外国人採用で必須の「労働保険」の知識とは?加入条件や手続きも解説
外国人労働者の雇用に際しては、「労働保険」の適用関係や手続きについて正しく理解しておく必要があります。労働保険は、労災保険と雇用保険の2つの保険からなり、外国人であっても、原則として日本人労働者と同様に適用されます。事業主には、一人でも労働者を雇用する場合、加入が義務付けられているので注意が必要です。
本記事では、外国人労働者の雇用に際して必ず加入が必要となる「労働保険」について、わかりやすく解説します。外国人の在留資格ごとの適用関係や、必要な手続きについて、詳しく見ていきましょう。
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また、外国人の雇用に関するその他の手続きや注意点については、以下の記事も参考になります。
・ 外国人労働者の募集~採用に必要な準備と手続きを詳しく解説
・採用担当者必見!外国人を雇用するまでの流れと手続きを解説
Contents
「労働保険」にはどんな保険がある?
労働保険は、「労働者災害補償保険(労災保険)」と「雇用保険」の2つの保険の総称です。労働者を1人でも雇用する事業主は、業種・規模を問わず、原則として労働保険に加入する義務があります。外国人労働者を雇用する場合も同様です。
労働保険は、労働者の業務上や通勤途中の災害に対する補償や、失業した際の生活の安定を図ることを目的とした、国が管掌する強制保険制度です。正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態を問わず適用されます。事業主は、所定の期日までに労働保険の成立手続きを行い、保険料を納付する必要があります。
労働保険の加入手続き
労働保険の加入手続きは、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署で行います。新たに事業を起こした場合、保険関係成立届を提出する必要があります。継続事業の場合は、年度更新手続きを行います。
労働保険料は、概算・確定申告と納付を年1回行うことになっており、外国人労働者を雇い入れる場合も、日本人労働者と同様の手続きが必要です。
「労災保険」とは?加入条件と手続き
労災保険は、労働者が業務上や通勤途中に被った災害に対して補償を行う制度です。ここでは、外国人労働者に特有の加入条件や、労災発生時の手続きについて解説します。
「労災保険」の加入者及び保険料
1. 被保険者(必ず加入する人)
パートタイム労働者、日雇労働者、アルバイトを含む全ての労働者が被保険者となります。もちろん、外国人労働者も例外ではありません。外国人の在留資格が「留学」や「特定活動」(ワーキングホリデー)の場合も、資格外活動許可を得て働いていれば、労災保険の対象となります。
ただし、常時使用する労働者が5人未満の個人事業主で一定の要件を満たす場合は、例外的に任意加入となります。また、経営者や役員など労働者に該当しない人は、原則として被保険者にはなりませんが、特別加入制度により任意で加入することができます。
2. 保険料
労災保険の保険料は、原則として全額事業主負担です。業種や事業の規模によって保険料率が異なりますが、賃金総額の0.25%~8.8%程度となっています。建設業や製造業など災害発生リスクの高い業種ほど、保険料率も高く設定されています。
労災が起こった際の手続きと注意点
外国人労働者に労災事故が起こった場合には、日本人労働者の場合と同様の手続きが必要です。労働者が業務上の事由または通勤により負傷、または疾病にかり、4日以上休業をした場合、事業主は労働基準監督署長に「労働者死傷病報告」を提出しなければなりません。
この際、外国人労働者が不法就労者であったとしても、事業主の指揮命令下で労働していれば、労災保険の対象となります。ただし、不法就労については別途入管法違反として罰則の対象となるため、適法な在留資格・就労資格を持つ外国人を雇用することが大前提です。
また、事業主が労災かくしを行った場合、すなわち労働者死傷病報告を意図的に提出しなかったり、虚偽の報告を行ったりした場合には、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。外国人労働者の場合も同様に、労災発生時には誠実に対応することが求められます。
「雇用保険」とは?加入条件と注意点
