特定技能の農業分野とは?制度の仕組みから要件・仕事内容・採用の流れまで解説!

農業分野での人手不足は深刻化しており、外国人材の受け入れが注目を集めています。その中で導入が進んでいるのが「特定技能」の制度です。特に農業分野は、2023年6月から特定技能2号の対象に追加され、更新制限のない就労が可能になりました。これにより、長期的な雇用が見込めるようになっています。
この記事では、農業分野における特定技能の仕組みや要件、任せられる業務内容、採用・受け入れの流れまでを、企業の人事・採用担当者向けにわかりやすく解説します。
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Contents
特定技能「農業」とは?制度の背景と仕組み

特定技能「農業」とは、外国人が日本の農業分野で業務に従事できる在留資格の一つです。2019年4月に新設された「特定技能」の制度によって、人手不足が深刻な特定産業分野でも外国人材を即戦力として受け入れられるようになりました。対象12分野の中に農業も含まれています。
農業分野の特定技能は、学歴や母国での就業経験を問わず取得できるため、幅広い人材が応募しやすいのが特徴。外国人求職者にとって門戸が広い分、企業側にとっても採用の選択肢が広がります。
背景には、農業従事者の高齢化や新規就農者の減少など、国内農業の深刻な人手不足が課題。厚生労働省の統計によれば、2024年10月末時点で、農業分野で働く外国人労働者数は58,139人、そのうち特定技能で働く外国人は20,440人で、その他の多くは技能実習生が占めています(外国人雇用状況|厚生労働省)。
技能実習制度は「母国への技術移転」を目的とするため、業務範囲や雇用形態に制限がありますが、特定技能は「人手不足の解消」を目的としており、より柔軟に人材を受け入れることが可能です。そのため、事業者にとっては労働力確保の有効な手段となっています。
特定技能「農業」の在留資格と要件は?
農業分野では特定技能1号に加えて、2023年6月から2号も対象となりました。これにより、長期的な就労や家族帯同といった選択肢が広がっています。
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号は在留期間が通算5年までで、家族帯同はできません。一方で特定技能2号は在留期間に上限がなく、更新を繰り返せる仕組みです。さらに、家族帯同や永住申請も認められています。
農業分野における要件
外国人が特定技能「農業」の資格を得るためには、日本語試験と農業技能測定試験に合格する必要があります。農業技能測定試験は「耕種農業」と「畜産農業」に分かれており、合格した区分によって従事できる業務内容が決まります。
ただし、技能実習2号を修了している場合は、試験を受けずに移行することが可能です。
特定技能「農業」の仕事内容と業務区分
農業分野の特定技能では、外国人材に任せられる業務が明確に定められています。ここでは、耕種農業と畜産農業の2つの区分に分けて、その仕事内容を紹介します。
耕種農業(栽培管理・集出荷・選別など)
農作業は重労働であるにもかかわらず、農業従事者の高齢化が進んでいるのが現状です。若い世代の新規就農者が増えない限り、今後も有効求人倍率は上昇し続けると予想されます。人手不足が深刻化すれば、国内の食料生産にも大きな影響が出ることは必至です。
畜産農業(飼養管理・集出荷・選別など)
畜産農業の試験に合格した外国人材は、家畜の飼養管理をはじめ、畜産物の集出荷・選別などの業務を担当します。日常的な管理業務を担うことで、即戦力としての活躍が期待できます。
任せられない仕事・注意点
いずれの場合も「栽培管理」または「飼養管理」を含むことが必須。単純な補助作業だけを任せることは認められていないため、採用前に業務範囲をしっかり確認しておくことが大切です。
特定技能「農業」の受け入れ方法と採用フロー

特定技能の外国人材を採用するには、在留資格の取得手続きだけでなく、受け入れ企業が守るべきルールや準備があります。ここでは採用までの流れを見ていきましょう。
受け入れの基本的な流れ
特定技能「農業」の採用には、大きく分けて2つの入り口があります。
- 海外で試験に合格した人材を採用するケース
日本語試験と農業技能測定試験に合格した外国人材を、自国から直接採用する方法です。試験合格者は一定のスキルを持っているため、即戦力として期待できます。
- 技能実習2号を修了した人材を特定技能に移行させるケース
すでに日本で農業分野に従事し、日本語や業務に慣れている人材を特定技能に切り替える方法です。試験を経ずに採用できるため、スムーズに雇用できるメリットがあります。
採用が決まった後は、在留資格認定証明書の交付申請や在留資格変更申請を行います。承認を得たのちに入国または資格変更を経て在留カードを取得し、正式に就労がスタートします。
企業が準備すべきこと
受け入れ企業には、法律で定められた準備や義務があります。
- 農業特定技能協議会への加入
受け入れ機関としての適正を確保するために必須です。
- 支援計画の作成と実施
生活支援や相談体制を整える内容を計画にまとめ、実際に運用することが義務付けられています。
- 労務管理体制の整備
労働条件通知書の交付、給与支払い、社会保険加入など、通常の労務管理と同様の対応が必要です。
- 出入国在留管理庁への届出
採用や契約状況について定期的に報告を行う必要があります。
受け入れ後のフォロー
雇用契約を結んで終わりではありません。外国人材が安心して働き、地域に定着できるようにサポートすることも重要です。
たとえば、日本語学習の機会を提供したり、住居の確保や生活相談の窓口を設けたりすることが求められます。こうしたフォロー体制を整えることで、採用した人材の定着率向上にもつながります。
実際には、企業が自社だけで生活支援や各種手続きを整えるのは大きな負担になりがちです。そこで役立つのがGTNの特定技能サポートです。GTNでは、外国人材の紹介から在留資格申請のサポート、さらには入社後の生活・労務面でのフォローまでを一貫して対応しています。
- 入国手続きや住居の手配
- 日本語学習や生活相談のサポート
- 法律で定められた支援計画の実施代行
これらを包括的に支援することで、企業は安心して外国人材を受け入れることができ、結果として定着率の向上にもつながります。
外国人材の採用や定着支援でお困りの企業様は、ぜひGTNの特定技能サポートをご覧ください。
技能実習と特定技能「農業」の違い

