フィリピン人採用の完全ガイド|DMW(旧POEA)・MWO(旧POLO)

人手不足が深刻化するなかで、「フィリピン人を採用したい」と考える企業担当者が増えています。フィリピンは英語力の高さと親日的な国民性で知られ、特定技能や技能実習を中心に受入れ実績が伸び続けている送出国です。一方で、フィリピン人採用には独自の手続きが必要で、DMW(旧POEA)やMWO(旧POLO)といった行政機関への申請を経なければ就労が認められません。手順を誤ると採用計画が数か月単位で遅れるだけでなく、不法就労として罰則対象になるリスクもあります。

本記事では、フィリピン人採用を検討する企業の担当者に向けて、最新の在留動向から制度の基礎、現地採用と国内採用の違い、ビザ・在留資格手続き、費用相場、注意点までを一次情報をベースに整理しました。社内説明や法務確認にも耐えうる正確な情報を、2026年時点の最新動向で網羅しています。

Contents

MWO(旧POLO)申請で押さえておきたい関連機関の全体像

フィリピンは総人口のおよそ1割が国外で就労している「出稼ぎ大国」と呼ばれる国です。海外で働く自国民が極めて多いという事情があるため、政府による厳格な管理体制と監督機能が不可欠とされ、結果としてフィリピン特有の雇用制度が整備されてきました。ここでは、その制度を支える3つの主要な行政機関と、それぞれが担う役割を整理してご紹介します。

DOLE(労働雇用省)

DOLEは「Department of Labor and Employment」の頭文字を取った略称で、日本語では労働雇用省と訳されます。フィリピン国内における労働全般および雇用に関するルールづくりや、その運用を監督する役割を担っている中央官庁です。労働環境にまつわるトラブルが起きた際には、被雇用者がDOLEに対して異議申し立てを行う仕組みになっています。

DOLEの最も大きなミッションは、自国の労働者の権利を守ることに置かれています。そのため、外国資本の企業(実質的な経営権を外国人が握っているケースを含む)で働くフィリピン人に何らかの問題が生じた場合、労働者の立場を優先する観点から、雇用主側にとって厳しい判断が下される傾向があると言われています。

DMW(旧POEA/移住労働者省)

DMWは移住労働者省の略で、海外で働くフィリピン人を送り出す政策の司令塔となる機関です。海外就労者の権利を守ることを最大の目的に掲げ、そのための様々な施策を推進しています。

DMWの所在地はフィリピン国内にあり、フィリピン人を国外に送り出す前段階で、その就労先となる企業の適格性を審査する業務を担っています。日本の企業がフィリピン現地から直接的にフィリピン人材を雇い入れたい場合には、このDMWの審査をクリアすることが避けて通れない条件となります。

加えて、フィリピン国内から海外に人材を送り出すことが許されているのは、DMWからお墨付きを得た認定送出機関に限定されています。認可を受けていない仲介業者を通じた採用活動は認められていない仕組みです。

MWO(旧POLO/移住労働者事務所)

MWOはフィリピン共和国大使館に附属する移住労働者事務所のことで、DMWとDOLEの海外における出先窓口として機能しています。

DMWの拠点は世界各地に展開されていますが、日本国内については東京・六本木の駐日フィリピン大使館と、在大阪フィリピン総領事館の2か所に設置されています。日本企業がDMWによる雇用主審査を受けようとする際には、これらのMWO拠点に直接足を運んで手続きを進める必要があります。

なお、現在日本で就労しているフィリピン人はおよそ18万人にのぼります。これだけ多くのフィリピン人が日本での就労を選んでいる背景や理由については、別の記事で詳しく取り上げていますので、あわせてチェックしてみてください。

PRA(認定送り出し機関)

PRA(Philippine Recruitment Agency)はフィリピン政府公認の認定送り出し機関で、フィリピン人の海外送り出しを唯一合法的に行える存在です。フィリピン人を採用する日本企業は一部の例外を除き、認定送り出し機関を通してフィリピン人材の採用を行う必要があります。PRAは、人材募集・選考、健康診断や出国前オリエンテーションの実施、日本語教育や職業訓練、書類作成、DMW・MWOへの取次など、採用プロセス全体の実務を担います。

