特定技能の2号と1号の違いとは?取得条件や必要書類を解説


人手不足が深刻化する日本において、外国人材の活用は企業の重要な課題となっています。
特に「特定技能」制度は、即戦力となる外国人材を受け入れる制度として注目を集めています。
しかし、1号と2号の違いや必要書類などを正確に理解している企業はまだ少ないのが現状です。
本記事では、特定技能1号と2号の具体的な違いから取得条件、必要書類まで、企業の採用担当者が知っておくべき情報を詳しく解説します。
適切な外国人材の採用と育成を実現するために、ぜひ参考にしてください。
Contents
特定技能とは
日本では、少子高齢化などによる労働力不足が年々深刻な問題となっています。
こうした問題に対処するために作られたのが特定技能制度です。
特定技能制度は、こうした人手不足に対応するため、一定の水準の専門性・技能を有する外国人に与えられる在留資格です。
この制度は従来の技能実習制度とは異なり、即戦力となる外国人材の確保を目的としています。
特定技能には特定技能1号・特定技能2号の2つの区分があり、それぞれ異なる要件と権限が設定されています。
制度の運用は法務省出入国在留管理庁が担当しており、公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)が制度の普及・支援を行っています。
特定技能の2号と1号の違い
特定技能の2号と1号には、対象の業種や永住権取得の可否、日本語能力の差など、たくさんの違いがあります。
特定技能2号のほうが専門性が高く、取得するのが難しいのが特徴です。
業種の違い
特定技能1号と2号では、対象となる業種に大きな違いがあります。
特定技能1号は、12分野が対象でしたが、令和6年3月29日の閣議決定で4分野の追加が決定されました。
現在では、以下の16分野が対象です。
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特定技能2号の対象分野は、2024年6月から大幅に拡大され、建設と造船・舶用工業の2分野から、介護を除く特定技能1号と同じ15分野まで拡大されました。
特定技能2号において介護が対象外とされているのは、すでに「介護」という在留資格が存在しているためです。
介護福祉士の国家試験に合格することで、無期限の在留が可能になります。
参考:出入国在留管理庁ホームページ
参考:出入国在留管理庁ホームページ 特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)
参考:出入国在留管理庁ホームページ 特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)
試験の実施状況の違い
特定技能1号は、頻度は異なるものの基本的には国内外でも受験が可能です。
海外は、主にMOC(二国間の協力覚書)を締結する国での実施となるため、注意が必要です。
もし近くの国で試験が実施されていない場合は、短期滞在ビザを使用して来日し、試験を受験することも可能です。
特定技能2号の試験は、新たに追加された分野を含め、ほとんどの分野で試験が開始されています。
しかし、実施されている試験は国内のみでの実施であり、まだ試験情報が発表されていない分野もあります。
今後の情報発信が予想されるので、定期的な情報収集が必要です。
また、申し込みは企業が行わなければならない試験もあるので、併せて確認しなければなりません。
在留期間の違い
特定技能1号 | 3年、1年または6ヵ月ごとの更新 通算で最大5年間の滞在が可能 |
特定技能2号 | 3年、1年または6ヵ月ごとの更新 更新回数に制限がなく、長期滞在が可能 |
更新頻度に違いはないものの、滞在可能期間が大きく変わってきます。
更新手続きをしないと不法就労となるため、注意が必要です。
一般的には、在留期間の切れる3カ月前から再度申請することが可能です。
申請提出者には本人だけでなく、代理人も申請提出者となっているので、漏れのない申請を行いましょう。
永住権の違い
特定技能1号 | 不可 5年後は帰国または他の在留資格への変更が必要 |
特定技能2号 | 可能 |
永住権は特定技能2号にのみ付与されています。
特定技能1号において、5年後に在留資格を変更する場合、在留資格によって可能な職種が変わるので注意が必要です。
対象でない業務を行った場合、不法就労となり、企業も外国人も処罰を受ける可能性があるので、対象業務を正確に理解しておきましょう。
日本語能力水準の違い
特定技能1号 | 日本語能力試験N4レベル 国際交流基金日本語基礎テスト合格でも可 |
特定技能2号 | より高度な日本語能力が期待される 分野によっては業務上必要な専門用語に理解が求められる |
特定技能1号のみ、試験の受験・合格が必要です。
特定技能2号は試験は義務づけられていないものの、専門用語も正確に理解する必要があります。
国際交流基金日本語基礎テストは、主就労を目的として来日する外国人が遭遇する場面においてコミュニケーションが取れる日本語レベルかどうかを判断することを主な目的としています。
なお、7,000円の受験料がかかるので準備をしておきましょう。
家族の帯同の可否の違い
特定技能1号 | 原則不可 |
特定技能2号 | 配偶者と子の帯同が可能 |
特定技能2号において、家族の在留資格は家族滞在となるので注意が必要です。
特定技能1号において帯同が可能な場合は、出入国在留管理庁公式ホームページで確認できます。
