ベトナム人雇用とDOLABとは?特定技能の条件・注意点・採用ポイントを企業向けに解説
ベトナム人の雇用を検討する中で、「DOLABとは何か」「特定技能で採用できるのか」「どんな点に注意すべきか」と悩む企業も多いのではないでしょうか。
ベトナム人は日本企業との親和性が高く、多くの業界で活躍しています。一方で、制度や文化の違いを理解しないまま採用を進めると、入社後のミスマッチにつながることもあります。
本記事では、ベトナム人雇用におけるDOLABの役割、特定技能での採用条件、注意点までを実務目線で解説します。
Contents
ベトナム人雇用とDOLABとは?まず押さえるべき基本

ベトナム人を採用する際は、日本の在留資格制度だけでなく、ベトナム側の送り出しの仕組みも押さえておきましょう。なかでもよく出てくるのが「DOLAB(ドラブ)」という言葉です。
DOLAB(海外労働局)とは
DOLABとは、ベトナム政府の海外労働を管理する機関のことです。海外で働くベトナム人の送り出しや管理に関わっており、日本向けの人材にも関係しています。
企業が直接やり取りする場面は多くありませんが、ベトナム人材の送り出しにはこのような公的な枠組みがある、という前提は理解しておくと安心です。
なぜDOLABが関係するのか
ベトナムでは、海外就労に対して政府の関与が比較的強く、送り出し機関も認定制になっています。そのため、日本企業が採用する人材も、この仕組みの中で選抜・送り出されているケースが一般的です。
つまり、ベトナム人雇用は日本国内だけで完結するものではなく、現地の制度とも連動している点が特徴です。
特定技能・技能実習との関係
特に技能実習では、認定された送り出し機関を通じて来日する仕組みになっています。特定技能でも同様に、送り出しや人材管理の考え方は共通しているため、制度を理解するうえでDOLABの存在を知っておくことが役立ちます。
ベトナム人を雇用する方法は?特定技能と技能実習の違い

ベトナム人を雇用する際は、「特定技能」と「技能実習」のどちらで受け入れるかを検討することになります。ここでは、それぞれの違いを紹介します。
特定技能での採用条件
特定技能は、人手不足が深刻な分野で外国人材を受け入れるための制度です。採用するには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 分野ごとの技能試験に合格している
- 日本語能力試験(N4相当以上)に合格している
- 受け入れ企業として支援体制を整えている
一定のスキルを持った人材を採用できるため、現場で即戦力として活躍してもらいやすいのが特徴です。
技能実習との違い
技能実習は、人材育成を目的とした制度です。実務経験の少ない人材を受け入れ、教育しながら戦力化していく前提になります。
一方で特定技能は、すでに一定のスキルや知識を持つ人材を対象とした制度です。そのため、採用後すぐに現場での対応を期待しやすいという違いがあります。
どちらを選ぶべきか
- 即戦力を採用したい → 特定技能
- 教育前提で受け入れたい → 技能実習
このように、自社の状況に合わせて制度を選ぶことが重要です。単純に「採用できるか」ではなく、「どのレベルの人材を、どの体制で受け入れるか」まで整理しておくと判断しやすくなります。
ベトナム人が日本で働きたい理由

ベトナム人材の採用を考えるうえで、なぜ日本で働きたいと考える人が多いのかも理解しておきたいポイントです。
高収入を得られる
多くのベトナム人にとって、日本での仕事は高収入を得る絶好のチャンスです。ベトナム国内の平均月収は750万ドン(約4万4000円)程度ですが、日本で働くとその数倍の給料になります。これは、家族を養ったり将来に向けて貯金をするための大きな魅力となるでしょう。
ベトナムの海外労働者は年間数十億ドル以上を祖国に送金しており、これは国の経済にも大きく貢献しています。高収入が得られることは、ベトナム人にとって日本で働く大きな動機の一つです。
労働環境の良さ
日本は、他の出稼ぎ先と比べて労働環境が良く、最低賃金や福利厚生が保障されている点も魅力です。世界では出稼ぎ先で虐待を受けたり、奴隷のように働かされたりするケースも珍しくありません。日本は外国人労働者も平等に扱うという法律が整備されているため、ベトナム人も安心して働ける環境と認識されています。
日本人への好感度が高い
ベトナムでは、日本のアニメ・ドラマ・音楽がとても人気で、日本製品の信用も高く、日系企業の評判も良いことから、日本に対して良いイメージを持っている人が多い傾向です。また、歴史的に日本が経済援助を行ってきたこともあり、親日感情を持つ人が多いことも、日本で働きたいと考える理由の一つとなっています。
治安が良い
日本は世界的に見ても治安が非常に良い国です。テロや宗教対立がきわめて少ないのが理由でしょう。日本の安全な環境は、家族を持つベトナム人にとってとても重要です。彼らは安心して生活し、仕事に専念できると感じています。特に女性や若年層の労働者にとって、日本での安全な環境は大きな魅力となっています。
未経験でも働き始めやすい仕事がある
日本では人手不足の分野が多く、工場や農業、介護、飲食などでは外国人材の受け入れが進んでいます。日本語力や実務経験に不安がある人でも、比較的仕事を見つけやすい点は、日本で働く理由のひとつです。また、現在日本では、介護や飲食業界などは常に人手不足のため、まじめに働いてくれる外国人労働者への門戸が開かれており、働きやすいといえるでしょう。
ベトナム人の仕事観と特徴

