不法就労防止に努めよう|通報は地方出入国在留管理局へ
日本における在留外国人が増える中、外国人犯罪の中でも不法就労問題がクローズアップされています。出入国在留管理庁では、「ルールを守って国際化」を合言葉に増加傾向にある不法就労外国人対策を強化し、雇用主への協力を呼びかけています。外国人採用に携わる場合は、不法就労防止に必要な確認作業の流れや、不法就労外国人を発見した際の通報先を予め把握しておきましょう。
不法滞在外国人を見つけたら!通報方法などをこちらの記事で解説
不法就労は巧妙化されてきている
法務省が公表している2019年の統計データでは、外国人犯罪のうち不法就労による退去強制手続きが執られた外国人は12,816人となっています。外国人労働者が年々増加しているのに合わせて、不法就労する外国人も増えているのが実情です。
国は不法就労防止に力を入れて入るものの、文書偽造や不正な在留資格の取得等、犯罪の手口が巧妙になっています。不正就労は雇用主にも罰則が課せられるため、決して他人事ではありません。手口が巧妙化しているため、企業が不法就労かを判別するのが難しい場面もあります。しかし、不法就労等の犯罪行為を発見した場合は、速やかに通報しましょう。
不法就労防止は雇用主の義務
不法就労は歴とした犯罪です。不法就労防止は雇用主の義務であり、外国人労働者を採用する際は不法就労者ではないことを確認しなければなりません。「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」で定められた義務を怠り、雇用した外国人労働者が不法就労者だった場合は、雇用主も「不法就労助長罪」により処罰されます。必ず雇用前に必要な、「在留カード確認」の流れを覚えておきましょう。
2019年 不法就労助長罪による検挙件数・検挙人員
検挙件数 | 357件 |
検挙人員 | 406人 |
不法就労助長罪(入管法第73条の2) |
働くことが認められていない外国人を雇用した事業主や、不法就労をあっせんした者 |
罰則 |
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科 外国人の雇用時に、当該外国人が不法就労者であることを知らなくても、在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は処罰の対象となります。又、その行為者を罰するだけではなく、その法人、雇用主等に対しても罰金刑が科せられます。 |
雇用主の義務
雇用前の身分確認 |
■一般業務・出入国管理及び難民認定法 第73条の2 外国人を雇用する際は、在留カード、旅券(パスポート)の提示を求め、在留資格・期間、在留期限、資格外活動許可の有無等を確認するなどして、雇用することができる外国人であるかを確認してください。 ・罰則 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科 ■風俗営業・風俗営業の規則及び業務の適正化等に関する法律 第36条の2 接待飲食等の営業を営む風俗営業者等は、その業務に関し、客に接する業務に従事させようとする者の生年月日、国籍及び、日本国籍を有しない者については、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無等を確認し、確認の記録を作成・保存しなければなりません。 ・罰則 100万円以下の罰金 |
外国人雇用状況の届出 |
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第28条 全ての事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」及び「公用」並びに「特別永住者」を除く。)の雇用又は離職の際に、その外国人の氏名、在留資格、在留期間等について厚生労働大臣(ハローワーク)への届出が義務付けられています。 ・罰則 30万円以下の罰金 |
在留カード確認の流れとポイント
不法就労を防止するためには、在留カードの確認が不可欠です。雇用主は外国人労働者を雇用する前に、次の流れに沿って在留カードを確認しましょう。
在留カードの有無を確認
在留カードで身分を確認する際は、必ず「実物」の在留カードを確認しましょう。コピーでは内容が改竄されている可能性があるためです。
在留カード表面の就労制限の有無欄を確認
- 「就労制限なし」の記載がある場合
就労内容に制限がないため問題ありません。 - 「就労不可」の場合
原則雇用不可となりますが、在留カード裏面の「資格外活動許可」欄を確認しましょう。 - 一部就労制限がある場合
制限内容を確認しましょう。
在留カード裏面の資格外活動許可欄を確認
在留カード表面の「就労制限の有無」欄に「就労不可」または「在留資格に基づく就労活動のみ可」と記載があった場合でも、裏面の「資格外活動許可欄」に次のような記載があれば、制限付きでの就労が可能となります。
- 許可(原則週28時間以内・風俗営業の従事を除く)
複数箇所でアルバイトをしている場合は、合計労働時間が週28時間を超えてはいけません。 - 許可(「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「技能」に該当する活動・週28時間以内)
活動内容は地方公共団体等との雇用契約に基づいたものでなければいけません。 - 許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)
「資格外活動許可書」を確認しましょう。
在留カードを所持していなくても就労できる場合がある
次に当てはまる場合は、旅券等で就労可能か確認しましょう。
- 旅券に「在留カードを後日交付する」との記載がある
- 「3月」以下の在留期間が付与されている
- 「外交」「公用」等の在留資格が付与されている
※「留学」「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」の在留資格の場合は、資格外活動許可を受けていなければ就労不可となります。
仮放免は在留資格ではない
「仮放免許可書」とは、入管法違反の疑いで出入国在留管理庁によって「退去強制手続中もしくは決定した外国人」が所持しています。通常、「仮放免許可書」保持者は出入国在留管理庁の収容施設に収容されますが、健康上の理由等により一時的に収容を解かれている状態です。したがって、在留資格ではないことを覚えておきましょう。
- 仮放免は在留許可ではいため、基本的に就労不可となります。
- 仮放免許可書の裏面に「職業又は報酬を受ける活動に従事できない」との条件が記載されている場合は就労不可となります。
- 許可書に上記条件が記載されていない場合は、在留カードで就労可能か確認しましょう。
不法就労の通報は地方出入国在留管理局へ
もし不法就労者を発見したら、具体的な情報を出入国在留管理庁へ通報するか、本人に出頭を促しましょう。ただし、虚偽情報で通報すると、偽計業務妨害罪に問われる可能性があるため注意が必要です。
・通報の流れ
出入国在留管理庁への通報は直接訪れるか、メールや電話での情報提供となります。直接訪れる場合は、地方出入国在留管理庁であれば平日9:00〜17:00に訪れるのが良いでしょう。東京地方出入国在留管理庁では、土日祝日でも電話による通報を受け付けています。
出入国在留管理庁 情報受付http://www.moj.go.jp/isa/consultation/report/index.html
通報に際し気になるのが、通報者の身分が不法就労者に知られてしまうことでしょう。しかし、出入国在留管理庁ではセキュリティに万全を期しているため、告発した側の個人情報や情報提供内容が漏れることはありません。それでも心配な場合は、警察庁が用意している「匿名通報ダイヤル」から通報することも可能です。
最後に
外国人労働者とともに増加する不法就労問題は、国として対策強化に取り組んでいます。それでもなお、毎年増えているのが実情です。不法就労は雇用する側も防止に取り組まなければりません。外国人を採用する際には、在留カードや旅券の確認を必ず行いましょう。そして、不法就労者を発見したら、具体的な情報を出入国在留管理局へ通報するか、出頭を促してください。不法就労という犯罪を減らすためにも、毅然とした態度で望むことが重要です。