PRA選定の重要性は非常に高く、信頼できる機関と組めるかが採用成功の鍵を握ります。確認すべきポイントは、DMW認定が有効であるか、紹介可能な人材プールがあるか、日本語教育レベルが期待値に合うか、料金体系が透明か、業務スピードと連絡頻度が安定しているかなどです。PRAは英語対応が基本のため、英語に不安がある場合は日本語の通じる送り出し機関を選ぶか、通訳・翻訳サービスを併用するのが現実的です。なお、フィリピン政府が認定する送り出し機関は出入国在留管理庁のウェブサイトでも一覧確認が可能で、社内コンプライアンスチェックの観点からも公式情報源で確認することが推奨されます。

フィリピン人採用の最新動向と注目される背景

フィリピン人採用は、ここ数年で日本企業の外国人雇用戦略の中心的なテーマになりつつあります。出入国在留管理庁の発表によれば、2025年6月末時点で在留フィリピン人は349,663人となり、中国・ベトナム・韓国に次ぐ第4位の規模に達しました。前年比で2.4%増となっており、永住者や定住者などの身分系在留資格に加え、特定技能や技能実習として就労する人材も着実に増えています。背景には、フィリピンの人口構造や経済事情、日本との制度的な親和性があります。総人口約1億1,678万人のうち労働年齢人口比率が約67.1%を占め、若年層が厚いという特徴は、長期的な労働力供給の観点で日本企業にとって大きな魅力です。

注目すべきは、特定技能制度との相性の良さです。フィリピンは日本との二国間協定を結んだ最初の国の一つであり、制度運用が比較的早期から整っていました。2024年12月末時点で約28,000人以上のフィリピン人が特定技能で日本で就労しており、特に介護、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業などの分野で活躍が目立ちます。

造船・舶用工業分野では特定技能外国人のうちフィリピン人が半数以上を占める状況にあり、特定の業種では事実上の主要な人材供給源となっています。さらに2025年3月の制度改正で特定技能の対象業務が拡充され、介護分野での訪問介護解禁や外食業での飲食提供業務の正式許可など、フィリピン人材が活躍できる場が一層広がりました。育成就労制度への移行を見据え、長期的なパートナー国としてのフィリピンの位置付けは今後さらに強まると見込まれます。

在留フィリピン人の推移と分野別の活躍状況

フィリピン人材は、過去十数年で日本における存在感を着実に高めてきました。永住者の比率が高いのも特徴で、日本人配偶者を持つフィリピン人や定住資格を取得した方が長く日本社会に根付いてきた歴史があります。就労分野の在留資格に目を向けると、技能実習生は約4万人規模で安定的に推移しており、特定技能への移行も進んでいます。

フィリピン人技能実習生の失踪率は他国と比較して極めて低く、約1%前後にとどまるとされており、これは送り出し機関への手数料を本人が負担しないというフィリピン独自の保護政策に起因します。借金を背負って来日するケースが少ないため、経済的な追い詰められによる失踪が起こりにくい構造になっています。

業種別では、介護、外食、ホテル、製造業(特に造船・舶用工業)、建設、農業など幅広い領域で受入れが進んでいます。英語のコミュニケーション能力が高いため、外資系企業や国際的な顧客対応が必要な業種、ITエンジニアなどの職種でも引き合いが強い傾向です。一方、地方の中小企業でも介護や食品加工で受入れが拡大しており、都市部・地方を問わず採用候補としての裾野が広がっています。

特定技能制度との親和性とフィリピン人材の評価ポイント

フィリピン人材が特定技能制度との相性が良いとされる理由は、複数の要素が組み合わさっています。第一に、英語が公用語であり、約9割以上のフィリピン人が日常的に英語を使えるとされていること。これは多国籍チームでの業務や、外国人の同僚・上司との連携が必要な現場で大きな強みになります。第二に、日本語学習への意欲が比較的高く、JLPT(日本語能力試験)N4以上を取得して来日する候補者が多いこと。第三に、家族を養うために海外で働く文化が定着しており、就労意欲とコミットメントの高さが期待できることです。

教育面の充実も見逃せません。フィリピンには高等教育機関が約1,856校あり、ASEAN諸国の中でもトップクラスの規模です。看護や介護、機械、ITといった専門教育を受けた人材プールが厚く、即戦力候補に出会える可能性が高い環境が整っています。日本企業の現場では、ホスピタリティの高さや明るくフレンドリーな国民性が職場の雰囲気づくりに貢献するとの評価も多く、定着率向上に寄与する要素と捉えられています。

