台湾人の転職事情を徹底解説|就職事情と日本で働く理由・採用の最新動向
近年、日本企業による台湾人材の採用ニーズが急速に高まっています。親日的な国民性、高い日本語学習意欲、そして日本のビジネス文化への適応力の高さから、即戦力として期待される人材が多いのが特徴です。一方で、台湾人が日本での転職を選ぶ背景には、台湾国内の労働市場や賃金水準、キャリア形成への課題があります。
本記事では、台湾人の転職事情と日本で働く理由を、最新の統計データや在留資格制度を踏まえて解説します。採用担当者・人事責任者・現場マネージャーが社内説明や受け入れ準備に活用できる、一次情報ベースの実務的な内容をお届けします。
Contents
台湾人の転職事情の基礎知識|なぜ「転職が当たり前」なのか

台湾と日本では、転職に対する捉え方が根本的に異なります。日本では「転職回数が多い=定着性がない」とネガティブに評価される傾向がありますが、台湾では転職はキャリアアップの当然の手段として、むしろポジティブに認識されています。
台湾の20代から30代前半では、2年ごとに職場を変えるのが一般的とされ、生涯転職回数も7回以上に達するといわれています。この背景には、台湾には日本のような「新卒一括採用」の慣行がほぼ存在しないという構造的な理由があります。
台湾の大学生は卒業後にゆっくり就職先を探すケースも多く、新卒も経験者と同じ土俵で競争するため、未経験の新卒は不利な立場に置かれます。結果として「とりあえず採用されたところに入り、経験を積んでから転職する」という行動パターンが定着しているのです。
さらに、台湾労働部の調査では、大卒労働者の主な転職理由として「待遇への不満」「勤務地の希望」「職場環境」が挙げられており、給与水準を引き上げる手段として転職が選ばれていることが分かります。
台湾の新卒離職率と転職サイクル
台湾の労働市場では、新卒の早期離職や短いサイクルでの転職が一般的であり、日本とは大きく異なるキャリア形成の構造を持っています。以下の表で、台湾と日本の労働市場の主要指標を比較しながら、台湾人材の転職行動の背景を整理しました。
| 比較項目 | 台湾 | 日本 |
|---|---|---|
| 新卒1年目の離職率 | 40%強 | 11.9% |
| 20代〜30代の平均転職サイクル | 約1.5〜2.5年 | 一般的に5年以上 |
| 社内昇給率(年) | 約3〜5% | 約2〜3% |
| 転職時の昇給幅 | 10〜20% | 数%〜10%程度 |
| キャリア形成の主流 | 転職によるステップアップ | 社内での長期育成 |
| 転職に対する社会的評価 | ポジティブ(市場価値の証明) | ネガティブな見方も残る |
この表からわかるように、台湾では転職が待遇改善の合理的な手段として機能しています。社内昇給が年3〜5%程度にとどまるのに対し、転職すれば10〜20%の昇給が見込めるため、20代から30代の労働者が約1.5〜2.5年サイクルで職場を変えるのは経済的にも合理的な選択です。
日本企業が台湾人材を採用する際、履歴書に複数の職歴が並んでいても、それは必ずしも「忍耐力がない」「定着性が低い」ことを意味するわけではありません。むしろ、台湾の労働市場における通常のキャリア形成のあり方として理解すべき文化的背景です。この前提を踏まえた上で、自社で長期的に活躍してもらうための処遇設計やキャリアパスの提示を行うことが、定着率向上の鍵となります。
転職に対する文化的価値観の違い
台湾では、転職は「自分の市場価値を試す行為」「より良い条件を獲得する積極的なアクション」と位置付けられています。一つの会社に長く勤めることが必ずしも美徳とされず、むしろスキルアップや経験の幅を広げるために環境を変えることが推奨される風土です。
歴史的に見ても、台湾は政権交代や政治的不安定さを経験してきた地域であり、「会社や国に守られる」よりも「自分の力で自分を守る」という自助精神が根付いています。終身雇用制が前提の日本企業と、ジョブ型雇用が浸透している台湾では、雇用に対する基本的な考え方が異なる点を採用側は理解しておく必要があります。
