外国人が日本で永住権を取得するには?条件・特例・申請方法をやさしく解説

日本での暮らしが長くなると、「できればこのまま日本で暮らし続けたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
そんなときに検討したいのが「永住権(永住ビザ)」です。
この記事では、日本で永住権を取得するための条件や特例、申請方法、取得後に気をつけたいポイントまでをやさしく解説します。
永住権を検討している方は、ぜひ参考にしてください!
Contents
永住権とは?外国人が知っておきたい基本情報

永住権(永住ビザ)は、日本で長く生活する外国人の方にとって、大きな安心につながる在留資格のひとつです。
まずは基礎知識から見ていきましょう。
永住権(永住ビザ)の基本
外国人の方が日本に滞在するためには、さまざまな在留資格(ビザ)が必要です。
通常のビザには滞在期間や活動内容の制限がありますが、永住権を取得すれば、これらの制限がなくなります。
また、永住権を持っていれば職種や勤務先に縛られることなく働くことができるのもメリット。
生活スタイルの自由度が高まる点が、ほかの在留資格との大きな違いです。
永住権と永住許可・特別永住者・帰化の違いとは
「永住権」という言葉に似たものに、「永住許可」「特別永住者」「帰化」などがあります。
それぞれの違いを簡単にまとめると、次のようになります。
- 永住許可:いま別の在留資格で暮らしている人が、申請によって「永住者」という資格に変更すること
- 特別永住者:特別な歴史的背景があり、日本に長く住んでいる方などが対象
- 帰化:日本国籍を取得し、日本人として生活する制度
永住権は、日本国籍を取得せずに日本に住み続けたい方に向いている制度です。
「ずっと日本で暮らしたいけれど、国籍は変えたくない」という方にとって、選択肢のひとつとなります。
「帰化」について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎ 帰化して日本国籍を取るべき?メリット・デメリットや永住との違いを比較!
外国人が日本で永住権を取得するための条件とは?

永住権を取得するには、法律に定められた条件を満たす必要があります。
ここでは、出入国在留管理庁が公表している「永住許可に関するガイドライン」に沿って、3つの基本条件をわかりやすくご紹介します。
永住権の取得条件①:素行が善良であること
日本で永住を希望する以上、法律や社会のルールを守り、日本社会の一員として誠実に生活していることが求められます。
たとえば、過去に重大な違反歴や犯罪歴がある場合はもちろん、軽微な交通違反でも繰り返していると「素行不良」と判断されることがあります。
普段の生活においても、マナーや義務を意識することが大切です。
永住権の取得条件②:独立の生計を営める資産・年収
経済的に自立していることも、永住権を取得するための重要な条件です。
生活保護などの公的扶助に頼らず、自身の収入や資産、または配偶者の支えなどによって安定した生活を送れていることが求められます。
審査では、年収の金額や雇用形態、過去の納税状況などもチェックされます。
永住権の取得条件③:日本国の利益に合致すること
この条件は少し抽象的に見えるかもしれませんが、主に以下のような具体的なポイントで判断されます。
条件③-1:引き続き10年以上日本に在留している
永住権申請の原則として、10年以上日本に継続して在留していることが必要です。
そのうち少なくとも5年以上は「就労資格」または「居住資格」で滞在していることが求められます。
条件③-2:納税・年金・保険料などの公的義務を果たしている
所得税や住民税の納税、公的年金や健康保険料の支払いなど、社会的な義務をしっかり果たしていることも評価対象となります。
滞納歴があると審査に影響するため注意が必要です。
条件③-3:在留カードで最長の在留期間を有している
現在の在留資格で認められている最長の期間(通常は5年)で在留していることも、永住申請時の条件です。
まだ最長期間に達していない場合は、更新してからの申請が基本です。
条件③-4:公衆衛生上の問題がないこと
感染症など、公衆衛生に影響を与えるような健康上の問題がないことも条件のひとつです。
必要に応じて診断書の提出を求められる場合もあります。
永住権の取得条件に当てはまらない場合は?特例が認められるケースも!

