外国人労働者の採用時に必要な準備
近年、外国人労働者の受け入れが盛んになってきていますが、実際に外国人を採用しようとするとどういった準備が必要になるのでしょうか。ここでは募集から採用、入社までに必要な準備について解説します。
Contents
既に日本国内に在留する外国人の採用
既に日本国内で暮らしている外国人を採用するのか、海外に住んでいる外国人を呼び寄せるのかで、採用に必要な手続きに違いがあります。まずは、すでに日本国内で暮らしている外国人の採用についてみていきます。
募集前:募集職種、雇用形態の確認
外国人の採用においての大原則は「適切な在留資格(いわゆる就労ビザ)を持つ外国人でなければ、雇用することができない」ことです。
自社の業種や募集職種によって、就労が許可される在留資格が異なりますので、確認が必要です。(在留資格の詳細は「外国人が日本で働くために必要な資格とは」にまとめています)
「技術・人文知識・国際業務」ビザ
オフィスワーカーの就労時に申請される在留資格としては「技術・人文知識・国際業務」が最も多くなっています。
- システムエンジニア
- 通訳・翻訳
- 英会話学校などの語学教師
- 企画・経理などの事務職
- 営業
これらの職種での採用の場合は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要になります。
なお「技術・人文知識・国際業務」ビザは技術・知識が必要な専門性のある業務を行うためのものですので、単純作業のような業務を行うことは認められていません。また、外国人を雇用する合理的な理由も求められます。
「特定技能」ビザ
特に人手不足が深刻な14業種(特定産業分野)では、2019年4月より「特定技能」ビザでの就労が可能になっています。「特定技能」ビザは人手不足解消を目的に新設されたもので、「技術・人文知識・国際業務」ビザと異なり、単純労働とみなされる業務を任せることも可能です。
特定産業分野14業種
留学生アルバイト
正社員でなく、留学生アルバイトを採用する場合は「資格外活動」の許可が必要になります。
選考の前後で、既に「資格外活動の許可」を得ているかどうか「在留カード」を確認しましょう。
選考:在留資格の確認
選考の前後で、候補者の「在留カード」を確認し、在留資格が適切か確認しましょう。
在留カードには氏名/生年月日/性別/国籍・地域/住居地に加えて、在留資格や在留期間、就労の可否などが記載されています。在留資格と合わせて、在留期間が満了日を過ぎていないかのチェックも必要です。
また在留資格が適切でない場合は、雇用にあたっては在留資格の変更手続きが必要になります。「技術・人文知識・国際業務」ビザですでに日本で働いている外国人を採用する場合は、採用職種と転職前の職務内容が同じかどうかもポイントになります。
転職前と同じ職務の場合
外国人労働者が転職によって勤務先が変わる場合に現在の在留資格内で就労が可能かどうか、入国管理局で発行する「就労資格認定証明書」を取得して確認しておくことが推奨されます。この証明書の発行自体は法制上必須の手続きではないのですが、在留資格の更新時に
就労不許可になることを防ぐメリットがあります。
転職前と異なる職務の場合
募集職種が、転職前と異なる職務内容になる場合は、在留資格の変更許可が必要になります。候補者本人と企業のそれぞれに対して審査が行われます。
審査時の提出書類:
<候補者側>
- 外国人本人の証明写真
- 在留カードの写し
- パスポートの写し
- 前職の退職証明書・源泉徴収票の写し
- 本人の履歴書の写し
- 在留資格変更許可申請書
<企業側>
- 会社案内など
- 会社の登記事項証明書の写し
- 直近年度の貸借対照表、損益計算書の写し
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 会社の定款の写し
- 採用理由書
- 雇用契約書
採用・雇用:外国人雇用状況の届出
採用・入社が決定した場合は「外国人雇用状況の届出」を行う必要があります。外国人社員の入社(および退職などの)状況を、管轄の職業安定所へ届出することが義務付けられています。また日本人の採用時と同様、雇用保険の手続き等も行います。
なお特定技能外国人の採用にあたっては、このほか企業側に
- 外国人の生活のサポートを登録支援機関に委託
- 各分野で主催される協議会への加入・協力
が求められます。
海外に在留する外国人の採用
海外に住んでいる外国人を呼び寄せ採用する場合は、適切な在留資格(就労ビザ)の取得が必要です。
在留資格の取得申請は以下のような手順になります。
- 企業側で「在留資格認定証明書」を入国管理局に申請
- 証明書発行後に、本人に送付
- 本人が現地の日本大使館に証明書を提出
- 就労ビザ発行後に来日、入社手続き
手続きの内容や申請時の必要書類は既に日本で働いている外国人の採用時と大きな違いはありませんが、新規のビザ発行にあたり海外への証明書の送付も必要になるため、手続きにかかる期間が長くなる傾向があります。
まとめ
外国人の採用にあたっては募集から入社までに必要な手続きが多く存在します。必要に応じて、所轄の出入国在留管理局や、入国管理業務を取り扱っている行政書士に相談するなどして、遅延や不備なく確実に手続きを進めていきましょう。