ただし、台湾人が日本で就職した場合は、在留資格の制約や転職活動の難しさから、日本国内では台湾本国ほど頻繁な転職は発生しにくいという特徴もあります。
台湾の就職事情と労働市場の現状
台湾の労働市場は、賃金水準・業界格差・最低賃金の引き上げといった複数の要素が絡み合う構造になっています。以下の表で、台湾の就職事情を理解する上で押さえておきたい主要な指標と、日本との比較ポイントを整理しました。
| 台湾の水準 | 補足・日本との比較 | |
|---|---|---|
| 全産業平均月収(2025年) | 約23万〜24万円 | 円換算ベース |
| 労働者の月収中央値 | 約19万円前後 | 平均値はIT・半導体エリート層が押し上げているため、中央値が実態に近い |
| 月額最低賃金(2025年1月〜) | 2万8,590ニュー台湾ドル | 毎年引き上げが続いている |
| 時間給最低賃金(2025年1月〜) | 190ニュー台湾ドル(約950円) | 日本の地方都市の最低賃金とほぼ同水準 |
| 平均年収(104人力銀行データ) | 300万円台前半 | 日本の平均年収約460万円と比較すると100万円以上の差 |
| ハイテク・金融業界の年収 | 600万円超も一般的 | 半導体・IT・金融が高水準 |
| 飲食・サービス業の年収 | 200万円台が中心 | 業界間で約3倍の格差 |
| 社会保険料・税負担 | 日本より軽い | 同じ額面でも実質手取りは台湾が有利 |
| 物価水準 | 日本より比較的低い | 単純な額面比較では実質生活水準は測れない |
この表が示すように、台湾の賃金構造は「業界による二極化」と「継続的な最低賃金引き上げ」の2つの動きが同時に進行しています。ハイテク・金融業界では年収600万円超も一般的である一方、飲食・サービス業は200万円台が中心と、業界間で約3倍の格差が存在します。さらに、台湾の労働部が2025年1月から月額最低賃金を2万8,590ニュー台湾ドル、時間給最低賃金を190ニュー台湾ドル(約950円)まで引き上げたことで、日本の地方都市の最低賃金とほぼ同水準まで上昇しています。
「台湾=安価な労働力」という前提はもはや成立しません。特にサービス業・小売業では最低賃金近辺での人材獲得競争が激化しており、日本企業が台湾人材を採用する際は、現地の業界水準を踏まえた給与設計が不可欠です。なお、台湾は社会保険料や税金負担が日本より軽く、物価も比較的低いため、単純な額面比較だけでは実質的な生活水準は測れない点にも留意が必要です。
業界別・地域別の給与格差
台湾の賃金構造を業界別に見ると、製造業の管理者・監督者は約7万9,000元(約37.9万円)、専門職は約6万3,000元(約30.2万円)に対し、一般技術者・作業員は約3万元(約14.4万円)と職位による差が顕著です。サービス業では金融・保険業の管理者が約11万4,000元(約54.7万円)で最も高く、宿泊・飲食業の作業員は約2万8,000元(約13.5万円)と最低賃金に近い水準にとどまります。地域別では、半導体産業の集積地である新竹・苗栗エリアの給与水準が最も高く、台北市は高給エリート層と低賃金サービス業が混在するため平均値はそれほど高くありません。一方、高雄エリアは労働集約型の伝統的製造業が中心で、給与水準は最も低い傾向にあります。日系企業の場合、ワイズコンサルティングが2025年9月に公表した調査によると、在台日系企業の平均月給は5万1,000台湾元で、前年比約6%増と高い伸びを記録しています。
新卒初任給と男女間賃金格差
台湾労働部が2025年4月に発表した2024年度新卒初任給調査によると、台湾の新卒平均月給は約3万4,000台湾元(約16万6,000円)で、前年比6.4%増と大幅に上昇しました。学歴別では高卒・大卒・大学院卒と進むにつれて月給が上昇し、男性が3万9,000台湾元(約18万7,800円)、女性が3万6,000台湾元(約17万3,400円)となっています。注目すべきは男女間賃金格差の小ささで、台湾全体の男女賃金格差は15.8%にとどまり、日本の30.6%、韓国の30.2%と比べて大幅に小さい水準です。これは台湾において女性の社会進出が進んでおり、女性管理職が多いこと、託児所の整備により共働きが一般化していることが背景にあります。年代別では、日本と同様に40代〜50代で賃金がピークを迎え、45歳〜54歳の平均年収は約92万3,000元(約443万円)に達するとのデータもあります。
