「特定技能 農業」とは|必要な試験や業務内容、採用の注意点を解説
「農業分野で外国人材の雇用を検討しているけれど、特定技能の仕組みが複雑でよくわからない」とお困りではありませんか?そんな方々のために、外国人の就労ビザの一つである「特定技能の農業分野」について、制度の概要から在留資格取得に必要な試験、任せられる業務内容、採用時の注意点まで、詳しく解説します。
農業の現場では深刻な人手不足が叫ばれており、特定技能「農業」への期待が高まっています。外国人材の力を借りることで、担い手不足の解消につなげることができるかもしれません。しかし、制度を利用するためには、その仕組みをしっかりと理解しておくことが大切です。
外国人の採用をお考えの農業関係者の皆様、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
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また、外国人採用に関する以下の記事もあわせてチェックしてみてください。外国人雇用の際の募集から採用までの具体的な流れや必要な手続きについて詳しく解説しています。
▶︎ 外国人労働者の募集~採用に必要な準備と手続きを詳しく解説
Contents
求人倍率が平均を上回る農業は深刻な人手不足
農業業界は他業界と比較して、ここ数年で特に深刻な人手不足に悩まされています。農林水産省が発表した調査によると、平成21年から令和元年までの10年間、新規就農者数に占める雇用就農者の割合は、1.6倍に拡大してます。また、全産業の有効求人倍率は緩やかな増加傾向にありますが、その中でも、農畜作業員の有効求人倍率は常に平均を大きく上回っています。
農作業は重労働であるにもかかわらず、農業従事者の高齢化が進んでいるのが現状です。若い世代の新規就農者が増えない限り、今後も有効求人倍率は上昇し続けると予想されます。人手不足が深刻化すれば、国内の食料生産にも大きな影響が出ることは必至です。
特定技能「農業」の在留資格とは
外国人が日本で働く際に必要となる在留資格のひとつに「特定技能」があります。2019年4月に新設されたこの制度では、人手不足が深刻な特定の業種について、一定の技能を持つ外国人材の受け入れを可能にしています。
農業はその対象業種のひとつに指定されており、特定技能「農業」の在留資格を取得すれば、農作業に従事することができます。それでは、特定技能「農業」について詳しく見ていきましょう。
特定技能とは
特定技能とは、2019年4月に開始された外国人労働者のための新しい在留資格です。それ以前は、専門的・技術的な技能を持つ外国人のみが就労可能で、工場などでの単純労働への就労は認められていませんでした。
その理由として、外国人労働者の受け入れによる様々な懸念が指摘されていました。トラブルの増加や治安の悪化、日本人の雇用機会の減少などです。しかし、少子高齢化に伴う労働力人口の減少が深刻化し、外国人材の活用なくしては成り立たない状況となっています。
そこで、専門的・技術的分野以外でも人手不足が深刻な特定の業種について、一定の技能を持つ外国人の就労を可能にするために新設されたのが特定技能という在留資格なのです。
特定技能に指定された12業種とは
特定技能に選定された12種類の対象職種は下記の通りです。
「① 介護」「②ビルクリーニング」「③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」「④建設業」「⑤造船・舶用業」「⑥自動車整備」「⑦航空」「⑧宿泊」「⑨農業」「⑩漁業」「⑪飲食料品製造業」「⑫外食業」
特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があります。「特定技能1号・2号」について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
▶︎ 在留資格「特定技能1号・2号」とは?「技能実習」の違いや雇用側の条件
特定技能「農業」を取得するために必要な2つの試験
特定技能「農業」の在留資格を取得するためには、「日本語試験」と「農業技能測定試験」の2つの試験に合格する必要があります。農業技能測定試験は、希望する農業の種類によって「耕種農業全般」か「畜産農業全般」のどちらかを選択します。
それぞれの試験の概要は以下の通りです。しっかりと対策を行い、確実に合格を目指しましょう
日本語試験
外国人が日本で円滑にコミュニケーションを取れる日本語能力を有しているかを測る試験です。以下のいずれかの試験に合格する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(合格基準:合格)