一定の条件を満たしていなくても、実は例外的に永住権の取得が認められるケースがあるんです。
ここでは、特例の対象となる主なパターンを紹介します。
配偶者・子どもが日本人/永住者の場合
日本人や永住者・特別永住者の配偶者や子どもの方には、永住権取得の際に一部の条件が免除される特例があります。
たとえば、結婚して3年以上が経ち、1年以上日本で一緒に暮らしている方は、「素行が善良であること」「独立した生計を営んでいること」といった条件を満たさなくても申請が可能です。
実子や特別養子も対象となります。
ただし、実態のある婚姻関係であることや、現在の在留資格が安定していることなど、ほかの条件は見られるため注意が必要です。
高度人材・難民・定住者・日本に貢献した外国人の特例
「10年以上の在留」が条件となるのが一般的ですが、特定の立場にある方は、より短い在留期間でも永住権の申請が認められることがあります。
それぞれのケースについて見ていきましょう。
- 高度専門職として評価されている方
高度人材ポイント制で一定の基準を満たしている方は、通常よりも早く永住権を申請できます。
たとえば、3年間70点以上、または1年間80点以上の評価があれば、申請可能です。
- 難民認定を受けた方
日本政府から難民として認定され、そこから5年以上継続して在留している場合は、10年未満でも永住権の申請が可能です。
- 定住者として5年以上在留している方
定住者ビザで安定して暮らしている方も、5年以上の在留で永住を目指すことができます。
- 日本への貢献が認められる方
研究、教育、スポーツ、芸術活動などを通じて、日本社会に大きく貢献していると判断された方には、個別の判断で特例が認められる場合があります。
永住権申請の流れをチェック!必要書類・審査期間・注意点まで解説
永住権の申請にはさまざまな準備が必要ですが、ひとつずつステップを踏めばそこまで難しいものではありません。
ここでは、申請までの流れとあわせて、必要書類や手数料、注意点などもまとめてご紹介します。
STEP1:永住権の申請に必要な書類をそろえる
まずは、申請に必要な書類を揃えるところからスタートです。
書類の内容は個人の状況によって多少異なりますが、一般的に以下のような書類が求められます。
- 永住許可申請書
- パスポート・在留カードのコピー
- 住民票(世帯全員分)
- 所得や納税状況を証明する書類(課税証明書・納税証明書など)
- 雇用証明書または在職証明書
- 申請理由書
- 住民税・年金・保険の納付状況がわかる書類
これらは原本での提出が必要な場合も多く、発行までに時間がかかることもあるため、早めに準備を始めるのがおすすめです。
STEP2:地方出入国在留管理局で申請を行う
書類がそろったら、お住まいの地域を管轄する出入国在留管理局に申請を行います。
申請は原則として本人が行いますが、やむを得ない事情がある場合は、一定の条件のもとで代理人による申請も認められています。
申請時には在留カードとパスポートを持参し、窓口で申請内容の確認を受けます。
提出書類に不備があると再提出になるため、チェックリストを活用すると安心です。
STEP3:審査期間中に気をつけたいこと
申請後、審査には4〜6か月程度かかるのが一般的です(※状況によってはさらにかかることもあります)。
この期間中に追加書類の提出を求められることもあるので、連絡があれば速やかに対応しましょう。
また、申請中でも現在の在留資格の更新期限が近い場合は、通常通り更新の手続きが必要です。
申請中=在留延長とはならないため、注意が必要です。
STEP4:永住許可後の手続きと費用
審査の結果、永住権の許可が下りたら、出入国在留管理局から通知が届きます。
許可の際には、8,000円分の収入印紙を提出し、新しい在留カードの発行を受けます。
永住者となった後も、在留カードの有効期限は設定されており、定期的な更新や住所変更の届け出が必要です。
カードの管理や提出義務は引き続きあるため、油断せずしっかり対応していきましょう。
参考:永住許可申請
外国人が永住権を取得するメリット・デメリットとは?