フィリピン人を採用する2つのルートと具体的な手続きフロー

フィリピン人採用は、対象人材がフィリピン国内にいるか日本国内にいるかで手続きが大きく異なります。それぞれメリット・デメリットがあり、自社の採用計画や稼働開始時期に合わせて選択する必要があります。共通して押さえるべきは、いずれのルートでも原則としてPRA(認定送り出し機関)との契約とDMW登録が必要であり、永住者・日本人配偶者等・永住者の配偶者等・定住者といった身分系在留資格を持つ人材を除いてはこのルールから外れられないという点です。手続き漏れがあると、後から在留資格更新時に問題化したり、追加申請に時間とコストがかかるため、初期段階で正しい手順を確定させることが重要です。

なお、海外採用の場合は採用決定から実際の稼働まで一般的に4〜6か月程度を見込む必要があり、短期で人材を確保したい場合は国内在住人材の採用を優先するのが現実的な選択肢になります。一方、まとまった人数を計画的に確保したい場合は、海外採用の方が候補者数が多く選考の柔軟性が高くなります。以下、それぞれのフローと留意点を整理します。

現地採用(海外在住フィリピン人を呼び寄せる場合)の流れ

現地採用は、フィリピンで生活している人材を日本に呼び寄せる方法です。手続きは複数のステップを踏み、フィリピン側と日本側の双方で並行して進めます。一般的な流れは次のとおりです。第一に、DMW認定の送り出し機関(PRA)を選定し、人材募集・雇用に係る募集取決め(RA)を締結します。第二に、必要書類(雇用契約書、求人票、会社概要、登記簿謄本など。日本語書類は英訳必須)を準備し、東京または大阪のMWOに提出します。第三に、書類審査と雇用主面接(英語)を経て、適格と判断されれば認証印付きの許可書類が交付されます。第四に、その書類を送り出し機関経由でDMWに提出し、正式な雇用主登録が完了します。

第五に、PRA経由で人材募集・面接を行い、採用者を決定します。第六に、出入国在留管理局へ在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行い、交付されたCOE原本を採用者に送付します。第七に、採用者がフィリピンの日本大使館で就労ビザを申請・取得します。第八に、出国前オリエンテーション(PDOS)と健康診断を済ませ、PRAを通じてDMWへOEC(Overseas Employment Certificate/海外雇用許可証)の発行申請を行います。OECがないとフィリピンを出国できないため、この最終ステップは必ずクリアする必要があります。最後に来日・配属となります。所要期間は順調に進んでも4〜6か月、書類不備や面接日程の調整で半年以上かかることも珍しくありません。

国内採用(日本在留フィリピン人を採用する場合)の流れと注意点

国内採用は、すでに日本に在留しているフィリピン人を対象とする方法で、技能実習2号修了者や留学生、特定技能保有者などが主な候補となります。即戦力確保や手続きの迅速さが大きな利点で、生活環境への適応コストも低く抑えられます。日本語コミュニケーション能力も一定レベル以上あることが多く、職場へのスムーズな適応が期待できます。一方、候補者数自体は海外採用より限定的で、競争が激しくなりやすい点はデメリットです。

手続きの流れは海外採用と類似しますが、いくつか省略される工程があります。まずPRAと契約・募集取決めを締結し、MWOへの申請・本人面接、DMWへの登録を行います。送り出し機関を経由した労働契約の締結を経て、特定技能などの場合は本人が地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行います。OEC(海外雇用許可証)の発行申請は不要となるため、海外採用に比べて期間が短縮されやすい構造です。ただし、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者など身分系の在留資格を持つフィリピン人を雇用する場合は、DMW登録自体が不要となります。留学生や技能実習生から特定技能へ切り替える場合は、海外採用とほぼ同等の手続きが必要になる点には留意が必要です。

直接雇用禁止の例外(免除申請)が認められるケース

原則として、フィリピン人の直接雇用は禁止されていますが、限定的に例外が認められるケースもあります。ITエンジニア、教師などのハイスキルと認められた業種については、直接雇用禁止免除の申請を行うことにより、日本企業が直接雇用することが可能となります。

具体的には、外交官、国際機関職員、医師・看護師などの専門職、アーティスト、特定の管理職など、フィリピン政府が「労働者保護の観点で送り出し機関を介さなくてもリスクが低い」と判断する職種が対象となります。

