【特定技能】外国人労働者の受け入れ可能な分野・業種と受け入れ方
2019年4月、日本の深刻な人手不足の解消を目的として、外国人労働者の新しい在留資格「特定技能」が新設されました。特定技能は、日本の経済発展と社会基盤の持続可能性の確保に寄与することを目的に創設された制度です。
この記事では、特定技能での外国人労働者の受け入れが可能となった12の特定産業分野・業種について詳しく解説するとともに、特定技能外国人の受け入れ方法についてもわかりやすくお伝えします。
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Contents
在留資格「特定技能」で受け入れ可能な12分野・業種
特定技能で受け入れ可能な分野・業種は以下の12に限定されています。
(「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」2018年12月25日に閣議決定)
※特定産業分野12業種
・介護業
・ビルクリーニング業
・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
・建設業
・造船・舶用工業
・自動車整備業
・航空業
・宿泊業
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
今後、人手不足がさらに顕在化する分野においては、特定技能での外国人受け入れ対象業種が追加される可能性もありますが、現時点では上記の12分野・業種のみが認められています。また、分野・業種ごとに所管省庁が異なり、受け入れ見込み数なども個別に設定されているのが特徴的です。
在留資格「特定技能」と外国人技能実習制度の違い
特定技能と比較されることの多い在留資格に「技能実習」があります。技能実習は、日本の技能・技術・知識を開発途上国等の外国人に移転することを目的としたもので、単純な人手不足解消のための労働力確保を目的とした制度ではありません。一方、特定技能は、日本の人手不足対策として導入された制度であるという点で、技能実習とは異なります。
また、技能実習生の受け入れ可能な職種は約80職種と多岐にわたりますが、特定技能での受入れは前述の12分野・業種に限定されています。職種に関しても技能実習では細かく規定されているのに対し、特定技能ではそこまで細分化されていないのが特徴です。
特定技能と技能実習では、雇用側に求められる条件にも違いがあります。より詳しい情報は、以下の関連記事をご覧ください。
▶︎ 在留資格「特定技能1号・2号」「技能実習」の違い|雇用側の条件
また、外国人技能実習制度について更に理解を深めたい方は、以下の関連記事もご参照ください。
・外国人技能実習生とは?受け入れに必要な基礎知識と今後について解説
・外国人技能実習制度とは?対象職種や受け入れの流れを解説!
在留資格「特定技能」でしか受け入れ出来ない業種
特定技能でしか外国人材の受け入れができない業種として、「宿泊業」と「外食業」が挙げられます。
従来、外食業の一部(医療・福祉施設給食製造等)で技能実習制度の活用が可能でしたが、ホテルや旅館等の宿泊施設における客室清掃、飲食店での接客・調理といった業務は、外国人の就労が認められていませんでした(留学生のアルバイトや、「永住者」等の就労制限のない在留資格の外国人は除く)。
特定技能の創設により、これらの分野でも一定の条件を満たせば外国人材の活用が可能となったわけです。令和6年4月から5年間の受入れ見込数は、宿泊業で23,000人、外食業で53,000人とされています。増加する訪日外国人観光客へのサービス向上等、日本人にはない強みを発揮してもらえることが期待されています。
各分野・業種の所管省庁と受け入れ見込み数
続いて、特定技能12分野・業種における所管省庁と令和6年4月から5年間の受け入れ見込み数を表にまとめてみました。
業種 | 所管省庁 | 受け入れ見込み数 |
---|---|---|
介護業 | 厚生労働省 | 135,000人 |
ビルクリーニング業 | 厚生労働省 | 37,000人 |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 | 経済産業省 | 173,300人 |
建設業 | 国土交通省 | 80,000人 |
造船・舶用工業 | 国土交通省 | 36,000人 |
自動車整備業 | 国土交通省 | 10,000人 |
航空業 | 国土交通省 | 4,400人 |
宿泊業 | 国土交通省 | 23,000人 |
農業 | 農林水産省 | 78,000人 |
漁業 | 農林水産省 | 17,000人 |
飲食料品製造業 | 農林水産省 | 139,000人 |
外食業 | 農林水産省 | 53,000人 |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業の受け入れ見込み数が173,300人と最も多く、次いで飲食料品製造業が139,000人、介護業が135,000人と続いています。日本の製造業の国際競争力維持や、高齢化に伴う介護ニーズの増加、さらには食品産業における人手不足への対応など、各業界の抱える課題と期待が反映された数字だと言えます。
建設業や農業でも、それぞれ80,000人、78,000人と高い受け入れ見込み数が設定されており、インフラ整備や農業の担い手確保に向けた業界の意欲がうかがえます。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業の受け入れ見込み数
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業の受け入れ見込み数は173,300人で、12分野・業種の中で最も多くなっています。日本の製造業は、高い技術力を背景に国際競争力を維持してきましたが、熟練労働者の高齢化と人手不足が深刻な課題となっています。特定技能制度を活用し、即戦力となる外国人材を確保することで、製造業の生産性向上と持続的発展につなげたいという業界の期待が反映された数字だと言えます。