台湾人が日本で働く理由と転職動機
台湾のビジネス誌が20〜35歳を対象に行った調査では、6割以上の若者が「海外で働きたい」と回答し、その渡航先1位は欧米でも中国でもなく日本でした。台湾人が日本での転職・就職を選ぶ理由は、単に賃金の高さだけではありません。第一に、台湾は世界でも有数の親日国として知られ、日本のアニメ・音楽・食文化に幼少期から親しんでいる層が分厚く存在しています。日本での就労は単なる経済活動ではなく、憧れの文化圏で生活することへの強い願望と結びついています。
第二に、地理的な近さも大きな魅力です。台湾から日本までは飛行機で約3時間、家族や友人との往来も容易で、心理的なハードルが低い渡航先となっています。第三に、台湾本国では新卒採用枠がほぼ存在しないため、新卒一括採用を行う日本企業はキャリアの第一歩を踏み出す貴重な機会として認識されています。
さらに、日本企業の安定した雇用慣行や教育制度は、頻繁な転職が前提の台湾市場では得られない長期的なキャリア形成の場として評価されています。一方で、近年の円安により台湾元換算での日本の賃金は2019年比で約3割減少しており、台湾現地の給与水準のほうが高い職種も増えています。そのため、最近の台湾人材は勤務地と給与へのこだわりが強くなり、希望条件に合う仕事がなければ日本就職を見送る傾向が出てきています。
親日感情と日本文化への憧れ
台湾の親日感情は、歴史的経緯と現代の文化交流の両面で形成されています。1895年から1945年までの日本統治時代に整備された鉄道・教育・行政システムが台湾の近代化に寄与した歴史的背景があり、戦後も日台間の民間交流は途切れることなく続いてきました。
各種アンケートで「最も好きな国は日本」と答える台湾人が多く、日本のポップカルチャーへの関心は若年層でも非常に高い水準にあります。台湾の高校では93.2%の学校が日本語を第二外国語として開講しており、第二外国語選択者の約半数が日本語を選ぶというデータもあります。
日本への留学生数も2023年時点で6,998人とトップ10入りしており、留学経験を経て日本での就職を目指すルートも一般化しています。こうした文化的土壌の厚さが、台湾人材を日本で働くことに前向きにさせる根本要因となっています。日本企業にとっては、文化適応コストが他国籍人材より低いという実務的なメリットにつながります。
経済的動機とキャリア形成の機会
台湾人が日本で働く経済的動機は、為替レートや物価動向によって変動します。コロナ前の円安が進行する以前は、日本の賃金は台湾の1.5倍以上の水準にあり、出稼ぎ的な動機での渡航も一般的でした。しかし2024年以降の円安局面では、台湾元換算で日本の賃金は2019年比で約3割減少し、台湾現地の半導体・IT業界などでは日本企業の提示額を上回る水準も珍しくなくなっています。
それでもなお日本での就労を選ぶ層は、純粋な賃金水準ではなく「日本でのキャリア」「専門性の獲得」「グローバル経験」を重視する傾向が強まっています。特に、台湾では新卒採用が一般的でないため、日本の新卒採用制度を活用してキャリアの最初の一歩を体系的に踏み出せる点は、台湾の若手にとって大きな魅力です。
また、IT・半導体などの専門職では、日本企業が世界水準の技術や開発環境を持つことから、技術習得の場として日本就職を選ぶケースも増えています。
台湾人を採用する際の在留資格と手続き
台湾人を日本企業で雇用するには、適切な在留資格の取得が不可欠です。出入国在留管理庁が公表した2025年6月末時点の統計では、在留外国人数は395万6,619人と過去最高を更新しており、在留資格別では「永住者」に次いで「技術・人文知識・国際業務」が2位、「技能実習」が3位となっています。台湾人の採用で活用される主な在留資格を、対象となる人材像と該当職種・活用シーンの観点から以下の表に整理しました。
