外国人の方が日本で働くために必要なこと
近年、日本を訪れる外国人観光客が多くなってきています。そうして日本を訪れ文化や生活に触れることで「日本に住んでみたい」「日本で働きたい」と考える外国人の方も増えているものと思われます。
しかし観光目的での訪日とは異なり、「日本に住む」「日本で働く」ことは簡単ではありません。「日本に住む」ためには行政に申請し「在留資格」を得る必要があり、また「日本で働く」ためには認定された在留資格が就労可能なものでなければいけません。
ここでは日本で働くために必要な在留資格の種類と、日本の深刻な人手不足の解消を目的に2019年4月に新たに導入された在留資格「特定技能」についてみていきます。
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在留資格の種類と就労
現在、在留資格は29種類に分かれており、その資格によって日本で可能な活動内容が変わってきます。
在留資格一覧
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転筋
- 介護
- 興行
- 技能
- 特定技能
- 技能実習
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在
- 特定活動
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
参照:在留資格一覧表
このうち「地位等類型資格」といわれる「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」には日本国内での活動に制限はないため、どのような職種でも働くことは自由です。
一方で「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」の資格は、日本での就労が認められていません。(これらの資格の保有者が日本で働く場合は、予め「資格外活動の許可」を受ける必要があり、資格外活動の許可を得ると一定の範囲内での就労が認められます)
また「特定活動」には様々な活動内容が含まれているため、同じ特定活動ビザを取得した外国人同士でも、その人ごとに活動内容は大きく異なります。「特定活動」には「ワーキングホリデー」や「インターンシップ」なども含まれており、制約付きながら日本での就労が可能です。
残った「教授」「教育」「技能実習」などの在留資格は「日本の大学で大学教授として研究・教育を行う」「中学校の英語教師として働く」「実務を通して日本の技術・知識を学ぶ」など、日本で行う活動を明確にしてはじめて取得できる資格です。在留資格の取得時に申請した範囲でのみ、日本で働くことが可能になります。
ですので、申請した範囲と異なる仕事に就こうとする場合は、資格の変更が必須です。
新設された在留資格「特定技能」
以上のように、外国人が日本で働くためには厳しい制約が存在しています。
そんな中、日本の深刻な人手不足への対策として2019年4月に「特定技能」という資格が新設されています。
「特定技能」と既存の在留資格の違い
特定技能は、日本の人手不足の解消のために、外国人労働者の受け入れ拡大・外国人労働者の増加を目的に新設されています。
経済産業省や厚生労働省などの省庁が指定した特定産業分野の14分野で、特定技能資格を有した外国人労働者(特定技能外国人)の受け入れが可能になっています。
※特定産業分野14業種
- 介護業
- ビルクリーニング業
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
参照:新たな外国人材の受入れについて – 分野別運用方針について(14分野)
技術移転を目的にしている「技能実習」と違い、「特定技能」は人手不足の解消が目的の在留資格です。労働力の確保そのものが目的であるため、特定技能の対象分野であれば幅広い業務を担ってもらうことが可能になります。
技能実習と特定技能の制度比較(概要)
(出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」より抜粋)
技能実習(団体監理型) | 特定技能(1号) | |
---|---|---|
関係法令 | 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律/出入国管理及び難民認定法 | 出入国管理及び難民認定法 |
在留資格 | 在留資格「技能実習」 | 在留資格「特定技能」 |
在留期間 | 技能実習1号:1年以内、技能実習2号:2年以内、 技能実習3号:2年以内(合計で最長5年) | 通算5年 |
外国人の技能水準 | なし | 相当程度の知識又は経験が必要 |
入国時の試験 | なし (介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり) | 技能水準、日本語能力水準を試験等で確認 (技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除) |
送出機関 | 外国政府の推薦又は認定を受けた機関 | なし |
監理団体 | あり (非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事 業を行う。主務大臣による許可制) | なし |
支援機関 | なし | あり (個人又は団体が受入れ機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居 の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁による登録制) |
外国人と受入れ機関のマッチング | 通常監理団体と送出機関を通して行われる | 受入れ機関が直接海外で採用活動を行い又は国内外のあっせん機関等を 通じて採用することが可能 |
受入れ機関の人数枠 | 常勤職員の総数に応じた人数枠あり | 人数枠なし(介護分野、建設分野を除く) |
活動内容 | 技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能等に係る業務に従 事する活動(1号) 技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動(2号、 3号) (非専門的・技術的分野) | 相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動 (専門的・技術的分野) |
転籍・転職 | 原則不可。ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号か ら3号への移行時は転籍可能 | 同一の業務区分内又は試験によりその技能水準の共通性が確認されてい る業務区分間において転職可能 |
「特定技能」資格によって、人手不足が深刻な中小企業を中心に、今後ますます多くの外国人労働者が日本で働いていくことが予想されます。
特定技能取得の条件
特定技能について詳しくみていくと、特定技能は「1号」と「2号」の2種類に分けられます。
特定技能2号の取得は、特定技能1号の5年間の修了者の移行のみとなっているため、特定技能外国人労働者は、始めはすべて特定技能1号での就労です。5年間の業務経験を積んだ外国人労働者がその後も日本で働くことを希望し、試験等で必要な技能を有していることが証明されている場合に、特定技能2号への移行が認められます。(現在は14分野のうち「建設業」「造船・舶用工事」の2分野のみ移行が認められており、2021年度から試験が始まる予定です)
また、すべての外国人が特定技能の在留資格を取得できるわけではありません。
まず国籍に制限があり、日本と二国間協定を締結した国の国籍の外国人に限られています。
現在は、インドネシア・カンボジア・タイ・中国・ネパール・フィリピン・ベトナム・ミャンマー・モンゴルの9ヶ国が対象になっています。
まとめ
外国人が日本で働くためには厳しい制約がありますが、「特定技能」在留資格によってその状況が変化してきています。また特定技能外国人の対象国籍は現状9ヶ国のみですが、今後は受け入れ可能な国が増えていくことも予想されています。
これからますます盛んになる外国人採用。
雇用者となる日本企業も、外国人が日本で働くために必要な資格等をしっかりと理解し、採用活動に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。