高度専門職1号とは?ビザの取得条件や優遇措置、永住権について解説
「高度専門職」の在留資格は「高度人材ビザ」とも呼ばれ、2015年4月1日に新設されました。近年、日本では少子高齢化による人材不足が深刻化し、外国人材の受け入れ拡大が喫緊の課題となっています。そこで政府は、国策として高度外国人材の受け入れ拡大を推進すべく、ポイント制による「優遇措置」を設けたのです。制度の確立とともに、人手不足に悩む企業では、イノベーションの原動力となる優秀な外国人材の獲得に目を向け始めています。
本記事では、外国人採用に携わる人事担当者の方々に向けて、「高度専門職1号」の在留資格について分かりやすく解説していきます。高度外国人材の受け入れを検討されている企業様は、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
高度専門職1号の在留資格(就労ビザ)とは?
「高度専門職」の在留資格には「高度専門職1号」と「高度専門職2号」があります。高度外国人材として、初めて日本で就労する場合は「高度専門職1号」を取得しなければなりません。また、「高度専門職1号」は活動内容によって「イ・ロ・ハ」の3種類に分けられています。
活動内容 | 在留資格 | 説明 | 例 |
---|---|---|---|
高度学術研究活動 | 高度専門職1号(イ) | 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動 | 大学教授や研究者など |
高度専門・技術活動 | 高度専門職1号(ロ) | 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動 | 化学・生物学・心理学・社会学などの研究者 |
高度経営・管理活動 | 高度専門職1号(ハ) | 本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動 | 経営者・役員など |
高度専門職1号の取得要件
「高度専門職1号」の在留資格を取得するには、「出入国在留管理庁」による審査で高度外国人材の認定を受けねばなりません。これから入国を予定している外国人の場合は、受け入れ機関側で申請することも可能です。審査では、高度外国人材が希望する活動や「学歴」「職歴」「年収」「年齢」などに応じ、「高度人材ポイント制」で規定された計算表に基づき厳正に評価されます。
高度専門職1号の取得要件
高度専門職1号の主な取得要件は以下の3つです。
- 「高度専門職1号(イ・ロ・ハ)」の活動を行う
- 高度人材ポイント制に基づくポイント合計が70点以上に達している
- 在留状況に問題がなく善良である(すでに日本に滞在している場合)
企業の人事担当者としては、高度外国人材の採用を検討する際に、学歴や職歴、年収などの条件を見極めることが重要です。高度人材ポイント制の基準をクリアしているかどうかを確認し、「高度専門職1号」の在留資格が取得できるかどうかを見極めましょう。優秀な人材を見逃さないためにも、ポイント制の仕組みをしっかりと理解しておくことが大切です。
高度人材ポイント制の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
▶︎ 外国人の高度人材ポイント制って?ポイント計算表、優遇措置も紹介
高度専門職1号の在留資格取得を目指す外国人の方や、高度外国人材の雇用を検討している企業の方は、以下の記事も参考にしてください。
▶︎ 高度人材(高度専門職)のビザ申請手続きの流れと申請書類を解説!
高度専門職1号の優遇措置
高度外国人材として「高度専門職1号」の在留資格を取得した場合、出入国在留管理上のさまざまな優遇措置が受けられます。そのため、これまで「高度専門職1号」の要件を満たしながら、他の在留資格で就労していた方は「高度専門職1号」への変更がおすすめです。企業にとっても、優秀な外国人材を長期的に活用できるメリットがあります。
それでは、高度専門職1号の主な優遇措置を見ていきましょう。
1. 複合的な在留活動の許容
通常、外国人は1つの在留資格で認められた活動のみ行えるのに対し、高度外国人材は複数の在留資格にまたがる活動も可能となります。例えば、研究者として大学に勤務しながら、専門分野に関するコンサルティング業務に従事するなど、より幅広い活躍の場が与えられるのです。
2. 在留期間「5年」の付与
高度外国人材には、最長5年の在留期間が付与され、更新も可能となります。一般の外国人労働者の在留期間が通常3年であることを考えると、高度外国人材の方が長期的に活躍できる環境が整っていると言えるでしょう。企業にとっても、優秀な人材を長く確保できるメリットがあります。
3. 在留歴に係る永住許可要件の緩和
永住許可は原則として「日本在留継続10年以上」が必要ですが、高度外国人材は下記の要件を満たせば大幅に緩和されます。
- 高度外国人材として継続3年間の活動がある場合