| 在留資格 | 主な対象者 | 該当職種・活用シーン |
|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務(技人国) | 大学・大学院卒業者、日本の専門学校で専門士の称号を取得した人材 | システムエンジニア、プログラマー、通訳翻訳、海外営業、マーケティングなど専門職 |
| 特定活動(ワーキングホリデー) | 18〜30歳の台湾人 | アルバイト・短期就労、来日体験を兼ねた就労(最長1年) |
| 特定技能 | 技能評価試験・日本語試験合格者 | 介護、建設、製造業、外食、宿泊業など14分野の即戦力人材 |
| 企業内転勤 | 海外関連企業からの異動者 | 親会社・子会社・関連会社間での日本拠点への転勤 |
| 日本人の配偶者等 | 日本人と結婚している台湾人 | 就労制限なし(職種・業種を問わず雇用可能) |
| 永住者 | 永住許可を取得した台湾人 | 就労制限なし(日本人とほぼ同様に雇用可能) |
| 定住者 | 定住者の在留資格を持つ台湾人 | 就労制限なし(活動範囲が広い) |
この表に整理した通り、台湾人の採用で最も多く活用されているのが「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)の在留資格です。大学・大学院卒業者または日本の専門学校で専門士の称号を取得した人材が、専門知識を活かして就労する際に取得する資格で、システムエンジニア・プログラマー・通訳翻訳・海外営業・マーケティングなどの職種が該当します。
そのほかに台湾とのワーキングホリデー協定を活用した「特定活動」、特定の産業分野の即戦力人材を受け入れる「特定技能」、企業内転勤、日本人の配偶者等、永住、定住など複数の在留資格があり、業務内容と本人の経歴に応じて最適な資格を選択する必要があります。
なお、無資格や資格外活動による就労は、雇用主側も「不法就労助長罪」の処罰対象となるため、採用前の在留資格の確認は必須です。在留カードの原本確認、在留期限のチェック、就労可能な活動範囲の照合といった基本的な手続きを徹底することが、コンプライアンスリスクを回避する第一歩となります。
技術・人文知識・国際業務(技人国)の取得要件
技人国の在留資格を取得するには、業務内容と本人の経歴に「資格該当性」「上陸許可基準適合性」が認められる必要があります。具体的には、日本または台湾本国の大学・大学院、もしくは日本の専門学校(専門士の称号)を卒業しており、業務内容と専攻分野に関連性があることが求められます。
例えば、システムエンジニアやプログラマーは「技術」分野に該当し、自然科学系の学科で学んだことが在留資格該当性の根拠となります。海外営業や通訳翻訳は「国際業務」に該当し、語学力の客観的な証明(日本語検定など)や3年以上の実務経験で要件を満たせます。
在留資格認定証明書の発行には1〜3カ月かかるため、採用が決まったら早めに申請手続きを進めるのが鉄則です。スケジュール感を誤ると、内定者の入社時期がずれ込み、現場の稼働開始計画にも影響します。
ワーキングホリデーと特定技能の活用
日本と台湾はワーキングホリデー協定を締結しており、18〜30歳の台湾人は「特定活動」の在留資格でアルバイトをしながら日本文化を体験することが可能です。期間は1年間に限定されますが、ワーキングホリデー中に正社員登用の話が出た場合、技人国などへの在留資格変更により継続雇用が可能となります。一方、特定技能制度は介護・建設・製造業・外食・宿泊業など特定産業分野での即戦力人材を受け入れる制度で、2019年に創設されました。
ただし、台湾と日本は二国間協定を締結していないため、台湾人が特定技能で就労するには日本国内で技能評価試験と日本語試験に合格する必要があります。他国籍と比較して特定技能で就労している台湾人材は少なく、人材確保が難しい傾向にあります。特定技能で台湾人を雇用する場合は、実績のある人材紹介会社を通じての採用が現実的な選択肢となります。
