就労ビザの在留期間はどれくらい?就労ビザや更新にかかる時間も解説

外国人材を採用する際、企業が特に注目すべきポイントの一つが「就労ビザの在留期間」です。

就労ビザごとに在留期間が異なるため、知らず知らずのうちに不法就労となることを不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

外国人社員に長期的に働いてもらうためには、在留期間の仕組みを正しく理解し、適切な準備を行うことが重要です。

本記事では、就労ビザごとの在留期間や申請にかかる時間について解説します。

在留期間とは

在留期間とは、外国人が許可された日本に滞在できる期間のことです。

ここでは、就労ビザと在留期間を過ぎた場合について解説します。

就労ビザとは

就労ビザは、正確には「就労が可能な在留資格」のことを指します。

外国人が日本で働くためには、適切な在留資格を取得する必要があります。

就労ビザには、外国人の専門性や業務内容に応じて16種類の在留資格があり、それぞれ認められる職種や活動内容が定められています。

企業が外国人を雇用する際は、その外国人の学歴や職歴、担当予定の業務に適した在留資格を選択することが重要です。

就労ビザの在留期間とは

在留期間とは、外国人が日本に適法に滞在できる期間のことです。

在留カードに記載された期限日まで、その外国人は日本に滞在し、許可された活動を行うことができます。

重要なポイントは、在留期間は申請者が希望したからといって必ずしもその期間が許可されるわけではないということです。

在留期間の決定は出入国在留管理庁の裁量によって行われ、企業の安定性や外国人本人の状況などを総合的に判断して決められます。

在留期間を過ぎるとどうなるの?

在留期間を1日でも過ぎると「不法滞在(オーバーステイ)」となり、法的な問題が発生します。

不法滞在者には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることがあります。

また、強制退去の処分を受け、日本への再入国が長期間にわたって制限される場合もあります。

企業側にも法令違反としての責任が問われる可能性があり、罰則も強化されています(2025年6月施行)。適切な在留期間管理を徹底し、法令遵守体制を整えることが重要です。

ただし、在留期間満了前に適切に更新の申請を行った場合は、審査結果が出るまでの間、または在留期間満了日から2か月間(いずれか早い方)は特例期間として適法に日本に滞在することができます。

【一覧】就労ビザの在留期間

以下の表は、主要な就労ビザの在留期間をまとめたものです。

在留資格在留期間
外交外交活動の期間
公用5年、3年、1年、3月、30日、15日
教授5年、3年、1年、3月
芸術5年、3年、1年、3月
宗教5年、3年、1年、3月
報道5年、3年、1年、3月
高度専門職1号:5年、2号:無期限
経営・管理5年、3年、1年、6月、4月、3月
法律・会計業務5年、3年、1年、3月
医療5年、3年、1年、3月
研究5年、3年、1年、3月
教育5年、3年、1年、3月
技術・人文知識・国際業務5年、3年、1年、3月
企業内転勤5年、3年、1年、3月
介護5年、3年、1年、3月
興行3年、1年、6月、3月、30日
技能5年、3年、1年、3月
特定技能1号:1年以内、2号:3年、1年、6月
技能実習1年以内または法定期間

外交

外交ビザは、外国政府の外交使節団員や国際機関の職員などが対象です。

在留期間は具体的な外交活動の期間と連動しており、任務の終了とともに在留期間も終了します。

外交ビザの保持者は一般的な就労制限を受けず、外交活動に必要な範囲で活動が認められています。

公用

公用ビザは、外国政府や国際機関の職員として公的な業務に従事する外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月、30日、15日と幅広く設定されており、担当する業務の性質や期間に応じて決定されます。

教授

教授ビザは、大学や研究機関において研究や研究指導・教育活動に従事する外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月で、学術研究分野での専門性が重視されます。

国際的な学術交流の促進を目的とした在留資格です。

芸術

芸術ビザは、音楽や美術、文学などの芸術活動で収入を得る外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月です。

日本の文化芸術の発展に寄与することが期待される在留資格です。

宗教

宗教ビザは、日本の宗教法人などに招聘される外国人宗教家が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月で、宗教活動に専念することが求められます。

宗教法人による適切な受け入れ体制と、宗教活動の継続性が重要な審査基準です。

報道

報道ビザは、外国の報道機関との契約にもとづいて取材活動を行う外国人ジャーナリストが対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月です。

報道の自由を保障する一方で、適切な報道倫理の遵守が求められる在留資格です。

高度専門職

高度専門職ビザは、高度な専門的能力を持つ外国人材を受け入れる、ポイント制にもとづく在留資格です。

1号の在留期間は5年で、学術研究活動、専門・技術活動、経営・管理活動の3つのカテゴリーがあります。

ポイント計算により70点以上を獲得した外国人が対象です。

2号は無期限の在留期間が与えられ、活動制限もほぼありません。

経営・管理

経営・管理ビザは、日本で事業の経営や管理に従事する外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、6月、4月、3月と細かく設定されています。

