在留資格が取り消されるケースは?取消事由や取り消しの流れも紹介
日本で生活する外国人の方は、何らかの在留資格を持っていることが必要不可欠です。しかし、場合によっては、その在留資格が取り消されてしまうことがあります。特に、外国人労働者を雇用している企業にとっては、在留資格の取消事由について理解を深めておくことが大切です。今回は、在留資格が取り消される具体的なケースや、取消しのプロセスについて詳しく解説します。在留資格に関する知識を深めたい方は、ぜひ最後までお読みください
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在留資格の取り消しは制度化されている
在留資格の取消しは、入管法第22条の4により制度化されています。この制度は、外国人が日本の在留資格を取り消される制度のことを指します。在留資格が取り消される理由としては、本来の在留資格に該当しない活動を行ったり、不正行為をして入国した場合、住所届の手続きを一定期間怠った場合などが挙げられます。在留資格が取り消された場合、強制的に国外退去となるか、一定期間内に自主的に出国しなければなりません。在留資格の取消しは、外国人の方にとって大きな影響を与える制度だと言えるでしょう。
在留資格の取消件数は年々増加傾向に
近年、在留資格の取消件数は増加傾向にあります。令和5年の在留資格取消件数は1,240件に上り、前年の1,125件から10.2%増加し、過去最多を更新しました。
在留資格別に見ると、「技能実習」が983件(79.3%)と最も多く、次いで「留学」が183件(14.8%)、「技術・人文知識・国際業務」が32件(2.6%)となっています。
国籍・地域別では、ベトナムが812件(65.5%)で最多、次いで中国(香港及びマカオを含む)が220件(17.7%)、インドネシアが57件(4.6%)と続きます。
取消事由の内訳を見ると、出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項第6号が1,049件(84.5%)と最も多く、次いで同項第5号が128件(10.3%)、同項第2号が42件(3.4%)となっています(注2)。
在留資格の取り消しは、技能実習生や留学生を中心に、年々増加傾向にあると言えます。外国人を雇用する企業は、在留資格の適切な管理により一層注意を払う必要があるでしょう。
在留資格が取り消されるケース(取消事由)とは?
それでは、具体的にどのような場合に在留資格が取り消されるのでしょうか。入管法第22条の4に定められている取消事由について解説します。
1. 不正行為を行い入国を行った場合
まず1つ目は、入国審査の際に不正行為を働いて入国許可を得た場合です。例えば、入国審査官に虚偽の書類を提出したり、日本での活動内容について嘘の申告をしたりして入国した場合などが該当します。不正な手段で在留資格を得ても、のちのち取り消される可能性が高いということを肝に銘じる必要があります。
2. 在留資格で認められていない事項の活動を行った場合
2つ目は、与えられた在留資格の範囲外の活動を行った場合です。在留資格には、それぞれ認められた活動内容が定められています。その活動を行わず、他の事項の活動を3か月以上継続して行った場合は、在留資格取消の対象となります。在留資格の範囲内で活動することが求められるのです。
3. 日本人または永住を認められた外国人の配偶者でなくなった場合
3つ目は、「日本人の配偶者」や「永住者の配偶者」としての在留資格を持つ外国人が、配偶者としての活動を行わなくなってから6か月以上経過した場合です。ただし、配偶者と離れて暮らさざるを得ない正当な理由がある場合は、在留資格は取り消されません。単に夫婦関係が破綻しただけで、すぐに在留資格がなくなるわけではないのです。
4. 居住地の届け出を行わなかった場合
最後に4つ目は、住居地の届出を怠った場合です。中長期在留者となった外国人は、入国から90日以内に居住地の届出をしなければなりません。また引っ越しをした際も、90日以内に変更の届出が必要です。この届出を正当な理由なく怠ると、在留資格の取消しとなる可能性があります。虚偽の住所を届け出た場合も同様です。
参考:在留資格の取消し(入管法第22条の4)|出入国在留管理庁
以上の4つが主な在留資格の取消事由です。中でも「2. 在留資格で認められていない事項の活動を行った場合」は、外国人労働者を雇用する企業にとって特に注意が必要な点だと言えるでしょう。与えた在留資格の範囲内で、適切に外国人労働者を働かせることが求められます。
在留資格が取り消される場合の流れは?
在留資格が取り消される際には、一定の手続きを経る必要があります。ここでは、在留資格の取消プロセスについて解説しましょう。
入国審査官による意見の聴取
在留資格の取消しの可能性がある外国人が確認された場合、まず入国審査官による意見聴取が行われます。外国人の方は、この際に以下のような権利を持っています。
・意見を述べること
・証拠となる資料を提出したり、関連書類の閲覧を求めること
意見聴取は、外国人の方に弁明の機会を与えるための重要なプロセスです。指摘された事項について、きちんと説明することが求められます。
強制退去などの措置
意見聴取の結果、在留資格を取り消すことが妥当だと判断された場合、次のような措置がとられます。
取消事由が「1.不正行為を行い入国を行った場合」に該当する場合は、即座に強制退去の対象となります。不正入国は重大な違反行為だと見なされるためです。
一方、その他の取消事由(在留資格外活動、配偶者の要件喪失、居住地届出の懈怠)の場合は、原則として30日以内に自主的な出国が求められます。この猶予期間内に出国しない場合は、強制退去や刑事罰の対象となります。
参考:在留資格の取消し(入管法第22条の4)|出入国在留管理庁
在留資格の取消しは、外国人の方の日本での生活に大きな影響を与えます。取消事由に該当しないよう、入管法を順守した生活を心がけることが大切です。
在留資格に関するより詳しい情報は、以下の記事もご参照ください。
▶︎ 在留期間とは?外国人採用に必須の在留資格と在留期間の基礎知識
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は在留資格の取消制度について、取消事由と取消プロセスを中心に解説しました。在留資格の取消件数は年々増加しており、令和5年には過去最多に上っています。不正入国、在留資格外活動、配偶者要件の喪失、居住地届出の懈怠など、様々な取消事由があることを理解しておきましょう。
特に、外国人労働者を雇用する企業は、在留資格の取り扱いには細心の注意を払う必要があります。労働者を適切な在留資格の下で雇用し、入管法令を順守することが求められます。在留資格の取消しは、労働者本人だけでなく、企業の信用にも関わる重大な問題だと言えるでしょう。
外国人の方も企業の方も、在留資格制度について正しい知識を持つことが大切です。今回の記事が、在留資格への理解を深めるための一助となれば幸いです。