転職時の就労資格証明書の重要性
既に日本に在留している台湾人を中途採用する場合、転職後の業務内容が「技術・人文知識・国際業務」の活動範囲内であれば、出入国在留管理局への簡単な届出のみで就労が可能です。ただし、出入国在留管理局はあくまで届出を受理しているだけであり、転職後の業務内容や本人のスペックが在留資格に適合しているかを審査・許可しているわけではありません。そのため、次回の在留期間更新時に「資格該当性なし」と判断され、不許可となるリスクが残ります。このリスクを回避するために有効なのが「就労資格証明書」の取得です。転職後の会社の概要・業務内容・労働条件などを書類で出入国在留管理局に提出し、審査を経て交付されると、在留期間更新時の手続きが大幅に簡素化されます。労使双方にとって安心材料となるため、中途採用時には取得を強く推奨します。
台湾人材の仕事観と日本企業での適応
台湾人材を採用する際、最も重要なのが文化的・仕事観の違いを理解した上でのマネジメント設計です。台湾人は基本的に勤勉で責任感が強く、日本人と気質が似ていると評価されますが、いくつかの点で明確な違いがあります。第一に、台湾は成果主義の文化が強く、長時間労働を美徳とする日本型の価値観とは異なります。自分の担当業務が完了すれば周囲が残業していても定時で退社するのが一般的で、これを「無責任」とは捉えません。「時間=価値」という意識が強く、理由の不明瞭な残業指示は「無能の証明」「時間の搾取」と受け取られかねません。第二に、台湾では「報・連・相」の文化があまり浸透していません。自分の業務範囲には強い責任感を持って取り組みますが、業務外のことや他部署との連携については日本企業ほど積極的に情報共有しない傾向があります。第三に、面子(メンツ)を重視する文化があるため、ミスの指摘は人前ではなく個別の場で行うのが鉄則です。これらの文化差を踏まえずに日本流のマネジメントを押し付けると、早期離職につながるリスクがあります。一方で、台湾人材の高い決断力・スピード感・成果志向は、日本企業の働き方改革を推進する上での好影響にもなり得ます。
成果主義と効率重視の働き方
台湾人材は仕事の効率を非常に重視し、限られた時間で最大の成果を出すことに価値を置きます。日本企業では「残業=頑張っている証」と評価される風土が残っているケースもありますが、台湾人にとっては理解しづらい価値観です。台湾では業務時間内に集中して成果を出し、終業後はプライベートを充実させるのが当然のスタイルです。日本企業が台湾人材を採用する際は、評価基準を「労働時間」ではなく「成果」に置き直すこと、業務量と業務時間の対応関係を明確に説明することが定着率向上のポイントとなります。また、台湾人材はジョブディスクリプション(職務記述書)で業務範囲が明確に定義されることを好む傾向があり、曖昧な「その他付随業務」のような書き方は不信感を招く可能性があります。採用時の労働条件通知や雇用契約書では、業務内容・評価基準・キャリアパスをできるだけ具体的に提示することが推奨されます。
コミュニケーションと面子の文化
台湾は中華圏文化圏に属するため、面子(メンツ)を非常に重視します。これは中国本土ほど強くないものの、日本と比較すれば顕著です。会議で他のメンバーがいる前でミスを指摘されたり、上司から強い口調で叱責されたりすると、自尊心が傷つきモチベーションが大きく下がる可能性があります。指導やフィードバックは個別の場で、相手の立場を尊重しながら行うのが基本です。また、台湾では自分の意見や考えをはっきり伝える文化があるため、日本人のような曖昧な表現や「察する」コミュニケーションは伝わりにくい場面があります。指示は具体的に、期待値は明確に伝えることが重要です。一方で、人間関係を大切にする文化もあり、信頼関係が構築できれば長期的に協力的な働き方が可能になります。同僚や上司とのランチや食事の機会を意識的に設けることで、職場への定着を促進できます。
時間感覚と働き方のすり合わせ
