【2026年入管法改正の全貌】特定在留カードと手数料値上げの対策
2026年に予定されている入管法改正(施行・運用開始)の全体像、特定在留カードの導入と在留手数料値上げの対策について解説します。
Contents
2026年施行・運用開始に向けた背景と主要な変更点

2026年に予定されている入管法関連の制度変更は、日本社会の多岐にわたる課題に対応するため必要とされているものです。
主な背景は、少子高齢化による深刻な労働力不足の解消、在留外国人の増加に伴う行政コスト増大、在留管理の効率化と利便性向上です。
近年、入管法は社会情勢変化に対応し、2019年には「特定技能」制度創設、2023年には難民認定制度見直しや監理措置制度導入など、度重なる改正が行われてきました。
2026年の施行においては、主に二つの大きな柱があります。
一つは「特定在留カード」制度の導入、もう一つは「在留手数料の大幅値上げ」です。
- 特定在留カード制度の導入: 現在、外国人は在留カードとマイナンバーカードを個別に手続きしますが、2026年6月14日(予定)からこれらを一体化した「特定在留カード」の運用が開始される見込みです。
これにより、在日外国人の利便性向上と行政運営の効率化が期待されます。
対象は住民基本台帳に記録された中長期在留者や特別永住者で、在留資格更新・変更、住居地届出時などに交付申請が可能となる予定です。 - 在留手数料の大幅値上げ: 政府は、在留手続きやビザの手数料を欧米諸国の水準に合わせ、大幅に引き上げる方針を検討しています。
具体的には、在留資格変更・1年以上の更新が3万円~4万円程度、永住許可が10万円以上への値上げが検討されており、2026年度中の実施を目指して関連法案の提出が見込まれています。
この値上げは、在留外国人増加に伴う入国審査迅速化、日本語教育充実、不法滞在者対策などの財源確保を目的としています。
これらの変更は、日本の外国人材受け入れ政策における重要な転換点となり、外国人や関連企業に大きな影響を与えるでしょう。
なぜ今、制度変更が必要なのか?多角的な視点から背景を解説
今回の変更は、日本の喫緊の課題に対応するための不可欠な対応であると言えます。
国内の少子高齢化とそれに伴う深刻な労働力不足は、外国人材の受け入れなしには解決できない状況にあります。
介護、建設、農業など多様な分野で人手不足が深刻化しており、外国人材は日本の経済活動を支える上で不可欠な存在です。
また、国際的な人材獲得競争が激化する中、日本が選ばれる国であり続けるためには、在留制度の透明性向上と利便性の確保が求められています。
これまでの「特定技能」創設や難民認定制度見直しといった継続的な改正を経て、2026年の施行では、在留外国人の増加に伴う行政コストの増大、効率的な在留管理、外国人材の定着促進のための制度設計が政府により検討されています。
特に、高度な専門性を持つ外国人材の受け入れを強化し、彼らが日本で長期的に活躍できる環境を整備することが喫緊の課題とされています。
改正の主な柱:特定在留カード制度と在留手数料の見直し
在留外国人の行政手続き簡素化と利便性向上を目指し、「特定在留カード」制度が導入される予定です。
これは、従来の在留カードとマイナンバーカードの機能を統合し、本人確認や各種申請をよりスムーズに行えるようにするものです。
政府の外国人材受け入れ促進・定着支援策の一環として、在留管理の効率化に大きく寄与します。
一方、在留外国人の増加に伴う行政コスト増大に対応するため、「在留手数料の大幅値上げ」が検討されています。
これにより確保される財源は、入国審査の迅速化、日本語教育の充実、不法滞在者対策など、外国人材受け入れ体制全体の質の向上に充てられ、制度全体の持続可能性を高め、サービスの維持・向上を目指すとされています。
これら二つの柱、すなわち特定在留カードによる手続きの効率化と、手数料値上げによる財源確保は、相互に補完し合う関係にあり、より安定した外国人材受け入れ制度を構築するための両輪と言えます。