永住権を取得すると、生活の自由度や社会的な信用が大きく向上しますが、一方で注意点も。
ここでは両方の側面を見ていきましょう。
永住権を取得するメリット
永住権を持つことで、働き方や暮らしの選択肢が増え、将来のライフプランも立てやすくなります。
以下のようなメリットが代表的です。
- 在留期間の更新が不要になる
- 職業や転職の制限がなくなり、自由に働けるようになる
- 社会的信用が高まり、住宅ローンや事業融資が受けやすくなる
- 家族の在留資格にも良い影響を与える可能性がある
永住権のデメリット・注意点
永住権を取得しても、在留カードの管理や届け出義務など、引き続き守らなければならないルールがあります。
うっかりミスが取り消しにつながることもあるため、注意が必要です。
- 在留カードの有効期限があり、定期的な更新手続きが必要
- 住所変更や再入国の届け出など、義務は引き続き発生する
- 虚偽申請や法律違反があると、永住権が取り消されることもある
- 長期間日本を離れると、永住権を失うリスクがある
永住権を取得した後に気をつけることは?失効・取り消しを防ぐポイント
永住権を取得した後も、注意すべき点は少なくありません。
取り消しを防ぐためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
在留カードの更新を忘れずに!携帯・提示義務も重要
永住者でも、在留カードには有効期限があります。
更新が遅れると不法滞在とみなされる恐れがあるため、必ず期限前に手続きを行いましょう。
- 通知が来るまで待たず、自分で期限を管理する
- 出入国の際、常にカードを携帯し提示できるように
住所変更の届け出を怠らない
引っ越し後14日以内に市区町村と出入国在留管理局への届け出が義務です。
届け出を怠ると、在留カードと住民票の住所がずれ、罰則の対象になることも。
長期間日本を離れる際は?
永住者が日本を出国する場合、「再入国許可」が必要です。
- 1年以上日本を離れる予定があるときは「再入国許可」の取得を忘れずに
- 許可なしで長期滞在すると永住権を失う可能性もあります
納税や保険料支払いの未履行
永住者にも日本国内の納税義務・健康保険や年金の加入義務があります。
支払いの滞納は取り消し対象にもなる重大な違反です。
【よくある取り消し事例】
- 有効期限切れの在留カードで航空機に乗ろうとし、厚生労働省に報告された
- 住所変更の届け出を怠り、市役所から指摘・罰金処分を受けた
- 納税義務を怠り、税務署から督促状を受けたのに未対応
- 申請時の書類に虚偽があり、後に発覚して取り消されたケース
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✅ 予防のためにできることリスト
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以下を習慣にすることで、永住権を安心して維持できます:
- 在留カードと住民票の有効期限や住所をこまめに確認
- 役所・入管関連の提出物は期限前にスケジュール登録
- 長期出国時には再入国許可の申請を忘れずに
- 納税・年金・保険料を期日までに納め、領収書は大切に保管
- 身に覚えのない通知や督促が来たら、すぐに相談する仕組みを用意(例:友人、行政書士などへ)
【よくある質問(FAQ)】永住権申請に関する疑問を解消しよう
永住権についての疑問や不安は、事前に解消しておくのが大切です。
ここでは、よく寄せられる質問とその答えをQ&A形式でまとめました。
Q: 永住権と就労ビザはどちらが有利?
A: 永住権の方が在留期間や活動制限がないため、より自由に暮らしたい方には有利です。
Q: 海外在住中でも申請できる?
A: 原則として、日本に在留している状態での申請が必要です。
Q: 永住権と帰化、どちらがいい?
A: 国籍を変えたくない方には永住権、日本国籍を取得したい方には帰化がおすすめです。
Q: 審査で落ちたら再申請はできる?
A: 再申請は可能ですが、理由を明確にし、改善した点を示すことが重要です。
まとめ
日本で永住権を取得するためには、法律で定められた条件をきちんと満たすことが求められます。
特例があるとはいえ、どのケースでも誠実な生活と適切な準備が大切です。
永住権の取得は、日本で安定した暮らしを続けるための大きな一歩。
制度をしっかり理解して、無理のない形での申請を目指しましょう。