ただし、この制度を利用する場合でも、MWOまたはDMWへの直接雇用禁止免除申請は必要で、雇用できる人数は最大5人までと制限されています。免除が認められるかは個別判断であり、対象職種は適宜見直されるため、利用を検討する際は最新の運用基準を必ず確認するべきです。

実務上は、免除申請のハードルが高く時間もかかるため、特殊な職種でない限りは通常のPRA経由のルートを選ぶ企業が大半です。社内で「フィリピンから直接スカウトしたい」という声が出た場合、コンプライアンスリスクを考えると、まずDMW・MWOルートでの採用を前提に動くのが確実です。

在留資格(ビザ)の選択肢とフィリピン人材に適した活用方法

フィリピン人を採用する際の在留資格は、業務内容と人材のスキルレベルによって複数の選択肢があります。日本側で取得する在留資格と、フィリピン側で必要なOEC(海外雇用許可証)は別物であり、両方を揃えて初めて合法的な就労が成立します。

在留資格の選択を誤ると、業務範囲が許容されず違法就労につながる、または更新が認められず帰国を余儀なくされるなど、企業・本人双方に大きな影響が出ます。社内で外国人雇用を進める際は、配属先の業務内容を在留資格の許容範囲に照らして精査することが必要です。

特にフィリピン人採用で多く使われるのは、特定技能、技能実習、技術・人文知識・国際業務(技人国)の3つです。それぞれ要件・期間・対象業務が大きく異なるため、自社のニーズに合致するものを選択しましょう。なお、2027年に予定される技能実習制度から育成就労制度への移行も控えており、長期的な人材計画を立てる際は制度変更動向にも注意を払う必要があります。

特定技能ビザでの採用|要件と対象分野

特定技能は、即戦力となる外国人材が特定の産業分野で就労できる在留資格で、2019年に創設されました。介護、外食、建設、宿泊、製造業、農業、漁業、ビルクリーニング、自動車整備、航空、造船・舶用工業、自動車運送業など16分野が対象となっており、フィリピン人材は特に介護・建設・外食・造船分野で多数活躍しています。要件は、技能試験と日本語能力試験(JLPT N4相当以上)の合格、または技能実習2号の良好な修了です。1号は最長5年、2号は更新可能で家族帯同も認められるなど、長期的なキャリア形成に対応した制度設計になっています。

フィリピン人を特定技能で採用する場合、PRA経由でのDMW・MWO手続きが必須です。2023年7月19日に発効されたフィリピンとの二国間協定の内容を理解し、適切に対応することが重要です。協定では、求人内容の透明性、適正な賃金、労働条件、定着支援などが規定されており、企業はこれらを満たす雇用契約を提示する必要があります。なお、給与は日本人と同等以上が義務付けられており、日本の労働基準法を下回る条件は罰則対象となります。

技能実習・育成就労ビザでの採用と移行ポイント

技能実習は、開発途上国の人材育成を通じた国際貢献を目的とした制度で、現在も多くのフィリピン人が活用しています。フィリピン人技能実習生は2024年10月末時点で約43,508人が在留し、国籍別でも上位に位置します。受入れには監理団体(協同組合等)を介する必要があり、職種は90以上にわたります。技能実習1号(1年)から2号(2年)、3号(2年)と段階的に進むことができ、2号修了者は試験免除で特定技能1号へ移行可能です。

技能実習制度は2027年を目処に「育成就労制度」へ移行する予定です。育成就労は人材育成と確保の両立を目的とし、転籍がより柔軟に認められる、特定技能への接続性を強化するなどの変更が想定されています。すでにフィリピン人技能実習生を受け入れている企業は、移行後も継続して人材を活用できるよう、特定技能への切替えや育成就労への対応を計画的に進めることが重要です。

技術・人文知識・国際業務その他のビザでの採用

専門的・技術的な業務でフィリピン人を採用する場合、技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)の在留資格が選択肢となります。エンジニア、通訳・翻訳、マーケティング、海外取引業務、語学教師などが対象で、原則として大学・短大卒業以上の学歴または10年以上の実務経験が要件です。フィリピン人ITエンジニアや英語教師などはこのカテゴリで採用されるケースが多く、英語ネイティブレベルの人材を確保したい企業にとって有効な選択肢です。