さまざまな理由から日本で働くベトナム人はたくさんいますが、日本人とは異なった仕事観を持っています。採用後のミスマッチを防ぐためには、ベトナム人の仕事観をあらかじめ理解しておくことが重要です。
真面目で勤勉、学ぶ意欲が高い
ベトナム人材は、真面目に仕事へ取り組み、新しい業務や技術を覚えようとする姿勢が強いと言われることが多いです。これは儒教の教えが広く浸透していることや、厳しい経済状況の中、家族のために一生懸命働くという価値観が根付いているためと考えられ、実際日本でも製造、建設、介護、食品製造など多くの現場で重要な戦力となっています。
この「学ぶ意欲」は、教育体制が整っている企業と相性が良いポイントです。最初から完璧を求めるより、明確な手順とフィードバックを用意したほうが力を発揮しやすいでしょう。
家族を大切にする価値観
ベトナムでは家族を重視する価値観が強く、働く理由も「自分のため」だけではなく、家族を支えるためであることが少なくありません。そのため、責任感を持って働く人が多い一方で、家族事情が仕事の判断に大きく影響することもあります。
たとえば、急な帰国希望や、親族の事情による休暇相談が発生することもあります。こうした場面を「仕事への意識が低い」と捉えるとすれ違いになりやすいため、価値観の違いとして理解したうえで、就業ルールとのすり合わせをしていくことが大切です。
収入や待遇への関心が高い
ベトナム人雇用では、「働きがい」だけでなく「いまの給与」「手取り」「残業代」「昇給見込み」が重視されやすい傾向があります。これは短期的な考え方というより、家計や送金に直結する現実的な判断として捉えるほうが自然です。
そのため、企業側が理念ややりがいだけを強く打ち出しても、待遇説明が弱いと魅力が伝わりにくいことがあります。定着率を上げたいなら、給与の内訳や評価の基準、昇給の考え方まで含めて丁寧に説明することが欠かせません。
報連相に慣れていない場合がある
日本企業では当然とされる報告・連絡・相談も、海外では同じ感覚で浸透していないことがあります。ベトナム人材も例外ではなく、「終わってから報告する」「困っていても相談をためらう」といった行動が出る場合があります。
ただし、これは能力不足というより、文化や職場習慣の違いによるものです。最初から「なぜ言わないのか」と責めるのではなく、どのタイミングで、誰に、何を伝えるべきかを具体的に教えるほうが、現場は回りやすくなります。
ベトナム人雇用のメリット

ベトナム人材の採用は、企業にとっても多くのメリットがあります。
人手不足の解消につながる
日本では、製造業、建設業、介護、外食、食品製造などで慢性的な人手不足が続いています。特定技能制度は、こうした人手不足分野を対象に設けられており、ベトナム人材はその中心的な受け入れ層のひとつです。
日本人採用だけでは充足しにくい職種でも、ベトナム人材を選択肢に入れることで採用の幅が広がります。
若手人材を育成しやすい
ベトナムは若年人口が多く、日本企業にとっては中長期で育成しやすい人材層を確保しやすい国のひとつです。実際、ベトナム人材を受け入れている企業では、現場作業だけでなく、将来的にリーダー層として育成している例もあります。
教育コストはかかるものの、手順が明確で、評価制度がわかりやすい職場では戦力化しやすいのが魅力です。
日本企業との親和性が比較的高い
真面目さ、協調性、学ぶ姿勢といった点で、日本の現場と相性が良いと感じる企業は多いです。もちろん個人差はありますが、きちんと教育とフォローを行えば、安定した戦力になりやすい点は大きなメリットです。
また、ベトナム人の先輩社員がいる職場では、後輩の受け入れや定着にも良い影響が出やすく、採用の好循環が生まれることもあります。
ベトナム人雇用の注意点と対策

