【一覧あり】特定技能の対象国は?国別の特徴・試験状況・採用ポイントも

近年、特定技能制度を活用して外国人材を受け入れる企業が増えていますが、対象となる国や採用時の注意点を正しく把握することは、人事・採用担当者にとって重要なポイントです。
この記事では、特定技能の対象国や国別の特徴、試験実施状況、送り出し機関の有無など、採用時に押さえておきたい情報を詳しく解説します!
Contents
特定技能の対象国とは?

まずは制度全体の枠組みを整理し、協定国・非協定国に分けた採用可能性や、送り出し機関の必要性について理解を深めましょう。
特定技能外国人の「国籍制限」の有無と基本ルール
特定技能制度は、原則として国籍による制限はありません。
つまり、どの国の外国人であっても、在留資格の条件を満たせば特定技能の在留資格を取得できます。
ただし、海外での試験受験や採用にあたっては、日本と「協力覚書(MOC)」を締結している国(17カ国)との間で制度的な連携があるため、実務上は協定国からの採用が中心となっています。
協力覚書締結には、制度の透明性確保や質の高い外国人材の確保、悪質な送り出し業者の排除といった目的があり、政府間の連携が強化されています。
また、日本国内に既に在留している外国人であれば、協定国でなくても在留資格変更による採用が可能です。
この場合、送り出し機関も不要となるため、企業側の手間やコストを抑えることもできます。
非協定国については、日本語試験(JFTなど)は受験できますが、多くの場合、技能試験が日本国内でのみ開催されるため、採用までのフローが複雑になりがち。
そのため、コストやスケジュール面で協定国との比較検討が必要です。
特定技能1号・2号の違いと採用時の注意点
特定技能の在留資格には「1号」と「2号」の2種類があります。
主に外国人採用で活用されているのは特定技能1号ですが、2023年の制度改正により、特定技能2号の対象分野も大きく拡大されました。
特定技能1号は原則として通算5年の上限がありますが、2号では在留期間に制限がなく、長期的な雇用が可能となる点で企業側にも大きなメリットがあります。
今後、2号を目指して1号からステップアップを希望する外国人が増えることが見込まれるため、早期の採用・育成体制の準備が重要です。
まずは、1号と2号の対象分野の違いを確認しておきましょう。
分類 | 対象分野(2023年以降) |
---|---|
特定技能1号(12分野) | 介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 |
特定技能2号(11分野) | ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 |
対象分野だけでなく、制度上の要件や支援義務、試験などにもさまざまな違いがあります。
主な違いは以下の通りです。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
① 在留期間 | 最大5年(1年・6カ月・4カ月更新) | 制限なし(3年・1年・6カ月更新 |
② 永住権取得 | 原則カウント対象外 | カウント対象となり得る(条件あり) |
③ 技能水準 | 相当程度の知識・経験が必要 | 熟練した技能(指導や工程管理など) |
④ 外国人支援の義務 | 支援計画の策定・実施が必須 | 支援計画の策定・実施は不要 |
⑤ 家族帯同の可否 | 原則不可 | 条件を満たせば配偶者・子どもの帯同が可能 |
⑥ 日本語能力試験の有無 | 技能試験+日本語試験(JFT-Basic等)が必要 | 技能試験のみ(現時点で日本語試験は要件に含まれていない) |
⑦ 試験の実施 | 国内外で定期的に実施中 | 国内で順次実施開始(分野によっては未実施・準備中もあり) |
特定技能2号は、1号からのステップアップとして位置づけられています。
すでに特定技能1号で外国人材を雇用している企業にとっては、将来的な2号移行を視野に入れたキャリアパス設計が必要になります。
特に、永住権の申請を見据えて長期的な就労を希望する人材にとっては、2号の取得が重要なステップ。
現時点で2号の試験が未実施の分野もありますが、制度改正の動きが加速しているため、企業としても制度動向を継続的にウォッチしながら、柔軟に対応できる体制を整えておくことが大切です。
【一覧】特定技能の対象国を紹介!

