外国人の高度人材ポイント制って?ポイント計算表、優遇措置も紹介
日本が国策として力を入れている高度外国人材の受け入れで、理解しておきたいのが「高度人材ポイント制」です。グローバル化が進んだ世界各国では、優秀な外国人材の獲得競争が激化しています。少子高齢化の影響で深刻な人材不足に直面する日本企業にとって、高度外国人材の確保は喫緊の課題と言えるでしょう。そこで政府は2012年、より多くの優秀な外国人に日本での就労を選択してもらうべく、高度人材ポイント制を導入しました。
今回は、その仕組みについて詳しく解説していきます。外国人採用に携わる方や、将来的な採用を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
高度人材についてより深く理解したい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。高度人材の定義や就労ビザ「高度専門職」に関する基礎知識を網羅的に説明しています。
▶︎ 高度人材とは?外国人の就労ビザ「高度専門職」の基礎知識を学ぼう
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Contents
高度人材ポイント制の概要
高度人材ポイント制とは、高度外国人材の受け入れ加速を重要な国家戦略に位置付ける日本政府が、2012年5月17日に導入した制度のことです。この制度の下では、高度外国人材の「活動内容」や「学歴」「職歴」など法務省令で規定された項目ごとに点数が付与されます。
ポイントの合計が70点に達すると、いわゆる高度人材ビザ「高度専門職」の在留資格が得られ、出入国管理上のさまざまな優遇措置を受けられるようになります。こうした優遇措置は高度外国人材にとって大きなメリットであり、結果的に日本国内での就労意欲の向上につながることが期待されているのです。
【ポイント計算表あり】高度人材ポイント制による評価の仕組み
それでは、高度人材ポイントの具体的な計算方法について見ていきましょう。在留資格申請者本人が希望する活動内容に加え、「学歴」「職歴」「年収」「年齢」などに応じ、下記のポイント計算表に従ってポイントが付与されます。
高度外国人材の活動内容は大きく以下の3つに分類されます。
活動内容 | 在留資格 | 内容 |
---|---|---|
高度学術研究活動 | 高度専門職1号(イ) | 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動 例:大学教授や研究者など |
高度専門・技術活動 | 高度専門職1号(ロ) | 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動 例:化学・生物学・心理学・社会学などの研究者 |
高度経営・管理活動 | 高度専門職1号(ハ) | 本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動 例:経営者・役員など |
高度人材ポイント制の認定件数は年々増加
高度人材ポイント制の導入当初、政府は2022年末までに高度人材の認定数を20,000人とする目標を掲げていました。しかし実際には、下図の通り2019年末の段階で早くも21,347人に達し、目標を前倒しで達成しています。
その後も認定数の増加ペースは衰えを見せず、2020年6月時点では23,876人を記録しました。政府はこれを受け、同年7月17日に閣議決定した「成長戦略フォローアップ」の中で、高度人材の受け入れ拡充を推し進めるべく新たな目標値を40,000人に設定しました。わずか1年半で約16,000人もの認定を行うというのは、これまでの実績から見ても非常に野心的な数字と言えるでしょう。
「高度専門・技術活動」は2012年の制度開始以来一貫して増加しており、特に2021年に大幅な伸びを記録しました。2023年には37,799件に達し、グラフ上で最も高い値を示しています。
「高度学術研究活動」も着実な増加傾向にあり、2012年から2023年にかけて徐々に件数を伸ばし続け、2023年には5,927件を数えました。「高度経営・管理活動」も同様に増加基調で、2023年の認定件数は3,220件となっています。
これらの数字は、高度人材ポイント制が外国人材の呼び込みに大きく貢献してきたことを如実に物語っています。とりわけ「高度専門・技術活動」の伸び率の高さが目を引きます。日本の技術力向上や研究開発の促進に、高度外国人材の力が不可欠であることを示唆しているようにも見えます。
今後、目標達成に向けてさらなる認定件数の増加が見込まれる中、高度人材ポイント制のより一層の周知と活用が期待されます。3つの活動内容それぞれに優秀な外国人材を呼び込み、日本のイノベーション創出や国際競争力強化に生かしていく。そのための有効な手段としてポイント制への注目が高まっています。
高度人材ポイント制で得られる優遇措置とは?
