまで解説!対象職種・業務内容も紹介

在留資格「技能」の調理師が調理をしている様子

近年、飲食店で外国人の料理人を見かけることも増えました。

こうした人材は在留資格「技能」に該当します。

この在留資格は料理人だけでなく、建築技術者やスポーツ指導者なども対象で、職種ごとに申請要件や必要書類が異なる、少し特殊な資格です。

本記事では、在留資格「技能」の対象職種や取得要件、申請手続き、企業が採用時に注意すべきポイントまで、詳しく解説します。

◆外国人の採用を検討中の企業様には、自社のニーズにあった外国人材を紹介してくれる「GTN」の利用がおすすめです!無料相談から始めて、グローバルな人材の力をビジネスに活かしましょう。

在留資格「技能」とは?

まずは基本的な在留資格「技能」について解説していきます。

在留資格「技能」とは、日本の公私の機関との契約に基づき、産業上の特殊な分野で熟練技能を要する業務に従事するための在留資格です。

就労系の在留資格の一つであり、高度な専門性や技術を有する外国人材が対象となる制度でもあります。

特定技能や他の在留資格との違いは?

在留資格「技能」は、名称が似ている「特定技能」や「技能実習」、さらに「技術・人文知識・国際業務」と混同されやすいため、違いを理解しておきましょう。

【特定技能】

  • 比較的新しい在留資格(2019年4月創設)
  • 高度な技能は不要で、比較的単純な業務に従事する外国人向け
  • 介護、ビルクリーニング、電子機器組立など14の産業分野が対象
  • 「技能」と異なり、高度専門性よりも国内の人材不足解消が主目的

【技能実習】

  • 技能習得を目的として来日する外国人向けの在留資格
  • 就労を主目的とせず、日本の技術や技能を学ぶことが前提
  • 農業、漁業、建設などの分野が中心で、特定技能と重複する領域もあり

【技術・人文知識・国際業務】

  • 高度な専門性を有する人材向けではあるが、業務は学術・技術・事務的分野が中心
  • 「技能」と異なり、産業上の特殊技能の有無は判断基準にならない

このように、3つの資格と「技能」を比較すると、目的・対象業務・求められる技能レベルがそれぞれ異なることが分かります。

企業は採用時に、この違いを正しく理解して適切な在留資格での受け入れを判断しましょう。

在留資格「技能」の対象となる分野

この在留資格で認められる産業上の特殊な分野は、以下の3つのカテゴリーに分かれています。

それぞれに該当する職種が定められており、次の9つの業務に従事することが可能です。

  1. 外国に特有な産業分野
  2. 日本の水準よりも外国の技能レベルが高い産業分野
  3. 日本で従事する技能者が少数しかいない産業分野
基準省令職種
1号外国料理の調理師
2号建築技術者
3号外国特有製品の製造・修理
4号宝石・貴金属・毛皮の加工職人
5号動物の調教師
6号海底掘削・海底鉱物探査の技術者
7号航空機操縦士(パイロット)
8号スポーツ指導者
9号ワイン鑑定等(ソムリエ)

在留資格「技能」の職種ごとの要件

ではそれぞれの職種ごとに、在留資格「技能」の取得要件を詳しく見ていきましょう。

1号:外国料理の調理師

熟練した外国料理の調理技能を持つ調理師が対象です。

中国料理、フランス料理、インド料理などが含まれ、パンやデザート製造も該当します。

  • 10年以上の実務経験
  • 外国の教育機関で当該分野を専攻した期間も実務経験に含む
    ※日タイEPA協定に基づく短縮要件適用例あり

企業にとっては、高度な調理技術を活かした商品開発や店舗運営に貢献できる人材です。

2号:建築技術者

日本に存在しない外国特有の建築工法や土木技術を持つ大工や職人が対象です。

ゴシック様式や中国式建築などが含まれます。

  • 10年以上の実務経験
  • 指揮監督下で従事する場合は5年以上で可 

企業は外国技術の導入や独自建築プロジェクトに活用可能です。

3号:外国特有製品の製造・修理

ヨーロッパ特有のガラス製品、ペルシャ絨毯など、日本にない製品の製造・修理を行う技術者が対象です。

  • 10年以上の実務経験
  • 教育機関で専攻した期間も実務経験に含む 

伝統工芸品や特殊製品の技術継承に寄与します。

4号:宝石・貴金属・毛皮の加工職人

宝石、貴金属、毛皮加工に熟練した技能を持つ職人が対象です。皮革加工は除外されます。 

  • 10年以上の実務経験
  • 教育機関で専攻した期間も実務経験に含む

高級装飾品や専門加工業務での戦力になります。

5号:動物の調教師

動物園やサーカスで動物の調教に従事する調教師が対象です。

  • 10年以上の実務経験
  • 教育機関で専攻した期間も実務経験に含む 

安全で高度な調教技術を現場で活かせます。

6号:海底掘削・海底鉱物探査の技術者

石油・地熱・海底鉱物資源の探査に関わる高度な技術者が対象です。

  • 10年以上の実務経験
  • 教育機関での専攻期間も実務経験に含む

国際的な海洋資源開発プロジェクトに対応可能です。

7号:航空機操縦士(パイロット)

