日本の労働生産性ランキングはなぜ低い?国際比較・業種別の実態と企業が取るべき対策
2025年に発表された日本生産性本部の調査によれば、日本の1時間あたりの労働生産性は、OECD加盟国38カ国中28位と低い順位になっており、約50年間にわたって主要先進7カ国の中で最下位が続いています。
一体なぜ、日本の労働生産性はここまで低迷しているのでしょうか。その原因を探るべく、本記事では、日本の労働生産性ランキングの現状を国際比較や業種別データから整理し、低い理由と具体的な改善策まで解説します。
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Contents
労働生産性とは?

企業の生産性を考えるうえで、「労働生産性」は欠かせない指標です。まずは基本的な意味と、実務でどう捉えるべきかをチェックしましょう。
労働生産性の定義(1人あたり・時間あたりの違い)
労働生産性とは、一定の労働でどれだけの付加価値を生み出したかを示す指標です。
主に以下の2つの見方があります。
- 一人あたり労働生産性:従業員1人が生み出す付加価値
- 時間あたり労働生産性:1時間あたりの生産効率
企業の実務では、単純な売上ではなく「付加価値(利益や粗利に近い概念)」で見ることが重要です。
特に国際比較では、時間あたりの労働生産性がよく用いられます。
労働生産性の計算方法と考え方
労働生産性は、基本的に以下の式で表されます。
- 一人あたり労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数
- 時間あたり労働生産性 = 付加価値 ÷ 総労働時間
この式から分かるように、生産性を高める方法は大きく2つです。
- 付加価値を高める(高付加価値業務へのシフト)
- 労働時間や人員を最適化する(効率化)
ただし、単に残業を減らすだけでは生産性は上がりません。
同じ時間でどれだけ価値の高い仕事ができているかが本質になります。
【国際比較】日本の労働生産性ランキング

日本の労働生産性は、国際的に見てどの位置にあるのでしょうか。最新のデータをもとに、ランキングの実態を見ていきましょう。
日本の時間あたり労働生産性(OECD比較)
2024年の日本の時間あたり労働生産性は、60.1ドル(約5,720円)で、OECD加盟38カ国中28位となっています。
一時は回復傾向も見られましたが、2024年は再び順位が伸び悩み、実質ベースでも前年比−0.6%とやや低下しています。
また、G7の中では引き続き最下位となっており、日本は「先進国の中でも生産性が低い国」という位置づけが続いています。
1970年から2024年までの主要先進7カ国の時間当たり労働生産性の順位を示すデータによると、日本の順位は以下のように変遷しています。
- 1970年: 19位
- 1980年: 18位
- 1990年: 19位
- 2000年: 21位
- 2010年: 20位
- 2020年: 28位
- 2023年: 26位
- 2024年: 28位
主要先進国の中で日本の相対的な位置が長期にわたり低下していることがわかります。

日本の一人当たり労働生産性
一人あたり労働生産性も同様に低水準です。
2024年は98,344ドル(約935万円)で、OECD加盟38カ国中29位となっています。
ニュージーランドやスロバキアと同程度の水準で、OECD平均や主要先進国と比べると差がある状況です。
この結果から、日本は「労働時間あたり」だけでなく、一人あたりの付加価値創出力も相対的に低いことが分かります。

主要先進国との比較(G7・OECD平均との差)
20主要先進国と比較すると、日本の遅れはより明確です。
G7の中では長年最下位が続いており、特にアメリカや欧州諸国と比べると、生産性の差は大きいままです。
また、OECD平均と比較しても、日本は下回る状態が続いています。背景としては以下のような構造的な要因が指摘されています。
- 高付加価値ビジネスへの転換の遅れ
- デジタル投資・活用の遅れ
- 労働時間に依存した働き方
こうした課題が、日本の労働生産性ランキングの低さにつながっています。
参考:労働生産性の国際比較2025|公益財団法人 日本生産性本部
業種別で見る日本の労働生産性

労働生産性は、企業全体だけでなく業種によっても大きく差があります。日本の特徴を理解するために、業種別の傾向を見ていきましょう。
製造業の労働生産性(国際比較)
2024年の日本の製造業の労働生産性は、80,411ドルで、OECD主要35カ国中20位となっています。かつては高い競争力を持っていた日本の製造業ですが、現在は欧米諸国に加え、他国との差も広がりつつあります。
特に為替の影響もあり、ドルベースでは2018年のピークから約18%低下している点も見逃せません。製造業は日本経済を支える重要な分野ですが、国際的には優位性が相対的に弱まっている状況です。
サービス業の生産性が低い理由
日本の労働生産性が低い要因として、特に影響が大きいのがサービス業です。サービス業は以下の特徴から、生産性が上がりにくい傾向があります。
- 人手に依存する業務が多い
- 価格競争が起きやすく付加価値が伸びにくい
- IT・自動化の導入が遅れやすい
さらに、日本ではサービスの質を重視する文化もあり、過剰な対応や非効率な業務が残りやすい点も影響しています。
業種間で生産性に差が出る背景
業種ごとの生産性の差は、主に以下の要因で生まれます。
- 付加価値の違い(IT・金融は高く、対人サービスは低い)
- デジタル化の進み具合
- 労働集約型かどうか
例えば、ITや金融などは少人数でも大きな付加価値を生みやすい一方、飲食・介護・小売などは人手が必要で生産性が伸びにくい構造です。
このように、日本全体の生産性の低さは、業種構造の影響も大きいといえます。
日本の労働生産性が低い理由

