【企業向け】在留カード偽造を見抜く!雇用前の確認と対策マニュアル
外国人材雇用において、在留カードの偽造は不法就労のリスクを伴います。
企業が法的責任や信用失墜を回避し、適切に雇用を行うため、本記事では偽造カードの見抜き方から雇用前の対策までを網羅的に解説。
安心して外国人材を雇用するための実践マニュアルです。
Contents
企業が在留カード偽造対策を行うべき理由

少子高齢化が進む日本において外国人材の雇用は不可欠な選択肢となっていますが、在留カードの偽造問題は企業にとって深刻なリスクをはらんでいます。
偽造対策を怠ることは、単なる確認不足では済まされません。
最大の法的リスクは、出入国管理及び難民認定法第73条の2に基づく「不法就労助長罪」に問われる可能性です。
不法就労者を雇用した企業には、故意・過失を問わず、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される重い法的責任を負うことになります。
法的責任だけでなく、企業の社会的信用も著しく低下します。
偽造カードを見抜けずに不法就労者を雇用していた事実が発覚すれば、企業イメージは悪化し、取引先や顧客からの信頼を失うだけでなく、行政指導や事業停止命令を受け、事業継続自体が困難となる可能性も指摘されます。
これらのリスクを回避し、健全な企業運営を維持するためには、雇用前の在留カード確認と偽造対策が不可欠です。
適切な対策は、コンプライアンス遵守と企業価値の保護に繋がり、外国人材を安心して迎え入れ、共に成長していくための基盤を築きます。
外国人雇用における在留カード確認の重要性
雇用対策法に基づき、企業は外国人の在留資格や在留期間を確認しハローワークへ届出ることが法的義務とされており、そのために在留カード等での確認が求められます。
在留カードを確認することで、雇用しようとする外国人が日本に合法的に滞在しているか、また、どのような在留資格を持ち、どのような範囲で就労が許可されているかを正確に特定できます。
この確認作業を怠ることは、企業が意図せず不法就労者を雇用してしまうリスクを高めます。
適正な在留カード確認は、法令遵守と健全な事業運営の基盤となります。
不法就労助長罪とは?企業の責任範囲
「不法就労助長罪」とは、出入国管理及び難民認定法第73条の2に規定される、不法滞在者や許可されていない活動を行う外国人を雇用したり、就労をあっせんしたりする行為を指します。
この罪は、外国人材の不法就労を故意に助長した場合だけでなく、事業活動に関し、外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、そのことを知らないことに過失がある場合も適用されます。
具体的には、企業側が在留カードの確認を怠り、結果として偽造カードを見抜けなかった場合であっても、法的責任を問われる可能性があります。
この罰則は、経営者だけでなく、雇用に関わった担当者個人にも適用されるケースがあり、企業の責任範囲は非常に広範です。
偽造カードがもたらす企業への影響(信用失墜、行政指導など)
偽造された在留カードを所持する外国人を雇用してしまった場合、企業は以下のような多岐にわたる深刻な影響を被ります。
- 企業イメージの著しい低下と信頼喪失: 不法就労の事実が公になれば、取引先や顧客からの信用を失い、採用活動にも深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
- 行政機関からの厳しい指導・処分: 具体的には、入管庁からの改善命令や、悪質なケースでは事業停止命令が下されることもあります。これにより事業活動が一時的または長期的に中断され、多大な経済的損失が発生するリスクがあります。
このような事態は、単なる一時的な損害に留まらず、長期的な事業継続を困難にする可能性も秘めています。
在留カード偽造の見分け方:物理的特徴とICチップ確認

