【最新データ】技能実習生の受け入れ人数の推移を国別に解説


日本の労働力不足が深刻化する中、技能実習生の受け入れは多くの企業にとって重要な人材戦略となっています。
外国人材の受け入れを検討している企業が気になることが、「どの国から技能実習生を受け入れることができ、どの国の実績が多いのか」という点ではないでしょうか。
本記事では、2024年に公開された最新データに基づき、主要な受け入れ国の実績や国別の人数、各国の特徴をまとめています。
最新のデータに基づいた記事となっているので、ぜひ参考にしてください。
Contents
日本の技能実習生の受け入れ対象国はどこ?
技能実習制度では、日本政府と送出国政府との間で二国間取決め(協力覚書:MOC)を締結した国からのみ技能実習生を受け入れることができます。
現在、以下の16カ国が対象となっています。
国名 | 二国間の取決め署名日 |
---|---|
ベトナム | 2017年6月6日 |
カンボジア | 2017年7月11日 |
インド | 2017年10月17日 |
フィリピン | 2017年11月21日 |
ラオス | 2017年12月9日 |
モンゴル | 2017年12月21日 |
バングラデシュ | 2018年1月29日 |
スリランカ | 2018年2月1日 |
ミャンマー | 2018年4月19日 |
ブータン | 2018年10月3日 |
ウズベキスタン | 2019年1月15日 |
パキスタン | 2019年2月26日 |
タイ | 2019年3月27日 |
インドネシア | 2019年6月25日 |
ネパール | 2024年1月1日 |
東ティモール | 2024年10月8日 |
参考:厚生労働省公式ホームページ 技能実習に関する二国間取決め(協力覚書)
これらの16カ国は、東南アジア諸国が中心となっています。
これらの国々は、日本に比較的近く、文化や経済的な繋がりが深いという特徴があります。
また、南アジアの国々やモンゴルやブータンといった東アジアや内陸アジアの国々、そしてウズベキスタンという中央アジアの国も含まれています。
これらの国々には共通の特徴として、いずれもアジアに位置する開発途上国または新興国であるという点が挙げられます。
多くの国が日本のODA(政府開発援助)の対象となっていたり、経済発展の過程で日本の技術やノウハウに関心を持っていたりします。
また、経済的な理由から日本への就労を希望する人々が多く存在し、これが技能実習生や特定技能外国人として日本に渡る大きな動機となっています。
【国別】日本の技能実習生の受け入れの現状
2024年末時点で、日本には約47.1万人の技能実習生が在留しており、外国人労働者全体では2番目に多い在留資格となっています。
また、近年の傾向として、従来中国が最多であったものの、中国の経済発展に伴い減少し、現在はベトナムが圧倒的な首位を占めています。
ここからは国別の受け入れ人数や推移について表をまじえて詳しく紹介します。
【令和6年度末】技能実習生の人数の国別ランキング
令和年度末時点で、ベトナムの技能実習生が一番多いことがわかりました。
順位 | 国名 | 人数 |
---|---|---|
1位 | ベトナム | 約22万人 |
2位 | インドネシア | 約10万人 |
3位 | フィリピン | 約4万人 |
4位 | ミャンマー | 約3.5万人 |
5位 | 中国 | 約3万人 |
参考:インターアジア協同組合公式ホームページ 技能実習生出身国について
このデータから以下のことが読み取れます。
技能実習生の出身国に顕著な偏りがある
このデータは、技能実習生の出身国が一部のアジア諸国に集中していることを示しています。
特に、ベトナムが群を抜いており、その数は第2位のインドネシアの約2.2倍、第3位のフィリピンの約5.5倍です。
この圧倒的な多さは、日本とベトナムの間で技能実習制度に関する協力関係が特に緊密であること、ベトナム国内での日本への就労志向が非常に高いことが考察できます。
また、上位5ヶ国はいずれも東南アジア・東アジアの国々であり、地理的な近接性や文化的な親和性が影響している可能性が考えられます。
上位国の構成と動向
ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーといった東南アジア諸国が上位を占めている一方、かつては多数を占めていた中国からの実習生が減少傾向にあることがわかります。
中国からの実習生は第5位となっており、この背景には、中国国内の経済発展に伴う賃金水準の上昇や、国内での就職機会の増加などがあると考えられます。
この変化は、日本の技能実習制度が、経済成長が著しい国よりも、比較的賃金水準の低い国や、日本への出稼ぎの需要が高い国へと変化していることに影響を与えていると考えられます。
制度の構造的な課題
このデータからは、技能実習制度が特定の国からの労働力の供給に大きく依存しているという構造的な課題も読み取れます。
上位国、特にベトナムからの技能実習生が減少した場合、日本の多くの産業で人手不足が深刻化するリスクがあるでしょう。
この制度が「国際貢献」という目的だけでなく、実質的に日本の労働力不足を補う役割を担っている側面が強く、その供給源が限られている現状は、制度の脆弱性を表しています。
国籍・出身国の割合
資料引用:法務省
この円グラフは、技能実習生の出身国別の割合を示しており、ベトナムが圧倒的に多いことがわかります。
ベトナムは全体の56%を占めており、これは過半数以上に相当します。
日本の産業は、ベトナム人に支えられている場面が多いことが考察できます。