ここでは国別の締結状況や特徴を一覧で紹介します。
協力覚書(MOC)締結済みの国
日本は、以下の17カ国と特定技能に関する協力覚書を締結しています。
この協定により、制度に関する情報の透明化や悪質ブローカーの排除が進められています。
採用時は、協定国からの受け入れが基本となります。
国名 | 得意分野・特徴 | 備考(制度・教育体制など) |
---|---|---|
フィリピン | 介護分野に強く、日本語学習体制も充実 | 日本語教育プログラムあり/手数料制度あり |
ベトナム | 製造業に強く、技能実習との親和性が高い | 技能試験の受験機会が多く、移行者も多数 |
インドネシア | 外食・宿泊分野での受入実績が増加 | 日本語教育・契約整備のガイドラインあり |
カンボジア | 建設・農業分野での受入が増加傾向 | 書類整備体制の強化中/試験会場の拡充が進行中 |
ミャンマー | 製造・農業分野に実績あり | 送り出し機関の監督体制を強化/制度運用が安定 |
ネパール | 農業・造船分野に注力 | 技能訓練機関あり/現地試験体制の整備が進行中 |
モンゴル | 農業・建設分野での人材輩出が活発 | CBT試験が導入済/現地教育支援制度が機能 |
バングラデシュ | 製造・建設分野に対応 | 電子書類提出システム整備中/マッチング支援もあり |
スリランカ | 介護・外食分野で採用実績あり | 日本語教育支援あり/送り出し管理の制度化が進行中 |
パキスタン | 農業・建設分野で受け入れ増加中 | 技能研修プログラムあり/制度設計が構築中 |
タイ | 製造・宿泊分野に強み | CBT試験導入済/現地教育機関との連携が進む |
ウズベキスタン | 製造業中心に人材供給が拡大 | 教育支援体制構築中/現地試験の環境整備が進行中 |
インド | IT・サービス分野を含む多分野で潜在力あり | 試験会場の拡充が進行中/政府主導の職業訓練が強化中 |
ウクライナ | 製造・建設分野での活躍が期待されている | 日本語教育に熱心/技能レベルが高い人材が多い |
キルギス | 農業・建設分野での人材育成に力を入れている | CBT試験導入予定/職業訓練体制の整備が進行中 |
ラオス | 介護・宿泊分野で採用が増加傾向 | 日本語学習支援が整備中/送り出し制度の信頼性が高まりつつある |
中国 | 製造・宿泊・外食分野で広く対応可能 | CBT試験対応済/国内在留人材の採用ルートも豊富 |
特定技能試験の実施国もチェック
特定技能制度では、業種ごとの「技能試験」と「日本語試験」に合格する必要があります。
技能試験は日本国内だけでなく、協定国の一部でも実施されていますが、分野によって実施国が異なるため、採用計画に影響することも。
希望する人材の出身国で試験が行われているかどうかを、あらかじめ確認しておきましょう。
また、日本語試験については「日本語能力試験(JLPT)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」のいずれかの合格が必要です。
どちらの試験も実施国・日程が異なるため、採用スケジュールを組む際は各公式サイトで最新情報を確認してください。
特定技能外国人の採用方法とは?基本の3つのルートを理解しよう

特定技能外国人の採用には、大きく分けて3つのルートがあります。
- 海外からの新規採用(協定国+送り出し機関経由)
- 日本国内に在留する外国人の採用(留学生や技能実習修了者など)
- 技能実習からの移行(1号→特定技能)
企業側は、自社のニーズや希望人材の出身国・在留状況に応じて、最適なルートを選ぶことが重要です。
このあと紹介する「送り出し機関が不要なケース」は、②や③に該当する採用方法です。
送り出し機関が不要なケースとは?採用コストを抑える方法

