人手不足の介護職に外国人を雇うには?在留資格「介護」と採用の流れ
2017年に外国人の在留資格に「介護」が新設されました。これは、深刻化する介護分野の人手不足を解消するために、外国人介護士の受け入れを促進する目的で設けられた在留資格です。介護施設や事業所にとって、外国人の採用は喫緊の課題となっています。
今回は、介護職で人手不足が起こる原因や、在留資格「介護」で外国人を採用する際の具体的な流れについて詳しく解説します。
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Contents
介護職で人手不足が起きる原因とは
介護職で深刻な人手不足が起きている原因は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
1. 採用が困難
介護職は、他の業種と比べて労働条件が厳しい傾向にあります。長時間労働や夜勤、休日出勤などが常態化しており、仕事とプライベートのバランスを取りにくいのが現状です。そのため、介護職を敬遠する人が多く、新たな人材の採用が難しくなっています。また、同業者間での人材獲得競争も激化しており、優秀な人材の確保が一層困難になっています。
2. ネガティブなイメージがある
介護の仕事は、世間一般的に「きつい・汚い・危険」といったいわゆる3Kのイメージが根強くあります。体力的にも精神的にもハードな仕事という印象から、敬遠される傾向が強いのです。特に若い世代では、介護の仕事に対するネガティブなイメージが定着しており、新卒採用が難しい状況が続いています。
3. 給与が低い
介護業界の給与水準は、他の業種と比べて低いことが知られています。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、産業別の年間給与額は以下のようになっています。
- 製造業:306万円
- 情報通信業:381.2万円
- 卸売業・小売業:319.6万円
- 教育,学習支援業:377.2万円
- 医療・福祉:298万円
このように、医療・福祉分野の年収は、他の主要産業と比べて20万円~85万円ほど低くなっています。特に介護職の場合、ヘルパーなどの初任給は月給18万円程度というケースも珍しくありません。こうした給与の低さが、新たな人材の確保を困難にしている大きな要因の1つと言えるでしょう。
外国人を介護福祉士として採用する方法と流れ
それでは、外国人介護士を介護福祉士として採用する具体的な方法と流れを見ていきましょう。大きく分けて、以下の3つのルートがあります。
1. 一般ルート
一般ルートは、外国人留学生を受け入れて介護福祉士として採用する方法です。流れは以下の通りです。
- 「留学」の在留資格で外国人留学生に日本に入国してもらう
- 日本の介護福祉士養成施設で2年以上学んでもらう
- 介護福祉士の国家資格を取得してもらう
- 在留資格を「留学」から「介護」に変更する
- 介護福祉士として働いてもらう
一般ルートは最もオーソドックスな方法ですが、入国から就労までに時間がかかるのがデメリットです。留学生の学費負担や生活支援なども必要になるため、受け入れ施設側の負担も小さくありません。
2. 実務経験ルート
当初、在留資格「介護」は日本の養成施設を卒業した人だけに認定されていました。しかし2020年4月より、実務経験を積んだ外国人にも介護福祉士の受験資格が与えられるようになり、実務経験ルートが認められるようになったのです。これによって、「技能実習」などの在留資格で日本に滞在していた外国人が、介護福祉士を目指せるようになりました。
実務経験ルートで在留資格「介護」が認定されるための要件は以下の通りです。
- 実務経験3年以上
- 450時間以上かつ6ヶ月以上の実務者研修を受ける
- 介護福祉士の国家試験に合格する
実務経験ルートの主な流れは以下の通りです。
- 技能実習生などの外国人に日本で3年以上介護の仕事に従事してもらう
- その間、450時間以上(6ヶ月以上)の実務者研修を受講してもらう
- 介護福祉士の国家試験に合格してもらう
- 新たに雇用契約を結ぶ
- 在留資格を「技能実習」から「介護」に変更する
- 介護福祉士として働いてもらう
なお、実務経験ルートと同時に福祉系高校ルート(指定の福祉系高校で1,855時間以上かつ3年以上の履修と国家試験合格)による在留資格「介護」も認定されるようになりました。
ただし、国家試験に合格するためには、ある程度の日本語能力が求められます。日本語教育に力を入れることも、受け入れ施設側の重要な役割となります。
在留資格「特定技能」については、以下の記事で詳しく解説しています。「特定技能」の概要や、介護施設での活用方法だけでなく、受け入れ施設の要件や人数枠についても触れていますので、外国人の採用を検討している介護施設は、ぜひチェックしてみてください。
・介護職種で外国人技能実習制度を利用する際に必要な要件とは
・特定技能「介護」とは?受け入れ施設の要件や人数枠も詳しく解説
3. 外国から呼んで採用
3つ目の方法は、日本の介護福祉士資格を持っている外国人を呼び寄せて採用するやり方です。手順は以下の通りです。
- 日本で雇用契約を交わす
- 外国人から「介護福祉士国家資格登録証」などの必要書類を収集する
- 収集した書類を入国管理局に提出する
- 審査を経て「介護」の在留資格が発行される
- 外国人が介護福祉士として働き始める
ただし、これから資格を取る外国人ではなく、すでに有資格者を採用するわけですから、人材の母数はかなり限られます。人選には慎重を期す必要があるでしょう。
この他、EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の受け入れ制度もあります。受け入れの流れや特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。
介護職員の確保は今後さらに厳しくなる
日本の高齢化はますます進行しており、今後も介護ニーズの増大が見込まれています。一方で、少子化の影響で生産年齢人口は減少の一途をたどっています。つまり、介護を必要とする高齢者は増える一方で、それを支える働き手は減っていくということです。
加えて、景気回復による他業種の求人増加や、コロナ禍における対人接触業務の敬遠など、介護職を取り巻く環境は厳しさを増しています。すでに人手不足が深刻な介護業界ですが、今後、介護職員の確保はさらに困難になると予想されているのです。
介護職員の確保には外国人の採用が必須
こうした状況を打開するには、外国人労働者の力を借りるのが得策と言えるでしょう。政府も外国人介護士の受け入れに力を入れており、EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者の採用や、在留資格「特定技能」の創設などを進めています。
在留資格「特定技能」については、以下の記事で詳しく解説しています。外国人の採用を検討している介護施設は、ぜひチェックしてみてください。
▶︎ 介護分野における在留資格「特定技能」創設とその活用法
また、すでに日本の介護福祉士資格を持つ外国人に関しては、在留期間の更新回数制限が撤廃されました。優秀な外国人材を長く施設に留められるようになったのは朗報と言えます。
介護業界が外国人採用に積極的になるのは必然の流れです。異文化コミュニケーションの難しさなどの課題はありますが、人手不足を解消し、事業を継続していくためには不可欠な選択肢となるでしょう。
まとめ
日本の少子高齢化が進む中、介護業界の人材不足はますます深刻化しています。今後、介護職員の確保は容易ではなくなるでしょう。
そんな中、外国人労働者の活用は喫緊の課題と言えます。在留資格「介護」をはじめとした各種制度を有効活用し、優秀な外国人材を積極的に採用・育成していくことが求められます。異文化理解や日本語教育など、受け入れ側の努力も欠かせません。
介護の質を維持しながら事業を継続していくために、外国人の力を借りる。それが、これからの介護業界に求められる対応だと言えるでしょう。
在留資格「介護」についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もおすすめです。在留期間や取得方法、他の在留資格との違いなどを丁寧に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
▶︎ 在留資格「介護」とは|在留期間や取得法、他の在留資格との違いは?