特定技能の対象国はどこ?国別の人数や1号と2号の違いについても解説


少子高齢化社会の日本では、労働力の確保が優先事項となっています。
このため、近年では外国人材を積極的に起用する企業も少なくありません。
優秀な外国人労働者の採用を検討する企業にとって、特定技能制度の対象国や特定技能1号と特定技能2号の違いについて理解することは重要です。
しかし、すべての違いの情報を自分で探すことは難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、特定技能の対象国、国別の人数データ、そして1号・2号の違いについて詳しく解説します。
この記事を参考にして、優秀な外国人材の起用につなげてください。
特定技能の対象国はどこ?
特定技能は原則どの国でも対象となっていますが、一部対象外の国があるので注意が必要です。
また、ほとんどの企業がMOCを締結している国から人材を起用しているのが現状です。
原則はどの国の外国人でも取得が可能
特定技能の在留資格は、原則としてどの国籍でも取得することが可能です。
しかし、実際には日本政府が各送出国と締結している二国間協力覚書(MOC)を結んでいる国の外国人を雇用するケースがほとんどです。
なぜなら、MOCを締結した国からの受け入れは手続きが明確化されており、よりスムーズな採用が可能だからです。
MOC(二国間協力覚書)について
ここでは、MOCの目的と締結国について解説します。
MOCとは
MOC(Memorandum of Cooperation)とは、特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れの確保などを目的として、日本と送出国との間で締結される協力覚書のことです。
この協力覚書により、外国人労働者の保護と適正な送出・受け入れを確保しやすくなります。
参考:法務省だより
MOCを締結した国
2025年現在、以下の16か国とMOCを締結しています:
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これら16カ国は全てアジアの国です。
中でも東南アジアが半数を占めており、日本に近い国との締結が多いことがわかります。
また、これらの国は近年のインフラ整備などにより若年層の人口が急激に増えている国々です。
少子高齢化で若手不足の日本がこれらの国と締結を結ぶことは、とても多くのメリットがあります。
参考:出入国在留管理庁ホームページ 特定技能に関する二国間の協力覚書
特定技能を取得できない国
特定技能制度では原則として国籍による制限はありませんが、イランとトルコのみ対象国から除外されています。
イランとトルコは他国が強制退出の令を出しても、受け入れ不可とされるからです。
MOCを結ぶ各国との手続き時における注意点
ここでは、MOCを締結した国との手続き時における注意点を解説します。
相手国において書類を提出しなければならない場合もあるので、その場合は実際に相手国の公式サイトを見て確認することをおすすめします。
また、主な注意点のみ記載しているので、詳細は出入国在留管理庁ホームページを確認してください。
在留などの申請の際に独自に提出する書類がある国
以下の3か国では、在留資格申請時に独自の書類提出が必要です。
国名 | 必要書類 |
---|---|
カンボジア | 登録証明書(ひな形あり) |
タイ | 駐日タイ王国大使館労働担当官事務所の認証を受けた雇用契約書 |
ベトナム | 推薦者表(特定技能外国人表)(様式1または様式2にベトナム側から承認を受けたもの) |
相手国において送出手続きが必要な国
以下の国々では、相手国の政府の認定送出機関を通じた手続きが必要です。
簡略化してまとめているので、詳細は出入国在留管理庁ホームページを確認してください。
- フィリピン
フィリピン政府認定の移住労働者事務所(MWO)を通じた手続きが必要で、海外雇用庁(POEA)での認証も求められます。
- ネパール
特定技能を取得後に再入国可により日本から出国し、一時帰国の際、海外労働許可書の取得が必要です。
- インドネシア
インドネシア政府の海外労働者管理システムへの登録と移住労働者証の取得が必要です。
- ミャンマー
ミャンマー労働・入国管理・人口省に、海外労働身分証明カードの申請が必要です。
- モンゴル
モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)との双務契約締結が必要です。
- バングラデシュ
受入機関は、最初に要求書を駐日バングラデシュ大使館に提出し、大使館から認証を受ける必要があります。
- パキスタン
移民保護事務所において、櫃証書類の提出と登録が必要です。
- ラオス
ラオス政府認定の送出機関を通じた手続きが必要です。
- キルギス
認定送出機関を利用する場合、キルギス労働・社会保障などへの登録が必要です。
参考:出入国在留管理庁ホームページ 在留資格認定証明書交付申請及び在留資格変更許可申請における取扱いについて
特定技能外国人はどの国の人が多いのか
2024年12月末時点の特定技能外国人の国別人数は以下の通りです。
この資料は、日本の特定技能制度における在留外国人の人数の動向を、令和5年12月末から令和6年12月末までの期間で示したものです。
全体として、特定技能在留外国人の数は継続的に増加しており、この制度が日本社会における重要な労働力を確保する手段として機能していることが読み取ることができます。
まず、特定技能で在留する外国人の総数は、この1年間で顕著な増加を見せています。
令和5年12月末時点では208,462人でしたが、令和6年6月末には251,747人へと増加しました。
さらに、令和6年12月末には284,466人(速報値)に達しており、1年間で約76,000人もの増加があったことがわかります。