例えば、特定技能1号の資格を持つ外国人同士の間に子どもができた場合、この子どもも日本に住むことが可能になります。
特定技能の取得方法
特定技能1号は、各分野の技能試験に合格する必要があるほか、日本語能力試験の受験・合格も必須条件です。
特定技能2号も各分野の2号技能試験合格が必要で、その他に特定技能1号での3年以上の実務経験なども必要です。
特定技能2号に合格する外国人材を育てるには、着実に成長できる環境を提供することが重要です。
特定技能1号の取得条件
特定技能1号を取得するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
年齢要件 | 満18歳以上 |
技能要件 | 各分野の技能試験に合格するまたは技能実習2号を良好に終了 |
日本語要件 | 日本語能力試験N4レベル以上または国際交流基金日本語基礎テスト合格 |
健康状態 | 健康診断書の提出が必要 |
経歴要件 | 犯罪歴がないこと |
特定技能1号では、日本語の試験合格が求められます。
N4レベルは、日本語能力試験の公式サイトにて以下のように定義づけられています。
基本的な日本語を理解することができる 読む:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる 聞く:日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる 引用:日本語能力試験公式サイト 認定の目安 |
この定義を見ると、円滑なコミュニケーションを図ることが難しいことがわかります。
外国人でもわかるような言葉に言い換えたり、ゆっくり話したりすることが必要です。
また、必要書類もあるので確認が必要です。
なお、日本語能力試験に合格+技能試験に合格して特定技能1号を取得する方法のほかに、技能実習から移行して特定技能1号を取得する方法もあります。
技能実習から移行して特定技能1号を取得する方法
技能実習から移行して特定技能1号を取得するには、以下の条件を満たす必要があります。
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技能実習2号は、技能実習1号での活動を受け、習得した技術を極めるための2年間の活動のことを指します。
通算3年間日本にいることになるので、日本語の習得もある程度できており、即戦力となることが期待できます。
特定技能2号の取得条件
実務経験 | 特定技能1号で通算3年以上の実務経験 |
技能要件 | 各分野の特定技能2号技能試験の合格 |
指導能力 | 後輩外国人材や日本人従業員への適切な指導能力 |
業務実績 | 真面目な勤務態度や業務成果 |
雇用主の推薦 | 受け入れ企業からの推薦状 |
特定技能2号の取得には、より高度な条件が設定されています。
業務成果も必要になってくるので、与えられた業務に対する自主的な行動が求められます。
なお、特定技能1号、特定技能2号を取得するために各分野の技能試験を受験する際、費用がかかることが一般的なので、あらかじめ準備をしておきましょう。
特定技能を取得するために必要な書類は?
ここでは、特定技能を取得するために必要な主な書類を紹介します。
必要書類は分野などによって変わるので、自分で確かめることが必要です。
基本的には、出入国在留管理局に提出します。
しかし、発行機関はそれぞれ異なるため、注意が必要です。
書類名 | 特定技能1号 | 特定技能2号 | 提出先 | 備考 |
---|---|---|---|---|
在留資格認定証明書交付申請書 | ○ | ○ | 出入国在留管理局 | 海外からの新規入国時 |
在留資格変更許可申請書 | ○ | ○ | 出入国在留管理局 | 国内での資格変更時 |
技能試験合格証明書 | ○ | ○ | 出入国在留管理局 | 各分野が指定する試験機関から発行 |
日本語試験合格証明書 | ○ | △ | 出入国在留管理局 | 1号は必須、2号は分野により異なる |
雇用契約書 | ○ | ○ | 出入国在留管理局 | 雇用条件明記 |
支援計画書 | ○ | △ | 出入国在留管理局 | 1号は必須、2号は任意 |
会社登記簿謄本 | ○ | ○ | 出入国在留管理局 | 受入れ企業の資料 |
決算書類(直近2年分) | ○ | ○ | 出入国在留管理局 | 企業の財務状況の証明 |
実務経験証明書 | – | ○ | 出入国在留管理局 | 3年以上の実務経験証明 |
指導実績証明書 | – | ○ | 出入国在留管理局 | 指導的業務の実績 |
※○:必須、△:場合により必要、-:不要
まとめ
育成就労制度への移行を背景に、外国人材の「人材育成」の重要性が高まっています。
従来の特定技能制度は即戦力の確保が目的で、特定技能1号は在留期間が最大5年、家族帯同は原則不可でした。
一方、特定技能2号は熟練した技能を持つ人材を対象とし、在留期間の上限がなく永住権取得も可能で、家族帯同も認められています。
また、特定技能1号から2号へのステップアップには、3年以上の実務経験や指導能力が求められます。
しかし、将来的には特定技能制度が育成就労制度に移行する予定です。
未経験者から育成し、長期的に日本の産業に貢献する人材を確保する方向へと変化していく見込みです。
企業は、外国人人材を一時的な労働力ではなく、長期的な成長を担うパートナーとして育成することが求められてきています。