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外国人採用に必要な「社会保険」制度|健康保険と厚生年金保険を解説

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社会保険を表すイラスト

会社が日本人を採用する場合は、通常の勤務形態であれば誰でも「社会保険」に加入させなければなりません。日本に住む外国人を採用する場合も同様です。外国人だからといって「社会保険」に入らないことは許されません。

「社会保険」にはいくつかの種類がありますが、今回は「健康保険」と「厚生年金保険」の2つの制度について詳しく解説します。外国人の方を採用する際に、会社としてどのような手続きが必要なのか、また外国人の方にどのようなメリットがあるのかを理解しておくことが大切です。

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そもそも健康保険とは?

健康保険は社会保険の1種で、病気やけがをしたときに安心して医療を受けられるようにするための制度です。外国人の方が加入すれば、本人やその家族が病気や怪我をしたときに病院での治療費が補填されます。

病気やけがで会社を休んだ場合は傷病手当金が、出産の際には出産手当金が給付されるなど、日本で生活していく上で欠かせない保険と言えるでしょう。

また外国人の方が40歳以上65歳未満である場合は、介護保険への加入も同時に義務付けられています。介護が必要な状態になったときに、必要なサービスを受けられるようにするための保険ですので、あわせて加入手続きを行う必要があります。

健康保険制度の種類と被扶養者になるための条件

健康保険は、サラリーマンやOLなどが加入する医療保険制度です。企業が従業員のために提供する健康保険組合と、主に中小企業の従業員が加入する協会けんぽの2種類があります。外国人の方も一定の条件を満たせば、この健康保険に加入することになります。

1. 協会けんぽ

協会けんぽは最も加入者数が多い健康保険制度で、主に中小企業で働く社員(および役員)とその家族が加入します。

保険料は、給料の9.35%~10.42%(令和6年度から)で、会社と本人が半分ずつ負担します。通常は厚生年金保険料と合わせて給料から天引きされます。保険料の率は都道府県ごとに若干異なるのが特徴です。

また、保険料は、標準報酬月額に基づいて計算されます。標準報酬月額とは、社会保険料を計算する基準となる額で、毎月の給料や手当などを含めた総支給額を一定の幅で区分したものです。収入が上がるほど標準報酬月額も上がり、それに伴って保険料も増加する仕組みになっています。

家族(被扶養者)も保険の対象になるため、外国人の方にとっても家族の健康を守る上で大きなメリットとなります。ただし後述する条件を満たしている必要があります。

2. 健康保険組合

健康保険組合は、主に大企業や同業種の企業グループが独自に運営している健康保険制度です。従業員とその家族を対象に、保険料率や給付内容を自主的に設定できるのが特徴です。

健康保険組合も協会けんぽと同様に、標準報酬月額に基づいて保険料を計算します。保険料は協会けんぽに比べて一般的に低く設定されていますが、組合によって異なり、保険料の半分は会社が負担します。

また、健康保険組合の中には、傘下の企業の社員やその家族に対して人間ドックの補助など、手厚い保険サービスを提供しているケースもあります。企業の福利厚生の一環として外国人社員にもメリットのある制度と言えるでしょう。

健康保険の被扶養者になるための条件は?

健康保険の被扶養者になるためには、次のような3つの条件があります。

①保険料を支払う人に扶養されている配偶者、子、親、孫、兄弟姉妹など三親等以内の親族(同居が必要)
②年収が130万円未満(65歳以上または障害者は180万円未満)で、かつ保険料を支払う人の年収の2分の1未満であること
③国内に居住していること(2020年4月の改正で、被扶養者の認定基準にこの条件が追加されました。)

特に③の条件は、外国人の家族を被扶養者とする場合に注意が必要です。海外に住む家族は原則として健康保険の被扶養者とはなれませんので、日本での同居が必須となります。

「厚生年金保険」制度とは?