- 日本語能力試験(合格基準:N4以上)
※国際交流基金日本語基礎テストは、日常的な場面に必要な日本語能力を測る試験で、日本語能力試験のN4よりもやや易しいレベルとされています。
参考:JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト、日本語能力試験 JLPT
農業技能測定試験
農業に必要な知識と技術を有しているかを測る試験です。試験は筆記と実技の2種類があります。希望する農業の種類に応じて、以下のいずれかの試験に合格する必要があります。
- 農業技能測定試験「耕種農業全般」(栽培管理、農産物の集出荷・選別等の業務に従事可能)
- 農業技能測定試験「畜産農業全般」(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等の業務に従事可能)
いずれの試験も、一般社団法人 全国農業会議所が実施しています。
参考:全国農業会議所
【特定技能・農業分野】外国人採用する際に把握しておくべきこと
特定技能「農業」での外国人材の雇用を検討する際は、制度の仕組みをしっかりと理解しておく必要があります。特に押さえておくべきポイントを5つ紹介します。採用計画を立てる際の参考にしてください。
①受入可能な外国人は2つのパターンがある
特定技能「農業」で受け入れ可能な外国人は、大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目は、前述の「日本語試験」と「農業技能測定試験」に合格した外国人です。日本での就労を希望する外国人が、自国で試験を受験し、合格することで在留資格を取得します。
2つ目は、すでに日本で技能実習生として働いている外国人です。農業分野の技能実習2号を修了した外国人は、特定技能1号への移行が可能です。すでに一定の日本語能力と農業技術を身につけているため、試験を受験する必要はありません。
いずれのパターンも、18歳以上で心身ともに健康な外国人が受入対象となります。
②雇用形態は「直接雇用」「労働者派遣」の両方
農業分野の特定技能外国人の雇用形態は、「直接雇用」と「労働者派遣」の両方が認められています。一般的な労働者と同様に、直接雇用して自社の従業員とする方法と、人材派遣会社から派遣してもらう方法があるということですね。
農作業は季節によって繁忙期と閑散期の波が大きいのが特徴です。そのため、雇用の安定を図りつつ繁閑に柔軟に対応できるよう、直接雇用と派遣の双方が認められているのです。自社の状況に合わせて、最適な方法を選択しましょう。
外国人労働者の派遣に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
▶︎ 外国人派遣社員を雇用した際のメリットは?ビザやコストについても解説
③任せられる業務は「栽培管理」「飼養管理の業務」を含むこと
外国人に任せられる農作業は、選択した農業技能測定試験の種類によって決まっています。
「耕種農業全般」の試験に合格した外国人は、「栽培管理、農産物の集出荷・選別等」の業務に従事できます。一方、「畜産農業全般」の試験に合格した外国人は、「飼養管理、畜産物の集出荷・選別等」の業務に従事できます。
ただし、いずれの場合も「栽培管理」または「飼養管理」の業務を含むことが必須です。単純な収穫作業や選別作業だけを任せることは認められていませんので注意しましょう。
④雇用期間は通算で5年が上限
特定技能の在留期間は、通算5年が上限となっています。たとえ1号から2号に移行したとしても、日本で働くことができるのは最長5年間ということです。
そのため、5年を超える雇用契約を結んでも、在留期間の更新が認められない可能性があります。採用計画を立てる際は、在留期間の上限を考慮に入れる必要がありますね。
⑤受入れ人数の上限は現時点では想定されていない
一部の業種では、特定技能外国人の受入れ人数に上限が設定されています。しかし、農業分野については2024年4月時点で受入れ上限は設定されていません。
ただし、今後の状況次第では上限が設けられる可能性もゼロではありません。外国人材の採用計画を立てる際は、引き続き最新の情報をチェックしておく必要がありそうです。
まとめ
日本の総人口は減少の一途をたどっており、2050年には1億人を下回ると予測されています。労働力人口の減少は、産業の維持・発展にとって大きな脅威となるでしょう。
農業は国民の食を支え、心身の健康を維持するために欠かせない産業です。その重要性は今後ますます高まっていくでしょう。人手不足の解消と産業の発展のために、外国人材の活用は有効な選択肢の一つといえます。
特定技能「農業」の仕組みを活用し、意欲ある外国人材を受け入れることで、日本農業の未来を切り拓いていきましょう。