台湾と日本では時間に対する感覚にも違いがあります。日本では「5分前行動」「分単位の正確さ」が当然とされますが、台湾では時間に対してやや柔軟な感覚を持つ人もいます。会議の開始時刻や納期について、日本流の厳密な意識を当然視せず、入社時のオリエンテーションで明確に伝えることが大切です。特に製造業や接客業など、時間厳守が業務品質に直結する現場では、初期教育で「日本ではここを重視する」というルールを言語化して共有することで、認識のズレを防げます。また、台湾では旧正月(春節)が日本のお正月以上に重要な家族行事として位置付けられており、長期休暇を取得して帰省する文化があります。年間休日の調整や、繁忙期との重なりを事前にすり合わせることが、双方にとってストレスのない働き方につながります。
台湾人材採用のメリットと注意点
台湾人材を採用するメリットは多岐にわたります。日本語学習者が多く、ビジネスレベルの日本語を話す人材が比較的見つけやすいこと、日本文化への理解度が高く適応コストが低いこと、勤勉で責任感が強い国民性、IT・半導体分野での技術力の高さ、中国語(繁体字)と英語のマルチリンガル人材が多いこと、などが挙げられます。インバウンド観光業では中国語対応スタッフとしての需要も急速に高まっており、ホテル・旅館・小売業を中心に採用が活発化しています。一方で注意点もあります。第一に、台湾本国の賃金水準が上昇しており、円安と相まって「日本で働く経済的メリット」が縮小しているため、給与水準の見直しが必要なケースが増えています。第二に、台湾人材は転職に対する心理的ハードルが低いため、入社後のキャリアパスや処遇改善の道筋を明確に示さないと、数年で離職するリスクがあります。第三に、特定技能などの一部の在留資格では、二国間協定の不在により採用ルートが限定的です。第四に、面接時に自分の能力や経験をやや誇張して伝える傾向もあるため、資格や職歴は書面でしっかり確認することが望まれます。これらを踏まえた採用設計を行うことで、台湾人材の強みを最大限活かしながらリスクを最小化できます。
採用メリットを最大化するためのポイント
台湾人材の採用効果を最大化するには、採用前から入社後までの一貫した設計が不可欠です。採用前の段階では、求人票の業務内容・勤務地・給与・キャリアパスを具体的かつ透明に記載することで、ミスマッチを減らせます。台湾人材は「都心勤務」「ブランド企業」を志向する傾向が強いため、地方勤務の場合は将来的な異動可能性や地域手当の充実度などをアピールするのが効果的です。入社後の早期段階では、日本のビジネスマナー(報連相、敬語、時間厳守など)を体系的に教育する研修プログラムを用意することで、文化的なズレによる早期離職を防げます。また、台湾人同士のコミュニティが社内に複数存在すると、相互サポートが働き定着率が高まる傾向があります。日本人社員向けにも「台湾人材の仕事観」を学ぶ機会を提供し、双方向の理解を促進することがマネジメントの質を高めます。
長期定着のためのキャリア設計
台湾人材に長く働いてもらうためには、転職しなくてもキャリアアップできる道筋を明示することが最重要です。台湾では「2年で昇給・昇格しなければ転職する」という文化が根付いているため、日本企業の年功序列的な処遇制度はミスマッチを生みやすい構造です。役職への登用基準、給与改定のタイミングと幅、専門性を高めるための研修機会などを、入社時点から具体的に提示しましょう。また、台湾人材は本人だけでなく家族(特に親)の意向も意思決定に大きく影響するため、内定通知時に家族向けの会社案内を用意したり、入社後にも安心感を与えるサポート体制を見せたりすることで、家族の同意も得やすくなります。住居サポート、行政手続きサポート、医療通訳の手配など、生活面での支援が手厚い企業ほど、台湾人材の長期定着率は高まる傾向があります。外国人材の受け入れ全般については、GTNの外国人材受け入れ支援が住居・生活支援を含むワンストップサービスを提供しており、検討材料となります。
FAQ|台湾人の転職・採用に関するよくある質問
Q1:台湾人の在留人数は現在どのくらいですか?
