不法就労助長罪の対策とは?企業が知るべき罰則・厳罰化の内容と防止ポイント
人手不足を背景に、外国人採用を検討・実施する企業も増えていますが、その一方で、不法就労の問題も引き続き発生しています。不法就労は、働く外国人本人だけでなく、雇用した企業側も罰則の対象となる可能性がある点には注意が必要です。
この記事では、不法就労助長罪の基本的な内容や罰則、厳罰化の動きに加え、企業が押さえておくべき法的義務や実務上の対策について解説します。
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不法就労については以下の記事をチェックしてみてください。
▶ 不法就労とは?3つの主なケースと企業が知っておくべき罰則・防止策を解説
Contents
不法就労者は近年増加傾向にある

外国人の不法就労や不法残留は、いまも身近な問題のひとつです。法務省が2024年に公表した統計によると、日本に滞在する不法残留者は7万7,935人にのぼりました。
また、不法就労を理由に退去強制手続きが取られた外国人は1万8,908人で、そのうち1万4,453人について不法就労の事実が確認されています。
特に、外国人労働者数が増加している近年では、企業側の確認不足や認識のズレによって、不法就労に該当してしまうリスクも高まっています。
不法就労というと、悪質なブローカーや本人の故意を想像しがちですが、実際には
- 在留資格で認められていない業務を任せてしまった
- 在留期限の更新を見落としていた
といった、企業側の管理不足が原因となるケースも少なくありません。
外国人採用を進める企業にとっては、「自社は大丈夫だろう」と考えるのではなく、不法就労が身近に起こり得るリスクであることを前提に、適切な対策を講じることが重要です。
参考:本邦における不法残留者数について(令和6年7月1日現在)
不法就労に当てはまる4パターンと回避策は?

外国人が日本で入国・在留・就労するには、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」を守る必要があります。
ここでは、不法就労に該当する代表的な4つのケースを見ていきましょう。
1. 不法入国者
在留資格を持たずに日本に入国しているケースです。
事業主が意図せず雇用する可能性は低いものの、原則として雇用は認められません。
2. 不法滞在者(オーバーステイなど)
在留期限を超えて日本に滞在しているケースです。
在留カードやパスポートを確認すれば、在留期限はすぐに把握できます。
3. 就労資格がなく、資格外活動許可も得ていないまま働くケース
就労が認められていない在留資格で働き、かつ資格外活動許可もない場合は不法就労となります。
資格外活動許可の有無は、在留カードの記載で確認可能です。
4. 在留資格で認められていない業務で収入を得るケース
企業にとって最も注意が必要なのがこのケースです。
在留資格ごとに、従事できる業務内容は明確に定められており、その範囲を超えた業務に従事させた場合、本人だけでなく企業側も不法就労助長罪の対象となります。
不法就労助長罪とは?企業にも科される罰則

不法就労は、外国人労働者本人だけの問題ではありません。不法就労をさせた、または助長した企業・事業主には、不法就労助長罪が適用されます。
雇用主は、外国人を採用する際に在留カードやパスポートを確認し、在留資格や在留期間を把握する義務があります。そのため、「知らなかった」という言い訳は通用しません。
不法就労助長罪(入管法第73条の2)
働くことが認められていない外国人を雇用した事業主、または不法就労をあっせんした者
罰則
- 3年以下の懲役
- 300万円以下の罰金
- またはその併科
過失があった場合でも処罰対象となり、法人に対しても罰金刑が科される可能性があります。
不法就労助長罪の厳罰化はいつから?

不法就労助長罪については、外国人雇用を取り巻く環境の変化を背景に、罰則の厳罰化が進められています。2024年6月14日に出入国管理及び難民認定法(入管法)が改正され、技能実習制度の廃止に伴い、新たに「育成就労制度」が創設されることが決まりました。
この法改正では、適正な外国人雇用の確保と制度の信頼性向上を目的として、不法就労助長罪の罰則も強化。具体的には、これまで「3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科)」とされていた罰則が、2025年6月の施行以降は、「5年以下の懲役または500万円以下の罰金(または併科)」へと引き上げられます。
この厳罰化により、外国人労働者を雇用する企業には、これまで以上に在留資格や業務内容の確認を徹底する姿勢が求められるようになっています。
企業に求められる法的義務とは?

外国人を雇用する企業には、不法就労助長罪を防ぐため、法令に基づいた確認や届出の義務があります。
雇用前の身分・在留資格の確認
外国人を雇用する際は、在留カードやパスポートの提示を求め、以下の点を確認しなければなりません。
- 在留資格
- 在留期間・在留期限
- 資格外活動許可の有無
一般業種では入管法、風俗営業では風営法に基づき、確認義務や記録保存義務が定められています。
外国人雇用状況の届出
外国人労働者(外交・公用・特別永住者を除く)を雇用・離職した場合、事業主はハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う義務があります。
届出を怠った場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
不法就労助長罪を防ぐために企業ができる対策

不法就労助長罪を防ぐために、以下のポイントを押さえて不法就労を防ぎましょう。
1. 就労できる業務範囲を正しく守る
外国人労働者を雇用している事業所は全国で26万ヶ所以上ありますが、
中には業務範囲の認識不足から不法就労に該当してしまうケースも見られます。
例えば、調理スタッフとして雇用している外国人に、
人手不足を理由にホール業務やレジ対応を任せてしまうと、不法就労になる可能性があります。
「少しだけ」「このくらいなら」といった判断が、大きなリスクにつながる点には注意が必要です。
2. 採用時・雇用中の在留カード確認を徹底する
不法就労助長罪があるからといって、外国人採用を避ける必要はありません。
重要なのは、正しい確認を確実に行うことです。
採用時だけでなく、在留期限の更新タイミングなども含めて、在留カードの確認を徹底しましょう。万が一、不法就労の疑いがある場合は、出入国在留管理庁への相談・通報も検討する必要があります。
そして、不法就労の疑いがある場合には、出入国在留管理庁へ相談するなど、状況に応じた適切な対応を検討しましょう。

まとめ
外国人労働者の増加に伴い、不法就労助長罪によって企業側にも厳しい責任が求められる時代になっています。
特に、日本企業にありがちな「柔軟な業務の割り振り」は、不法就労につながりやすい点として注意が必要です。
- 在留資格ごとの業務範囲を守る
- 雇用前後の確認・届出を怠らない
これらの基本を押さえていれば、過度に恐れる必要はありません。正しい知識と対策をもって、安心して外国人採用を進めていきましょう。