強制送還とは?費用・手続き・再入国の可否まで企業が知っておくべきポイント
外国人雇用が一般化した今、「強制送還(退去強制)」は企業にとっても他人事ではありません。
採用した人材が不法滞在や資格違反などで強制送還となれば、労務トラブルや業務への影響だけでなく、企業側も法的責任を問われるリスクがあります。
本記事では、外国人採用を検討・実施している日本企業の担当者に向けて、「強制送還とは何か」「どのようなケースで起こるのか」「費用や手続きの流れ」「再入国の可否」「企業が取るべき予防策」までをわかりやすく解説します。
制度の全体像を正しく理解し、採用活動やリスク管理に役立ててください。
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Contents
強制送還とは?外国人雇用で必ず押さえるべき基本知識

まずは、「強制送還」という制度の基本から押さえておきましょう。
強制送還(退去強制)と出国命令の違いとは
まず押さえておきたいのは、「強制送還」という言葉の法的な位置づけです。
日本の入管制度では「退去強制」と「出国命令」という2つの制度があり、いずれも不法滞在や違反行為を行った外国人を本国へ帰還させるための手続きです。
- 退去強制(強制送還):不法滞在や犯罪行為などで摘発された外国人を、行政が強制的に本国へ送り返す措置です。
原則として身柄が収容され、審査・令書発付を経て出国が命じられます。 - 出国命令:不法滞在者が自ら出頭し、一定条件を満たした場合に適用される制度です。
収容はされず、自主的に出国することで比較的軽い扱いとなります。
この違いを理解しておくことで、企業として「どのような行為が重大な違反につながるのか」「従業員がどの制度の対象になるか」を見極めやすくなります。
企業が知っておくべき強制送還の主な理由
外国人が強制送還の対象となる理由は、犯罪行為だけではありません。
企業として特に注意すべき典型的なケースを以下に整理します。
1. 不法滞在(オーバーステイ)
在留期限を過ぎて滞在している場合は、不法滞在として退去強制の対象になります。
更新申請の遅れや、在留資格の切り替えミスなど、うっかりしたミスも重大な違反です。
2. ビザの不取得・不更新
就労や留学などの目的に合った在留資格を取得・更新していない場合も対象になります。
特に就労ビザが切れたまま勤務を続けると、本人だけでなく雇用主も罰則を受ける可能性があります。
3. 就労資格違反・資格外活動の超過
留学生が週28時間を超えて働く、認められていない業務に従事するなどの行為も違反に該当します。
現場での業務内容や労働時間の管理が不十分だと、企業にも責任が及ぶ可能性があります。
4. 犯罪行為・虚偽申請
窃盗・暴力などの犯罪行為や、偽造書類による入国・在留も強制送還の対象です。
採用前のバックグラウンドチェックや書類確認が重要です。
強制送還の流れと手続きのポイント
外国人が違反行為をした場合、どのような手続きで強制送還が行われるのかを理解しておくことは非常に重要です。
退去強制手続きの基本ステップ
強制送還の手続きは、通常以下のような流れで進みます。
- 違反行為の発覚・調査:入管や警察による調査で在留資格違反などが判明。
- 収容:退去強制の対象と判断された場合、入国管理局に収容される。
- 審査・令書発付:入管の審査官が違反内容を審査し、退去強制令書が発付される。
- 送還:日本からの出国・帰国が実行される。
出国命令の場合は、自主的な出頭・帰国が条件となり、収容や強制送還令書は発付されません。
企業が注意すべき手続き上のポイント
従業員が摘発・収容された場合、入管から企業へ照会が入ることがあります。
就労契約書や勤務実態の確認が求められるため、普段から書類の整備と管理体制を整えておくことが大切です。
また、企業が不法就労助長罪に問われるケースもあるため、「知らなかった」では済まされない点に注意しましょう。
強制送還にかかる費用と負担の仕組み

強制送還には「費用」の問題もつきものです。
誰がその費用を負担するのか、どのようなケースで国や運送会社が支払うのかを理解しておけば、企業としてもトラブルを防ぎ、対応の準備がしやすくなります。
強制送還費用の3つの負担パターン
強制送還には多くの場合、航空券代や移送費用などのコストが発生します。
その負担は主に次の3つです。
- 自費負担:原則として、強制送還される本人が費用を負担します。
資金が用意できない場合は、収容期間が長期化することもあります。 - 国費負担:本人が支払い能力を持たないと判断された場合、日本政府が費用を肩代わりするケースもあります。
- 運送業者負担:航空会社などが入国拒否や誤搭乗などに関与した場合、その費用を負担することがあります。
企業が関わる可能性と注意点
通常、企業が直接費用を負担することはありませんが、退職処理や帰国手続きの支援など、間接的なコストが発生する場合があります。
トラブルを防ぐためにも、採用時点で「在留資格の有効性」や「滞在期限」を必ず確認し、就労開始後も定期的にチェックすることが重要です。
強制送還後の再入国・上陸拒否期間について

