特定技能2号の「農業分野」を徹底解説|要件・試験内容・受け入れ条件まで

農業の現場では深刻な人手不足が続いており、若い担い手の減少と高齢化が進む中で、外国人材の活躍がますます重要になっています。なかでも「特定技能2号の農業分野」は、長期雇用や家族帯同が可能となる制度として注目を集めています。
この記事では、特定技能2号の農業分野について制度の基本・取得条件・試験の概要・事業主側の要件・メリットと注意点をわかりやすく解説します。採用を検討する際の参考にしてください。
Contents
農業分野で特定技能2号が注目される背景

国内の農業は人手不足と高齢化により、担い手の減少が加速しています。農林水産省の統計によれば、2024年時点で農業人口は約111万人まで落ち込み、平均年齢は69歳を超える状況です。平成27年の175.7万人から比べると約4割近く減少しており、後継者不足も重なって、今後も労働力不足が続くと予測されています(農業労働力|農林水産省)。
こうした状況のなかで、外国人材の受け入れは農業を支える大きな手段となっています。政府は2019年に特定技能制度を創設し、2023年6月には農業分野も特定技能2号の対象に追加されました。これにより、外国人材を長期的に雇用できる仕組みが整い、農業経営者にとっても採用の選択肢が広がっています。
特定技能2号の農業分野とは?

特定技能は、人手不足が顕著な産業で外国人の就労を認める制度です。特定技能1号は最長5年までの在留に制限されますが、特定技能2号は在留期間の更新が可能で、事実上長期的な就労が認められます。
農業分野が2号に追加されたことで、これまで技能実習で5年働いた後に帰国せざるを得なかった外国人材を、長期的に雇用できるようになりました。これは、受け入れ事業主にとって安定した人材を確保できる大きな転換点となります。
特定技能2号「農業」で任せられる業務とは?

特定技能2号では、単純作業にとどまらず、栽培や飼養の管理、品質管理、人材育成など幅広い業務を担えます。
耕種農業での主な業務内容
耕種農業では、栽培管理や農産物の出荷・選別に加えて、工程や人材の管理も含まれます。具体的には土壌づくり、施肥、種子や苗木の取り扱い、農機具や資材の使用、品質管理や安全衛生業務などが中心です。
畜産農業での主な業務内容
畜産農業では、飼養管理や畜産物の集出荷・選別、農場や品質の管理が求められます。具体的には飼料の準備、家畜の観察・世話、器具の取り扱い、安全衛生の管理、人材育成などを担うことになります。
農業分野で特定技能2号に移行するための要件は?

特定技能2号は、農業分野でより高い技能を持つ人材に与えられる在留資格です。移行するには、試験合格と実務経験の両方を満たす必要があります。
①耕種農業区分の場合
- 2号農業技能測定試験(耕種農業全般)に合格
- 農業の現場(耕種農業)での 3年以上の実務経験または2年以上の従業員指導・工程管理経験
②畜産農業区分の場合
- 2号農業技能測定試験(畜産農業全般)に合格
- 農業の現場(畜産農業)での 3年以上の実務経験または、2年以上の従業員指導・工程管理経験
これらの要件を満たして移行すると、在留資格は更新可能となり、家族帯同も認められます。農業経営者にとっては、即戦力人材を長期的に確保できる点が大きなメリットです。
農業分野における特定技能2号の試験概要
特定技能2号では、一定の技能と知識を証明するための試験合格が必須です。試験は「耕種農業」と「畜産農業」に分かれており、相互に転用はできません。
試験時間・問題数 | 学科試験の主な範囲 | 実技試験の主な範囲 | |
耕種農業 | 60分/50問程度 | ・耕種農業一般・安全衛生・栽培作物の品種・特徴・施設・設備・資材・機械・栽培方法・管理・病害虫・雑草防除・収穫・調整・出荷 など | ・肥料や農薬の取扱い・種子の取扱い・環境管理、資材・装置の操作・栽培に関する作業・病害虫判別・安全衛生 など |
畜産農業 | 60分/50問程度 | ・畜産農業一般・安全衛生・品種・繁殖・生理・飼養管理 など | ・個体の取扱い・観察・飼養管理や器具の取扱い・繁殖・生理・安全衛生 など |
試験はコンピュータを用いたCBT方式で行われ、全国の会場で受験可能です。合格基準は正答率60%前後とされており、決して簡単ではありません。候補者は農林水産省や全国農業会議所が公開している学習用テキストや練習問題を活用して準備します。
なお、試験は会場や日程が限られるため、受験から合格までに数週間〜数か月かかる場合があります。受け入れ事業主は採用スケジュールに余裕を持たせ、候補者の受験時期を事前に確認しておくことが大切です。
農業分野で特定技能2号を受け入れるための条件

特定技能2号人材を採用するには、受け入れ事業主側にも条件があります。
まず、過去の雇用実績や協議会への加入など、適格性を満たす必要があります。さらに、労働基準法に基づいた適切な労働条件の提示や、社会保険への加入は必須です。
加えて、外国人が安心して働けるように支援計画の作成や生活サポートも求められます。住居の確保や生活相談、行政手続きの支援など、長期的に働きやすい環境を整えることが受け入れ事業主の責務といえるでしょう。
こうした準備を自社だけで行うのが難しい場合は、登録支援機関を活用するのも有効です。たとえばGTNでは、外国人材の紹介から在留資格手続き、住居や生活支援までワンストップでサポートを提供しています。農業経営者にとっては、安心して外国人材を受け入れるための心強いパートナーとなるでしょう。
詳しくはGTNの外国人材支援サービスをご覧ください。
特定技能2号「農業」で採用するメリットと注意点
農業分野の特定技能2号を活用する最大のメリットは、長期雇用が可能になることです。家族帯同が認められることで外国人材が日本に定着しやすくなり、安定的な労働力確保につながります。
一方で注意点も。技能実習とは異なり、特定技能2号では外国人本人により大きな裁量が与えられるため、管理体制や職場環境の整備が不十分だと離職リスクが高まる可能性があります。
また、文化や生活習慣の違いを尊重し、職場に溶け込みやすい環境をつくることも大切です。農業経営者にとっては、単なる人手不足の解消にとどまらず、外国人材が長期的に活躍できる仕組みづくりを目指す姿勢が求められます。
まとめ
農業分野で特定技能2号を活用することは、受け入れ事業主にとって安定した人材確保を実現する大きなチャンスです。取得条件や試験の仕組みを理解し、採用スケジュールに余裕を持たせることが成功のポイントになります。
さらに、労働条件の整備や生活支援を通じて外国人材が安心して働ける環境を整えることが、定着率を高める鍵となります。自社だけで対応が難しい場合は、GTNのような支援機関を活用するのも有効です。採用から生活支援までワンストップで対応しているので、安心して外国人材を採用したい方はぜひご相談ください。