特定技能2号の対象分野が拡大するのはいつから?人数推移や要件も解説

日本の深刻な人手不足を背景に、特定技能制度は企業が重要な外国人材を確保するための手段となっています。

特に特定技能2号は、熟練した技能を持つ外国人材にに付与される在留資格です。

また、外国人を長期的に雇用できる制度として期待されており、2023年から対象分野が大幅に拡大されました。

本記事では、特定技能2号の対象分野拡大の詳細や実施時期、人数推移、取得の要件について解説します。

【再確認!】特定技能とは

特定技能制度は、一定の専門性・技能を持ち即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。

これは、人材確保のための取り組みを行っているのにも関わらず、人材を確保することが困難である産業分野において実施されています。

特定技能は、特定技能1号と特定技能2号の2つに分かれており、1号は相当程度の知識または経験を要する技能、2号は熟練した技能が求められます。

1号の在留期間は通算5年が上限となっている一方、2号は更新に回数制限がなく、実質的に永続的な在留が可能です。

また、2号取得者は家族の帯同も認められており、日本で長期的なキャリアを築くことができる制度です。

特定技能2号の対象分野が拡大するのはいつから?

最初は2分野のみが対象とされていた特定技能2号は、2023年から本格的に分野の拡大が行われています。

特定技能2号だけでなく、特定技能1号においても対象の分野が拡大されており、運用方針の変更も行われています。

もともとは2分野のみ対象

特定技能2号は2019年の制度開始当初、2分野のみ(建設と造船・舶用工業)が対象とされていました。

これらの分野は技能実習制度からの移行を想定した制度設計となっており、熟練技能者の確保が特に重要視される分野として選定されました。

しかし、他の分野からも特定技能2号への拡大を求める声が高まり、政府は対象分野の拡大について検討を進めることとなりました。

対象拡大は2023年から

2023年6月9日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」において、特定技能2号の対象分野を大幅に拡大することが決定されました。

この決定により、従来の2分野から11分野へと対象が拡大され、多くの業界で熟練外国人材の長期的な雇用が可能となりました。

特定技能2号対象分野(2023年拡大分野)

分野詳細
ビルクリーニング建築物内部の清掃業務
工業製品製造業機械や電気電子情報関連産業などでの製造業務
自動車整備自動車の点検や整備・修理業務
航空空港グランドハンドリング、航空機整備業務
宿泊ホテルや旅館などでの宿泊サービス業務
農業耕種農業、畜産農業での各種農作業
漁業漁船漁業、養殖業での漁業関連業務
飲食料品製造業食品製造業での製造・加工・安全衛生業務
外食業飲食店での調理・接客・店舗管理業務

これらの分野では、特定技能1号で5年間の経験を積んだ外国人が、より高度な技能を身につけて2号へ移行することが期待されています。

特に製造業や農業分野では、技術革新に伴う高度化により熟練技能者のニーズが高まっており、2号制度の拡大は業界からも歓迎されています。

また、造船・舶用工業分野において溶接区分を除いた業務区分を新たに特定技能2号の対象とすることが決定されました。

特定技能1号も対象分野が拡大

特定技能制度全体の拡充として、1号についても新たに4分野が追加されました。

特定技能1号新規追加分野

分野主な業務内容
自動車運送業トラック運転やバス運転などの運送業務
鉄道鉄道の運転、保守や整備業務
林業植林や育林、伐採などの林業関連業務
木材産業製材や木製品製造などの木材加工業務

また、既存の3分野についても業務範囲が拡大されました。

工業製品製造業

素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業から、工業製品製造業へと名称が変更されました。

また、7つの業務区分(紙器・段ボール箱製造、コンクリート製品製造、陶磁器製品製造、紡織製品製造、縫製、RPF製造、印刷・製本)が追加されました。

令和6年9月30日付で告示が改正され、鉄鋼やアルミサッシ、プラスチック製品、金属製品塗装、こん包関連の事業所、そして新たに追加された7つの業務区分でも受け入れができるようになりました。

