高度人材ポイント制とは?永住権・80点の条件・企業が得られるメリットまで徹底解説!

高度人材として日本で働く外国人女性が仕事で電話をかけている姿

優秀な外国人材の確保は、日本企業の競争力を左右し、なかでも高い専門性を持つ「高度人材」は、研究開発や新規事業の推進など、企業の成長を大きく後押しします。

そうした人材の受け入れを促すために日本政府が導入したのが「高度人材ポイント制」。

学歴や年収などをポイント化し、一定の基準を満たした外国人は「高度人材」として認定されます。

この記事では、人事・採用担当者に向けて、制度の仕組みや評価基準、優遇内容、永住までの流れ、採用への活かし方を詳しく解説します。

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高度人材ポイント制とは?外国人採用を進めるうえで押さえるべき基礎知識

まずは制度の概要と目的から押さえましょう。

「高度人材」とはどのような人材を指すのか、なぜ日本政府がこの制度を導入したのかを理解することで、採用の意義がより明確になります。

高度人材とは?採用する企業にとっての価値

「高度人材」とは、日本政府がイノベーション創出や労働市場の高度化に寄与すると判断した専門性の高い外国人材のことです。

日本の労働市場を補完し、国内人材では代替できない知識や経験を持つ人材が該当します。

こうした高度人材を採用することは、以下のような企業メリットにつながります:

  • 最先端の技術・研究を担える人材を確保できる
  • 海外展開やグローバル事業の推進が可能になる
  • 多様性のあるチーム体制が構築でき、組織の競争力が向上する

このように、高度人材は“即戦力”であると同時に、企業の新たな価値創造の原動力となります。

高度人材ポイント制の目的と導入背景

少子高齢化による人材不足が深刻化するなか、日本政府は2012年5月に「高度人材ポイント制」を導入しました。

制度の目的は、優れた人材の日本への定着を促進すること。

世界的な人材獲得競争が激化する中で、学歴・職歴・年収などを数値化し、70点以上の優秀な人材を「高度専門職」として優遇する仕組みが整えられました。

参考:高度人材ポイント制とは?|出入国在留管理庁

高度専門職ビザと3つの活動区分

高度人材として認定されると、「高度専門職」の在留資格が付与され、以下のいずれかの活動区分に分類されます。

区分内容主な職種
高度学術研究(イ)大学や研究機関などで研究・教育を行う大学教授、研究者
高度専門・技術(ロ)自然科学・人文科学などの専門業務に従事開発職、エンジニア
高度経営・管理(ハ)企業の経営やマネジメントに携わる経営者、役員

企業は、自社の業務内容やポジションに応じてどの区分が該当するかを把握し、採用計画を立てる必要があります。

【ポイント表あり】高度人材ポイント制の評価項目と計算方法

採用候補者が“高度専門職”として認定されるかどうかは、評価項目と加点の仕組みを正しく理解しているかで大きく変わります。

採用前の段階でポイントを確認し、戦略的な採用判断につなげましょう。

ポイント計算の仕組みと採用判断の流れ

高度人材ポイント制では、「学歴」「職歴」「年収」などの要素が点数化され、合計が70点以上で「高度専門職1号」として認定されます。

80点以上を獲得すると、永住権申請までの期間が短縮されるなど、さらに有利な条件が得られます。

主な評価項目と配点例

評価対象となる主な項目は以下の通りです:

  • 学歴(博士号・修士号・学士号など)
  • 職歴(経験年数・職位)
  • 年収(報酬額)
  • 年齢(若年層ほど加点あり)
  • 日本語能力・資格・研究実績 など

例として、以下のような配点が想定されます:

  • 学歴:博士号=30点、修士号=20点
  • 職歴:10年以上=20点
  • 年収:1,000万円以上=40点
  • 年齢:29歳以下=15点
  • 日本語力:JLPT N1=15点

採用時に企業が押さえるべきチェックポイント

採用段階では、次の点を必ず確認しましょう:

  • 年収が基準を満たしているか
  • 職務内容が「高度専門職」の活動区分に適合しているか
  • 学歴・職歴の証明書類が揃っているか

また、採用候補者の「今後の加点見込み」も考慮することで、将来的な永住申請や長期雇用につながる人材かどうかを見極められます。

出典:ポイント計算表|出入国在留管理庁

高度人材ポイント制で得られる優遇措置と企業にとってのメリット

高度人材として認定されると、外国人本人だけでなく企業にも多くのメリットがあります。

ここでは代表的な優遇措置と、それが採用・人材戦略にどのように役立つかを見ていきましょう。

高度専門職1号の主な優遇措置と企業への効果

高度専門職1号として認定されると、外国人本人だけでなく、採用する企業にとっても大きなメリットがあります。

代表的な優遇措置は以下の通りです。

  • 複合的な在留活動が可能:一人の人材が研究・開発・教育など複数の業務を兼務できる
  • 最長5年の在留期間:長期プロジェクトや育成計画が立てやすくなる
  • 永住要件の緩和:早期に永住化できるため、定着率向上につながる
  • 配偶者の就労・親の帯同:生活基盤が安定し、離職リスクが低下
  • 入国・在留手続きの優先処理:採用から稼働までの期間を短縮できる