強制送還が行われたあとは、その人が再び日本に入国できるかどうかは気になるところ。
再入国の可否や上陸拒否期間はケースによって異なるため、あらかじめ知っておくことが重要です。
出国命令と強制送還で異なる再入国制限
再入国の可否は、どの制度が適用されたかによって大きく異なります。
- 出国命令の場合:原則として「1年間」は再入国できません。比較的軽い処分とされ、再就労の可能性も残ります。
- 強制送還の場合:初回は「5年間」、再犯や重大な違反がある場合は「10年間」にわたって入国が拒否されます。
再入国が許可されないケースと企業への影響
再入国審査では、違反歴や犯罪歴、過去の在留状況が総合的に判断されます。
再雇用を検討する場合でも、必ずしも入国が許可されるとは限りません。
採用計画や人員体制に影響が出る可能性もあるため、強制送還後の再雇用には慎重な判断が必要です。
企業ができる強制送還の予防・リスク回避策

強制送還の多くは、事前のチェックや社内体制の整備で防げるものです。
企業としてどのような取り組みを行えばリスクを減らせるのか、具体的な対策を紹介します。
採用時・雇用時に行うべきチェック項目
強制送還の多くは、採用段階での確認不足が原因です。以下の点を必ずチェックしましょう。
- 在留カード・パスポートの有効期限、資格内容の確認
- 就労資格証明書・資格外活動許可の有無の確認
- 在留期限のリマインド・管理体制の整備
特に留学生アルバイトなどでは、資格外活動の制限時間超過に注意が必要です。
社内体制・法令順守のポイント
不法就労を防ぐには、現場レベルでの管理体制が欠かせません。
就労時間の記録や業務内容の把握、社内教育の徹底などを通じて、違反行為を未然に防ぐ仕組みを整えましょう。
また、不審な在留カードの提示や本人確認への抵抗などがあった場合は、速やかに入管へ相談する体制も必要です。
もし強制送還が発生した場合の企業対応
従業員が強制送還された場合は、雇用契約の解除や社会保険の手続きなど、社内対応が発生します。
再入国の可能性が低い場合は、早期に採用計画を見直す判断も必要です。
対応を後手に回すと、業務に支障が出たり、法的責任を問われるリスクが高まります。
よくある質問
外国人が強制送還の対象になる主な理由は何ですか?
不法滞在(在留期間超過)、在留資格の不取得・不更新、就労資格違反(資格外活動超過など)、犯罪行為、虚偽申請などが主な理由です。
特に企業が関わるケースでは、ビザの有効期限切れや業務内容の不一致による資格違反が多く見られます。
企業に連絡が来ることはありますか?
従業員が摘発・収容された場合、入管から企業に勤務実態や契約内容の照会が来ることがあります。
雇用契約書・勤怠記録・給与明細などの提出を求められることもあるため、平常時から書類の整備と保管を徹底しておくことが重要です。
強制送還された人は再入国できますか?
再入国制限期間は処分内容によって異なります。
出国命令による帰国の場合は原則1年間、強制送還の場合は初回で5年間、再犯や重大な違反がある場合は10年間入国が拒否されます。
再雇用を検討する際は、この期間を必ず確認する必要があります。
再入国が認められないケースにはどんなものがありますか?
過去の犯罪歴や違反歴、在留資格の不正取得、強制送還の経緯などが重く評価されると、上陸拒否期間が延長されることがあります。
企業が再雇用を希望しても、入国許可が下りない可能性があるため注意が必要です。
企業は強制送還を防ぐために何ができますか?
採用時と雇用中の在留カード確認、在留期間・資格の期限管理、資格外活動許可の有無のチェックを徹底することが基本です。
社内でリマインダーを設定し、更新忘れや超過労働が起きないように体制を整備しましょう。
また、不審な点があれば入管や専門家に早めに相談することも有効です。
強制送還が発生した場合、企業はどのように対応すべきですか?
対象者が強制送還となった場合、雇用契約の解除、社会保険・税務関連の手続き、退職証明の発行などを速やかに行います。
再入国が困難なケースが多いため、欠員補充や業務体制の見直しを早期に検討することが求められます。
不法就労を防ぐために社内で整備すべき体制は?
在留カードと資格内容のチェック体制、雇用管理台帳の作成、現場管理者への教育、就労時間の把握が必須です。
また、資格内容に沿った業務設計を行い、配置転換や長時間労働で資格違反とならないよう留意しましょう。
採用前に確認すべき具体的な書類は何ですか?
在留カード、パスポート、在留資格認定証明書、就労資格証明書、資格外活動許可書などです。
偽造や期限切れがないかを確認し、コピーを社内で保管しておくことを推奨します。
強制送還の対象となった場合、企業に罰則はありますか?
企業が在留資格を確認せずに外国人を雇用していた場合、「不法就労助長罪」に問われることがあります。
罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金で、法人・個人の双方が対象です。
法令遵守の徹底が不可欠です。
強制送還を防ぐために企業が相談できる窓口はありますか?
出入国在留管理庁の「外国人在留総合インフォメーションセンター」や「外国人在留支援センター(FRESC)」で、外国人雇用や在留資格に関する相談が可能です。
トラブル発生前に、制度や対応策を確認しておくと安心です。
まとめ
外国人雇用において「強制送還」は、決して珍しい出来事ではありません。
制度の仕組みや費用、再入国制限を理解していないと、企業にとっても大きな損失につながる可能性があります。
採用時の確認・在留資格の管理・社内体制の整備を徹底し、リスクを最小限に抑えることが、外国人雇用の成功への第一歩です。
正しい知識と対応策を持ち、企業と外国人双方にとって安心できる就労環境をつくっていきましょう。