建設業で外国人労働者を採用するには?メリット・在留資格・手続きをまとめて解説

日本の建設現場で働く外国人たち

深刻な人手不足が続く建設業界では、現場の担い手を確保するために「外国人労働者の採用」に注目が集まっています。

とはいえ、いざ採用を検討しようとすると「どの在留資格が必要なのか」「どんな手続きがあるのか」「受け入れ後は何に注意すべきか」など、押さえておくべきポイントは多岐にわたります。

この記事では、在留資格の基礎知識から手続きの流れ、活用メリット、注意点までをやさしく解説します。

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Contents

建設業界の人手不足と外国人労働者が注目される理由

まずは、なぜ今「外国人材の力」が必要とされているのか、その現状と今後の見通しを見ていきましょう。

建設業はなぜ外国人労働者が必要なのか

建設業界では、若年層の離職や就業者の高齢化が進み、慢性的な人手不足が続いています。

国土交通省によると、現場従事者の平均年齢は44.2歳と高く、熟練職人の引退が相次ぐ一方で新規参入は減少傾向です。

さらに「2024年問題」による時間外労働の上限規制で労働力の確保はより困難になっており、外国人労働者の活用はもはや不可欠な選択肢となっています。

外国人労働者数・割合の推移と今後の見通し

厚生労働省の調査によると、2024年10月時点で日本全体の外国人労働者数は約230万人。

そのうち建設分野では約17.8万人が就労しており、過去5年でほぼ倍増しています。

国の受け入れ目標でも2024年以降5年間で最大82万人の受け入れが見込まれ、建設業において外国人材は中核的な戦力としての役割が一層強まっていくと考えられます。

今後も高まる建設需要と人材確保の重要性

人手が減少していく一方で、建設需要は今後も高まると予測されています。

再開発プロジェクトや都市インフラの更新・維持管理、自然災害への復旧・防災工事など、日本社会の安全・安心を支える現場では、今後も継続的な建設投資が必要とされています。

こうした状況を踏まえると、国内人材だけでは需要を満たせず、外国人労働者の力を取り入れることが不可欠です。

建設業で外国人労働者を採用するメリット

外国人労働者の採用は、単に「人手不足を補う手段」にとどまりません。

現場の生産性向上や組織力の強化、企業の競争力アップなど、さまざまなメリットをもたらす可能性があります。

慢性的な人材不足の解消と現場力の強化

特定技能や技能実習制度を活用すれば、基本的な技能を持つ人材を早期に採用でき、教育コストを抑えながら現場に配置可能です。

これにより作業の遅延や受注機会の損失リスクを抑え、施工スケジュールの安定化事業機会の拡大が期待できます。

社内の多様性促進・新たな技術や視点の導入

異なる文化やバックグラウンドを持つ人材が加わることで、新たな視点が生まれ、チームの活性化につながります。

海外で培った技術や施工ノウハウを共有することで、品質向上や効率化が進むケースも少なくありません。

採用コスト・育成コストの長期的な最適化

外国人材の採用は、一見すると教育やサポートの手間がかかるように思えるかもしれませんが、制度を活用して適切なマッチングと定着支援を行えば、長期的な採用・育成コストの削減につながります。

例えば「特定技能2号」へ移行できる人材は、家族の帯同が可能になり、日本で長期的に働く意欲が高まります。

結果として、定着率の向上や離職コストの削減という形で企業へのメリットが大きくなります。

採用前に知っておきたい在留資格の種類と違い

外国人労働者がすべての建設業務に従事できるわけではありません。

業務内容に応じた在留資格を正しく理解することが重要です。

ここでは、建設業で主に活用されている3つの在留資格とその特徴を解説します。

「特定技能」とは?対象業務・試験・在留期間

2019年の出入国管理法改正で新設された「特定技能」は、人手不足が深刻な分野で一定の技能と日本語能力を有する外国人を受け入れる制度です。

建設業を含む16分野が対象となっており、現場作業員として実務を担うことができます。

  • 特定技能1号:在留期間は通算5年。技能評価試験・日本語試験への合格が必要で、家族帯同は原則不可。
  • 特定技能2号:高度な技能を有する人材向け。更新により在留期間の制限がなく、家族の帯同も可能。