このように、高度専門職1号は「優秀な人材を採用したあとに最大限の力を発揮してもらう」ための環境を整える制度ともいえます。

企業にとっては、即戦力人材を中長期的な戦力へと育成しやすくなる点が大きなメリットです。

高度専門職2号の特徴と長期雇用への活用

「高度専門職2号」は、1号で3年以上の在留実績がある人材が対象で、認定されると企業側にとっても人材活用の幅がさらに広がります。

主な特徴は次の通りです。

  • 在留期間が無期限になり、長期的な雇用が可能
  • 就労範囲がほぼ全てに拡大し、ポジション変更にも柔軟に対応
  • 幹部候補・経営層としての登用も視野に入る

高度専門職2号は「採用から育成、そしてリーダー層への登用」までを一貫して見据えることが可能です。

企業は人材のキャリア設計と組織戦略を連動させ、より長期的な人材活用を行えるようになります。

永住権取得までのステップと企業が押さえる実務ポイント

高度人材ポイント制の大きなメリットは、永住権取得までのハードルが大幅に下がることです。

長期雇用を見据える企業にとっても、採用戦略上の重要なポイントになります。

「3年」「1年」で永住申請が可能になる条件

通常、永住権の申請には10年以上の在留が必要ですが、高度人材の場合は以下の条件で短縮されます:

  • 70点以上 → 3年継続で永住申請可
  • 80点以上 → 1年継続で永住申請可

ただし、「納税」「素行」「社会保険加入」などの条件も満たす必要があります。

採用から永住までの実務フロー

採用後に想定すべきステップは次の通りです:

  1. 採用時:年収・職務内容・証明書類の確認
  2. 在留資格申請:必要書類の準備とポイント算出
  3. 更新・切り替え:3年または1年後に永住申請準備
  4. 永住後:キャリアパス設計と長期雇用戦略の構築

このように、採用時から永住を見据えて計画を立てることで、人材の定着と企業への貢献度を最大化できます。

高度人材採用がもたらす企業への効果と戦略的活用法

高度人材の採用は、単なる人材確保にとどまらず、企業の事業戦略全体に大きなインパクトを与えます。

ここでは、その効果と活用のポイントを整理します。

高度人材採用で得られる主な効果

高度人材を採用することは、単に人手を補うだけではありません。

企業の技術力・競争力・組織体制など、さまざまな側面でポジティブな影響をもたらします。

  • 研究開発力・技術力の強化
  • 海外展開や新規事業の推進
  • 社内人材との相乗効果による生産性向上
  • 永住による定着率の向上と幹部候補育成

このような効果は、事業成長や企業価値向上そのものに直結します。

高度人材の存在が、企業の中長期的な成長戦略の中核を担うと言っても過言ではありません。

採用戦略に制度を活かすポイント

高度人材ポイント制は、制度そのものを理解するだけでなく、「どのように採用・育成戦略に組み込むか」が重要です。

  • 採用段階から永住・キャリアプランを描く
  • ポイント要件を踏まえた報酬・役職設計を行う
  • 定着を前提とした社内体制・評価制度を整える

戦略的な設計を行うことで、高度人材の採用は単なる「雇用」ではなく、「組織成長の一手段」へと進化します。

制度の理解と活用が、優秀な人材との長期的なパートナーシップを実現する鍵になるのです。

まとめ

高度人材ポイント制は、優秀な外国人材を採用し、長期的な戦力へと育てるための重要な制度です。

仕組みや基準を正しく理解し、採用戦略に組み込むことで、企業の成長はさらに加速します。

企業が押さえておくべきポイントは次の通りです:

  • 高度人材の採用は、技術力・競争力・組織力の向上に直結
  • 永住・無期限在留を前提とした採用は、長期的な企業価値の向上へ
  • 制度を理解することが、グローバル人材戦略の第一歩

これらを踏まえた戦略的な採用こそが、企業の成長を支える基盤です。

高度人材ポイント制を“制度”としてではなく“経営戦略の一環”として捉えることで、持続的な競争優位を築くことができます。

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