特定技能と技能実習の違いを徹底解説!メリット・移行方法も紹介

特定技能として日本で働く外国人たちの後ろ姿

外国人採用を進めるうえで、「特定技能」と「技能実習」の違いを理解しておくことは重要です。目的や在留期間、転職の可否などを把握しておけば、採用計画や受け入れ体制をより適切に整えることができます。

この記事では、両制度の違い、移行方法、メリット・デメリットを整理し、採用戦略に役立つ情報をわかりやすく解説します。

「特定技能」と「技能実習」とは?仕組みと目的

外国人雇用の制度にはいくつか種類がありますが、中でも「特定技能」と「技能実習」は採用現場でよく比較されます。まずはそれぞれの制度の基本から見ていきましょう。

特定技能制度とは

特定技能は、深刻な人手不足を補うため2019年に新設された在留資格です。特定技能には「1号」と「2号」があり、1号は一定の技能と日本語能力を持つ外国人を最大5年間雇用でき、2号は熟練した技能を持つ外国人を在留期間の制限なく雇用できます。企業にとっては即戦力を長期的に確保できる点が大きなメリットです。

技能実習制度とは

技能実習制度は、国際貢献と技能移転を目的として設計された制度です。外国人が日本で技能を学び、帰国後に母国で活かすことが想定されています。

なお、この制度は2027年から「育成就労制度」へと移行する予定であり、今後はより実態に即した制度設計が進められていきます。

参考:育成就労制度 | 出入国在留管理庁

【比較表あり】特定技能と技能実習の10の違いをチェック!

特定技能と技能実習は、目的や仕組みが異なるため、全体像を把握しておくことが重要です。

比較項目特定技能技能実習
目的人手不足を補うための就労制度技能移転と国際貢献を目的とした研修制度
就業可能な職種・作業内容16分野で幅広い業務に従事可能90職種・156作業と細かく限定
技能水準・試験要件技能試験・日本語試験合格が必要(同分野の実習修了者は免除)入国時は不要、在留中に段階ごとに技能評価試験
働き方・労働条件時間外労働・夜勤も可能(法令の範囲内)原則制限あり、必要最小限の時間外労働のみ可
在留期間1号は通算5年、2号は上限なし1号〜3号で最大5年
給与・待遇日本人と同等以上の報酬必須、社会保険加入義務あり最低賃金以上が必要で、監理団体が手続きをサポート
転職可否同一分野内で転職可原則不可、転籍許可が必要
家族帯同1号不可、2号は要件満たせば可能原則不可
受入れ人数分野ごとに枠あり、企業ごと制限はなし(例外あり)企業規模に応じて人数枠設定
関係団体・受入れ方法企業と本人の雇用契約が基本、登録支援機関が介在する場合あり監理団体・送り出し機関・実習機構が関与

1. 目的の違い

特定技能は日本の人手不足を補うために創設された制度で、就労が前提です。

一方、技能実習は技能移転を通じた国際貢献が目的で、研修的な性格が強い制度です。

2. 就業可能な職種・作業内容の違い

特定技能は16分野(介護・外食・建設など)で幅広い業務に従事できます。

技能実習は90職種・156作業と細かく定められており、修得する技能に対応した作業のみ就労可能です。

3. 求められる技能水準・試験の違い

特定技能では技能試験と日本語試験の合格が必要(同分野の技能実習修了者は免除)。

技能実習は入国時点では試験不要で、在留中に段階ごとに技能評価試験を受けます。

4. 働き方・労働条件の違い

特定技能は時間外労働や夜勤も含め、労働基準法の範囲で通常の雇用と同様に勤務可能です。

技能実習は研修目的のため、原則時間外労働は制限されます(必要最小限の範囲のみ可)。

5. 在留期間の違い

特定技能1号は通算5年まで更新可能、2号は更新上限はありません。

技能実習は1号〜3号で合計5年までが上限です。

6. 給与・待遇の違い

特定技能は日本人と同等以上の報酬が必須です。

技能実習も最低賃金以上が必要ですが、実際の水準は事業所によって差が生じる場合があります。

7. 転職可否の違い

特定技能は同一分野内で転職可能です。

技能実習は原則転職不可で、就業先が変わる場合は「転籍」として入管・監理団体の許可が必要です。

8. 家族帯同の違い

特定技能1号は不可、2号は要件を満たせば家族帯同は可能です。

技能実習は不可です。

9. 受入れ人数の違い

特定技能は分野別の上限はあるものの、基本的に企業ごとの人数制限はありません(建設・介護分野は例外)。

技能実習は企業規模に応じた受入枠が厳密に決められています。

10. 関係団体の違い

特定技能は企業と本人の雇用契約が基本。必要に応じて登録支援機関が介在します。

技能実習は監理団体・送り出し機関・技能実習機構など複数の関係団体が関与します。

参考

特定技能制度 | 出入国在留管理庁

外国人技能実習制度について|厚生労働省

特定技能と技能実習のメリット・デメリットは?