このほか、企業内転勤、高度専門職、経営・管理、介護(介護福祉士の国家資格保有者)などの在留資格も活用できます。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格を持つフィリピン人は就労制限がなく、DMW登録も不要なため、即戦力として柔軟に採用できる対象です。日本に長く暮らすフィリピン人コミュニティは大きく、こうした身分系資格の人材プールも有力な採用ターゲットになります。外国人材の採用から定着までを一括で支援するサービスを活用すれば、複雑な在留資格手続きや生活立ち上げ支援、雇用管理を専門事業者に委ねることができ、初めての外国人雇用や担当者の業務負荷軽減を図りたい企業にとって有力な選択肢となります。

フィリピン人採用を成功させるための実務ポイントと体制づくり

採用手続きをクリアして実際の稼働が始まってからが本当のスタートです。せっかく時間とコストをかけて受け入れた人材が早期離職してしまえば、すべての投資が無駄になります。フィリピン人材の定着率は他国と比較して高い傾向にありますが、それは受入れ側が適切な環境を整備していることが前提です。

配属先の現場理解、生活立ち上げ支援、定期的なフォロー、日本人社員側の異文化理解教育など、複合的な取組みが求められます。社内で外国人雇用を中長期的な戦略として位置付け、組織横断で支援する体制を構築することが、成功のカギです。

特に初めての受入れでは、人事担当者・現場管理者・経営層の認識を揃えることが重要です。「とりあえず採用してみる」という曖昧なスタンスでは、採用後の課題対応が後手に回り、定着率や生産性に悪影響が出ます。以下、実務で押さえるべきポイントを整理します。

信頼できる送り出し機関・登録支援機関の選び方

採用成功の半分は、パートナー選びで決まると言っても過言ではありません。送り出し機関(PRA)を選ぶ際の確認ポイントは、DMW認定が有効であること、過去の送り出し実績、紹介可能な人材の質と数、日本語教育レベル、料金体系の透明性、業務スピード、緊急時の連絡体制などです。複数のPRAから見積もりと提案を取り、比較検討するのが基本姿勢です。一社のみで判断すると、料金や対応品質の妥当性が見えにくくなります。

特定技能の場合、登録支援機関の選定も重要です。義務的支援を委託する形になるため、機関の対応力が外国人材の定着に直結します。登録支援機関を選ぶ際は、フィリピン人材の支援実績、多言語対応の有無、24時間相談窓口の整備、生活立ち上げ支援の範囲、登録支援機関としての届出受理状況などを確認しましょう。

複数業務をワンストップで対応できる事業者であれば、社内の管理工数も軽減できます。住居支援、家賃保証、モバイル契約、送金支援といった生活立ち上げサービスを一体で提供できる事業者と組むと、稼働開始後の混乱を抑えやすくなります。

受入れ後の定着支援|生活立ち上げから職場適応まで

来日直後の数か月は、外国人材にとって最も不安定な時期です。住居、銀行口座開設、携帯電話契約、健康保険手続き、市役所での住民登録、母国への送金手段の確保など、生活の土台を作る作業が一斉に発生します。

これらを企業側がどこまでサポートするかを事前に決め、PRAや登録支援機関、外部専門サービスとの役割分担を明確にしておく必要があります。住居については、外国人入居可の物件確保や家賃保証会社の利用が現実的な選択肢で、社宅を用意することで定着率が向上するという調査結果もあります。

職場適応の面では、配属初期のオリエンテーションと、現場メンタリングが効果的です。日本独自の業務ルール、報連相、時間厳守の文化、上下関係のニュアンスなどは、口頭説明だけでは伝わりにくいことが多いため、写真や動画、図解を使った視覚的なマニュアルが有効です。

日本人社員側にも異文化理解研修を実施し、宗教・食事・家族イベントへの配慮、コミュニケーションスタイルの違いなどを理解してもらうと、受入れ側の摩擦が減ります。月1回程度の定期面談を設定し、業務上の悩みや生活面の不安を早期にキャッチアップする仕組みも、離職リスクの低減に効果的です。

中長期視点でのキャリアパス設計

フィリピン人材を長期戦力として育成するには、明確なキャリアパスの提示が重要です。特定技能1号から2号への移行、技能実習から特定技能への切替え、家族帯同が可能な在留資格へのステップアップなど、本人と企業の成長が連動する設計が求められます。日本での就労が単なる出稼ぎではなく、スキル獲得とキャリア構築の場として機能するようになると、人材のロイヤルティが大きく高まります。

評価制度も日本人社員と同じ基準で運用するのが原則です。同一労働同一賃金の観点から、外国人だからという理由で昇給・昇格機会を制限することは法令上も問題があり、本人のモチベーション低下にもつながります。逆に、能力に応じて昇給・配置転換・リーダー登用を行えば、職場全体の活性化と定着率向上を両立できます。フィリピン人材の中には経営や管理職へのステップアップを目指す層も少なくなく、長期戦略の一環として彼らをコア人材として育成する視点を持つことが、これからの外国人雇用では不可欠です。

よくある質問

Q1. フィリピン人を採用する際、必ず送り出し機関を通す必要がありますか?