日本の労働生産性ランキングが低い背景には、単一ではなく複数の構造的な要因があります。ここでは、企業が押さえておきたい代表的なポイントを紹介します。
長時間労働と付加価値の低さ
日本では依然として、長時間労働に依存した働き方が残っています。
本来、労働生産性は「どれだけ短時間で価値を生み出せるか」が重要ですが、長時間労働が前提になると、時間あたりの付加価値が伸びにくくなります。
また、価格競争の激しい業界では、利益率が低くなりやすく、結果として一人あたりの生産性も低くなりがちです。
IT・デジタル投資の遅れ
諸外国と比べて、日本はITやデジタル分野への投資が遅れていると言われています。
特に以下のような点が課題です。
- 業務の属人化(人に依存した仕事)
- システムの老朽化
- データ活用の不足
これにより、同じ業務でも手作業が多く、効率化が進みにくい状態が続いています。
労働市場の柔軟性の低さ
日本の雇用制度は安定性がある一方で、人材の流動性が低いという特徴があります。
その結果、
- 適材適所の配置が進みにくい
- 生産性の低い業務が残りやすい
- 成果より年功が重視されやすい
といった課題が生じやすくなります。
サービス業中心の産業構造
日本はサービス業の比率が高く、この点も労働生産性に影響しています。
サービス業は、人の手による業務が多く、製造業やIT産業に比べて生産性が上がりにくい傾向があります。
特に日本では、丁寧さや過剰品質が求められる場面も多く、それが結果的に効率の低下につながるケースもあります。
労働生産性を高めるための企業の対策

日本の労働生産性を高めるには、構造的な課題を踏まえたうえで、企業単位での取り組みが欠かせません。ここでは、実務に落とし込みやすいポイントを見ていきます。
業務の見直しと生産性指標の可視化
まず重要なのは、現状の業務を見直し、どこに無駄があるのかを把握することです。
そのためには、
- 業務フローの整理
- 不要な作業の削減
- KPI(生産性指標)の設定
といった取り組みが有効です。
特に、生産性は「感覚」ではなく、数値で把握することが重要です。時間あたりの売上や付加価値を見える化することで、改善の方向性が明確になります。
ICT・DXの推進
生産性向上において、デジタル活用は欠かせません。
例えば、以下のような取り組みが考えられます。
- 業務の自動化(RPA・AIの活用)
- クラウドツールによる情報共有の効率化
- データ活用による意思決定の迅速化
これらを組み合わせることで、業務全体の効率化につながります。単なるツール導入にとどまらず、業務のやり方そのものを見直すことがポイントです。
人材戦略の見直し(適材適所・評価制度)
人材の配置や評価制度も、生産性に大きく影響します。
例えば、
- スキルに応じた配置(適材適所)
- 成果に基づく評価制度
- 教育・リスキリングの強化
といった施策により、個人のパフォーマンスを引き出しやすくなります。
また、属人化を防ぎ、組織全体で成果を出せる体制を整えることも重要です。
外国人材の活用が労働生産性向上につながる理由

人手不足が深刻化する中で、外国人材の活用は単なる労働力の補填にとどまりません。適切に活用することで、企業の労働生産性向上にもつながります。
人手不足の解消による業務効率化
人員が不足している状態では、既存社員に業務が集中し、長時間労働や非効率な働き方につながりやすくなります。
外国人材を採用することで、
- 業務の分担が進む
- ボトルネック業務が解消される
- 本来注力すべき業務に集中できる
といった改善が期待できます。
結果として、時間あたりの生産性向上にもつながります。
多様性による生産性向上
外国人材の受け入れは、組織に多様な視点をもたらします。
例えば、
- 業務の進め方の見直し
- 無駄な慣習の改善
- 新しいアイデアの創出
など、既存のやり方にとらわれない変化が生まれやすくなります。
こうした多様性は、結果として組織全体の生産性向上に寄与します。
外国人採用を成功させるポイント
一方で、外国人材の活用を生産性向上につなげるためには、受け入れ体制の整備が不可欠です。
具体的には、
- 業務内容の明確化
- 適切な在留資格の選定(技術・人文知識・国際業務、特定技能など)
- 言語・文化面のサポート
などが重要になります。
また、単純な人手不足の補填としてだけでなく、専門性を持つ外国人材を活用することで、業務の高度化や付加価値向上にもつながります。
単に採用するだけでなく、戦力として活躍できる環境を整えることが、生産性向上のカギです。
まとめ
日本の労働生産性は、国際比較ランキングで見ても依然として低い水準にあります。特にサービス業中心の産業構造や、長時間労働、デジタル活用の遅れといった要因が影響しています。
一方で、生産性の課題は企業の取り組み次第で改善できる余地も大きいといえます。業務の見直しやDXの推進、人材戦略の見直しに加え、外国人材の活用も有効な選択肢の一つです。
企業としては、自社の業務構造や人材配置を見直しながら、DXと人材活用を組み合わせて、生産性向上に取り組んでいくことが重要です。
まずは、現状の業務や組織の課題を整理し、できるところから改善を進めていきましょう。