国籍・地域別の構成を見ると、ベトナムは3つの時点すべてにおいて、特定技能在留外国人の中で最大の割合を占めています。
令和5年12月末には全体の過半数(53.1%)を占めており、その後も絶対数は増加し続けていますが、全体に占める割合は徐々に減少傾向にあります。
令和6年12月末時点では46.9%となっており、これはベトナム以外の国からの流入が加速しているためと考えられます。
ベトナムに次いで人数が多いのは、インドネシアです。
その割合は、令和5年12月末の16.4%から令和6年12月末には18.8%にまで伸びています。
特に、令和6年6月から12月にかけての増加数が約9,200人と、全地域の中で最も増加数が大きくなっており、特定技能におけるインドネシアからの人材の流入が非常に活発であることが読み取れます。
フィリピンからの在留外国人も安定して増加しており、特に令和6年6月から12月にかけては約8,300人増加し、ベトナムを上回る増加ペースを見せています。
また、中国、ミャンマー、ネパール、カンボジア、タイなども、いずれも着実に人数を増やしており、特に中国の割合が令和6年12月末に9.6%と増加している点も注目できます。
下段のグラフは、各期間における国籍・地域別の増加人数を具体的に示しています。
令和5年12月末から令和6年6月末にかけては、ベトナムからの増加が最も大きく、約13,000人増加しました。
しかし、令和6年6月末から12月末にかけては、インドネシアが約9,200人増と最も大きく、次にフィリピンが約8,300人増で続きます。
一方、これまで最大の増加数を示していたベトナムは、この期間の増加数が約5,600人と鈍化しています。
これらのことから、日本の特定技能制度は急速な拡大を続けると同時に、人材の供給源が多様化していることがわかります。
引き続きベトナムが最大の送り出し国ではあるものの、インドネシアからの流入が急速に拡大しており、フィリピンも安定した増加を見せています。
今後はベトナムだけでなく、さまざまな国が日本の労働を支えてくれることでしょう。
特定技能の1号と2号について
特定技能には1号と2号の2つの区分があり、それぞれ異なる要件と権利が設定されています。
特定技能2号は在留期間に上限がないため、企業は長期的な人材育成と人材の確保が可能です。
【表で解説】1号と2号の違い
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
対象分野 | 全分野可能 | 介護分野を除いて可能 |
在留期間 | 通算5年まで(更新:1年・6ヵ月・4ヵ月ごと) | 上限なし(更新:3年・1年・6ヵ月ごと) |
家族帯同 | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
技能水準 | 相当程度の知識・経験が必要 | 熟練した技能が必要 |
支援計画 | 必要 | 任意 |
永住権申請 | 不可 | 可能 |
日本語試験 | 必要 | 免除 |
よくある質問
ここでは、特定技能に関する質問について回答し、解説します。
特定技能で送り出し機関は不要なの?
特定技能制度では、原則として送り出し機関の利用は必ずしも必要ではなく、あくまでも任意です。
また、企業が直接外国人を採用することも可能です。
これにより、企業は特定の送り出し機関に限定されることなく、自社の採用活動を通じて外国人材を獲得できます。
また、求人サイトや日本の人材紹介会社を利用して海外の求職者と接点を持つことも可能です。
送り出し機関を介さないことで、中間手数料を削減でき、採用コストを抑えられるというメリットもあります。
ただし、送り出し機関の利用が義務付けられている国もあるので、注意が必要です。
これは、自国から海外へ労働者を送り出す際の管理体制を確立するためです。
例えば、フィリピンやベトナム、インドネシアなどでは、送り出し機関の利用が事実上必須となっています。
これらの国から特定技能外国人を受け入れる際には、相手国の法令や制度を十分に確認し、定められた手続きに従う必要があります。
したがって、特定技能制度の全体としては送り出し機関の利用は任意ですが、採用を希望する外国人の国籍によっては、その国のルールに従って送り出し機関を介すことが求められます。
このため、企業は採用活動を行う前に、受け入れ対象となる外国人の国籍ごとの制度を詳しく調査することが必要です。
特定技能におけるヨーロッパ諸国の受け入れ状況は?
ヨーロッパ諸国からの特定技能外国人の受け入れは原則として可能ですが、前述したとおり、日本は主にMOCを締結している国から特定技能外国人を受け入れています。
現在日本とMOCを締結しているヨーロッパの国はありません。
このため、特定技能におけるヨーロッパ人の受け入れはほとんど行われていないのが現状です。
MOC未締結国からの受け入れの場合、手続きが複雑になり、受け入れの可能性はMOCを締結している国に比べて低くなる傾向があります。
特定技能試験は海外でも受けられるの?
特定技能試験は海外でも実施されています。ただし、実施国や実施分野は限定されており、主にMOC締結国で行われています。
また、行われているのは特定技能1号のみであり、特定技能2号は、試験の実施は発表されたものの、日本のみでの実施であり、詳しい情報が未発表の分野もあります。
最新の試験実施情報については、出入国在留管理庁の公式ホームページで確認できます。
まとめ
特定技能制度を活用した外国人採用では、対象国や特定技能1号と2号の違いを理解することが重要です。
原則的に国籍による受け入れの制限はありませんが、MOC締結国からの受け入れが一般的で、国によって必要な手続きや書類が異なります。
弊社では、特定技能制度の理解の手助けはもちろん、積極的な外国人材派遣も行っていますので、ぜひお問い合わせください。