「雇用保険」は、労働者が失業した場合に生活の安定と就職の促進を図ることを目的とした保険制度です。会社は労働者を1人でも雇用していれば、原則として雇用保険に加入する義務があります。ただし、外国人労働者の場合、在留資格によっては適用除外となる場合があるので注意が必要です。
「雇用保険」の加入者、保険料の支払いと保険料(原則)
1. 被保険者(加入する人)
雇用保険の被保険者となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
② 31日以上の雇用見込みがあること(31日以上雇用が継続しないことが明らかである場合を除く)
ただし、個人経営の農林水産業で常時使用する労働者が5人未満の場合は任意加入となります。
2. 保険料を支払う人
雇用保険の保険料は、事業主と労働者がそれぞれ負担します。
3. 保険料
雇用保険の保険料率は、一般の事業で賃金総額の0.9%(労働者負担0.3%、事業主負担0.6%)、農林水産・清酒製造の事業で賃金総額の1.1%(労働者負担0.4%、事業主負担0.7%)となっています。
外国人労働者の「雇用保険」の被保険者とは(一般的なケース)
外国人労働者の雇用保険の適用については、在留資格によって取り扱いが異なります。一般的なケースとして、以下の点に注意が必要です。
「留学」の在留資格を持つ留学生(昼間学生)と、「特定活動」の在留資格を持つワーキングホリデーの外国人は、雇用保険の適用除外となります。つまり、これらの在留資格の外国人を雇用しても、雇用保険への加入は不要です。
一方、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの就労ビザを持つ外国人労働者は、日本人と同様に雇用保険の被保険者となります。在留資格が「経営・管理」の場合は原則として被保険者とはなりませんが、雇用契約に基づいて就労する場合など、実態に応じて個別に判断されます。
外国人労働者の「雇用保険」の被保険者とは(例外的なケース)
外国人労働者の中でも、日本国内で就労していても、日本の会社と直接雇用契約を結んでいない場合があります。例えば、外国の会社から日本に派遣されるケースです。
このような場合、外国人労働者は「雇用保険」の被保険者とはなりません。ただし、日本の会社と雇用関係があれば、たとえ賃金の支払いが日本の会社からない場合でも、原則として雇用保険の対象となります。ただ、現実的に賃金の支払いがないと保険料も発生せず、失業時の給付を受けることもできません。
外国人労働者の「雇用保険」加入手続きの注意点
外国人労働者のうち、雇用保険の被保険者となる人を雇い入れた場合、事業主は「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出する必要があります。提出期限は、雇入れの日から起算して10日以内です。
一方、「留学」や「特定活動」(ワーキングホリデー)の在留資格を持つ外国人労働者については、雇用保険の加入は不要ですが、「外国人雇用状況届出書」の提出が必要となります。こちらは、雇入れ・離職の際に、その都度ハローワークに提出します。
なお、令和2年3月以降の届出からは、届出書に外国人労働者の在留カード番号の記載が必須となっているので、在留カードの確認を忘れずに行いましょう。
外国人労働者の雇用保険手続きに関する詳細や、「外国人雇用状況届出書」の提出が必要となるケースについては、以下の関連記事でより詳しく解説しています。
▶︎ 外国人の雇用保険手続きはどうする?外国人雇用状況届出書が必要なケースも
まとめ
本記事では、外国人労働者の雇用に際して必要となる「労働保険」について詳しく解説しました。労働保険は、労災保険と雇用保険の2つの保険の総称であり、事業主には加入が義務付けられています。
外国人を雇用する際には、在留資格や雇用形態に応じて、労働保険の適用関係や必要な手続きを確認することが重要です。特に、雇入れ時の届出の提出は忘れずに行いましょう。
労働保険は、外国人労働者を適切に保護し、安心して働ける環境を整えるために欠かせない制度です。外国人雇用に際してのコンプライアンスを確保し、労働者の権利を守るためにも、労働保険の正しい理解と適切な運用を心がけてください。
また、外国人の方を雇用する際は、労働保険だけでなく社会保険についても理解しておく必要があります。健康保険や厚生年金保険など、外国人労働者に適用される社会保険制度については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎ 外国人採用に必要な「社会保険」の制度を詳しく解説!