定期便航空機の操縦に従事する熟練パイロットが対象です。

  • 250時間以上の飛行経験
  • 航空運送事業に従事

国際線運航や安全管理に寄与できます。

8号:スポーツ指導者

競技・生涯スポーツで高度な指導技能を持つ指導者が対象です。

  • スポーツの指導について3年以上の実務経験
  • スポーツ選手としてオリンピック、世界選手権などの国際大会への出場経験

地域・国際スポーツ振興に活用可能です。

9号:ワイン鑑定等(ソムリエ)

ワイン鑑定・提供に熟練した技能を持つソムリエが対象です。

  • 5年以上の実務経験
  • 国際ソムリエコンクールで入賞以上の賞を獲得
  • 国際ソムリエコンクール(出場者が一国につき一名に制限されているもの)に出場したことがある
  • ワイン鑑定等に係る技能に関して国、地方公共団体またはこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する

高級ワインサービスや店舗運営の質向上に役立ちます。

在留資格「技能」の申請の流れ

企業が在留資格「技能」を活用するには、申請フローを正しく理解することが重要です。

ここでは共通要件、必要書類、手続きの流れ、更新や他資格との違いを紹介します。

共通要件(報酬・待遇など)

在留資格「技能」を取得するには、日本人と同等以上の報酬・待遇が必要です。

企業は待遇水準を確認し、適切な労働環境を整備することが求められます。

申請に必要な書類

在留資格認定証明書申請書、職務経歴書、教育機関での専攻証明などが必要です。

職種ごとに書類の詳細は異なるため、詳しくは出入国在留管理庁のページをご参照ください。

申請の手続きフロー

在留資格「技能」を取得する際には、いくつかのステップを踏む必要があります。

  1. 在留資格認定証明書の交付申請(企業側)
    まず、企業が出入国在留管理庁に対して、外国人が就労するための在留資格認定証明書の交付を申請します。
  2. 在留資格認定証明書の送付
    申請が受理され、交付された証明書は企業を通じて外国人労働者へ送付されます。
  3. ビザ申請(外国人側)
    外国人労働者は受け取った証明書を含め、必要書類をそろえて在外日本公館でビザを申請します。
  4. 来日、就労開始
    ビザが交付されると、日本に来日して正式に就労を開始することができます。

この手順を押さえて、外国人材の採用準備や社内調整をスムーズに進めましょう。

更新・変更時のポイント

在留資格「技能」は、更新や変更の申請時にも審査があります。

企業として注意すべきポイントは以下です。

  • 従事する業務内容:職種が対象分野に適合しているか、変更がないか
  • 報酬・待遇:日本人と同等以上の報酬・勤務条件が維持されているか
  • 実務経験:必要な経験年数や教育機関での専攻期間が満たされているか

これらを事前にチェックし、書類の不備や条件の不適合を防ぐことで、更新や変更申請をスムーズに進められます。

企業が知っておくべき在留資格「技能」活用のポイント

高度な技能を持つ外国人材を採用し、職場で最大限に活かすためには、採用前の確認や待遇・労働環境の整備、スムーズな社内体制づくりが重要。

ここでは企業が取り組むべき具体的なポイントを解説します。

採用前に確認すべきこと

外国人材を採用する際は、職種が在留資格「技能」の対象分野に該当するか、取得要件を満たしているかを確認することが重要です。

具体的には、次の書類や情報をチェックします。

  • 在留資格認定証明書
  • 実務経験証明書
  • 教育機関での専攻証明

これらを事前に確認しておくことで、申請手続きのスムーズさを確保できるだけでなく、採用後のトラブルも防ぐことができます。

また、社内承認フローや部署間の調整も事前に決めておくと、採用計画通りに入社・就労開始を進めやすくなります。

待遇や労働環境の整備

外国人材が安心して働き、能力を発揮できるようにするためには、待遇や労働環境の整備が不可欠です。

ポイントとしては以下の項目が挙げられます。

  • 日本人と同等以上の報酬・勤務条件の確保
  • 福利厚生や休暇制度の整備
  • 社内での語学・文化サポート(通訳、マニュアル、メンター制度など)
  • 定期的な面談やフォローアップの実施

これらを整えることで、外国人材が職場に早く適応できるだけでなく、チーム全体の円滑なコミュニケーションや長期的な定着にもつながります。

外国人材の活用で得られる企業メリット

高度な技能を持つ外国人材の力を最大限に活かすと、企業にとってさまざまなメリットがあります。

例えば、以下のような効果が期待できます。

  • 高度な技能を活かした事業拡大や製品開発の推進
  • 海外技術や知見の導入による国際競争力の強化
  • 多様な視点によるサービス改善や新規事業の創出
  • 社内の語学力・異文化対応力の向上

これらを実現するために、企業は採用前から環境整備やフォロー体制を整え、外国人材が持つ専門スキルや経験を最大限活用できる体制を構築しておくことが重要です。

まとめ

在留資格「技能」を正しく理解することは、企業が高度な専門性を持つ外国人材を採用するうえでの第一歩です。

採用にあたっては、職種や取得要件の確認に加え、待遇や労働環境の整備、文化や語学面でのサポートを事前に行うことが大切です。

こうした準備を整えることで、外国人材の能力を職場で最大限に発揮させ、自社の戦力として定着させることができます。

その結果、事業の国際化や競争力の向上といった成果につなげることができるでしょう。

参考: 在留資格「技能」 | 出入国在留管理庁

関連記事