比較表で制度の違いを押さえたら、次はメリット・デメリットを見ていきましょう。どちらの制度を選ぶか判断する材料として役立ちます。

特定技能のメリット・デメリット

特定技能は、即戦力となる人材を確保しやすいのが最大のメリットです。

メリット:

  • 日本人と同等以上の労働条件で雇用できるため、モチベーションが高く定着しやすい
  • 同一分野内なら転職も可能で柔軟な雇用ができる
  • 特定技能2号へ移行すれば在留期間の制限なく雇用できるため、長期雇用につながる

デメリット:

  • 技能試験・日本語試験合格が必要なため、候補者の母数が限られる
  • 生活支援や書類申請など、企業側に支援義務が発生する
  • 採用コスト(報酬水準、手続き費用)が技能実習より高くなる場合がある

技能実習のメリット・デメリット

技能実習は、人材育成を目的とした制度なので、計画的に育成しながら現場戦力として活用できます。

メリット:

  • 監理団体や送り出し機関のサポートがあるため、企業が外国人雇用のノウハウを持っていなくても受け入れやすい
  • 人件費が比較的抑えられるケースが多い
  • 段階的な育成で業務に慣れてもらいやすい

デメリット:

  • 原則転職不可のため、本人が不満を抱えた場合にミスマッチが解消しづらい
  • 受入れ人数が事業所規模で制限される
  • 最大5年で必ず帰国するため、長期的な雇用が難しい
  • 制度上の課題(失踪やハラスメントの報道など)が取り上げられることもあり、受け入れ企業には適切な管理体制が求められる

技能実習から特定技能1号へ移行できる!

技能実習2号を2年10か月以上良好に修了した技能実習生であれば、同じ職種・分野に限り特定技能1号へ移行することができます。実習で育てた人材を帰国させずに、長期的に戦力として活かせるのが大きなメリットです。

【試験】

同一分野であれば技能試験と日本語試験は免除されます。これにより、追加の試験準備をする必要がなく、スムーズに特定技能1号へ切り替えられます。

【必要書類】

在留資格変更許可申請書、雇用契約書、実習終了証明書、支援計画書などを準備します。書類不備があると審査が長引く可能性があるため、早めの確認が重要です。

【手続きの流れ】

技能実習の在留資格から特定技能1号への「在留資格変更許可申請」を、在留期限が切れる前に地方出入国在留管理局へ提出します。建設分野など一部の業種では、申請前に受入計画の認定を受ける必要があります。許可が下りれば、特定技能1号として就労を継続できます。

移行手続きで注意すべきポイント

技能実習から特定技能1号への移行では、いくつか注意すべき点があります。

まず、申請は在留期限前に行う必要があるため、スケジュール管理が非常に重要です。提出書類や支援体制の整備も事前に進めておきましょう。

また、特定技能の雇用では日本人と同等以上の報酬を支払う義務があります。給与規定や雇用契約書を見直し、条件が適正かを確認してください。

さらに、分野によっては追加手続きが必要になるケースも。たとえば建設分野で特定技能を受け入れる場合は、事前に受入計画の認定を受ける必要があります。対象業務が特定技能の範囲に含まれているかどうかも、必ず確認しておきましょう。

どちらの在留資格を選ぶべきか迷ったら

ここまで「特定技能」と「技能実習」の違いを見てきましたが、どちらの制度にもメリットとデメリットがあり、選択に迷うこともあるでしょう。

そんなときは、自社が任せたい業務や求めるスキルを整理し、どの在留資格が適しているかを考えることから始めましょう。

任せたい業務に合った在留資格を選ぶ

まずは、自社で任せたい業務・職種が就労可能かどうかを確認することが大切です。

就労が認められていない業務で働かせてしまうと、不法就労助長罪にあたり、企業側が罰則を受けるリスクがあります。

技能実習は作業区分が細かく、範囲外の業務を任せることはできません。幅広い業務をお願いしたい場合は、特定技能での雇用が適しているケースもあります。

まとめ

特定技能と技能実習は、目的や制度の仕組みが大きく異なり、違いを理解しておくことで、自社に必要な人材をどの制度で採用すべきか判断しやすくなります。

まずは、任せたい業務や必要なスキルを整理し、どの在留資格が適しているか確認することが大切です。そのうえで、採用後の教育体制や支援体制、長期的な雇用計画も含めて検討していきましょう。

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