特定技能の採用では、送り出し機関を通すケースと通さずに採用できるケースがあります。
ここでは、送り出し機関が不要な採用ルートと、そのメリット・注意点を紹介します。
国内在留外国人を直接採用するメリット・デメリット
日本国内に既に在留している外国人(例:留学生、技能実習修了者など)を特定技能に切り替えて採用する場合、送り出し機関を通す必要はありません。
雇用条件の調整がしやすく、文化適応も進んでいるため、即戦力として期待しやすい点が魅力です。
手続きも簡略化され、コスト面でも有利です。
しかし、在留資格の切替や更新には行政書類の整備が必要で、期限の管理や書類不備によるリスクもあります。
特に在留期限が迫っているケースでは、早期対応が求められるため、申請書類の確認や行政書士との連携が必要になるケースもあります。
送り出し機関が不要な国・採用ルートの具体例
送り出し機関を経由しない採用例としては以下があります:
- 留学生:日本の専門学校・大学卒業→特定技能への在留資格変更
- 技能実習修了者:実習評価書を活用し、特定技能へ移行
- 定住者・家族滞在者:資格変更により特定技能へ
これらは協定国以外の人材にも適用でき、採用までの期間を大幅に短縮できるケースも。
ただし、技能実習修了者の場合、実習評価の証明書が必要であり、実習先との調整が必要になる場合があります。
【必読】特定技能外国人を採用する前に確認すべき法令・制度

特定技能外国人の採用には、送り出し国の制度や日本側のルール変更への理解が欠かせません。
トラブルを防ぐために、事前に確認しておきましょう。
送り出し国の法令・ガイドラインの注意点
協定国ごとに、送り出し機関や雇用契約、手数料などに関する独自の法令や運用ガイドラインが設けられています。たとえば、
ベトナムでは、認可を受けた送り出し機関を通じた送出しが義務化されており、手数料の上限や契約内容にも細かな規定があります。
フィリピンでは、外国人雇用主との契約書を労働庁に提出する必要があり、現地での審査・承認プロセスがあります。
インドネシアでは、政府が定める標準契約書フォーマットが求められています。
こうした法令に反した契約や手続きを進めてしまうと、送り出しが認められない/ビザが下りない/送り出し機関とのトラブルにつながる可能性があります。
採用時には、必ず該当国の制度やガイドラインを確認し、必要であれば現地の関係機関や登録支援機関、専門家(行政書士など)と連携して進めることが大切です。
制度変更・最新動向(2024年〜2025年の改正ポイント)
特定技能制度は、制度開始から数年が経ち、現在も制度の見直しや改善が段階的に進められています。
企業としては、これらの動きを把握し、採用戦略に反映することが求められます。
注目すべき変更点としては、以下のようなポイントがあります:
- 特定技能2号の分野拡大
2023年に「建設・造船」の2分野から、11分野へと大幅に対象が拡大されました。
今後、受入可能な人材の幅が広がる見込みです。
- 在留資格更新や支援制度の見直し
支援内容の見直しや、登録支援機関の認定制度の運用強化も進められています。
- 受入人数枠の再設定やマッチング制度の整備
一部業種では需給に応じた受入上限数の見直しが検討されており、今後の政策転換が採用計画に影響を与える可能性もあります。
特に、特定技能1号から2号への移行を前提にした長期雇用を見据える場合は、今後の制度変更や支援体制の見直しに注目しながら、受け入れ計画を柔軟に立てていくことが重要です。
※試験の実施有無や更新制度の詳細は、試験関連セクションで解説しています。
まとめ|自社に合った特定技能外国人の採用戦略を考えよう
特定技能制度を活用することで、幅広い国から外国人材を採用することが可能です。
協定国からの受け入れや国内在留者の直接採用など、採用ルートも多様化しています。
送り出し機関の有無や国別の制度に応じた採用方法を見極め、自社のニーズに合った戦略を立てましょう!
なお、試験制度や協定国の運用方針は変更されることもあるため、出入国在留管理庁などの公的情報を定期的に確認しながら、柔軟な受け入れ体制を整えることが大切です。
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