起業や投資による事業展開を行う外国人にとって重要な在留資格で、事業計画の妥当性も審査されます。

法律・会計業務

法律・会計業務ビザは、外国の法律・会計資格を保持する専門家が日本で業務を行うための在留資格です。

在留期間は5年、3年、1年、3月と設定されています。

日本の関連法規に従った業務の遂行と、適切な資格の保持が必要です。

医療

医療ビザは、医師や歯科医師、看護師などの医療従事者が対象の在留資格です。

在留期間は5年、3年、1年、3月で、日本の医療制度に適合した資格の保持が必要です。

国際医療への協力や専門的な医療技術の提供を目的とし、日本の医療水準の向上に貢献することが期待されます。

研究

研究ビザは、政府関係機関や民間企業の研究所などで研究業務に従事する外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月です。

教授ビザとは異なり、教育活動は含まれず、研究業務に特化した在留資格です。

教育

教育ビザは、小中高等学校や専修学校などで語学教育に従事する外国人教員が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月です。

日本の教育制度における国際化の推進を目的とし、実践的な語学教育や国際理解の教育を担います。

技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務ビザは、就労ビザの中で最も利用者が多い代表的な在留資格です。

在留期間は5年、3年、1年、3月です。

大学などで学んだ専門知識を活かす業務に従事することが必要で、日本企業のグローバル化を支える重要な在留資格です。

企業内転勤

企業内転勤ビザは、海外にある同一企業グループの事業所から日本の事業所に転勤する外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月で、多国籍企業の人事異動を円滑化する制度です。