造船・舶用工業分野

6業務区分を3区分に再編することと業務区分における作業範囲の拡大が行われ、造船・舶用工業に関わる各種作業が業務区分に追加されました。

飲食料品製造業分野

令和6年7月23日に上乗せ基準告示の改正が行われました。

この結果、特定技能外国人の受入れが認められる事業所が追加されました。

また、食料品スーパーマーケット・総合スーパーマーケットの食料品部門における惣菜などの製造も可能となりました。

2025年から3分野で運用方針を変更

2025年度からは以下3分野において、特定技能制度の運用方針に重要な変更が予定されています。

介護分野

介護分野では、改正後から特定技能外国人が訪問系サービスへ従事できるようになります。

しかし、介護職員初任者研修課程などの義務を修了していることや介護事業所などでの1年以上の実務経験などを有する特定技能外国人のみに限定されています。

工業製品製造業分野

工業製品製造業分野では、特定技能外国人を適正かつ円滑に受け入れるため民間団体を設立することが決定されました。

また、受け入れ機関は当該団体への加入を条件としています。

外食業分野

外食業分野では、風営法の許可を受けた旅館やホテルにおける特定技能外国人の飲食提供の多くに係る就労が認められます。

これは、インバウンドが急激に回復していることが背景となっています。

特定技能2号では介護分野は対象外

特定技能2号の対象分野拡大において、介護分野は対象から除外されています。

介護分野で長期的な就労を希望する外国人については、介護福祉士の国家資格の取得による「介護」の在留資格への変更が推奨されています。

介護福祉士資格を取得すれば、特定技能2号と同様に在留期間の更新制限がなく、家族の帯同も可能です。

特定技能2号の人数も増加中

特定技能2号の対象分野の拡大により、特定技能2号の人数が急速に増加しています。

分野別の割合も変化しており、さまざまな分野で特定技能外国人が活躍しています。

令和6年6月末と令和6年12月末では、およそ5.4倍

引用:出入国在留管理庁 【第1表】国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能2号在留外国人数

引用:出入国在留管理庁 【第1表】国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能2号在留外国人数

特定技能2号の対象分野の拡大により、特定技能2号の取得者数は急激な増加を見せています。

法務省の統計によると、令和6年6月末時点での特定技能2号の在留者数は153人でしたが、同年12月末には832人となり、わずか6か月間でおよそ5.4倍となりました。

この急激な増加は、2023年の特定技能2号の対象分野の拡大の効果が本格的に現れ始めたことを示しています。

特に製造業分野や農業分野での取得者数が多く、企業の積極的な採用姿勢をうかがうことができます。

分野別の割合も変化

引用:出入国在留管理庁 【第1-1図】特定産業分野別割合

引用:出入国在留管理庁 【第1-1図】特定産業分野別割合

分野別の構成比についても大きな変化が見られます。

令和6年6月末時点では建設分野と造船・舶用工業分野が大部分を占めていましたが、新規追加分野の取得者が増加したことで、令和6年12月末時点ではより多様な分野での構成となっています。