- 高度外国人材としてポイント80点以上を得た上、高度外国人材としてさらに1年間継続して活動
一般の外国人と比べ、はるかに早いスピードで永住権の取得が可能となるのです。
4. 配偶者の就労
高度外国人材の配偶者は、通常必要な学歴や職歴の一定要件を満たしていなくても、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などに該当する業務に従事することが可能です。配偶者の就労が認められることで、家族で安心して日本で暮らせる環境が整うでしょう。
5. 一定の条件の下での親の帯同
高度外国人材又はその配偶者は、下記の条件下でいずれかの親の入国・在留が可能となります。ただし、高度外国人材の世帯年収が800万円以上かつ、同居することが必須要件です。
- 高度外国人材又はその配偶者の子(7歳未満)の養育
- 妊娠中の高度外国人材本人又はその配偶者の介助
家族で日本での生活を始められることは、高度外国人材にとって大きな魅力となるはずです。
6. 一定の条件の下での家事使用人の帯同
以下の要件を満たした高度外国人材は、家事使用人の帯同が可能です。
■入国帯同型(外国で雇用していた家事使用人の継続雇用)
- 世帯年収が1,000万円以上
- 帯同できる家事使用人は1名まで
- 家事使用人への給料が月額20万円以上であること
- 高度外国人材と一緒に日本へ入国する場合は、帯同する家事使用人が日本入国前に1年以上その高度外国人材に雇用されていた者であること
- 高度外国人材が先に日本に入国する場合は、帯同する家事使用人が日本入国前に1年以上その高度外国人材に雇用され、かつ、その高度外国人材が日本へ入国後、引き続きその高度外国人材又はその高度外国人材が日本入国前に同居していた親族に雇用されている者であること
- 高度外国人材が日本から出国する場合、一緒に出国することが予定されていること
■家庭事情型(入国帯同型以外の家事使用人の雇用)
- 世帯年収が1,000万円以上
- 帯同できる家事使用人は1名まで
- 家事使用人への給料が月額20万円以上予定されていること
- 家庭の事情(申請時点で、13歳未満の子供がいる、または病気などで日常の家事ができない配偶者がいる)が存在すること
家事使用人の帯同が可能となることで、高度外国人材は家事の負担を軽減でき、仕事に専念しやすくなります。特に子育て中の方や介護が必要な方にとっては、心強い支援策と言えるでしょう。
さらに、高度外国人材は入国・在留手続きの優先処理も受けられます。
- 入国事前審査の目処 申請受理から10日以内
- 在留審査の目処 申請受理から5日以内
スムーズな入国・在留手続きが可能となることで、迅速に日本での生活や仕事をスタートできます。
参考:どのような優遇措置が受けられる? | 出入国在留管理庁
高度専門職1号は永住権取得への近道
一般的に、日本で永住権を取得するには「日本に10年以上継続して在留」していることが要件とされています。しかし、高度外国人材として「高度専門職」の在留資格を有する場合は、永住許可要件が大幅に緩和されるのです。
具体的には、「高度専門職」として3年間継続して活動した実績がある場合や、高度人材ポイント制で80点以上を取得し、さらに1年間活動を継続している「特に高度な外国人材」である場合は、早ければ3年~4年程度で永住許可を得られる可能性があります。
また、永住許可申請の審査期間についても、通常は6ヶ月から1年近くかかるところ、「高度専門職」は2週間から1ヶ月程度と大幅に短縮されます。
このように、「高度専門職1号」からスタートすることが、日本での永住権取得への近道となります。企業としても、優秀な人材を長期的に確保できるメリットがあるため、高度外国人材の採用を検討する際は、永住権取得の可能性も視野に入れておくとよいでしょう。
まとめ
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、高度な知識やスキルを持つ外国人材の受け入れが拡大しています。「高度専門職1号」の在留資格は、研究・教育・経営など幅広い分野で活躍できる優秀な人材に付与され、最長5年の在留期間と更新の可能性があります。
また、永住許可要件の緩和や家族の帯同、家事使用人の雇用など、高度外国人材が日本で快適に暮らせる環境が整備されています。グローバル化が進む現代において、「高度専門職1号」の外国人材の活用は、日本企業の国際競争力強化につながるでしょう。
外国人雇用を検討している企業様は、「高度専門職1号」の仕組みを理解し、優秀な人材の獲得に役立ててください。日本の未来を担う高度外国人材を積極的に採用していきましょう。
なお、「高度専門職1号」よりもさらに高い専門性を持つ外国人材を対象とした「高度専門職2号」の在留資格もあります。より優遇された措置が受けられる「高度専門職2号」について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。
▶︎ 高度専門職2号とは?ビザの申請要件や優遇措置などゼロから徹底解説