厚生年金保険も社会保険の1種で、国民年金(基礎年金)に上乗せして支給される公的年金制度です。老後の生活を保障するための制度で、一定の条件を満たす外国人も加入する必要があります。

加入者は、会社で働いている社員および会社から報酬を受けている役員が対象です。厚生年金保険への加入基準は、次のいずれかに該当する場合です。

①1週間の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上
②所定労働時間が正社員の4分の3未満でも、以下の条件をすべて満たす者
 (1)週20時間以上、1年以上の雇用見込み
 (2)月額賃金8.8万円以上
 (3)学生ではなく従業員数501人以上の企業に勤務、のすべての条件を満たす場合

外国人を採用する場合、フルタイムで雇用されるケースが多いため、原則として厚生年金保険への加入が必要になります。保険料は給与の18.3%(2024年現在)で、会社と本人が折半して負担します。

在留資格「留学」の場合は適用除外に

ただし「留学」や「特定活動」(ワーキングホリデー)の在留資格で働く場合は、週28時間以内の就労が条件のため、厚生年金保険の適用除外となります。

アルバイトとして外国人留学生を雇う場合などは、厚生年金保険の加入手続きは不要ですが、健康保険は資格外活動許可を受けて週20時間以上働く場合は加入が必要な点に注意しましょう。

外国人が退社した場合の「脱退一時金」とは?

日本の会社を退職して帰国する外国人の方のために、「脱退一時金」という制度があります。厚生年金保険に6か月以上加入していた外国人が、次の条件を満たせば保険料の一部が還付されます。

(1)日本国籍を持っていない
(2)現在、国民年金や厚生年金に加入していない
(3)過去に国民年金に6ヶ月以上加入し、保険料を納付済みの期間がある(未納期間は除く)
(4)年金を受け取る権利が発生するほどの加入期間(10年以上)がない
(5)障害基礎年金などの年金を受ける権利がない
(6)現在、日本国内に住所がない 国民年金や厚生年金の資格を喪失してから2年以内である

脱退一時金を請求するには、帰国後に本人が年金事務所に申請する必要があります。必要書類の提出や還付金の受取先の指定など、手続きが煩雑になりがちですので、会社としてもあらかじめ情報提供しておくことが望ましいでしょう。

なお2021年4月からは、脱退一時金の計算の基礎となる期間が3年から5年に延長されました。これにより、より多くの外国人が一時金を受け取れるようになりました。

「社会保障協定」とは?

外国人の方が母国と日本の両方で年金制度に加入していると、保険料の二重払いや掛け捨てになるケースがあります。これを防ぐための二国間の協定が「社会保障協定」です。

協定を結んでいる国の外国人については、日本滞在が5年未満の場合は原則母国の年金制度のみが適用され、5年以上の場合は日本の制度に一本化されます。

ただし、これはあくまで原則論で、協定国ごとに適用のルールが異なります。自国と日本のどちらの制度が適用されるのか、手続きはどうすればよいのかなど、詳しくは日本年金機構のホームページで確認するのがよいでしょう。

参考:日本年金機構

まとめ

以上のように、外国人の方を採用する際には社会保険の加入が必須です。健康保険と厚生年金保険それぞれについて、加入の条件や手続きの概要を理解した上で、対象となる外国人社員に丁寧に説明することが大切です。

社会保険は外国人の方にとっても日本で安心して働き、生活するために欠かせない制度です。保険料の負担はありますが、その分手厚い保障が得られることを伝え、前向きに加入してもらえるよう働きかけましょう。

会社としても、社会保険の加入手続きを含め、外国人の方が日本での就労を円滑にスタートできるようサポートしていくことが求められます。労務管理の面でもしっかりと対応し、外国人社員が能力を存分に発揮できる職場環境を整えることが何より大切だと言えるでしょう。

また、外国人の方を雇用する際は、社会保険だけでなく労働保険についても理解しておく必要があります。労災保険や雇用保険の適用条件、手続きの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎ 外国人採用で必須の「労働保険」の知識とは?加入条件や手続きも解説

さらに、外国人の方を雇用する際は、状況に応じて外国人雇用状況届出書の提出が必要となります。この届出書が必要なケースと、提出方法については、以下の記事で解説しています。
▶︎ 外国人の雇用保険手続きはどうする?外国人雇用状況届出書が必要なケースも

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