企業が外国人材を雇用する際、在留カードの真贋確認は不可欠です。
偽造は年々巧妙化していますが、見分けるための具体的な方法は存在します。
ここでは、主に「物理的特徴」と「ICチップ情報」という二つの側面から、偽造カードを見抜くポイントを解説します。
【物理的特徴】偽造カードを見分けるチェックポイント
偽造された在留カードを見抜くためには、その物理的な特徴を細部にわたって確認することが重要です。
本物の在留カードには、偽造を困難にする高度なセキュリティ技術が複数施されており、これらを注意深くチェックすることで、多くの偽造カードを見破ることが可能です。
具体的には以下の点に注目しましょう。
- ホログラム: 見る角度によって色や絵柄が変化する精巧なホログラムが施されているか。偽造カードでは、ホログラムが粗雑であったり、色が単一であったり、剥がれやすかったりする特徴が見られます。
- フォントと印字の鮮明さ: 本物の文字は均一で鮮明に印字されているか。偽造カードではフォントが不自然であったり、文字が滲んでいたりする場合があります。特に生年月日や有効期限などの印字は注意深く確認が必要です。
- 透かし・マイクロ文字: 光にかざすと現れる透かしや、肉眼では判読しにくい微細な文字(マイクロ文字)があるか。偽造カードでは、これらのセキュリティ要素が欠落しているか、不鮮明であることが多いです。
- 写真の貼り付け方: 顔写真がカードにしっかりと一体化しているか。後から貼り付けられたような不自然な跡や、ラミネート加工が甘い場合は偽造の可能性が高いです。
- カードの質感と厚み: 本物の在留カードは一定の硬さ、厚み、表面の滑らかさを持っています。偽造カードは、質感や厚みが異なることがあります。
- 記載内容の不自然さ: 氏名、生年月日、在留資格、有効期限などの記載内容に、日本語として不自然な点や、明らかな誤字脱字がないかを確認します。
これらの物理的特徴を効率的に確認するためには、本物の在留カードと並べて比較することや、細部を拡大して確認できるツールの活用が非常に効果的です。
在留カード番号の確認における注意点
在留カードに記載された番号には内部的な規則性がありますが、詳細な意味や計算方法は公表されていません。
番号の一部が明らかにおかしいケース(桁数が違う、日本の在留カードの形式に見えない等)は偽造の手がかりとなります。
インターネット上には「発行地を示すコード」や「チェックデジット」に関する情報が散見されますが、これらは公式発表ではないため、番号の構成のみに基づいて真贋を断定することは危険です。
番号の確認はあくまで参考程度とし、ICチップの読み取りなど他の確実な方法と併用することが重要です。
在留カードのICチップの位置と確認方法
在留カードの偽造対策には、ICチップ情報の確認が極めて重要です。
チップには氏名、生年月日、在留資格、在留期間などの表面情報が電子データで記録されており、偽造カードではデータ改ざんやチップそのものが入っていないケースが多く見られます。
ICチップはカード裏面の特定マーク部分に埋め込まれており、外観の異常(膨らみ、傷など)からも確認できる場合がありますが、最も確実なのは、法務省提供の「在留カード等読取アプリケーション」の利用です。
NFC機能搭載のスマートフォンやタブレットにアプリをインストールし、カードをかざしてICチップ内の情報を読み取ります。
読み取った情報とカード表面記載内容を照合し、一致を確認します。
読み取り不可、エラー、情報不整合の場合、偽造の可能性が高いと判断できます。
在留カード確認アプリやサイトでの情報照会
企業が不法就労リスクを回避するには、法務省提供の在留カード公式確認ツール活用が不可欠です。
主なデジタルツールは以下の通りです。
- 在留カード等読取アプリケーション: NFC対応スマホ等でカードをかざし、ICチップ内の詳細情報を読み取ります。電子情報と表面印字情報が「完全に一致するか」を厳密に確認することが重要です。
- 在留カード等番号失効情報照会: カード番号と有効期限を入力し、カードの有効性を照会します。ICチップ読み取りが困難な場合や迅速な一次確認に有効ですが、有効性確認に限定され、詳細な個人情報は確認できません。真贋判定には読取アプリとの併用が推奨されます。
偽造カード雇用による企業の法的リスクと責任

企業が偽造在留カードを所持する外国人を雇用した場合、法的責任と社会的信用の失墜という二重の甚大なリスクを負います。
不法就労助長罪の罰則と適用事例
前述の通り、不法就労者を雇用した企業には重い刑罰が科されます。
政府は厳罰化を進めており、2025年6月以降は罰則がさらに強化され、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、あるいはその両方が科される予定となっています。
過去の摘発事例は多岐にわたります。
- 外国人留学生を週28時間の制限を超えて働かせた飲食店(罰金)。
- 「短期滞在」の在留資格で入国した外国人を電気工事作業員として不法就労させた電気設備会社経営者(逮捕)。
- 技能実習生を許可されていない工場で労働させていた人材派遣会社。
- 在留資格で認められた活動範囲外の単純労働をさせていた事例。
これらの事例が示すように、企業は故意・過失を問わず、在留カードの確認を怠るなど過失があった場合でも処罰対象となり、その責任は極めて重いことを認識する必要があります。
企業が負う民事責任と社会的信用への影響
不法就労者を雇用した場合、企業は刑事罰に加え、民事上の責任も負います。偽造在留カードで締結された雇用契約は、事案によっては無効と判断される可能性があり、賃金や損害賠償をめぐる紛争に発展するリスクもあります。
最も深刻なのは、企業の社会的信用への影響です。
不法就労問題が明るみに出れば、企業イメージは著しく低下し、顧客や取引先からの信頼を失い、売上減少や新規事業機会の喪失に繋がります。
株主からの評価悪化や、優秀な人材の採用難も避けられません。
偽造が発覚した場合の適切な対応と通報義務
万が一、在留カードの偽造が発覚した、あるいは疑わしい場合は、以下の対応を速やかに講じてください。
- 就労停止と真贋確認: 疑わしい外国人材の就労を直ちに停止し、法務省提供ツール等で真贋を最終判断します。
- 本人への対応: 偽造を本人に伝え就労停止を指示します。契約解除については安易に行わず、専門家と相談し慎重に進めましょう。
- 入管局への相談・情報提供: 通報義務は明文化されていませんが、不法就労助長罪のリスク回避のため、速やかに地方入管局へ相談し、把握経緯を正確に伝えることが推奨されます。
- 再発防止策: 今後の外国人雇用では、確認体制強化と従業員への定期的な教育が不可欠です。
雇用前の在留カード確認方法と偽変造防止対策