特定技能での製造業分野の受入れ対象職種や、従事すべき作業の内容など、より詳細な情報は以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
▶︎ 素形材産業分野で「特定技能」外国人を採用する際の要件と注意点
介護業の受け入れ見込み数
介護業の受け入れ見込み数は135,000人で、12分野・業種の中では3番目に多くなっています。今後、団塊の世代が75歳以上となり、介護ニーズがさらに高まることを見越した目標設定となっています。介護現場の人手不足は年々深刻化しており、外国人材の積極活用は不可欠との認識が広がっているようです。
特定技能での受入れ対象となる介護施設や、介護職種の具体的な内容など、より詳しい情報は以下の記事をご参照ください。
▶︎ 特定技能「介護」とは?受け入れ施設の要件や人数枠も詳しく解説
建設業の受け入れ見込み数
建設業での受け入れ見込み数は80,000人で、介護業に次いで多くなっています。建設業は、若年層の就業者が減少傾向にある一方、インフラ整備等による建設需要は引き続き高水準で推移すると予想されています。また、建設現場の生産性向上も大きな課題となっており、外国人材の戦力化に大きな期待が寄せられているのが現状です。
また恒久的な需要があると思われる建設業界は、在留期間の上限が設定されていない特定技能2号への移行が認められている2業種のうちの1つとなっています(建設業と造船・舶用工業の2業種以外では、現在、特定技能1号のみ存在し在留期間の上限が5年となっています)。
建設分野における外国人就労者の活躍については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。
▶︎ 建設分野における外国人就労者の雇用
農業の受け入れ見込み数
農業分野の受け入れ見込み数は78,000人です。農業従事者の高齢化と担い手不足が深刻化する中で、外国人材の力に頼らざるを得ないのが実情のようです。建設業と違い特定技能1号のみが認可されている状況のため後継者の採用は難しいものの、繁忙期・閑散期が加味され、直接雇用以外に労働者派遣が認められているのが特徴になります(農業・漁業以外の分野では直接雇用のみ許可されています)。
特定技能での農業分野の受入れ対象範囲や、従事すべき作業の内容など、より詳細な情報は以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
▶︎「特定技能 農業」とは|業務内容や採用条件を紹介
「特定技能」外国人の受け入れ方
特定技能外国人を雇用する際には、受け入れ企業(受入機関)と外国人の双方に課される要件があります。円滑な受け入れのために、制度の理解を深めておくことが大切です。以下、特定技能外国人の受け入れ方について詳しく見ていきましょう。
在留資格「特定技能」を取得する条件
在留資格「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。このうち「特定技能1号」の取得には、原則として以下の2つの試験に合格することが求められます。
①日本語試験:日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上に相当する日本語能力を測定
②技能試験:特定産業分野での業務に必要な知識や技能を測定(分野ごとに試験内容が異なる)
一定の技能と日本語能力を兼ね備えていることを確認するための試験制度と言えますね。なお、技能実習2号を修了した外国人は、技能試験が免除される場合があります。
受け入れる企業(受入機関)が満たすべき条件
特定技能外国人を雇用する企業(団体)のことを「受入機関」と呼びます。受入機関になるためには、次のような条件を満たす必要があります。
①外国人との雇用契約が適切であること(報酬額が日本人と同等以上など)
②機関自体に問題がないこと(5年以内の出入国・労働法令違反がないことなど)
③外国人の支援体制が整っていること(外国人が理解できる言語での支援が可能など)
④支援計画が適切であること(生活オリエンテーション等を含むこと)
このほか該当分野の協議会に加入することも義務付けられています。外国人が安心して就労できる環境を整えることが、受入機関に求められる重要な役割だと言えるでしょう。
受け入れる企業(受入機関)の義務
受入機関には、以下のような義務が課されています。
①外国人との雇用契約の確実な履行(報酬の適切な支払い等)
②外国人への支援の適切な実施(生活面でのサポート等)
③出入国在留管理庁への各種届出
支援業務については、登録支援機関への委託も認められています。義務の履行を怠った場合、外国人の新規受入れができなくなるほか、改善命令等の行政処分を受ける可能性もあるので注意が必要です。
「特定技能」外国人を雇用するステップ
最後に、特定技能外国人の雇用手続きの流れを簡単に説明します。
▼日本国内で雇用する場合
①外国人が試験に合格又は技能実習2号を修了
②雇用契約の締結
③支援計画の作成・提出
④在留資格変更申請
⑤就労開始
▼海外から受け入れる場合
①外国人が試験に合格
②雇用契約の締結
③支援計画の作成・提出
④在留資格認定証明書交付申請
⑤在外公館でのビザ申請・取得
⑥入国・就労開始
書類の作成や各種申請の手続きに時間を要するケースも多いので、余裕を持ったスケジュール管理を心がけましょう。
まとめ
外国人材の活用は、日本の人手不足の解決に向けた重要な選択肢の一つです。在留資格「特定技能」の創設により、これまで外国人の就労が認められていなかった分野・業種にも門戸が開かれました。一方で、受入れ企業には、外国人が安心して働ける環境づくりが求められるなど、克服すべき課題も少なくありません。
外国人の雇用を検討する際は、業種特性をよく理解した上で、受入体制の整備を計画的に進めていくことが肝要です。外国人の視点に立った企業経営を実践することで、日本の産業の発展と多文化共生社会の実現につながることを願っています。
なお、特定技能制度で外国人材を受け入れるためには、送出国との間で交わす「二国間の協力覚書」が重要なポイントとなります。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
▶︎ 特定技能に関する受入れ対象国と二国間の協力覚書とは?