転勤期間の明確化と企業の継続性が審査のポイントです。

介護

介護ビザは、介護福祉士の資格を保持する外国人が介護業務に従事するための在留資格です。

在留期間は5年、3年、1年、3月で、日本の高齢化社会における人材不足を解決することを目的としています。

介護福祉士国家試験の合格が必須で、専門的な介護技術と日本語能力が求められます。

興行

興行ビザは、演劇や演芸、演奏、スポーツなどの興行活動を行う外国人が対象です。

在留期間は3年、1年、6月、3月、15日と幅広く、活動内容に応じて決定されます。

興行内容の適正性と契約条件の妥当性が重要な審査要件です。

技能

技能ビザは、産業上の特殊な分野において、熟練した技能を有する外国人が対象です。

在留期間は5年、3年、1年、3月と設定されています。

日本では習得が困難な技能を活かし、専門分野での技術の移転や文化交流を促進する役割を担います。

特定技能

特定技能ビザは、人材不足が深刻な分野において一定の技能を有する外国人を受け入れる制度です。

1号の在留期間は1年を超えない範囲で個別に指定され、最大5年間の滞在が可能です。

2号は3年、1年、6月で、更新回数に制限がなく長期滞在が可能です。

技能実習

技能実習ビザは、開発途上国への技能の移転を目的とした国際協力制度です。

1号は1年を超えない範囲、2号・3号は2年を超えない範囲で個別に期間が指定されます。

段階的な技能習得プログラムにもとづき、最大5年間の実習が可能です。

在留期間の決まり方と影響要因

就労ビザの在留期間は、在留資格の種類に加えて、申請者本人の実績や企業の安定性なども総合的に判断されます。

特に初回申請では、1年間の在留期間が付与されることが多く、2回目以降で3年や5年へと延長される傾向があります。

在留期間は、以下の要素によって決定されます。

また、有効期限を決める際は、就労する外国人本人、および就労先の所属機関それぞれの基準と照らし合わせた上で判断されます。

納税や届出の義務

在留期間の決定において、外国人の素行は極めて重要な要素です。

特に納税義務の履行状況は厳格に審査されます。

所得税や住民税、社会保険料などの滞納がある場合、在留期間が短縮されたり、更新が不許可となったりする可能性が高まります。

また、住居地の届出、雇用先の変更の届出、身分事項の変更届など、法的に義務付けられた各種届出を適切に行っているかも重要な審査の基準です。

企業としては、雇用している外国人に対して、これらの義務について適切に指導・サポートを行い、コンプライアンス意識を高めることが重要です。

給与から適切に税金や社会保険料を控除し、年末調整などの手続きも確実に行うことで、外国人社員の安定した在留をサポートできます。

企業の業績が安定しているかどうか

雇用する企業の規模や経営の安定性は、在留期間を決定する重要な要因です。

上場企業や大企業ほど経営の安定性が高いと判断され、より長期の在留期間が許可されやすい傾向があります。

中小企業であっても、継続的な事業運営と適切な財務状況を示すことで、安定した雇用環境であることをアピールできます。

決算書類や事業計画書、雇用契約書などにより、企業の継続性と外国人雇用の必要性を明確に示すことが重要です。

また、雇用契約期間も在留期間に直接影響します。

1年契約の場合は在留期間も1年程度となることが多いため、可能な限り長期的な雇用方針を示すことが効果的です。

最初は1年間と短めに設定されることが多い

初回の在留資格の申請では、多くの場合1年間の在留期間に設定される傾向があります。

これは、入国管理局が申請者の日本での活動実績や適応状況を慎重に見極めるためです。

1年間の実績を積むことで、次回更新時からより長期の在留期間を獲得できる可能性が高まります。

この期間中に、適切な業務の遂行や法令遵守、企業への貢献などを実証することが重要です。

企業側も外国人社員の活動記録や実績を適切に管理し、更新申請時に提出できるよう準備しておくことが望ましいでしょう。

就労ビザの取得や更新にかかる時間

就労ビザは在留期限の3か月前から更新申請が可能です。

更新は早めに行うことで、不測の事態にも対応しやすくなります。

【更新の流れと審査期間】

 在留資格更新許可申請書や企業側が必要書類(雇用契約書、給与証明など)を整備します。

ただし、書類に不備があったり、過去に問題履歴があったりする場合は、審査が長引く可能性があります。

更新の審査では、次のような点が改めて審査されます。

 過去の在留中の活動状況(例:休職、転職)、納税・健康保険など公的義務の履行、引き続き安定的に雇用されるかどうかです。

更新審査は再入国・在留延長の根拠になる重要なステップです。

十分な準備期間を確保し、スケジュールを逆算して手続きを進めましょう。

また、就労ビザの申請から許可までの審査期間は、申請の種類や内容によって異なります。

出入国在留管理庁が公表している最新の統計データによると、在留期間更新許可の申請の場合、全体平均で30日程度かかるとされています。

在留資格変更許可の申請の場合も在留資格の種類によってばらつきがあります。

新規の在留資格認定証明書交付の申請については、さらに長期化する傾向があり、2~3か月程度を見込んでおく必要があります。

審査期間に影響する要因として、申請書類の完備の状況や申請内容の複雑さ、申請時期の混雑状況などがあります。

特に2月から5月は留学生の就職や新年度に向けた申請が集中するため、通常より長期化する傾向があります。

就労ビザは約3か月前から更新が可能

在留期間更新許可の申請は、在留期間満了日の約3か月前から申請することができます。

これは6か月以上の在留期間を有する場合のルールで、6か月未満の場合は期間の2分の1を経過した時点から申請可能です。

早期の申請には複数のメリットがあります。

まず、審査期間中に在留期間が満了しても特例期間により適法に滞在できることです。

また、審査が長期化した場合でも、在留期間満了後2か月間は特例期間として滞在が認められます。

企業としては、外国人社員の在留期間を管理し、適切なタイミングで更新申請を行うよう指導することが重要です。

5年以上の就労ビザを取得するには

5年以上の就労ビザを取得することは、永住権を獲得するための重要な要素の一つです。

永住権を獲得するための条件である

5年間の在留期間を継続的に取得することは、将来的な永住許可申請の要件の一つです。

5年間の在留期間を継続的に取得するためには、安定した雇用関係の維持、適切な税務処理、法令遵守などが重要です。

企業側にも大きなメリットがあり、優秀な外国人材の長期的な確保と永住権取得の支援を通じて、安定した雇用関係を構築することができます。

書類作成にも時間がかかる

就労ビザの申請において、書類作成・準備にも時間がかかります。

企業の規模によって必要な書類が異なり、カテゴリー4企業(小規模企業)の場合、登記簿謄本や決算書類、納税証明書、事業計画書など、多数の書類を準備することが必要です。

これらの書類は、市役所や法務局などの各機関で取得する必要があり、平日に窓口に赴く時間も考慮しなければなりません。

また、外国語の書類については日本語翻訳が必要で、翻訳作業にも時間を要します。

企業としては、書類の不備による審査の遅延を避けるため、事前の準備とチェックが欠かせません。

まとめ

就労ビザの在留期間は、在留資格の種類によって異なり、最短15日から最長5年(高度専門職2号は無期限)まで設定されています。

在留期間の決定は出入国在留管理庁の管轄であり、外国人本人の素行や企業の安定性、雇用契約の内容などが総合的に考慮されます。

審査期間の目安は、更新申請で約1ヶ月、変更申請で約1〜1.5か月程度ですが、内容や時期により前後します。

書類準備の期間も含めると相当な時間を要するため、企業は計画的な申請スケジュールを立てることが重要です。

適切に在留期間を管理することにより、企業は安心して外国人材を活用し、外国人社員も安定して日本で就労を継続することができます。

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