企業にとって、在留カードの偽造を見逃さず、不法就労者を雇用しないための事前の対策が最も重要です。
採用プロセスでは、以下の手順で在留カードの確認を徹底しましょう。
- 面接時の原本確認: 応募者に対し、必ず在留カードの原本提示を求めます。厚み、ホログラム、フォント、写真の貼り付け方など、物理的特徴に不審な点がないかを細かく確認します。
- コピーの取得と保管: 在留カードの両面を鮮明にコピーし、雇用期間中は大切に保管します。コピーの取得は、後々のトラブル防止や行政指導への対応に不可欠です。
- 記載内容のチェックリスト化: 氏名、生年月日、在留資格、在留期間、就労制限の有無、交付年月日、在留カード番号などを、あらかじめ作成したチェックリストに基づいて一つずつ確認します。特に「就労制限の有無」は、不法就労助長罪に問われないために最も重要な項目です。
- 法務省提供ツールの活用: 前述の「在留カード等読取アプリケーション」や「在留カード等番号失効情報照会」を必ず利用し、ICチップ内の情報とカード表面の記載内容が一致するか、また失効していないかを確認します。これにより、物理的偽造だけでなく、データ改ざんによる偽変造も発見しやすくなります。
これらの確認作業は、採用担当者一人のみに任せるのではなく、複数名でダブルチェックを行うなど、組織的な体制を構築することが望ましいです。
また、社内規定として在留カード確認の手順を文書化し、担当者に対して定期的に偽造カードに関する研修を実施することも重要です。
最新の偽造手口や確認方法についての知識を常にアップデートしていくことが、強固な偽変造防止対策となります。
在留カードに関するよくある質問

外国人材雇用における在留カード確認は、企業の法令遵守とリスク管理の根幹をなします。
最後に、よくある疑問点である「ビザとの違い」と、企業が注意すべきポイントをまとめます。
在留カードとビザの違い、有効期限の管理
外国人材を雇用する企業にとって、在留カードとビザ(査証)の違いを正確に理解することは重要です。
ビザは外国にある日本大使館・領事館が発行する、日本への入国を許可するための「入国推薦状」のような役割を果たします。
一方、在留カードは日本に中長期滞在する外国人に交付される身分証明書であり、日本国内での在留資格、在留期間、就労の可否などを証明するものです。
企業が特に注意すべきは、在留カードの有効期限管理です。
在留期間が過ぎた在留カードを所持する外国人を就労させ続けると、企業は不法就労助長罪に問われる重大なリスクがあります。
在留カードの更新は、原則として在留期間満了日の3ヶ月前から申請可能です。
企業は外国人材本人任せにせず、更新時期のリマインドや、必要に応じた手続きのサポートを行うことが求められます。
まとめ:企業が外国人雇用で注意すべきこと

外国人材の雇用は企業に新たな活力を与えますが、在留カードの適切な確認と管理は企業の存続に関わる極めて重要な経営課題です。
偽造カードを見抜けず不法就労者を雇用した場合、企業は不法就労助長罪による罰則、社会的信用の失墜、事業停止命令といった深刻なリスクに直面します。
偽造カードを見抜くための多角的な対策として、以下を徹底しましょう。
- 物理的特徴の徹底確認に加え、ICチップ情報の照会や法務省提供の確認アプリ・サイトといった公的ツールを積極的に活用する。
- 採用プロセスにおける厳格な確認手順を確立し、社内規定の整備や担当者への定期的な研修を行う。
- 採用時だけでなく、在留期間更新時や資格変更時など節目ごとに再確認を行い、最新情報の把握に努める。
これらの継続的な取り組みを通じて、企業は不法就労のリスクを最小限に抑え、適法かつ健全な外国人雇用を実現できます。
外国人材の力を最大限に引き出し、企業の持続的な成長に繋げるためにも、在留カードの適正な確認と管理を徹底しましょう。