前述の通り、高度人材ポイント制で70点以上を取得した外国人材には「高度専門職」の在留資格が付与され、さまざまな出入国管理上の優遇措置を受けられるようになります。具体的にはどのようなメリットがあるのか、高度専門職1号と2号に分けて解説します。
高度専門職1号の優遇措置
高度専門職1号では、主に以下のような優遇措置が受けられます。
優遇措置 | 内容 |
---|---|
複合的な在留活動の許容 | 通常、外国人は1つの在留資格で認められた活動しか行えないが、高度専門職1号の場合は複数の在留資格にまたがる活動が可能 |
在留期間「5年」の付与 | 最長5年の在留期間が付与され、更新も可能 |
在留歴に係る永住許可要件の緩和 | ・高度外国人材として継続3年間の活動 ・高度外国人材としてポイント80点以上を得た上、高度外国人材としてさらに1年間継続して活動 |
配偶者の就労 | 高度外国人材の配偶者は、通常必要とされる学歴・職歴要件を満たしていなくても「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する業務に従事することが可能 |
一定の条件の下での親の帯同 | 以下の条件を満たせば、親の帯同が認められる ・高度外国人材又はその配偶者の子(7歳未満)の養育 ・妊娠中の高度外国人材本人又はその配偶者の介助 ※高度外国人材の世帯年収が800万円以上かつ同居が必要 |
一定の条件の下での家事使用人の帯同 | 以下の条件を満たせば、家事使用人の帯同が認められる ■入国帯同型(外国で雇用していた家事使用人の継続雇用) ・世帯年収1,000万円以上 ・家事使用人1名まで帯同可 ・家事使用人への報酬が月額20万円以上 ・家事使用人は入国前に高度外国人材に1年以上雇用され、一定の条件を満たすこと ■家庭事情型 ・世帯年収1,000万円以上 ・家事使用人1名まで帯同可 ・家事使用人への報酬が月額20万円以上 ・13歳未満の子供がいるか、配偶者が病気などで日常の家事に従事できない |
入国・在留手続の優先処理 | ・入国審査の優先処理(申請から10日以内の審査) ・在留審査の優先処理(申請から5日以内の審査) |
高度専門職1号では、複数の在留資格にまたがる活動の許容や最長5年の在留期間の付与など、長期的な日本滞在へのサポートが充実しています。また、配偶者の就労や一定条件下での親・家事使用人の帯同など、家族を含めた生活基盤の安定にも配慮がなされています。
高度専門職1号に関するより詳しい解説は、以下の記事もご参照ください。
▶︎ 高度専門職1号とは?ビザの取得条件や優遇措置、永住権について解説
高度専門職2号の優遇措置
高度専門職2号は、高度専門職1号での在留実績が3年以上ある外国人が対象となる在留資格です。主な優遇措置は以下の3点です。
優遇措置 | 内容 |
---|---|
就労可能な在留活動の大幅な拡大 | 「高度専門職1号」で認められた活動に加え、就労資格のほぼ全ての活動が可能になる |
在留期間の無期限化 | 在留期間の上限がなくなり、事実上永住に近い形で日本に滞在できるようになる |
「高度専門職1号」の優遇措置3~6の適用 | ・永住許可要件の緩和 ・配偶者の就労 ・一定の条件の下での親の帯同の許容 ・一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容 |
高度専門職2号は、高度専門職1号での在留実績が3年以上ある外国人が対象となる在留資格で、就労可能な在留活動の幅がさらに広がるのが特徴です。在留期間の上限もなくなることから、半永住的な位置づけとして外国人材の日本定着を後押しする制度設計になっていると言えるでしょう。
高度専門職2号の詳細については、こちらの記事に詳しくまとめていますので、あわせてチェックしてみてください。
▶︎ 高度専門職2号とは?ビザの申請要件や優遇措置などゼロから徹底解説
まとめ:高度人材ポイント制による人材獲得に期待
少子高齢化の影響で労働力人口の減少が避けられない中、日本経済の持続的成長を実現するには、イノベーションを生み出す優秀な人材の確保が不可欠と言えます。高度人材ポイント制は、トップクラスの外国人材の日本流入を後押しするために導入された画期的な仕組みです。
日本で働くことで手厚い優遇措置を得られ、充実した生活を送れるというのは、高度外国人材を惹きつける大きな魅力になるでしょう。人手不足に悩む企業にとっても、この制度の積極活用は優秀な人材獲得の鍵を握ると言っても過言ではありません。
日本政府は2020年、高度人材の認定数40,000人達成を新たな目標に掲げました。こうした動きを追い風に、今後ますます高度外国人材の活躍の場が広がっていくことが期待されます。日本で世界トップレベルの人材を採用し、事業の発展や競争力強化につなげていく。高度人材ポイント制の理解と有効活用は、これから加速するグローバル人材獲得競争を勝ち抜くための重要な武器になるに違いありません。