メリットがある一方で、採用前に見落としやすい注意点もあります。
賃金や控除の説明を曖昧にしない
ベトナム人材は、給与の総額だけでなく、実際の手取りや控除後の金額を気にすることが多いです。そのため、求人票や面接時に「月給」「残業代」「寮費」「光熱費」「社会保険料」などを明確に示す必要があります。
ここが曖昧だと、「聞いていた話と違う」という不信感が生まれやすくなります。特に海外から来日する人材にとっては、生活費や送金計画に直結するので、金銭面の説明はできるだけ具体的に行いましょう。
指示は短く、具体的に伝える
「いい感じでやっておいて」「危ないから気をつけて」など、日本人同士なら通じる曖昧な表現でも、外国人材には伝わりにくいことがあります。ベトナム人雇用では、業務手順を分解して、何を・どの順番で・どの基準まで行うのかをはっきり示すことが重要です。
口頭だけでなく、写真・図解・動画・多言語資料などを併用すると、現場での理解度が上がりやすくなります。
人前で強く叱責しない
指導の仕方にも注意が必要です。人前で強く叱る、他の社員と比べて責める、といった対応は、モチベーション低下や関係悪化につながりやすくなります。
ミスがあったときは、人格ではなく行動に対して具体的にフィードバックするのが基本です。「何がだめだったか」だけでなく、「次はどうすればよいか」までセットで伝えると、改善につながりやすくなります。
キャリアや成長機会を見せる
ベトナム人材は待遇を重視する一方で、自分の成長が見えない職場には不安を感じやすい面もあります。単純に「長く働いてほしい」と伝えるだけでは弱く、どんなスキルが身につくのか、どのように評価されるのかを見せることが重要です。
特に特定技能では、本人が今後の働き方を現実的に考えていることも多いため、昇給の目安、役割の広がり、日本語学習支援などがあると定着しやすくなります。
ベトナム人材を定着させるポイント

採用はゴールではなく、むしろ受け入れ後が本番です。ベトナム人材を長く活かしたいなら、制度対応だけでなく、定着しやすい職場づくりまで考える必要があります。
評価制度や昇給ルールを明確にする
「頑張れば評価する」という曖昧な運用では、本人にとって納得感が生まれにくくなります。どの行動や成果が評価されるのか、昇給や役割変更がどう決まるのかを明確にすると、安心して働きやすくなります。
これは日本人社員にも有効ですが、特に外国人材に対しては、説明の明確さが定着率に直結しやすいポイントです。
日本語教育と生活支援をセットで考える
現場での指示理解や人間関係づくりには、日本語力が大きく関わります。入社時点で一定の要件を満たしていても、業務上必要な表現や職場独特の言い回しに慣れるには時間がかかります。
そのため、日本語学習の機会をつくる、やさしい日本語を使う、相談できる担当者を決めるといった工夫が効果的です。また、住居、病院、役所手続き、交通機関など、生活面の支援も不安の軽減につながります。
相談しやすい環境をつくる
定着しない職場には、たいてい「不満を早めに言いにくい」空気があります。ベトナム人材が困りごとを抱え込まないよう、定期面談や、現場責任者以外にも相談できる窓口を用意しておくと安心です。
特に、最初の3か月〜6か月は離職や不安が出やすい時期です。制度の手続きだけで終わらせず、受け入れ初期のフォローを厚めにすることが、結果的に採用コストの回収にもつながります。
まとめ
ベトナム人雇用を進めるうえでは、DOLABを含む送り出しの仕組みと、日本の在留資格制度の両方を理解しておくことが大切です。
特定技能では、採用条件や支援体制を整理したうえで、自社に合った受け入れ方法を検討する必要があります。また、給与や評価の明確化、具体的なコミュニケーション、成長機会の提示といった運用面も、定着に大きく影響します。
制度と現場の両面を押さえながら、無理のない形で受け入れ体制を整えていきましょう。