この制度では即戦力人材の確保がしやすく、採用後の教育コストも比較的抑えられる点が大きなメリットです。

人材によっては2号への移行を前提とした長期雇用も可能で、企業の中核人材としての育成も視野に入れることができます

「技能実習」との違い・活用のポイント

「技能実習」は、本来“国際貢献”を目的としており、建設現場で必要な技能を実践的に学ぶことを前提とした制度です。

現場での単純作業などを通じて技能を身につけ、自国の産業発展に役立てることが主な目的で、即戦力というよりも「育成枠」としての位置づけになります。

在留期間は最長5年で、家族帯同はできません。

また、技能実習終了後に「特定技能」へ移行することで、より高度な作業への従事が可能になります。

「まずは育成前提で採用したい」「段階的にスキルアップさせたい」といった企業に向いている制度です。

「技術・人文知識・国際業務」で採用するケース

ホワイトカラー職や専門職として外国人を採用する場合は、「技術・人文知識・国際業務(いわゆる“技人国”)」という在留資格が活用できます。

建設業界では、例えば設計・施工管理・構造解析・CADオペレーションなどの業務が該当し、現場作業員ではなく技術系職種としての採用が可能です。

在留期間は1年〜5年の更新制で、条件を満たせば長期的な雇用もできます。

建設現場における「技術力の強化」「専門知識の活用」を目指す企業にとって、有効な選択肢のひとつです。

建設業で外国人労働者を受け入れるまでの手続きと必要書類

外国人労働者を採用するには、在留資格の確認だけでなく、法令に沿った手続きや各種書類の準備が欠かせません。

ここでは、採用の基本的な流れと企業側が準備すべき書類について解説します。

外国人労働者採用までの基本的な流れ

建設業で外国人を雇用する際は、採用から在留資格申請、雇用開始後の届け出まで、複数のステップを踏む必要があります。

採用前の確認事項と準備

まず、外国人労働者が就労可能な在留資格を持っているかどうかを確認することが最初のステップです。

在留資格や在留期間を満たしていない状態で雇用すると、不法就労助長罪に問われる恐れもあります。

  • 在留カードの原本を必ず確認する
  • 就労可能な資格(特定技能・技能実習など)かをチェックする
  • 在留期間の満了日を確認し、更新スケジュールを管理する

また、採用予定の業務内容と在留資格の内容が合致しているかも重要なポイントです。

例えば、「技能実習」の資格では単純作業が中心となるため、高度な施工業務を任せることはできません。

業務内容と資格の不一致は、後に入管法違反につながるため注意が必要です。

在留資格の申請・更新手続き

新たに外国人を採用する場合や、在留資格の変更・更新が必要な場合は、出入国在留管理庁への申請が必要です。

代表的な手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 必要書類の準備(雇用契約書、事業内容証明書など)
  2. 出入国在留管理庁へ申請書類を提出
  3. 審査(1〜3か月程度)
  4. 在留資格認定証明書の交付・在留カードの取得

在留資格申請は専門的な知識が求められるため、行政書士などの専門家へ相談・依頼する企業も少なくありません。

手続きに時間がかかるケースもあるため、採用スケジュールには余裕を持つことが重要です。

雇用後に必要な届け出・報告

外国人労働者を雇用したら、雇用後も複数の行政手続きが必要になります。

特に重要なのが、「外国人雇用状況の届出」です。

  • 外国人雇用状況の届出(雇用対策法)
    → 雇用開始から14日以内に、在留資格・国籍・業務内容などをハローワークへ届け出る必要があります。
  • 在留資格変更・更新時の届出(入管法)
    → 在留資格の内容や期間が変更された場合は、その都度出入国在留管理庁へ届け出が必要です。
  • 離職時の届出
    → 外国人労働者が退職した際も、翌日から14日以内に届け出を行わなければなりません。

これらの届出を怠ると、企業側が行政指導や罰則を受ける場合もあるため、採用後の管理体制も重要なポイントです。

採用時・雇用後に必要な主な書類

外国人労働者を採用・雇用する際には、在留資格申請用だけでなく、労務管理や行政手続きに必要な書類が多数あります。

採用時に必要な書類

在留資格の申請や審査に必要な書類をきちんと揃えておくことが大切です。

不備があると手続きが遅れるだけでなく、不法就労につながるリスクもあるため、採用担当者は事前に確認しておきましょう。

主な必要書類は以下の通りです。

  • 雇用契約書(日本語・母国語の2言語で用意するのが望ましい)
  • 業務内容説明書(従事業務と在留資格の適合性を示す)
  • 事業内容証明書(会社概要や事業内容を証明する書類)
  • 申請人の在留カード・パスポートの写し
  • 技能試験・日本語試験の合格証明書(特定技能の場合)