ベトナムに次いで多いのは中国で15%、続いてインドネシアが10%、フィリピンが8%となっています。
これら上位4ヶ国で全体の89%**を占めており、技能実習生の出身国が一部の国に集中している現状がわかります。
残りの11%は、ミャンマーの5%、タイとカンボジアがそれぞれ3%、モンゴルが0%、そしてその他が1%を占めています。
このデータ全体から読み取れることは、技能実習生は特定の国からの供給に大きく偏っており、特にベトナムからの実習生が多いという現状です。
この偏りは、日本国内の労働市場が一部の国からの労働力供給に大きく依存しているという事実を明らかにしています。
【国別】技能実習生の人数の推移
過去6年間の推移を見ると、以下のような傾向が表れています。
令和元年末 | 410,972人 |
令和2年末 | 378,200人 |
令和3年末 | 276,123人 |
令和4年末 | 324,940人 |
令和5年末 | 404,556人 |
令和6年末 | 456,595人 |
人数推移の傾向
令和元年末には約41万人だった技能実習生の人数は、令和2年末と令和3年末にかけて大幅に減少しています。
この時期の減少は、新型コロナウイルスの世界的な流行により、国際的な移動が制限されたことが主な原因と考えられます。
入国手続きの停止や航空便の減便などにより、新たな実習生の入国が困難になったため、人数が大きく落ち込んだと考察できます。
しかし、令和4年末以降は再び増加に転じています。
特に、令和5年末から令和6年末にかけては、過去最高の約45万人にまで達しており、コロナ禍前の水準を大きく上回るペースで回復・増加していることがわかります。
この増加は、水際対策の緩和や入国制限の撤廃により、これまで入国を待機していた技能実習生が日本に入国できるようになったことが背景にあると考えられます。
また、日本の少子高齢化による労働力不足が深刻化する中で、技能実習生に対する需要が高まっていることも、この増加傾向を後押ししている要因でしょう。
人数増減の原因と背景
この推移から、技能実習生の人数は、単に受け入れ側の需要だけでなく、国際情勢やパンデミックのような外部の要因に大きく左右されるという特徴が明らかになります。
特に、移動の自由が制限されたコロナ禍では、制度本来の目的である「技能移転」や「国際貢献」といった活動が一時的に停滞せざるを得ませんでした。
一方で、パンデミック収束後の急激な増加は、日本経済が直面する労働力不足を補う手段として、技能実習制度が依然として重要な役割を担っていることを示しています。
この急激な増加は、コロナ禍で滞っていた労働力の需要が、一気に顕在化した結果とも言えるでしょう。
日本の労働力不足と技能実習制度
日本の多くの産業、特に製造業や建設業、農業などでは、少子高齢化による人手不足が深刻な課題となっています。
こうした状況下で、技能実習制度は、国際貢献という名目のもと、実質的に日本の労働力不足を補う重要な手段として機能しています。
コロナ禍による減少は、この労働力の供給が不安定になるリスクを明らかにしました。
しかし、その後の回復は、日本社会がいかにこの制度に依存しているかを物語っています。
技能実習生の人数の推移は、単なる統計データではなく、日本の労働市場が直面する構造的な課題と、それに対する一つの解決策としてこの制度が担う役割の変化を映し出していると言えるでしょう。
参考:法務省
参考:インターアジア協同組合公式ホームページ 技能実習生出身国について
よくある質問
ここでは、技能実習生に関する質問に答えていきます。
技能実習生はどこの国がいいの?
技能実習生の受け入れにおいて最も重要なのは、国籍ではなく個人の資質と能力です。
確かにベトナムやインドネシアからの技能実習生数が多いのは事実ですが、これは統計的な傾向であり、個々の技能実習生の能力や適性を示すものではありません。
国ではなく、送出機関での事前教育の充実度、日本語能力レベル、職種に関連する基礎技能の習得状況、そして本人の学習意欲と日本での技能習得への意識の高さを重視することが重要です。
各国の特徴と向いている職種
- ベトナム
勤勉で手先が器用、真面目な人が多い傾向にあります。
製造業や建設業など、比較的細かい作業を必要とする職種に向いています。
- インドネシア
穏やかで協調性が高く、仲間意識が強い傾向があります。
製造業や建設業など、チームで協力して作業する職種に向いています。
- フィリピン
明るく社交的で、英語を話せる人も多いです。
介護や接客業など、コミュニケーション能力が求められる職種に向いています。
- ミャンマー
真面目で温厚、日本語の習得が早い傾向があります。
介護や食品加工業など、真面目さや丁寧さが求められる職種に向いています。
- ネパール
親日的で素直、日本語の習得にも熱心な人が多いです。
様々な職種に対応できますが、特に真面目さや勤勉さが求められる職種に向いています。
まとめ
技能実習生の受け入れ状況は、ベトナムを筆頭とする東南アジア諸国からの受け入れが中心となっており、この傾向は今後も継続すると予想されます。
しかし、単に人数の多い国から受け入れるのではなく、企業のニーズに合致した技能実習生を適切に選定し、法令を遵守した受け入れ環境を整備することが最も重要です。
技能実習制度は2027年に育成就労制度への移行が予定されていますが、外国人材との長期的な関係の構築という観点は変わりません。
言語の違いや文化的背景の相違、宗教的配慮の必要性など、様々な課題を理解しながら、長期的な視点で外国人材との協働関係を発展させていくことが必要です。