原則として、フィリピン現地から人材を雇用する場合は、DMW認定の送り出し機関(PRA)を通す必要があります。2017年8月以降、現地エージェントを介さない直接雇用は禁止されているためです。ただし、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格を持つフィリピン人を雇用する場合は、DMW登録自体が不要となります。また、ITエンジニアや教師などの一部のハイスキル職種では、直接雇用禁止免除の申請が認められる場合がありますが、人数制限(最大5人)があります。

Q2. POEAとDMW、POLOとMWOは何が違うのですか?

呼称の違いは組織再編によるものです。POEA(フィリピン海外雇用庁)は2022年にDMW(移住労働者省)に統合・再編されました。POLO(駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所)も同様にMWO(移住労働者事務所)へ名称変更されています。機能は基本的に引き継がれていますが、海外労働者関連の業務がDMWに一元化され、効率化が図られている点がポイントです。古い呼称が残っている資料も多いため、社内ドキュメントを更新する際は最新名称への置換えを進めるのが望ましいでしょう。

Q3. フィリピン人採用にかかる期間はどれくらいですか?

海外採用の場合、PRA選定からMWO申請、DMW登録、在留資格認定証明書(COE)取得、ビザ申請、OEC発行、来日までの一連の手続きで4〜6か月が目安です。書類不備や面接日程の調整で半年以上かかることもあります。国内採用(日本在留フィリピン人)の場合は、OEC発行が不要となるため、海外採用より期間が短くなる傾向があります。稼働開始時期を逆算してスケジュールを組むことが重要です。

Q4. 採用にかかる総費用はどれくらい見込めばよいですか?

海外採用の場合、人材紹介手数料10〜30万円、送り出し機関手数料15〜60万円、在留資格申請10〜20万円、渡航費、健康診断費などを含めて、1人あたり80〜150万円程度を初期費用として見込むのが一般的です。雇用開始後は、月給(日本人と同等以上)に加え、特定技能の場合の義務的支援費用が月2〜4万円程度発生します。フィリピンでは送り出し費用を本人に負担させることが禁止されているため、企業負担が他国より重くなる傾向にあります。

Q5. フィリピン人材を活用するのに適している業種はどこですか?

英語コミュニケーション能力、ホスピタリティ、教育水準の高さから、介護、外食、ホテル、製造業(特に造船・舶用工業)、建設、IT、語学教育、農業など幅広い分野で活躍が期待できます。特定技能制度では、造船・舶用工業分野でフィリピン人が半数以上を占めるなど、特定の業種では主要な人材供給源となっています。英語が業務に必要な職種や、外国人顧客対応がある現場では、特に強みを発揮しやすい人材です。

Q6. 二国間協定とは何ですか?採用にどう影響しますか?

日本とフィリピンは特定技能制度の運用について「特定技能に係る協力覚書(MOC)」を締結しており、これに基づいたガイドラインが運用されています。フィリピンは特定技能における二国間協定の最初の締結国の一つで、求人内容の透明性、適正な賃金、労働条件、定着支援などが規定されています。企業はこの協定の枠組み内で雇用契約を提示する必要があり、違反すると採用手続きが進まない、または承認が取り消されるリスクがあります。

Q7. すでに日本にいるフィリピン人留学生を採用する場合の手続きは?

留学生から特定技能や技人国などの就労ビザに変更する場合、本人が地方出入国在留管理局で在留資格変更許可申請を行います。特定技能で雇用する場合は、永住者等の身分系在留資格保有者を除き、海外採用と同様にPRAとの契約とDMW登録が必要となります。留学生の場合、すでに日本での生活基盤があり、日本語コミュニケーションも一定レベル以上であることが多いため、即戦力としての期待値が高いルートです。在留資格変更には2か月程度かかるため、卒業時期を見据えた早めの準備が重要です。

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