【最新情報あり】外国人技能実習制度の法改正の概要を解説
外国人技能実習制度は、国際協力と日本の人手不足解消を目的としていますが、技能実習生の人権侵害などの問題が指摘されてきました。そこで2017年11月、制度の適正化を図る「技能実習法」が施行され、大幅な改正がなされました。
さらに2023年11月、有識者会議で「制度の廃止・新制度への移行」が提言され、2024年以降は新しい制度に生まれ変わる可能性があります。技能実習生を受け入れている企業は、大きな影響を受ける可能性があるため、内容を理解し早期の対応策検討が重要です。
本記事では、新制度移行までに適用される現行の改正ポイントを解説します。外国人技能実習制度の受け入れを検討中の企業様もぜひご参考ください。
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Contents
【最新】技能実習制度は廃止・新制度に移行へ
2023年11月22日、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議が開催され、現行の技能実習制度と特定技能制度を廃止し、新たな制度へ移行することが提言されました。11月30日には最終報告書が提出され、今後政府での検討が進められます。
現行制度の問題点として、技能実習生の人権侵害や失踪、不法残留などが指摘されており、抜本的な見直しが必要とされてきました。新制度では、外国人材の受け入れ範囲を拡大しつつ、日本語教育や生活支援などを強化し、外国人材の適正な受け入れと保護を図ることが目指されています。
ただし、新制度の詳細は現時点で明らかになっておらず、正式な制度変更は2024年以降になる見通しです。技能実習生を受け入れている企業や、受け入れを検討している企業は、引き続き情報を注視し、早期の対応策検討が求められます。
制度廃止と新制度への移行という大きな転換点を迎える中、外国人材の受け入れに関わる企業は、変化に適切に対応していくことが重要となるでしょう。
技能実習制度の改正の目的とその内容
技能実習法の施行により、技能実習制度は大幅に改正されました。改正の目的は、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を図ることです。具体的な改正内容は以下の通りです。
技能実習制度の適正化
技能実習制度の適正化について以下に整理します。
- 技能実習の基本理念及び関係者の責務規定を定めるとともに, 技能実習に関し基本方針を策定する。
- 技能実習生ごとに作成する技能実習計画について認定制とし、技能実習生の技能等の修得に係る評価を行うことなどの認定の基準や認定の欠格事由のほか、報告徴収、改善命令、認定 の取消し等を規定する。
- 実習実施者について届出制とする。
- 監理団体について許可制とし、許可の基準や許可の欠格事由のほか、遵守事項、報告徴収、改善命令、許可の取消し等を規定する。
- 技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定を設け違反に対する所要の罰則を規定するとともに、技能実習生に対する相談や情報提供、技能実習生の転籍の連絡調整等を行うことにより、技能実習生の保護等に関する措置を講ずる。
- 事業所管大臣等に対する協力要請等を規定するとともに、地域ごとに関係行政機関等による地域協議会を設置する。
- 外国人技能実習機構を新設し、技能実習計画の認定・監理団体の許可等の事務を行い、実習実施者・監理団体に報告を求め、実地に検査を行う等の業務を行う。また、技能実習生に対する相談・援助等も行う。
技能実習制度の拡充
優良な実習実施者・監理団体に限定して,第3号技能実習生の受入れ(4~5年目の技能実習の実施)を可能とします。
その他
技能実習の在留資格を規定する出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正を行うほか、介護職種への技能実習の対象拡大に伴い、介護福祉士の資格を有する外国人を対象とする在留資格を創設するなどの法整備も行われます。
これらの改正により、技能実習制度の適正化と拡充が図られ、外国人材の適切な受け入れと保護、そして国際協力の推進が期待されています。技能実習生の受け入れに関わる企業は、改正内容を十分に理解し、適切な対応を行うことが求められます。
技能実習制度の仕組みとは
外国人技能実習生の受け入れには、企業単独型と団体監理型の2種類の方法があります。制度改正後の大きな変更点は、新たに外国人技能実習機構が設立され、技能実習制度に関する各種業務を一元的に担うことです。これまで地方出入国在留管理局に対して行っていた申請や管理業務は、同機構に移管されました。
技能実習の3つの区分
在留資格「技能実習」は、次の3つに分類されます。
- 第1号技能実習:入国後1年目
- 第2号技能実習:2年目・3年目
- 第3号技能実習:4年目・5年目(優良な実習実施者・監理団体のみ)
企業単独型と団体監理型
1.「団体監理型」とは
営利を目的としない商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、事業協同組合等の監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業で実習を行う方式です。2018年末時点で、全体の約97.2%を占める主流の受入れ方式となっています。
2.「企業単独型」とは
日本企業等が、海外の現地法人や合弁会社、取引先企業などの従業員を直接受け入れて技能実習を実施する方式です。主に大手企業で活用されていますが、全体の約2.8%と、団体監理型に比べると利用は限定的です。企業単独型で技能実習生を受け入れられる海外の企業等の範囲は、以下の通りです。
- 日本企業の海外現地法人(支店、子会社、合弁会社など)
- 日本企業と1年以上の取引実績または過去1年間に10億円以上の取引実績がある企業
- 日本の公私機関と事業上の密接な関係を有する機関(法務大臣が告示で定めるもの)
外国人技能実習機構とは?