外国人はこれらの変更を通じ、より明確で効率的な在留管理と、それに伴う新たなコスト負担という二つの側面を経験することになります。
これは、申請手続きのデジタル化推進と費用負担の公平化という、政府の新たな方針が反映されたものです。
新設「特定在留カード」制度の詳細と対象者

2026年6月14日(予定)より、日本において「特定在留カード」制度の運用が開始される見込みです(窓口での申請受付は翌開庁日の6月15日から)。
これは、改正入管法に基づくもので、在留カードとマイナンバーカードの機能を統合し、在日外国人の利便性向上と行政運営の効率化を目的としています。
従来の在留カードとマイナンバーカードはそれぞれ別の機関(地方出入国在留管理局と市区町村)で手続きが必要でしたが、特定在留カードではこれらの手続きが一部一元的に処理できるようになります。
特定在留カードの目的と機能
特定在留カードは、現行の在留カードにマイナンバーカードの機能を付加した新しいタイプのカードです。
その最大の目的は、外国人の利便性向上と在留管理体制の効率化にあります。
これまで外国人は、在留資格証明の在留カードと、社会保障・税・災害対策で利用されるマイナンバーカードを別々に所持し、異なる窓口で手続きを行う必要がありました。
特定在留カードの導入により、この二重の手続きが解消され、多くの行政手続きがワンストップで完結できるようになります。
例えば、地方出入国在留管理局での在留期間更新や在留資格変更、永住許可申請、在留カードの有効期間更新などと併せて、特定在留カードの交付申請が可能となります。
また、市区町村窓口では、新規上陸後の住居地届出や住居地変更届出の際に申請できます。
このカードの機能統合は、在留外国人の情報を一元的に把握することを可能にします。
これにより、在留・マイナンバー関連の本人確認や行政手続の効率化が期待されています。
カードの券面には、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間満了日、カード番号、有効期間満了日、就労制限の有無、資格外活動許可が記載されます。
マイナンバーはカード裏面に記載され、在留期間や許可の種類・許可年月日などの一部情報はICチップに記録されます。
特定在留カードの取得要件と申請手続き
特定在留カードの交付対象となるのは、住民基本台帳に記録されている中長期在留者および特別永住者です。
2024年末時点で、多くの外国人が申請資格を有すると見込まれています。
特定在留カードの取得は義務ではなく、あくまで任意です。
希望しない場合は、マイナンバー機能のない新たな様式の在留カードが交付されます。
また、制度導入後も従来通り在留カードとマイナンバーカードを2枚所持することも可能です。
申請は、地方出入国在留管理局または市区町村の窓口で行うことができます。
主な申請タイミングは以下の通りです。
- 地方出入国在留管理局:
在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請、永住許可申請、在留カードの有効期間更新申請、再交付申請、住居地以外の記載事項変更届出などの手続きと併せて、特定在留カードの交付申請が可能です。 - 市区町村窓口:
新規上陸後の住居地届出、住居地変更届出、在留資格変更に伴う住居地届出の際に、特定在留カードの交付申請が可能です。
申請には、特定在留カード等交付申請書、暗証番号等設定依頼書、写真1葉が必要となります。
併せて行う手続きに応じて追加書類が求められる場合があります。
なお、在留申請オンラインシステムでは当面の間、特定在留カード交付申請は受け付けられないため、窓口での手続きが必要です。
特定在留カードを所持していても、在留期間満了後の特例期間に入るとマイナンバーカード機能は利用できなくなります。
そのため、満了日までに市区町村で有効期間変更手続きを行う必要があります。
また、紛失した場合は、マイナンバーカードと在留カードの両方の手続きが必要となります。
在留手数料の大幅値上げ:背景、内容、影響

2026年度を目途に、外国人の在留手続きに関する手数料の大幅な値上げが検討されています。