先ほども少し触れましたが、外国人材を受け入れる制度として「技能実習」と「特定技能」は混同されがちです。しかし両者は目的や仕組みが大きく異なり、違いを知っておくことで、自社にとってどちらの制度が適しているのかを判断しやすくなります。
技能実習から移行できるケース
技能実習2号を修了した人材は、試験を受けずに特定技能1号に移行できます。すでに日本での就労経験があるため、日本語能力や現場への適応力が高く、即戦力として採用しやすい層です。
制度の違い
技能実習は「技能を母国に移転すること」が目的であり、原則として人材育成が中心です。一方、特定技能は「人手不足の解消」が目的で、即戦力人材の就労を前提としています。
技能実習 | 特定技能「農業」 | |
制度の目的 | 技能を母国へ移転し、国際貢献につなげる | 日本国内の人手不足を解消する |
在留期間 | 最長5年(原則更新不可) | 1号:最長5年/2号:更新制限なし |
家族帯同 | 不可 | 1号:不可/2号:可能 |
業務範囲 | 限定的、育成を目的とした作業中心 | 即戦力業務(栽培管理・飼養管理など) |
雇用形態 | 監理団体を介した受け入れが必要 | 直接雇用が基本/農業は派遣も可能 |
受け入れやすさ | 制度が広く普及しており採用ハードルが低い | 一定の試験や要件を満たす必要あり |
技能実習は採用しやすい一方で、目的や制度上の制約が多いのが特徴です。特定技能は即戦力人材を受け入れられる柔軟な制度で、特に2号なら長期的な雇用や定着を期待できます。両者の特性を踏まえて、自社の人材ニーズに合う制度を選ぶことが重要です。
特定技能「農業」の雇用形態と契約上の注意点

外国人材を採用する際には、雇用形態や契約条件についても押さえておきましょう。
直接雇用と派遣の違い
特定技能「農業」では、直接雇用に加えて「派遣」も認められています。派遣が可能なのは農業と漁業のみで、繁忙期の人手不足に柔軟に対応できる仕組みです。
雇用期間の上限
特定技能1号は通算5年までですが、2号は更新制限がなく、長期雇用が可能です。
受け入れ人数の上限
農業分野では、特定技能外国人の受け入れ人数に現時点で制限はありません。ただし、将来的に変更される可能性もあるため、最新情報を確認する必要があります。
契約上の注意点
雇用契約を結ぶ際には、以下の点を必ず守る必要があります。
- 労働条件通知書の交付:雇用内容を明示することが必須
- 社会保険・労災の加入:日本人と同様に加入が必要
- 労働基準法の遵守:最低賃金や労働時間の基準を守ること
派遣の場合も、受け入れ先企業に労務管理責任がある点には注意が必要です。
特定技能「農業」を活用するメリットと注意点
特定技能制度を農業で活用することには、多くのメリットがありますが、同時に制度特有の注意点も押さえておく必要があります。
長期雇用が可能
特に2号を活用すれば、在留期間の更新制限がなく、長期的な人材確保が可能になります。人材の定着による労働力の安定化は、慢性的な人手不足に悩む農業分野にとって大きな強みです。
管理業務も任せられる
特定技能2号の対象者であれば、単純作業にとどまらず、一定の管理業務を担当させることもできます。現場の中心メンバーとして育成しながら長期的に戦力化できる点は大きな魅力です。
即戦力人材を採用できる
試験や実習を経てスキルを持った人材を採用できるため、採用後すぐに現場で活躍できます。繁忙期に合わせた即戦力の確保が可能になるのも農業分野ならではのメリットです。
制度運用上の注意点
一方で、制度の運用を誤るとリスクも。不法就労防止や労務管理、安全衛生の徹底、出入国在留管理庁への届出などを怠ると、企業に行政指導や受け入れ停止といったペナルティが課される可能性があります。法律に基づいた正しい理解と運用が不可欠です。
まとめ
農業は国民の食を支え、心身の健康を維持するために欠かせない産業です。その重要性は今後ますます高まっていくでしょう。人手不足の解消と産業の発展のために、外国人材の活用は有効な選択肢です。
農業分野の人材不足を補う有効な手段として、特定技能制度の活用はますます重要になっています。特に2023年6月以降は特定技能2号も対象となり、長期雇用や家族帯同といった幅広い選択肢が可能になりました。
人事・採用担当者は、制度の仕組みを正しく理解し、計画的に活用することで安定した人材確保につなげられます。採用や定着支援に不安がある場合は、GTNのサポートを活用するのも有効な方法です。
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