出入国在留管理庁の2025年6月末時点の統計によると、日本に在留する外国人数は約395万人で過去最高を更新しています。台湾人の在留者数は近年5〜6万人台で推移しており、在留資格別では「技術・人文知識・国際業務」「永住者」「特別永住者」「留学」「特定活動(ワーキングホリデーを含む)」が主な構成となっています。最新の詳細データは出入国在留管理庁の公表資料で確認できます。
Q2:台湾人を中途採用する場合、就労ビザの手続きはどう進めればよいですか?
既に日本で技人国の在留資格を持つ台湾人を採用する場合、転職後の業務内容が同じ在留資格の範囲内であれば、出入国在留管理局への「契約機関に関する届出」のみで就労可能です。ただし、次回の更新時のリスクを回避するため、「就労資格証明書」の取得を強く推奨します。海外在住の台湾人を新規採用する場合は、在留資格認定証明書の交付申請(1〜3カ月)が必要で、入社時期から逆算してスケジュールを組むことが重要です。
Q3:台湾人の平均年収はどのくらいで、日本との差はどう変化していますか?
台湾の2025年の全産業平均月収は約23万〜24万円、年収換算で約280万〜340万円程度です。日本の平均年収約460万円と比較すると差はありますが、近年の円安と台湾の最低賃金引き上げにより、その差は縮小傾向にあります。特にIT・半導体業界では、台湾の給与水準が日本を上回るケースも出てきています。採用時の給与提示は、単純な為替換算だけでなく、台湾現地の同業界水準も意識する必要があります。
Q4:台湾人は本当に転職しやすい国民性ですか?日本で採用しても定着しないのでは?
台湾本国では転職が一般的ですが、これは新卒採用制度がない、ジョブ型雇用が主流、社内昇給より転職昇給のほうが大きいなどの構造的要因によるものです。日本で就労する台湾人は、在留資格の制約や日本での転職活動の難しさから、台湾本国ほど頻繁には転職しません。ただし、キャリアパスや処遇改善が見えない職場では数年で離職するリスクがあるため、明確な評価制度と昇給ルールの提示が定着の鍵となります。
Q5:台湾人材を採用する際、最も気を付けるべきポイントは何ですか?
文化的な働き方の違いを採用前から理解し、マネジメント設計に反映させることです。具体的には、長時間労働を前提としない評価制度、ジョブディスクリプションの明確化、面子に配慮した個別フィードバック、家族向けのサポート体制、明示的なキャリアパスの提示などが挙げられます。日本のビジネスマナー(報連相、時間厳守など)は文化背景の違いから自然には身につかないため、入社時の体系的な研修で補うことが推奨されます。
Q6:特定技能で台湾人を採用することは可能ですか?
可能ですが、日本と台湾は特定技能に関する二国間協定を締結していないため、日本国内で技能評価試験と日本語試験に合格した台湾人を採用するルートが基本となります。他国籍と比較して特定技能の台湾人材は数が少ないため、実績のある人材紹介会社を通じての採用が現実的です。介護・建設・宿泊・外食など対象14分野での就労が可能で、特定技能2号への移行も制度上は認められています。