製造業関連分野の人数の増加が特に顕著であり、これは日本の製造業界における熟練外国人材の高いニーズを反映しています。

農業分野の割合も着実に増加しており、地方部での外国人材の活用が進んでいることがわかります。

特定技能2号の取得要件

特定技能2号を取得するためには、外国人本人が満たすべき要件が多くあります。

企業側も知っておくべき基準であるため、確認しましょう。

18歳以上であること

特定技能2号の申請時点で、申請者は18歳以上である必要があります。

これは就労ビザとしての性格上、成人としての責任能力を求める観点から設定されています。

年齢の証明は、旅券などの公的な書類で行われます。

健康状態が良好であること

外国人本人は、業務に支障をきたさない健康状態であることが求められます。

具体的には、健康診断書の提出が必要であり、結核などの感染症にかかっていないこと、業務の遂行に必要な身体機能を有していることなどが確認されます。

健康診断は指定医療機関での受診が必要で、診断書は申請前3か月以内に発行されたものでなければなりません。

業務に必要な熟練した技能を有していること

これは、特定技能2号の取得において最も重要な要件です。

各分野で定められた技能水準に達していることを、技能検定試験や実務経験により証明する必要があります。

一般的には特定技能1号での5年間の就労経験、または技能実習2号・3号での経験が求められます。

技能レベルは、実技試験や作業実績により客観的に評価されます。

強制退去に従うこと・旅券を所持していること

不法滞在などにより強制退去となった場合には、これに従うことを誓約する必要があります。

また、有効な旅券を所持し、身元が明確であることが求められます。

旅券の有効期限は在留予定期間を十分にカバーするものである必要があります。

不当な金銭の取引を行っていないこと

保証金の支払いや違約金の設定など、不当な金銭の取引を行っていないことを誓約する必要があります。

これは外国人労働者の人権保護の観点から設けられた要件で、悪質なブローカーの介入を防ぐ目的があります。

契約書や金銭授受の記録について、詳細な確認が行われます。

費用負担に合意していること

来日にかかる航空運賃や、在留資格の申請・変更に必要な費用について、本人と受入れ機関の間で負担方法を明確に合意していることが必要です。

費用の負担について、書面による合意書の作成が求められます。

出身国で必要な手続きを終えていること

出身国の法令により海外就労に関する手続きが定められている場合、これを適切に完了していることが求められます。

例えば、フィリピンからの労働者の場合、フィリピン海外雇用庁において手続きが必要です。

各国の制度に応じた適切な手続きの完了が求められています。

元技能実習生は技能移転に努めること

技能実習制度から特定技能へ移行する場合、修得した技能を本国へ移転することが求められます。

これは、技能実習制度の本来の目的である国際協力・技能移転の観点から設けられた要件です。

帰国時の技能移転計画の提出が必要な場合があります。

分野ごとの特定の基準を満たしていること

各分野には固有の追加要件が設定されています。

例えば、建設分野では建設業法上の技能者としての要件、介護分野では日本語能力試験N3以上に合格する日本語能力などです。

農業分野では農業技能測定試験の合格、製造業分野では各製造業種に応じた技能検定の合格が求められます。

これらの分野別の要件は、各産業の特性と安全性の確保の観点から設定されており、申請前に詳細な確認が必要です。

よくある質問

Q. 特定技能1号から2号に移行できるのは?

 A. 特定技能1号から2号への移行は可能です。

しかし、1号での在留期間や技能レベルだけでは自動的に移行できません。

2号への移行には、該当分野の技能試験に合格するか、1号として一定期間の実務経験を積んだ上で技能評価を受け、「熟練した技能」を有していることが認められる必要があります。

また、2号の対象分野から介護は除外されているため、注意が必要です。

Q. 家族帯同は可能?

 A. 特定技能2号のみで、要件を満たした場合に配偶者と子の帯同が可能です。

帯同できる家族は、法的に婚姻関係にある配偶者と未成年の子に限られます。

また、家族帯同には、本人の収入が家族を扶養するのに十分であること、適切な住居を確保していること、家族の健康状態が良好であることなどの条件を満たす必要があります。

帯同家族には「家族滞在」の在留資格が付与され、資格外活動許可を得れば週28時間以内でのアルバイトも可能です。

Q. 2号人材は転職できる?

 A. 特定技能2号では、同一分野内での転職が可能です。

ただし、転職には新しい受け入れ企業との雇用契約の締結、適切な受け入れ体制の確保、出入国在留管理庁への所属機関変更の届出などの手続きが必要です。

転職先の企業も特定技能外国人の受け入れ要件を満たしている必要があり、登録支援機関による支援体制の整備も求められます。

転職活動中の在留資格の維持についても、十分な注意が必要です。

Q. 採用コストはどれくらいか? 

A. 特定技能2号人材の採用コストは、採用方法や支援体制により異なります。

海外からの直接採用の場合、渡航費や住居準備費を含めて50万円から100万円程度が目安です。

国内在住者の場合は、20万円から50万円程度です。

そのほか、登録支援機関への委託費用(月額2万円から5万円)、日本語教育の費用、各種手続き代行費用なども考慮する必要があります。

長期雇用が前提となるため、初期投資は他の採用手法と比較して検討することが重要です。

まとめ

特定技能2号の対象分野の拡大は2023年から本格的に始まり、従来の2分野から11分野へと大幅に拡大されました。

これにより令和6年だけでも在留者数はおよそ5.4倍に急増し、多くの業界で熟練外国人材の長期雇用が現実的になってきています。

特定技能の取得要件は厳格に設定されていますが、適切な準備と手続きにより、優秀な外国人材の確保が可能です。

2025年からの運用変更も含め、制度の動向を注視しながら、戦略的な外国人材の活用を検討することがおすすめです。

関連記事