政府は関連法改正案を国会に提出する方針です。
この改定は、日本に在留する約359万人(2024年6月末時点)の外国人や、外国人材を雇用する企業にとって、経済的・心理的に大きな影響を与えることが予想されます。
手数料値上げの具体的な内容と背景
政府が検討している在留手続きの手数料値上げ案では、特に在留資格の変更や1年以上の期間更新において、現行は窓口6,000円(オンライン5,500円)ですが、これを3万〜4万円程度へ引き上げることが軸となります。
また、永住許可申請については、現行1万円(2025年4月改定前は8,000円)から、10万円以上へと大幅な値上げが検討されています。
これは1981年以来の大規模な改定となる見込みです。
この大幅な値上げの背景には、日本の在留手続き手数料が欧米諸国と比較して安価であったという現状があります。
報道等によると、就労資格の変更・更新にかかる手数料は、米国や英国、ドイツなどの欧米主要国と比較して日本の現行水準は低く設定されていました。
政府は今回の改定により、日本も国際的な水準に近づけることを検討しています。
政府は、増え続ける在留外国人の受け入れ環境整備、入国審査の迅速化、日本語教育の充実、そして不法滞在者対策の強化など、これらの施策に必要な財源を確保するために、今回の手数料引き上げが不可欠であるとしています。
さらに、外務省も訪日ビザの手数料を欧米並みに引き上げる方針で検討を進めていると報じられています。
外国人にとっての値上げの影響と負担増
2026年度以降に想定される在留手数料大幅値上げは、日本に滞在する外国人にとって、経済的・心理的に大きな負担増となります。
特に、在留期間更新許可申請の手数料が数万円単位へ、永住許可申請が10万円以上へと引き上げられた場合、家計を大きく圧迫する可能性があります。
この経済的負担は、単なる金銭的な問題に留まらず、日本での生活継続に対する心理的なハードルを高め、外国人材の定着意欲や新規来日を躊躇させる要因にもなりかねません。
定期的な更新が必要な留学生や技能実習生、家族滞在者など、経済的に余裕のない層には特に深刻な影響が予想されます。
このような負担増に備えるためには、事前の情報収集と計画的な準備が不可欠です。
入管庁や信頼できる情報源からの最新情報を常に確認し、正確な値上げ時期と具体的な金額を把握しましょう。
現在の在留資格の有効期限を確認し、可能であれば値上げ前の現行手数料での申請を検討することも有効です。
また、手数料増加分を見越した生活費の見直しや貯蓄計画を立て、申請書類の不備による再申請を避けるためにも、早めの準備を心がけることが重要です。
企業側にとっても、外国人材を雇用する際のコストが増加する可能性があります。
特定技能や技術・人文知識・国際業務などで複数の外国人を雇用している企業では、更新時にまとまった費用負担が発生することも考えられるため、内部規程や雇用契約書における手数料負担の扱いを見直す必要に迫られるでしょう。
2026年施行に向けた事前対策と準備

2026年に予定されている制度変更は、特定在留カード制度の導入と在留手数料の大幅な値上げを伴い、日本に在留する外国人の方々、そして外国人材を雇用する企業にとって、事業継続性や生活基盤に大きな影響を与えることが予想されます。
この重要な変更にスムーズに対応し、不利益を被らないためには、今からの事前対策と周到な準備が不可欠です。
在留資格更新・ビザ申請のタイミングと注意点
改正法の施行時期が近づくにつれて、現在の在留資格の更新や新たなビザ申請のタイミングは、今後の在留に直結する極めて重要な要素となります。
- 現在の在留期間の確認と早期申請の検討:
まず、ご自身の在留資格の有効期限を正確に把握することが第一歩です。
もし新手数料の適用開始前に有効期限が来る場合は、現行の制度と手数料で申請が可能です。
手数料の大幅な値上げが検討されている(報道)ため、経済的な負担を軽減するためにも、可能であれば施行日よりも十分に余裕をもって申請を済ませることを強く推奨します。
