雇用側にも罰則?!知らないと怖い不法就労助長罪とその回避策とは
外国人の流入が増えるに従い、日本で働く外国人労働者数も2023年には過去最高の200万人を超えました。人手不足から国内の人材を確保することが難しくなり、外国人採用で活路を見出そうとしている企業は少なくありません。ところが、外国人労働者が増えたことで、不法就労も増加しています。外国人の不法就労は雇用主にも罰則が課されるため、知らなかったでは済まされません。外国人採用を進めるのであれば、不法就労に係る罰則は必ず押さえておきましょう。
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不法就労の通報については以下の記事をチェックしてみてください。
▶︎ 不法就労防止に努めよう|通報は地方出入国在留管理局へ
Contents
不法就労者は近年増加傾向にある
外国人の不法就労者は近年増加傾向にあります。2022年中に「出入国管理及び難民認定法(入管法)」違反で退去強制手続きを執られた外国人の総数は10,300人でした。その中で実際に送還された外国人は4,795人にも上ります。
国籍・地域別 退去強制令書により送還された人員
国籍・地域 | 2018年 | 2022年 |
総数 | 10086人 | 4795人 |
ベトナム | 3035人 | 2014人 |
中国 | 3112人 | 784人 |
タイ | 1868人 | 448人 |
インドネシア | 594人 | 238人 |
フィリピン | 660人 | 321人 |
韓国 | 169人 | 74人 |
ネパール | 71人 | 172人 |
モンゴル | 117人 | 39人 |
スリランカ | 42人 | 122人 |
ウズベキスタン | 35人 | 48人 |
不法就労に当てはまる4パターンと回避策は?
外国人が日本に入国・在留する場合、「出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)」に従っわなければなりません。ここでは、不法就労として入管法に触れる4つのパターンを見てみましょう。
1. 不法入国者
在留資格を持っていないため、事業主が雇用するケースはほぼありません。
2. 不法滞在者(オーバーステイ等)
在留カードやパスポートを確認すれば、在留期限がすぐに判明します。
3. 就労資格が無く、資格外活動許可も得ていないにも関わらず就労して収入を得る
資格外活動許可があるかは在留カードを見ればすぐに判明します。
4. 在留資格で認められていない活動で収入を得る
雇用主にとって最も難しいのがこのパターンです。在留資格で認められている就労には、従事できる業務の範囲が定められています。つまり、定められた範囲外の業務を行うことは不法就労に当たるのです。
不法就労助長罪で雇用主にも罰則が課せられる
不法就労は外国人労働者本人が罰せられるだけではありません。雇用主に対しても「不法就労助長罪」により罰則が課せられます。雇用主は外国人労働者を雇用する際に、在留カードやパスポートで、在留資格や在留期限等を確認することが義務付けられているため、「知らなかった」では済まされないのです。
外国人労働者を雇用した後に不法就労と判明した場合、「不法就労助長罪」での処罰は免れません。したがって、雇用時の在留資格等の確認は十分に行う必要があります。
不法就労助長罪の規定
不法就労助長罪(入管法第73条の2) |
働くことが認められていない外国人を雇用した事業主や、不法就労をあっせんした者 |
罰則 |
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科 外国人の雇用時に、当該外国人が不法就労者であることを知らなくても、在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は処罰の対象となります。又、その行為者を罰するだけではなく、その法人、雇用主等に対しても罰金刑が科せられます。 |
雇用主に義務づけられていること
雇用前の身分確認 |
■一般業務・出入国管理及び難民認定法 第73条の2 外国人を雇用する際は、在留カード、旅券(パスポート)の提示を求め、在留資格・期間、在留期限、資格外活動許可の有無等を確認するなどして、雇用することができる外国人であるかを確認してください。 ・罰則 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科 ■風俗営業・風俗営業の規則及び業務の適正化等に関する法律 第36条の2 接待飲食等の営業を営む風俗営業者等は、その業務に関し、客に接する業務に従事させようとする者の生年月日、国籍及び、日本国籍を有しない者については、在留資格、在留期間、資格外活動許可の有無等を確認し、確認の記録を作成・保存しなければなりません。 ・罰則 100万円以下の罰金 |
外国人雇用状況の届出 |
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第28条 全ての事業主は、外国人労働者(在留資格「外交」及び「公用」並びに「特別永住者」を除く。)の雇用又は離職の際に、その外国人の氏名、在留資格、在留期間等について厚生労働大臣(ハローワーク)への届出が義務付けられています。 ・罰則 30万円以下の罰金 |
不法就労を回避するためのポイント
不法就労は雇用側にも注意義務があります 。下記の2つの点に注意して、不法就労を回避しましょう。
1. 就労できる業務の範囲を守る
外国人労働者を雇用している事業所は全国で267,243ヶ所あります。多くの企業で外国人労働者を雇用していますが、中には不法就労に当たるケースも少なくありません。例えば、調理スタッフとして働いていても、人手が足りない場合はホールやレジに回ることがあります。これを外国人労働者に行わせた場合は、不法就労となるので注意が必要です。
日本では未だにジョブ型雇用の概念が希薄で、知らず知らずのうちに「この仕事もお願い」と頼む場面が多く見られます。「このくらいいいだろう」との安易な気持ちが重大な結果を生むため、雇用時の注意点としてよく覚えておきましょう。
2. 採用する際に在留カードを確認する
「不法就労助長罪」があることで、雇用主も知らなかったでは済まされません。だからといって外国人採用に及び腰になる必要はないのです。
ここでご紹介する在留カードの確認方法を、雇用時の注意点として把握しておけばトラブル回避につながります。是非下図を参考に実践してみてください。
そして、不法就労者に遭遇した場合は出入国在留管理庁へ通報するか、本人に出頭を促しましょう。
まとめ
年々増加する外国人の不法就労は、「不法就労助長罪」によって雇用主にも罰則が課されます。それにも関わらず、何が不法就労に当てはまるのかを理解していない雇用主は少なくありません。日本企業に多くみられる「安易な仕事の割り振り」は、雇用時の注意点として必ず押さえておきましょう。外国人労働者には、定められた業務内容以外の仕事をさせてはいけません。また、雇用前の確認や届出等を行い雇用主の義務を果たしましょう。知らなければ怖い罰則ですが、義務を果たしていれば恐れる必要はないのです。