日本での難民ビザ申請や受け入れまでの就労制限などについて解説
世界では多くの人々が紛争や迫害を逃れ、国外に脱出せざるを得ない状況に置かれています。こうした難民の方々を保護し、支援することは国際社会の重要な責務ですが、日本でも難民の受け入れが行われているのをご存知でしょうか。
日本に庇護を求めてくる難民の数は年々増加傾向にありますが、実際に認定される人数は非常に限られているのが現状です。難民申請から認定までの過程では、就労が制限されるなど、難民の方々は様々な困難に直面します。
本記事では、日本における難民の受け入れ状況や、難民ビザの申請方法、就労に関する制度などについて詳しく解説します。また、難民の自立を支援する取り組みや、雇用に前向きな企業の事例なども紹介していきます。
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Contents
日本の難民受け入れについて
世界各地で大きな問題となっている難民受け入れについて、日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。日本政府は、難民条約で難民と認められた人やインドシナ難民を受け入れているほか、定住支援事業を通じて、難民が日本社会に適応し、自立した生活を送れるようサポートしています。
この定住支援事業は、アジア福祉教育財団という団体に業務委託されており、日本語教育や就労支援、生活相談など、多岐にわたる支援が提供されています。また、日本は第三国定住にも取り組んでおり、難民キャンプなどで一時的に保護された難民を、新たな受け入れ国へ移動させ、長期的な滞在権を与える取り組みも行われています。
日本での難民ビザの申請
日本で難民認定を受けるためには、出入国在留管理庁に難民認定申請を行い、法務大臣から難民であると認定される必要があります。認定を受けた難民は、難民条約に規定されている保護を受けることができるようになります。
難民ビザ申請中は就労制限がある
難民認定申請中の外国人は、特定活動ビザという在留資格で日本に滞在することが認められています。しかし、この在留資格では就労が制限されており、原則として収入を得るための活動に従事することはできません。ただし、技術・人文知識・国際業務や経営管理などの就労ビザの申請要件を満たす場合は、在留資格変更の申請を行うことで就労が可能になる場合もあります。ただし、難民認定申請中であることが審査に影響を与え、不利になる可能性もあることに注意が必要です。
難民ビザが認定されたら就労が可能になる
難民認定を受けた外国人が、素行善良であると認められた場合、永住許可を得ることができます。また、自立した生計を立てられると予測される技能を持っていることも、永住許可の審査において有利に働きます。
認定難民には、日本から出国し再入国する際に必要となる難民旅行証明書が交付されることもあります。この証明書を所持していれば、有効期間内は何度でも日本への出入国が可能となります。さらに、認定難民は日本国民と同様に、国民年金や児童扶養手当、その他の社会福祉制度を利用する資格が与えられます。
日本の難民受け入れ率は?
出入国在留管理庁の公開データによると、2023年に難民認定申請を行った外国人は13,823人でした。これは前年に比べ10,051人(約266%)の大幅な増加となっています。2023年の難民認定申請の処理数は8,184人で、そのうち難民認定を受けたのは289人、認定を受けられなかったのは5,045人(補完的保護対象者と認定された2人を含む)、申請を取り下げた人は2,850人でした。
難民認定の審査期間は平均で約10ヶ月とされていますが、この間、申請者は出入国在留管理庁に収容され、外出が禁止されるなど、厳しい生活を強いられています。認定結果に不服がある場合は、審査請求を行うことができますが、この請求を行った外国人は5,247人で、在留が特別に許可されたのは14人のみでした。
2023年6月に成立した改正入管法では、補完的保護対象者の認定制度が新設されました。この制度は、難民とは認定されないものの、母国で迫害や危害を受ける可能性がある外国人に対し、一定の在留資格を付与するものです。制度開始後、2人の外国人が補完的保護対象者として認定され、日本での滞在が認められました。
これらのデータから、日本における難民認定申請者数は大幅に増加しているものの、実際に難民と認定される割合は依然として低いことがわかります。一方で、補完的保護対象者の認定制度の開始や、人道的配慮による在留許可者数の増加など、難民申請者の保護に向けた新たな取り組みも始まっています。
しかし、申請から認定までの審査期間の長さや、その間の就労制限など、難民申請者が直面する課題は未だ多く残されているのが現状です。
参考:令和5年における難民認定者数等について、補完的保護対象者認定制度 | 出入国在留管理庁
日本での難民の就労と雇用について
難民認定を受けた外国人は、就労が認められ、日本の社会保障制度を利用することができます。前述のアジア福祉教育財団では、無料の職業紹介事業を行っており、求人の受付だけでなく、職場適応訓練や雇用開発助成金など、事業者向けの支援も提供しています。
日本語能力が不十分な難民の方々のために、日本語学習教材を提供している支援団体もあります。難民の雇用を検討している企業の担当者は、地方自治体や難民支援団体に相談することをおすすめします。これらの団体では、外国人雇用に関するノウハウや情報を提供してくれます。
まとめ
日本の難民認定申請者数は増加傾向にあるものの、認定率は低い状況が続いています。申請から認定までの審査期間は長く、その間の生活に制限が多いのが現状です。
また、日本における難民受け入れは、難民条約に基づいて行われていますが、実際に難民認定を受け、日本社会で安定した生活を送れる人はごく少数にとどまっています。入国管理局では、真に保護を必要とする難民を見極めるため、慎重な審査が行われていますが、膨大な申請件数に対応するための人的リソースが不足しているのかもしれません。
一方で、難民の雇用に理解のある企業や支援者の存在も重要です。難民の方々が日本社会に溶け込み、自立した生活を送るためには、就労の機会が不可欠だからです。難民支援に関心のある企業は、ぜひ積極的に求人募集を行い、難民の雇用に一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。