雇用後に必要な書類・届出関連

採用後も、外国人労働者の在留管理や労務管理のために提出すべき書類や届け出が複数あります。

特に、期限内の提出や内容の正確性は企業の責任となるため、社内で管理体制を整えておきましょう。

  • 外国人雇用状況届出書(ハローワーク提出)
  • 社会保険・労働保険の加入手続き書類
  • 在留資格変更・更新の申請書類(必要に応じて)

これらの書類は、法令順守だけでなく、後のトラブル防止にもつながります。

特に「雇用契約書」「業務内容説明書」は、労働条件や職務内容の誤解を防ぐうえで非常に重要です。

採用担当者が押さえておくべき注意点

外国人労働者の採用は、日本人の採用と比べて手続きが多く、確認すべき項目も複雑です。

最後に、特に見落としやすい注意点を整理しておきましょう。

  • 在留資格と業務内容の整合性を常に確認する
  • 在留期限の管理・更新スケジュールを人事部門で共有・一元管理する
  • 雇用契約や労働条件は母国語での説明・書面交付を行う
  • 文化・宗教・生活習慣への配慮を意識し、職場環境への定着を支援する

これらを意識しておくことで、トラブルの発生を防ぎ、外国人労働者が安心して働ける職場環境を整えることができます。

建設業で外国人を雇用する際に押さえておきたい注意点

外国人労働者の採用は、人手不足の解消や現場力の強化に大きな効果をもたらしますが、その一方で、法令遵守や労務管理、職場環境の整備など、注意すべきポイントも数多く存在します。

ここでは、企業が特に意識しておくべき代表的な注意点と、現場で起こりやすい課題への対策をまとめます。

労働条件・待遇面でのトラブル防止策

外国人労働者を雇用する際は、日本人と同等の労働条件を確保することが前提です。

特に賃金や労働時間、安全衛生といった基本的な条件については、法令を遵守し、分かりやすく説明しておくことが重要です。

賃金・労働条件の説明は明確に

労働基準法や最低賃金法は、国籍にかかわらずすべての労働者に適用されます。

外国人だからといって賃金や休暇の条件を下げることは認められません。

また、契約内容や労働条件については、母国語で書面を交付し、口頭でも丁寧に説明することがトラブル防止につながります。

特に、「残業代」「休日出勤」「社会保険加入」などは誤解が生じやすい項目です。

契約時点で明確に伝えることで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。

安全対策・労災への配慮も必須

建設業は他業種に比べて労災リスクが高いため、安全教育の徹底は欠かせません。

外国人労働者の場合、言語の壁によって安全指示が十分に伝わらず事故につながるケースも少なくありません。

  • 現場での安全ルールや危険箇所の説明は、写真・図解・多言語資料を活用して理解を促す
  • 朝礼や安全ミーティングで逐次確認を行う
  • 事故発生時の対応フローを共有しておく

こうした取り組みは、外国人だけでなく日本人スタッフ全体の安全意識向上にもつながります。

文化・習慣・価値観の違いへの配慮

外国人労働者が安心して働くためには、労働条件だけでなく、文化や価値観の違いにも配慮した職場づくりが欠かせません。

ここが不十分だと、せっかく採用した人材が早期離職してしまうケースもあります。

コミュニケーションの工夫と環境整備

文化や言語の違いから、日本人社員との意思疎通が難しくなることがあります。

現場では、簡単な日本語での説明や、翻訳ツールの活用多言語マニュアルの整備などを行い、誰でも理解できる環境を整えることが大切です。

また、外国人同士のネットワークや相談窓口を設けることで、孤立感を軽減し、安心して働ける環境づくりにもつながります。

こうした職場環境があるかどうかは、定着率を大きく左右するポイントになります。

宗教・生活習慣への理解も重要

宗教上の理由で食事や礼拝時間に配慮が必要なケースもあります。

勤務スケジュールや休憩時間に柔軟性を持たせるなど、文化的背景を尊重する姿勢が重要です。

企業がこうした対応を積極的に行うことで、信頼関係が深まり、外国人労働者と職場全体の満足度も高まります。

まとめ

外国人労働者は少子高齢化が進む日本において、建設現場を支える重要な戦力です。

しかし、採用にあたっては在留資格や制度の理解、手続きの正確な実施、そして現場での受け入れ体制づくりが欠かせません。

特に、「法令遵守」「労働条件の適正化」「文化的な配慮」という3つのポイントを押さえることで、外国人材が安心して働き、長く活躍できる環境が整います。

人材の定着と戦力化を実現するためにも、企業側の丁寧な対応が不可欠です。

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