外国人技能実習機構は、技能実習法の制度改正により新設された法的権限を持つ監督機関です。技能実習制度の適正な実施と技能実習生の保護を図り、開発途上地域等への技能移転による国際協力を推進することを目的としています。同機構は、以下のような幅広い役割と権限を有しています。
外国人技能実習機構の役割
- 技能実習計画の認定、実習実施者の届出受理
- 監理団体の許可申請の受理等
- 監理団体や実習実施者に対する指導監督(改善命令や許可取消し等)
- 技能実習生からの相談対応や申告への対応
外国人技能実習機構による一元的な管理体制の下、技能実習制度の適正化と技能実習生の保護がより一層図られることが期待されます。
その他:雇用調整助成金の活用を構成労働省が要請
令和3年2月12日、厚生労働省は監理団体・実習実施者に対し、「雇用調整助成金を活用して外国人技能実習生の雇用維持に努めて下さい」との要請を行いました。
要請の主な内容は以下の通りです。
- 外国人技能実習生も雇用調整助成金の支給対象であり、活用を検討すること。
- 経営上・事業上の都合等で技能実習の継続が困難となった場合、外国人技能実習機構に「技能実習実施困難時届出書」を提出すること。
- 実習実施者(事業主)は、雇用調整助成金の要件を満たせば、休業手当や教育訓練を実施した場合の賃金相当額について助成を受けられること。
技能実習制度に関する相談は外国人技能実習機構の地方事務所・支所に、雇用調整助成金の要件等については最寄りの都道府県労働局やハローワークにお問い合わせください。
厚生労働省からの要請は、新型コロナウイルス感染症の影響により、技能実習生の雇用維持が困難な状況が生じていることを受けてのものです。技能実習生の雇用を維持しつつ、実習を継続するために、雇用調整助成金の活用は有効な手段の一つといえるでしょう。
外国人技能実習生の受け入れを行う企業におかれましては、雇用調整助成金の要件を確認の上、積極的な活用をご検討ください。
まとめ
外国人技能実習制度は、2017年11月に施行された技能実習法により大幅な改正がなされ、制度の適正化と技能実習生の保護を図るための様々な措置が講じられました。さらに、2023年11月には有識者会議で現行制度の廃止と新制度への移行が提言され、2024年以降の正式な制度変更が見込まれています。
改正の主なポイントとしては、技能実習計画の認定制度や監理団体の許可制度の導入、技能実習生の人権侵害防止、外国人技能実習機構の新設などが挙げられます。また、優良な実習実施者・監理団体については、第3号技能実習生の受け入れが可能となるなど、制度の拡充も図られました。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、技能実習生の雇用維持が困難な状況も生じていますが、厚生労働省は雇用調整助成金の活用を要請しています。
技能実習制度は今後、廃止と新制度への移行という大きな転換点を迎えます。外国人材の受け入れに関わる企業は、制度改正の内容を十分に理解し、適切な対応を行うとともに、引き続き情報を注視し、早期の対応策を検討することが重要です。