過去の改正時にも、施行日前に受理された申請には旧制度が適用される経過措置が取られた例があり、今回も同様の措置が期待されます。 - 必要書類の準備と申請内容の正確性:
在留資格申請に必要な書類は多岐にわたり、その準備には相当な時間がかかる場合があります。
特に、海外からの取り寄せが必要な書類や、企業側で準備が必要な雇用契約書、活動内容証明、決算書類などは、余裕を持って計画的に準備を始めるべきです。
書類に不備や誤りがあると、審査が遅延したり、最悪の場合は再申請が必要になったりする可能性があります。
提出前には内容を複数回入念に確認し、少しでも不明な点があれば専門家に相談することが、スムーズな手続きに繋がります。 - 避けるべきNG行動:
事実と異なる情報を記載する虚偽申請、在留資格で認められた活動範囲を超えた就労(不法就労)、在留期間を超過して日本に滞在するオーバーステイ(不法滞在)は、厳しく罰せられ、強制退去の対象となる可能性があるため、絶対に避けるべき行為です。
これらの注意点を踏まえ、計画的かつ慎重に申請準備を進めることが、法改正後も安定して日本に在留し続けるための鍵となります。
専門家への相談と情報収集の重要性
今回の制度変更のような複雑な動きに対応し、適切な判断を下すためには、専門家の知見と最新かつ正確な情報の把握が不可欠です。
- 専門家への早期相談:
入管業務を専門とする行政書士は、個別の状況に応じた具体的なアドバイスを提供し、煩雑な申請書類の作成支援、さらには入管庁との専門的なやり取りを代行してくれます。
不明な点や、自身のケースにおける具体的な不安があれば、早めに相談し、専門的なサポートを受けることを強くお勧めします。 - 信頼できる情報源の活用:
法改正に関する最も公式で正確な情報、Q&A、詳細なガイドラインは、出入国在留管理庁の公式サイトに掲載されます。
定期的に確認し、常に最新の正確な情報を入手することが重要です。
また、信頼できる報道機関や専門家サイトの情報も参考になりますが、必ず公式発表と照らし合わせて確認する習慣をつけましょう。 - 相談窓口の活用:
各地域の国際交流センターや、外国人支援団体などが設置している相談窓口も有効な選択肢です。
これらの窓口では、日本語だけでなく多言語での相談に対応している場合も多く、専門家への相談に加えて、気軽に一般的な疑問や不安を解消する場として活用できます。
今後の展望と外国人材受け入れ制度の未来

2026年に向けた入管法関連の制度変更は、日本社会と外国人材受け入れ制度の未来に多大な影響をもたらすことが予測されます。
特に「特定在留カード」制度の導入と在留手数料の大幅な値上げは、外国人材の誘致・定着、ひいては日本の国際競争力や多様性の受容に大きな影響を与えるでしょう。
特定在留カードは、在留管理の効率化と外国人の利便性向上を目指すものですが、その任意取得という性質上、制度の周知徹底と円滑な運用が鍵となります。
もし浸透が不十分な場合、従来の在留カードとの併用が続き、行政手続きの複雑化を招く可能性も指摘されています。
高度人材や特定の技能を持つ外国人の定着を促す一方で、それ以外の在留資格を持つ外国人への影響も注視が必要です。
一方、在留手数料の値上げについては、出入国在留管理行政の財源確保とサービスの質の向上を目的としていますが、外国人材、特に経済的に余裕のない留学生や技能実習生にとっては大きな経済的負担となります。
これにより、日本が外国人材にとって魅力的な選択肢としての競争力を損なう可能性があり、結果として多様な人材の確保が困難になる懸念も存在します。
政府は、費用負担の増加が外国人材の日本離れに繋がらないよう、長期的な視点でのバランスの取れた政策運営が求められます。
政府は、外国人支援団体や専門家との連携を密にし、現場の声に耳を傾け、外国人材が安心して日本で生活し活躍できるような、より良い受け入れ制度の構築に向け、継続的な検討と改善に取り組むべきです。
今回の変更が、真に持続可能で共生社会を実現するための第一歩となるよう、今後の動向が注目されます。