監理団体(技能実習制度)について
外国人技能実習制度は平成5年に創設されましたが、その後制度が改編され平成22年には「入管法」の改正に伴い、制度の抜本的再編が行われました。本改正により、「技能実習生」という資格で入国し、研修生ではなく「労働者」という立場で実習実施者と「雇用契約」を結ぶこと、「技能実習1号」から「技能実習2号」に移行する制度が組み込まれました。平成28年には、上記制度改正を基本としながら、制度の拡充や「技能実習生」の保護や管理の体制を大幅に強化するという目的で法律制定されました。
今回は、制度を適正に運用する上での中核的機関である「監理団体」について解説します。なお、技能実習制度の全般的事項については、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」を参照ください。
参照:e-eov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089
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1.監理団体(技能実習制度)の具体的内容
以下に「監理団体」に関係する主な方針について説明します。
技能実習の目的・方針を明確化すること
- 目的:技能実習の適正な実施や技能実習生の保護を図り、彼らの人材育成を通じて開発途上国への技能・技術・知識の移転による国際協力を推進し貢献すること。
- 方針:「技能実習制度」は技能等の修得のために整備され、技能実習生の保護を図る体制・組織下で行われなければならず、人手不足への対応等のための労働力需給調整手段として雇用してはならない。
技能実習計画を認定制とし、基準や認定のルールを定めること
- 認定の仕組み:技能実習を実施する実習実施者は、技能実習生ごとに「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構の認定を受けなければなりません。認定を受けるための申請は、「第1号技能実習」の場合は技能実習開始予定日の6ヵ月前から可能となっています(遅くとも予定日の4ヵ月前までに行うべきです)。
- 技能実習の区分:技能実習計画は、「技能実習の区分」ごとに基準を満たさなければなりません。実習実施者により以下の2つのタイプに区分されます。
(ⅰ)企業単独型:日本の企業等が海外にある自社の現地法人、合弁企業先、取引先企業(※)等の従業員を受け入れて技能実習を行う場合
※取引先企業とは、引き続き1年以上の国際取引の実績または過去1年間に10億円以上の国際取引の実績を有していることや、国際的な業務上の提携を行っているとして法務・厚労大臣が認めるものを指します。
(ⅱ)団体監理型:非営利の団体(商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業・漁業協同組合等)が技能実習生を受入れ、傘下の企業等で技能実習を行う場合。この団体を「監理団体」といいます。
監理団体を許可制とすること
許可の区分は以下の2種類に分けられます。
①一般監理事業(優良な監理団体)
第3号技能実習の実習監理を行える優良な監理団体です。この優良な監理団体となるには、以下の基準(満点120点)に照らして6割以上の得点を取る必要があります。
- 実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制(50点)
・監理事業に関与する常勤の役職員と実習監理を行う実習実施者の比率
・監理責任者以外の監査に関与する職員の講習履歴等 - 技能等の修得等に係る実績
・過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率 等 - 法令違反・問題の発生状況(5点⇒違反等あれば大幅に減点)
- 相談・支援体制(15点)
・他の機関で実習が困難になった実習生の受入に協力する旨の登録を行っていること
・他の機関で実習継続が困難となった実習生の受入実績 等 - 地域社会との共生(10点)
・実習実施者に対する日本語教育への支援
・実習支援者が行う地域社会との交流を行う機会・日本文化を学ぶ機会の提供への支援
②特定監理事業
第1号・第2号団体監理型技能実習のみを行う実習実施者について実習監理を行う事業のこと
許可の基準
外国人技能実習機構の審査により、基準に適合し欠格事由に該当しない場合は許可されます。基準は以下のとおりです。
- 営利を目的としない法人であること
例えば、商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業挙動組合、漁業協同組合、公益社団法人、公益財団法人等 - 監理団体の業務の実施基準に従い事業を適正に遂行する能力があること
・実習実施者に対する定期監査を3ヵ月に1回以上行うこと
・第1号技能実習生に対して入国後講習を実施すること
・技能実習計画の作成指導を行えること
・技能実習生からの相談対応を行えること - 財産的基礎を有していること
- 個人情報の適正な管理のための必要な措置を講じていること
- 外部役員または外部監査の措置を実施していること
- 基準を満たしている海外の送出機関と技能実習生の取次に係る契約を締結していること
- その他には、監理費を適正に徴収すること、自己の名義をもって他人に監理事業を行わせないこと、監理責任者が事業所ごとに選任されていること等
許可証の交付(有効期限)
- 一般監理事業(技能実習1号、2号、3号)は5年または7年
- 特定監理事業(技能実習1号、2号のみ)は3年または5年
監理団体への指導監督の実施
報告徴収等
主務大臣は、監理団体・実習実施者に対し、下記の権限を行使できます(参考:技能実習法35条)
(ⅰ)報告・帳簿書類の提出・提示を命じること
(ⅱ)出頭を求めること
(ⅲ)関係者に質問すること
(ⅳ)関係者のいる場所に立ち入り、設備や帳簿書類等を検査すること
上記の報告徴収を拒んだ場合は、監理団体の取消の対象及び罰則の対象にもなります。なお、外国人技能実習機構は監理団体に対しては1年に1回程度、実習実施者に対しては3年に1回程度定期検査を行うこととなっています。
改善命令等
主務大臣は監理団体が技能実習法や入管・労働関係法令等に違反した場合には、改善命令を行います(参考:技能実習法36条)。改善措置を講じたとしても適切と認められない場合は、監理団体の取消の対象となるほか、罰則の対象にもなります。